利用者からの在宅ケアハラスメントを受けて、疲弊する介護士などの戸惑いや葛藤。 

在宅ケアハラスメント

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こんにちは、翼祈(たすき)です。

介護はご高齢だったり、病気などで寝たきりだと、家族だけでは24時間世話をすることが難しく、そういう場合、介護士やソーシャルワーカー、看護師、ヘルパーなどにお願いして、在宅ケアに来て貰います。

ですが、近年在宅ケアを利用する人からのハラスメント、通称【在宅ケアハラスメント】で疲弊する介護士などがいて、離職や廃業したりする人もいる社会問題をご存知ですか?

クローズアップ現代によりますと、在宅ケアには介護を受ける「訪問介護」や、医療を中心に受ける「訪問看護」、「訪問診療」がありますが、この中で「訪問介護」の利用をする人は、この20年間で2.6倍の109万人余りに達しています。

ニーズが高まる反面、在宅ケアする人への【在宅ケアハラスメント】が深刻な社会問題です。例を挙げると必要なケアが終了しても「出口を塞ぎ、会社に帰らせない様にされた」、「自分以外の家族の分の食事も作って欲しい」など、契約書に書いていない以外の要求に応じなければならなかったり。

その上「手袋なしで熱いタオルで身体を拭けと言われた」などの無理難題の強制、「髪の毛を引っ張られて転倒する様にされた」、「玄関の鍵が施錠され、カメラで監視、監禁された」など、犯罪と言われる様な悪質なケースまでありました。

2022年、埼玉県では訪問した医師などが、亡くなってから1日以上経過した患者に心臓マッサージを施す様に要求された末、散弾銃で殺傷される事件まで起こりました。

どうして【在宅ケアハラスメント】は起こるのか?今回はこの問題について、考えていきたいと思います。

なぜ、【在宅ケアハラスメント】は起こるのか?介護士などは疲弊

埼玉県内で仕事をしているホームヘルパーの男性Aさんの証言です。利用者から悲惨なハラスメントを受け続ける悲しい経験をしました。その利用者を担当し始めたのは、今から4年前の出来事でした。

強いこだわりのある利用者さんだということは他の方から伺っていました。車椅子で日々の暮らしをまかなっていて、手も少しまひもあったので、簡単な料理や買い物、掃除、それ以外では身体の入浴介助が必要な方でした

ホームヘルパーの男性Aさんは、利用者の自宅に1人で訪れていました。相手の態度が豹変したのは、2回目の訪問をした時だったそうです。それ以来、ホームヘルパーの男性Aさんへの利用者からの暴言は日に日にエスカレートしていきました。月日が幾重にも経過しても状況は一転して改善されず、男性Aさんは自分の身を危険から守るため、仕方なく利用者との会話を録音しました。

ホームヘルパーの男性Aさんは、【在宅ケアハラスメント】の背景に、身体が思う様に動かないことへの苛立ちや家族と離れて生活する孤独感などの感情が複雑に入り組んでいたではないかと利用者の想いを受け止めていました。

ですが、利用者への手順書が存在しても、暴言は、ホームヘルパーの男性Aさんだけでなく、男性の家族や会社、会社の同僚のことにも危害が及びました。

ホームヘルパーの男性Aさんは、「特に不機嫌な時は、誹謗中傷が矢継ぎ早に強まる傾向でした。自分のストレスをぶつけて解消させる状況に陥っていました」と当時の心境を語ります。

この利用者には、複数の事業所も関与していましたが次々と利用者の元から消えました。そのことで、ホームヘルパーの男性Aさんが在宅ケアのサービスに入る日数は、週5日に倍増しました。時間通りにサービスを終了できず、他の利用者の訪問が遅くなる日も続きました。

新規の契約を結ぶ体力も奪われ、業務への支障がひどくなる一方でした。この利用者を担当する他の事業者と会議を開催したり、行政からの助言を貰いましたが、現状が変化することはありませんでした。

利用者の暴言にひたすら我慢する日々が永遠と続いて、ホームヘルパーの男性Aさんは、心身が壊れていきました。病院に相談しに行くと、適応障害だと診断を受けました。弁護士にも回収して貰い、ホームヘルパーの男性Aさんはついに利用者への契約の解除を行いました。利用者へのサービスを始めてから2年が経過し、考え抜いた末の決断となりました。

ホームヘルパーのヘルパーの男性Aさんは「助けたい人がいるからこのホームヘルパーという仕事を始めたのですが、契約を解除してしまっていいのかと悩みました。何より、自分が契約を解除したことで同じ悲しい思いをする人が僕の代わりに出てしまうことへの責任感を1番強く抱きました。暴言を吐き続ける利用者さんはごく少数ですが、こういう方が増えることでホームヘルパーの成り手がどんどん少なくなるという現状も理解して頂きたいです」は、当時のことをこの様に吐露しました。

契約を解除された利用者は、別の事業所のサービスを利用することになったとしました。

参考:訪問介護・訪問診療の現場で絶えないハラスメントの実態 埼玉 NHK 埼玉WEB特集(2023年)

苛立ちが頂点に達する前に、普段からヘルパーさんなどに悩みを共有できる様な体制にすることが大事な手段です」と説明するのは、「ものわすれ外来」に通院する患者やその家族と深く関わる、医師の男性Bさんです。実は、患者やその家族以外にも、在宅ケアする側にも深い悩みを抱えていることが非常に多いとします。そのことで、事前に利用する人と在宅ケアをする人が同じ悩みを話し合っておくことが重要だとします。

医師の男性Bさんは、「お互いのやるべき事とか、やって欲しい事とか、どこまでがサービスの限界とかありますよね?両方の立場から意見を質問する上で、それぞれに感じている部分と、相手との気持ちの共有が上手くできていない様に思います。そこで様々なトラブルが発生して、在宅ケアをする職の者から観ると「ハラスメント」だと捉えてしまい、在宅ケアを受ける家族側から観ると『深く関わって貰えない』という判断を取ってしまいがちです」と、警鐘を鳴らしています。

【在宅ケアハラスメント】をしてしまった利用者の中には、悲しい背景がある人も。

岡山県津山市にある地域包括支援センターでは、関係機関と横繋がりで在宅ケアなどのサポートや相談に受ける窓口です。

職員の女性も、当初【在宅ケアハラスメント】をする人へのマイナスな感情を抱いていましたが、意見が変化しました。認知症の疑いがある高齢女性を担当していた頃、その高齢女性の娘から在宅ケアの訪問に行く度に暴言が止まりませんでした。

ある日、職員の女性は娘の異変に気付くことができました。「表情が暗く、髪が乱れている感じもあって、凄く疲弊しているのかもしれないと思って話を聞いてみると、怒りの声が普段より少し悲鳴を捉えたというか、SOSを発信しているとさえ感じました。もしかしたら私に怒っているわけではないかもしれない」と感じました。

職員の女性は「貴方のことも心配しています。抱えている悩みを教えて欲しい」と娘に言葉をかけました。すると、娘は誰にも言えなかった悩みを話し始めました。

娘は、母親が介護をしている時に乱暴な扱いを受けてきたことや、1日中街中を徘徊すること。母親が排せつの失敗が続いても話を聞いてくれないなど、介護への限界を1人では抱え切れないと感じていたこと。夫に母親の介護を手伝って欲しいと求めても受け入れて貰えないこと。

「孤立感ということに苛まれているのかもしれないですが、自分の気持ちを聞いて貰える人がいないということ。その現実への怒りの声が私たちに向けられた怒りだったのかもしれない」と、この職員の女性は【在宅ケアハラスメント】の裏側に潜む事情を知りたいと思う様になりました。

【在宅ケアハラスメント】をする人には、介護をする家族からの暴力や社会からの孤立など、様々な背景が隠れている様でした。

ですが、ハラスメント自体は罪が重い行為です。寄り添ってくれる介護士の人などもいるかもしれませんが、ハラスメントを受けることで、そこまで寄り添えず、離職や廃業をする人もいます。

私はクローズアップ現代を観て、この問題について知りました。日本は超高齢化社会であり、この問題はこれからも続いていく問題でしょう。どうすればハラスメントには該当せず、お互いが気持ち良く接することができるのか?考えさせられる社会問題の1つだと、この問題を記事化して再度そう思いました。

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「在宅ケアハラ」どうすれば防げるの?プロに聞いてみました NHK(2023年)

参考サイト

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左耳感音性難聴と特定不能の発達障害(ASD,ADHD,LD全ての要素あり)、糖尿病、甲状腺機能低下症、不眠症、脂漏性皮膚炎などを患っているライターです。映画やドラマなどのエンタメごと、そこそこに詳しいです。ただ、あくまで“障害”や“生きづらさ”がテーマなど、会社の趣旨に合いそうな作品の内容しか記事として書いていません。私のnoteを観て頂ければ分かると思いますが、ハンドメイドにも興味あり、時々作りに行きます。2022年10月24日から、AKARIの公式Twitterの更新担当をしています。2023年10月10日から、AKARIの公式Instagram(インスタ)も2交代制で担当。noteを今2023年10月は、集中的に頑張って書いています。昔から文章書く事好きです、宜しくお願い致します。