LGBTって何だろう 性の多様性を考える  

性の多様性

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1.はじめに

 「LGBT」とは、「レズビアン(Lesbian)」「ゲイ(Gay)」「バイセクシャル(Bisexual)」「トランスジェンダー(Transgender)」の頭文字をそれぞれ組み合わせた言葉です。1990年代に、欧米でセクシャル・マイノリティ(性的少数者)の人々が自分たちの存在を前向きに示す表現として使い、近年では日本でも見聞きするようになりました。

 レズビアンは女性同性愛者の人のことを言い、ゲイは男性同性愛者の人のことを指します。欧米では、女性同性愛者の人のことも「ゲイ」と呼ぶこともあります。バイセクシャルは両性愛者の人のことを言います。「好きになる性」が男性の場合もあれば女性の場合もあり、または相手の性別にこだわらない人もいます。トランスジェンダーは「体の性」と「心の性」とが一致せず、なにか違和感を持っている人を指します。

2.セクシャリティ

 そもそもセクシャリティ(性のあり方)は、次の4つの要素から成り立っています。「体の性」「心の性」「好きになる性」「表現する性」です。

 生まれついてもった体の特徴により、人を男性か女性かに分けるのが「体の性」で、それは生物学的な性を表します。しかしながら、中には生まれつき体の構造や第二次性徴(男性は髭が濃くなる、女性は胸が膨らむ)の現れ方が、他の男女と違う「性分化疾患」の人もいます。

 「体の性」に関係なく、自身が自分の性別をどのように感じているかを「心の性」(性自認)と言います。一般的に多くの人は「体の性」と「心の性」が合致していますが、「体は男性だけど、自分では女性と思っている」というように、体と心の性別が同じではない人もいます。また、自分が男性か女性なのか分からない、あるいは、どちらにもあてはまらないという人もいます。

 どの性別を恋愛対象にするのかを「好きになる性」(性的指向)と言います。多くの人は異性を好きになると考えています。しかし中には、同性を好きになる人、同性も異性も好きになる人、どの性別に対しても恋愛感情や性的な関心を持たない人もいます。

 服装や髪形、仕草や言葉づかいなどによって、自分の性別を周りにどのように表現するか、というのが「表現する性」です。多くの人は「体の性」の性別に沿った自己表現をしますが、「体の性」と「心の性」が同じではない人は、「心の性」に沿った表現をするときもあります。

3.LGBT以外にも

 近年では、「LGBT」という表現ではいろいろなセクシャリティを十分に説明できない、という考えのもと、次のような新しい表現も登場してきています。

 「LGBTQ」はLGBTとともに、セクシャル・マイノリティを言い表す言葉です。「Q」は英語で「模索中」を意味するクエスチョニング(Questioning)の頭文字で、自分の「心の性」や「好きになる性」がはっきりしない、あるいは迷っている、または、あえて決めない人々のことを指します。

 Aセクシャルは、恋愛や性的なことに関心を持たないセクシャリティのことで、「無性愛」とも呼ばれます。

 またトランスジェンダーの中でも、「心の性」を男女のいずれか一方に決めない人を「Xジェンダー」とも呼びます。

 2016年に、博報堂が行った、全国の20~50歳代の約9万人を対象とした調査で、自分がレズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダーであると回答した人の割合は5.9%でした。そこにAセクシャルなど、その他のセクシャル・マイノリティを合わせると、約8%なる、という結果も出ています。「マイノリティ」(少数派)ではあるものの、8%という数字を見ると、LGBTの人数は決して少なくはありません。しかし、「自分の周りにLGBTの人などいないし、これまで出会ったこともない」という人が多数なはずです。   

 ⅬGBTかどうかは、本人が周りに言わない限り、他人が外見や振る舞いなどから勝手に判断できる、というものではありません。また、多くの場合、LGBTの人は、周りからの差別やいじめを恐れ、自らのセクシャリティを隠して生きているため、人に気づかれにくいとも言います。中には、自身のことをLGBTだと気づかない人や、認めたくない人もいるのです。

4.カミングアウトとアウティング

 セクシャリティに関する問題は、周囲の人が勝手に推測したり、判定したりできるものでもありません。その人本人が、「自分はLGBTである」と周りに伝えることで初めて、その人は他の人から「LGBT」だと認識されるのです。それまで隠していた自分の「心の性」(性自認)や「好きになる性」(性的指向)などのセクシャリティについて、周囲の人に打ち明けることを「カミングアウト」と言います。

 本人の了解なく、その人のセクシャリティを周囲の人に伝えることを「アウティング」と言います。アウティングは、勇気を持ってカミングアウトしてくれた人を傷つけ、信頼を裏切る行為です。アウティングの結果、いじめにあったり、学校での居場所がなくなったりする人もいます。中には自殺に追い込まれた人もいます。

 もし友達からカミングアウトされたものの、「どうしてよいか分からない」と思ったときは、本名を明かさずに匿名で、電話で悩みを話せるLGBTに関する相談窓口の利用を友達に勧める、といったことも良いでしょう。全国で、LGBTに関する相談を受け付けてくれる場所があります。

 LGBTの人が少しでも幸せに暮らせる世の中になるといいですね。

   参考

 藤井ひろみ(2017)『よくわかるLGBT 多様な「性」を理解しよう』PHP研究所.

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