マイクロプラスチック海洋汚染問題 人体への影響は?

ゴミをゴミ箱へ捨てる人の白線イラスト

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1.プラスチックストローの廃止

 今年7月9日、アメリカのコーヒーチェーン大手・スターバックスがプラスチック製ストローの使用を止めると発表しました。今秋に北米の店舗から段階的に進め、2020年に世界にある2万8000店以上のすべての店舗で廃止する予定だといいます。

 今年2月には、台湾が使い捨てプラスチック製品(ストロー、コップ、レジ袋など)を段階的に規制し、2030年までに全面的に禁止する方針を打ち出しました。

 4月には、イギリスが2019年からプラスチック製ストローやマドラーを禁止することを、6月にはインドが2022年までに使い捨てプラスチック製品を全廃することを発表していす。

 政府だけではありません。企業では、スターバックス以外にも、IKEAやザ・ウォルト・ディズニー・カンパニーが使い捨てプラスチック製品を削減する方針を進めています。

 1950年以降、世界で83億トンのプラスチックが製造され、そのうち63億トンが廃棄されたという推計されています。それらは自然に還らずに、そのまま残っています。現在も年間1200万トンのプラスチックが海に流れ込んでいるという試算もあります。

 2016年にスイス・ダボスで開催された世界経済フォーラムでは、「2050年には、世界の海に漂うプラスチックは重量換算で、魚の量を上回る」というデータまであります。

 プラスチックボトルなどは、太陽光を浴びると耐久性が下がります。脆くなったプラスチックは風や波の影響などでどんどん小さく壊れていき、5㎜以下の小片になっていきます。その5㎜以下のプラスチックごみを、「マイクロプラスチック」といいます。

2.マイクロプラスチックとは

 繰り返しますが、マイクロプラスチックとは、製造された時点で5㎜以下の小さなプラスチック製品のことを言い、それを1次プラスチックと呼びます。もう1つ、プラスチック製品が劣化して小さくバラバラになったものを、2次マイクロプラスチックと呼びます。

 1次マイクロプラスチックには、体をケアする商品に含まれるマイクロビースがあります。洗顔料や歯磨き粉、ボディシャンプーなどのケア商品には、角質や汚れを落とすために、プラスチック製のマイクロビースやがよく使われています。

 私たちがこのマイクロビースの入った商品を使うと、それは排水溝を流れ、一部が下水処理場をすり抜けて海に流れ込むのです。

 しかし、海洋でもっとも多いマイクロプラスチックは、プラスチックが劣化することで発生する2次マイクロプラスチックです。

 海を漂うプラスチックごみの多くは、長い間、太陽の紫外線にあたり、高温にもさらされ、光分解と熱酸化分解によって少しずつ劣化して脆くなります。それはやがてなりバラバラになります。それが2次マイクロプラスチックです。

 2次マイクロプラスチックは、服を洗濯するときにも発生します。フリースなどの化学繊維の服を洗濯・乾燥した際に、大量の繊維クズが発生し、これが風に飛ばされるなどして排水溝を流れ、海に入り込みます。

 1次マイクロプラスチックに関しては、その生産量や発生源を特定することができるため、その利用を制限する動きがあります。しかし、それよりもずっと多い2次プラスチックについては、どこまで発生しているのかすら分かっていません。 

3.魚に紛れ込むマイクロプラスチック

 東京農工大の研究チームは、煮干しの原料となるカタクチイワシの消化管からプラスチックが見つかったと発表しました。

 カタクチイワシは、煮干しとして利用されているだけでなく、その稚魚は「シラス」として私たちが親しんでいる魚です。

 研究チームは、東京湾で採集された体長10㎝ほどのカタクチイワシ64匹の消化管を調べ、そのうちの約8割となる49匹の消化管から、合計150粒のマイクロプラスチック(1匹あたり平均2.3粒)が見つかりました。

 150粒のマイクロプラスチックのうち、約8割は大きさが0.1㎜から1㎜であったといいます。

 日本のカタクチイワシだけではありません。マイクロプラスチックは世界中で様々な食用魚に誤食(誤飲)されているのです。

 太平洋ごみベルトで有名な北太平洋還流では、調べた魚の10%~35%の消化管の中からプラスチック片が見つかったという報告がありました。

 ヨーロッパでは、英仏海峡に生息するニシン、マイワシ、カワクチイワシ、アジ、ホワイティング、マトウダイ、ホウボウ、カレイの仲間などの重要な食用魚からプラスチック片が発見されました。

 現時点では、魚の胃の中にわずかにプラスチック片が残っているからといって、それがどれだけ魚の健康状態に影響を及ぼすのかについては、よくわかっていません。

 しかし、大きさが1㎜よりも小さなマイクロプラスチックには、プラスチック製品の製造過程で加えられた添加物や、海中から吸着した内分泌かく乱物質などのさまざまな有害物質が含まれている可能性があります。

4.人体への影響は?

 マイクロプラスチックが人体に及ぼす影響を調べるこは、簡単なことではありません。なぜなら、マイクロプラスチックは、私たちが飲む水にも、空気中にも、食べ物にも混じっているからです。人間への影響を厳密に評価するには、マイクロプラスチックに曝露されていない人間と比較する必要がありますか、それはとても困難なことです。

 多くの研究者が指摘する問題は、プラスチックの製造時に添加された化学物質(添加物)です。プラスチック由来の添加物が魚介類の脂肪の中に溶け込んでいる可能性もあります。

 そのような魚介類の体の中には、マイクロプラスチックは、糞として、排出されて残っていないかもしれませんが、プラスチック由来の化学物質が脂肪の中に溶け込んでいる可能性もあります。それを私たち人間が食べるとさらに濃縮(生物濃縮)される可能性もありますが、しかし、まだどの程度なのか、研究は進んでいません。

 もっと心配なのは、マイクロプラスチックよりもナノプラスチックという指摘もあります。ナノプラスチックとは、大きさが1マイクロメートルよりも小さなプラスチックの破片です。マイクロプラスチックはやがて微細なナノプラスチックになっていくと考えられています。

 このナノプラスチックは小さすぎて、現在の技術では海にどのくらいあるのか調べることも簡単ではありません。なぜナノプラスチックが懸念されているかというと、食物連鎖を通して人間に入ってくる可能性があるためです。マイクロプラスチックとは異なり、ナノプラスチックは消火器系を抜け出して、免疫系や脳などの生体組織内に入り込む可能性があるとされます。

5.世界が対策へと乗り出す

 今年6月にカナダで開催G7シャルルボワ・サミットでは、海洋プラスチック問題に対応するため世界各国に具体的な対策を促す「健康な海洋、海、レジリエントな沿岸地域社会のためのシャルルボワ・ブループリント」を採択しました。

 さらに、イギリス、フランス、ドイツ、イタリア、カナダの5か国とEUは、自国のプラスチック規制強化を進める「海洋プラスチック憲章」に署名しました。

主な内容は、

・2030年までに、プラスチック用品を全て、再利用可能あるいはリサイクル可能、またどうしても再利用やリサイクル不可能な場合は、熱源利用等の他の用途への活用(リカバリー)に転換する

・不必要な使い捨てプラスチック用品を著しく削減し、プラスチック代替品の環境インパクトも考慮する

・プラスチックゴミ削減や再生素材市場を活性化するため政府公共調達を活用する

・2030年までに、可能な製品について、プラスチック用品の再生素材利用率を50%以上に上げる

・プラスチック利用削減の向けサプライチェーン全体で取り組むアプローチを採用する

・海洋プラスチック生成削減や既存ゴミの清掃に向けた開発分野への投資を加速させる

・逸失、投棄漁具などの漁業用品の回収作業に対する投資などを謳った2015年のG7サミット宣言実行を加速化する

などです。

 日本とアメリカはこの憲章には署名しませんでした。でも私たちにもできることはあります。まずは、「プラスチック製品をなるべく使わない」「マイクロビーズが入った製品を使わない」ことから初めてみませんか?

  参考

株式会社ニューラル サステナビリティ研究所(2018)『【国際】G7シャルルボワ・サミット、海洋プラスチック憲章発表。日本と米国は署名せず』<https://sustainablejapan.jp/2018/06/11/ocean-plastics-charter/32561>2018年12月6日アクセス.

週刊現代(2018)『子どもに「プラスチック入り」の魚を食べさせて問題はないのか』<https://gendai.ismedia.jp/articles/-/56996>2018年11月26日アクセス.

プラスチックの海<https://marineplastic.net>2018年11月26日アクセス.

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