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2026年5月、久留米大学4年生の北里美弥(きたざとみや)さんが、株式会社SANCYO初の長期インターン生として勤務を開始しました。
北里さんは中学時代に難病「もやもや病」を発症し、心無い言葉と社会からの孤立から中学2年生から19歳まで不登校・引きこもりを経験。
「孤独死」という社会課題との出会いを転機に、地元でお茶会や夏祭りなど、様々なイベントを開催。努力の末19歳で高卒認定に合格し、2023年に久留米大学の社会福祉学科に入学を果たしました。
入学後は「過去の自分のような経験をする人が少しでも減って欲しい」という想いで社会福祉を学び、真の多様性やケア職側の自己実現について疑問を持ち、子どもの居場所作りや難病の方の就労問題解決サービス、不登校経験者のビジネスプラン考案などに奔走。
これらの社会課題には共通点が多いと感じ、「舞来祭」という一つの大きな取り組みへと結びつけました。
舞来祭とは?
舞来祭は、かつての北里さんのように、何かをしたいけど諦めている人々に対し、「ここでは、やってみたい!と言って良いんだ!」と思える場所を提供するイベントです。
舞来祭で実現したいのは、経済的、体調、障害、病気、年齢、性別など、どんな理由があっても諦めなくて良いようにする【やってみたい!のバリアフリー化】です。
そのために、福祉の力を活用して、参加者が「あのブースに行ってみたい!」や「これ食べたい!」と言える、アクセシビリティを備えた環境(手話通訳や筆談対応など)を整備し、全ての人に非日常を感じてもらうことを目指しています。
ここからは、AKARIライターのモリサワと編集長島川が、そんな舞来祭を振り返って何を感じているかや、ネクストアクションである、『AII Action Day』について、北里さんに伺った内容をお届けします。
ぜひ最後までご覧ください!
『舞来祭』を振り返って

謎解きコーナーで参加したお子さんに対応する北里さん
モリサワ:『舞来祭』において、北里さんが「成功したな」と感じたことはありますか?
北里さん:今回参加してくださったボランティアの方々が「またボランティアをしたい」「別の場所でもやってみたい」と、次に繋がる意識を持ってくださるイベントになったことです。そうしたアクションが生まれたことが、自分の中で1番成功したと感じるポイントでした。
当日は私含め2人で運営していたので、忙しすぎて私ともう1人のメンバーは当時の記憶がほとんどありません。告知もほぼSNSのみでしたが、それでも顔の知らない方がたくさん来てくれました。
終わってから1ヶ月ほど経った5月から6月上旬あたりに、周りの反響も少し遅れて届き始め、「何かすごいことをやったんだな」という実感が湧いてきました。その頃になって、やっと自分を俯瞰して「成功したな」と思えるようになりました。
モリサワ:北里さんは入学後に「真の多様性」や「ケア職側の自己実現」に疑問を持ったとおっしゃっていますが、具体的にどんな場面でその違和感に気づきましたか?
北里さん:一番最初は本当に何気ない瞬間だったのですが、社会福祉学科に通う友達を見ていて感じたことです。
大学に入学して同級生が50人いて、みんなと生活するのはとても楽しい。でも、福祉は「きつい」「大変」「安月給」と言われ、精神的に病んで辞めてしまう人が多いというのは有名な話です。
ふと、「この50人はほとんど福祉職に進むけれど、いつまで笑って過ごせるんだろう」と気になり始めたのが、ずっと心に残っていました。
最終的に「どうにかしなくちゃいけない」と思ったのは、周りのケア職(看護師さんや整骨院の柔道整復師の先生など)の話を聞いたときです。
患者さんには「朝ご飯食べてますか?」と聞くのに、ご本人は「忙しすぎて全然食べていない」とおっしゃっていました。
誰かを良くしている本人たちの体が、明らかに悪くなっている。
「ケア職こそもっと大切にされるべきだよね」と思ったのが大きなきっかけです。
モリサワ:支援する側・される側という構造そのものに違和感を感じることはありますか?
北里美弥:その論争は色々なところで繰り広げられていて、「支援する・されるの線引きをどうするか」がよく議題になりますが、私はその線を曖昧にしたいタイプでした。
日常的な支援(介護現場など)に関しては「フレンドリーな支援」がいいなと思っています。ただ、排泄などのすごくセンシティブなものに関しては「友達にはされたくない」と感じる人もいます。
そこは線引きがあった方が生きていきやすい場合もあるので、ケースバイケースだと思います。
また、「支援する側」の方たちも、本当は何かの当事者であることに多くの方が気づいていないと思うんです。「支援職=みんな元気で誰かを支える存在」というのが当たり前とされていますが、私はそうではないと思っています。「支援職の人たちも何かの当事者であり、何かに悩んでいる」ということを知ってほしくて、そこに視点を向けました。
モリサワ:元々自分が作業療法士という職業で、働いていた時に周囲からその声が聞こえていたので、その気持ちはものすごく分かります。
「福祉の特別感をなくす」というのは大きな挑戦だと思うのですが、今回のお祭りでその手応えを感じた瞬間はありましたか?
北里美弥:意外とたくさんあったと思っています。特に手話通訳を入れたことへの反響が大きかったです。「必要だからある」というわけではなく、当たり前の選択肢として入れたのですが、「手話がカッコよかった」と言われた時に「すごくいいな」と思いました。
今までテレビの隅にある小さな画面でしか知らなかった世界に、身近に触れてもらえたのが良かったです。
また、不登校などを経験された方をサポートする団体が2団体ほど出店してくださり、サポートを受けているお子さんや私の顔見知りの子どもたちも来てくれました。
ステージを作らずに、全てをフラットにした空間だからこそ、みんなで一緒に遊ぶ姿を見られて、「これが日本中で叶ったら良い社会になっていくかもしれない」と思える1日でした。
一時期、「福祉のイベントでしょ」と言われ始めた時期があり、それが本当に嫌だったんです。
『福祉イベント』と言うと少しダサい気がしてしまう、「福祉の啓発イベント」にはしたくないという、自分なりの想いやこだわりがありました。
だからこそ、インスタの投稿やSNSの活動も含めてスマートに見せる戦略を立てていました。
モリサワ:個人的には「福祉系の番組で扱えばいいのに」と思っていました。
各ブースに手話通訳や筆談対応の表示を出すアイデアは、どうやって生まれたのでしょうか?
北里美弥:最初に企画を始めてすぐ、マインドマップのように付箋で大量にアイデアを出したのがきっかけです。
医療的ケア児やLGBTQ、車椅子が必要な方など、身近なところだけでなく、「私たちが想像しうるものを限りなく出していこう」という意識で案を出し合いました。
もう1人のメンバーが心理学科なので、私一人では想像できなかった案もこの中でたくさん出ました。
モリサワ:特に印象に残っているエピソードはありますか?
北里美弥:一番印象に残っているのは、ボランティアの方とのエピソードです。
私たちはSANCYO様のご協賛のもと、子どもたちに向けた食の無償提供を行いました。その際、会場内6箇所にヒントを配置し、台紙の言葉を完成させる企画(答えは「舞来祭」)を実施したのですが、小さな子どもには「舞来祭」という字が難しすぎたんです。
ある4歳くらいの男の子とお兄ちゃんの兄弟が必死に解読してくれていて、お兄ちゃんは答えが分かっていましたが、弟は文字がまだ上手く書けず、最後の「舞来祭」で困っていました。
お母さんは後ろに並んでいる方を気にして急かしていましたが、私たちはゆっくり答えてもらえればと思って見守っていました。
その時、そばにいたボランティアの方が「一緒に書こう」と声をかけ、男の子の手を取って一緒に文字を書いてくれたんです。
ボランティアの方々は私たちと関わる期間がそれほど長くないにもかかわらず、私たちの想いをきちんと汲み取って自然とそういう行動を起こしてくれたことに、すごく感動しました。
モリサワ:もし中学生の時の北里さんが舞来祭を見たら、どんな感想を北里さんに伝えると思いますか?
北里美弥:多分喜んでいたと思います。中学生の頃は、難病が発覚して不登校になり、何もしたくない時期でした。それでも「何か行動したい」という思いはずっとあったので、「頑張ってるんだね」「すごいことやってるじゃん」と言ってくれるんじゃないかなと思います。
『AII Action Day』開催に向けて
島川:次回はイベントの名前を「AII Action Day」に変えて開催するとお聞きしましたが、そこにはどんな理由があったのでしょうか?
北里美弥:「すべてのジャンルに対して私たちはアクションを起こします」という思いを込めました。「これを知ったあなたたちも行動してほしい」という啓発的な意味合いも込めています。
前回は六角堂広場で開催しましたが、今回は学生に向けた学内イベントを開きたいと考えています。今回は新しいメンバー(全員1年生)も入ってくれたので、「私たちも行動を起こそう」という意味を込めました。
最初はLGBTQの文脈だけでやろうとも考えたのですが、それだけで実施してしまうと「あの子レズビアンじゃない?」と決めつけられるような空気感が出たり、「意識が高い」と思われたりするのが嫌でした。だからこそ、もっと幅広く多方面に目を向けた活動にしたかったんです。
モリサワ:第2回の開催に向けて、第1回を踏まえて「もっとできた」と感じた部分はどこですか?
北里美弥:集客です。「もっとできたはず」と感じつつも、具体的にどうすればいいか分からなかった歯痒さが残っています。
モリサワ:新しく取り組みたいことはありますか?
北里美弥:話題性でいえば、久留米においてLGBTQの取り組みを進めることは新しい風になると思っています。これからも今までにない全く違う挑戦をしていく予定です。
モリサワ:卒業した学生が帰ってくる場所として久留米に根付かせるために、今後必要だと思うことは何ですか?
北里美弥:久留米に知識などが還元される仕組みを作りたいです。
私自身、来年3月に卒業したら久留米を出て天神に行く予定で、地元でもないので戻ってくる理由がなくなってしまいます。
ですが、久留米で過ごした4年間はとても楽しいものでした。
私の大学でも地元の学生はわずかで、多くの学生が県外から来て一人暮らしをし、卒業後は市外へ出ていきます。
それでも、ここで過ごした4年間は消えない思い出です。
いつか戻ってきた時に地元に帰ってきたような安心感を覚えられる、そんな場所に久留米がなってほしいなと思っています。
『AII Action Day』で取り上げる『DEI』と『Ally(アライ)』について
モリサワ:『AII Action Day』では『DEI』をテーマとして取り上げたいとのことですが、なぜこのテーマを選ばれたのでしょうか?
北里美弥:今回DEI(「Diversity(多様性)」「Equity(公平性)」「Inclusion(包括性)」の3つの言葉の頭文字を集めた略語)を取り上げたきっかけは、SANCYOでインターン生として受講していたDEI研修です。
研修でソフィーさんが「Ally(アライ:支援者・理解者)」の説明をされた際、ある社員さんが「どこまで理解していればAllyと言えるのか」と質問されていました。
ソフィーさんが「たとえば居酒屋で女の子同士がデートの話をしていて、周りから心無いツッコミをされた時に『それおかしいよ』と止めてくれるような人」と例え話をされたんです。
それを聞いた社員さんが「なるほど、それでいいんだ」と納得されているのを見て、様々な世代の方々が本当は理解しようとしてくれていることが分かり、すごく嬉しくなりました。
これを社会に還元したいと思ったことが一つです。
また、大学内で先生がアウティングをするような場面を目撃して「どうにかしたい」と思ったことが重なり、行動を起こそうと決めました。
最初はLGBTQをテーマにする予定で、DEIのことはかんがえていなかったのですが、「LGBTQ」と前面に出すと偏見を持たれる可能性もあります。
「DEI」という広い文脈にすることで、より多くの人に届くのではないかと考えました。
モリサワ:私自身トランスジェンダーで改名や治療を行っていますが、それらもすべてソフィーさんのおかげでした。家庭裁判所に送る意見書を書いてくださったり面談をしてくださったりしました。
WEBメディア「AKARI」でソフィーさんがパンセクシャルを公言されている記事を読んだ時、「ガラパゴス携帯からスマホに変わるようなもの」という例えに、すごく納得したのを覚えています。
北里美弥:ソフィーさんは例え方が本当にお上手ですよね。
モリサワ:具体的にはどのようなイベントを作りたいですか?
北里美弥:私たちのグループ(7人)で話し合い、「私たちは色々なもののAllyになろう」と決めました。
「Ally」という言葉はLGBTQの文脈で使われがちですが、難病や発達障害、障害を持っている方のAllyもいますし、私の中で最大のAllyは支援職の方々だと思っています。私自身も病気の当事者であり、子どもたちのAllyでもあります。
久留米ではまだ浸透していない言葉ですが、「Allyを増やしていくこと」を目指して企画を展開したいです。コンテンツ自体は新メンバーの学生たちがやりたいことを優先したいと考えています。
モリサワ:イベントを通じて来場者に伝えたいことは何ですか?
北里美弥:一番は「本当はみんな何かのAllyで、誰かの助けになっている」ということに気づいてほしいということです。
形式的な答えがあるわけではありませんが、「自分は誰の役にも立てていない」と思っていても、存在自体が誰かの救いになっていることがあります。
特にマイノリティとされる立場の方にとって、味方でいてくれる人が1人いるだけで大きな支えになります。
「自分も誰かのAllyなんだ」と気づき、そのままの自分であり続けてほしいですし、そういう人を増やしていきたいです。
島川:メンバーからはどんな意見が出されていますか?
北里美弥:みんな「ワクワクする」と言ってくれています。
企画案としては、会場予定地のシェアキッチンを活用して「1日限定カフェ」を開く案が出ています。「弱視の体験をしながらコーヒーを淹れる」「車椅子のまま接客する」といった体験型カフェです。
そうした取り組みは都市部でしか行われていないことが多いので、「私たちがここでやることに意義がある」と学生が提案してくれて、すごく面白いと思いました。
また、「子どもオープンキャンパス」という企画も上がっています。
前回のイベントには不登校の子どもたちが多く来てくれましたが、幼少期から「大学」という場所に触れる機会を作ることで、将来の選択肢を増やせるのではないかと考えています。
前編はここまでです。
次回公開の後編では、イベントとは別に、北里さんのセクシュアリティの部分に迫ったお話をさせていただきました。
ぜひこちらも併せて読んでいただけると嬉しいです!
久留米大学 文学部 社会福祉学科4年
熊本県小国町出身
13〜19歳まで引きこもりと、不登校を経験。高校を2回退学後、高卒認定試験に合格し、大学へ進学。2025年度は、ソーシャルビジネスのビジネスコンテスト「YYコンテスト」で、難病を抱える方の働きづらさを解消するサービス『Tento』を提案し、企業賞を獲得。2026年4月にはやってみたい!のバリアフリー化を目指すイベント舞来祭を成功に導く。
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第一回舞来祭の様子や、イベント開催への想いはこちらでご覧になれます!
【やってみたい!のバリアフリー化】を目指すイベント、舞来祭に参加しました!
また、モリサワの話に出てきたソフィーさんの記事はこちらです。
パンセクシャルを公表しているオペレーション・マネージャー松尾ソフィーさんとトークセッションをしました!
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