その噂、本当ですか?「フェイクニュース」に要注意

フェイクニュース

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 皆さんは、こんなニュースを目にしたことはありませんか?

 「メッセージアプリのLINEが有料化する」「地震で動物園のライオンが檻から逃げ出した」「あおり運転の加害者の身元が判明」…いずれもインターネットで個人が発信した情報であり、このショッキングな話題はたちまちのうちにSNS上で拡散されました。しかし、後にこれらの投稿は全て事実無根の「ウソ」だったことが明らかになったのです。

ネット上で広がるフェイクニュース

 「地震のせいで、うちの近くの動物園からライオンが放たれた」という文章と共に、夜の街を歩くライオンの写真がSNSに投稿されたのは2016年の4月、熊本を襲った大地震で不安と混乱が広がっている最中のことでした。

 この投稿はすぐに無関係の写真を使用した嘘の情報だと判明し、投稿した本人とは別のユーザーが訂正と注意を呼びかけましたが、問題の投稿は瞬く間に拡散され、熊本の動植物園には投稿を信じた人々からの問い合わせが殺到しました。

 さらに最近では、常盤自動車道であおり運転をした男やその同乗者に関するデマがインターネット上で広まり、無関係の女性が同乗者と勘違いされて誹謗中傷や会社への嫌がらせの電話を受けています。

 事実とは異なる情報をさも真実であるかのように流す悪質な偽情報は「フェイクニュース」と呼ばれ、近年大きな問題となっています。

アメリカ大統領選やEU離脱でも…フェイクニュースの影響力

 海外ではフェイクニュースの拡散が世論に影響を与えたり、刑事事件に発展した例も存在します。

 たとえば、2016年にイギリスでEU離脱の賛否を問う国民投票が行われた頃、EU離脱派の英国独⽴党党⾸ナイジェル・ファラージ⽒の「EUへの拠出金として週に3億5000万ポンドが支払われている」という発言がSNS上で拡散されました。

 ところが、実際にはEUへの拠出金はその半分以下の金額であり、ファラージ氏は国民投票でEU離脱が決定した翌日に自身の発言に誤りがあったことを認めています。

 また、同じく2016年のアメリカ大統領選においても、「ヒラリー・クリントン候補がイスラム過激派に武器を売った」「ローマ法王がドナルド・トランプ候補を支持」といったフェイクニュースが多数出回りました。

 これは政党や候補者のイメージに影響をもたらしただけでなく、ヒラリー・クリントン候補など民主党の関係者が国際的な人身売買・児童買春に関わっているといううわさを信じた男性が、犯罪組織の拠点とされるピザ屋に銃器を持って押し入り発砲する事件まで起こりました。

 さらに、最近では香港での「逃亡犯条例」の改正反対デモに対し、中国政府がSNS上で一般ユーザーになりすまして「デモ参加者が暴力的な行為を働いた」などの偽情報を流し、デモに対する印象操作を行っていた可能性があるとして、大量のアカウントが削除・停止処分を受けるという事態に至っています。

フェイクニュースへの対策と課題

 いくつかの国やWebサイトではフェイクニュースの増加と社会への悪影響を深刻にとらえ、フェイクニュースの対策が行われています。

 たとえば、EUでは報道機関に対してフェイクニュース防止のための行動規範を作るように呼びかけたり、市民団体などを通じてメディアリテラシー教育を促すなどの取り組みがなされています。

 さらに、フランスでは選挙時のフェイクニュースを、ドイツではヘイトスピーチやそれに関連する偽情報を取り締まる法律が作られ、法律に違反していると判断された書き込みには削除・アクセスブロックなどの措置が取られることになりました。

 Webサイトにおいても、Googleは他のサイトからの転載や不正確な情報を掲載しているサイトの検索順位を下げ、Facebookではユーザーから通報された記事に対して外部機関でファクトチェック(事実かどうかの検証)を行い、虚偽の疑いがあると判断されたものには画面に警告を表示する仕組みが作られました。

 一方で、法律によるフェイクニュース規制には「政府による言論統制に利用されるおそれがある」といった批判があり、ファクトチェックも意図的に事実をねじ曲げたり不十分な調査によって誤った判定が下されたりする可能性があるため、完全に信用できるとは限りません。

個人でできるフェイクニュースの対策

 日本でもフェイクニュース対策について本格的な議論が始まっており、7月の参議院選挙では特定非営利活動法人・FIJ(ファクトチェック・イニシアティブ)が政治家の発言やインターネット上の情報についてファクトチェックを実施するなど、少しずつフェイクニュースへの対応が進められつつあります。

 しかし、まだ諸外国のように具体的な対策案が出ておらず、専門機関によるファクトチェックもフェイクニュースを完全に抑制・駆逐できるものではないため、フェイクニュースによる被害を防ぐためには情報を受け取る側がある程度対策をする必要がありそうです。

 そこで、ユーザーひとりひとりができるフェイクニュース対策について、いくつか考えてみました。

1.過激な文章、扇情的な内容にまどわされない

 被災地での二次被害や犯罪被害の報告、刑事事件の被疑者の情報など、拡散されるフェイクニュースには怒り・不安・恐怖といったマイナスの感情を煽る要素が含まれていることが多いようです。

 むやみに不安を煽る内容、あるいは過激な文章のニュースが流れてきた場合は注意してください。

2.事実かどうかよく調べる

 フェイクかもしれない情報が流れてきたら、まずはインターネット検索などを活用して調べることが重要です。

 また、調べる場合には適当な情報源をひとつ見つけるだけではなく、さまざまなWebサイトや文献・記録などを参考にし、「裏づけ」となる情報を複数揃えてから判断しましょう。

3.情報源の信頼性を考える

 フェイクニュースかどうかを見極める上では、情報の発信者もひとつの判断材料になります。

 正式な報道機関や信頼できるWebサイトではなく、一般のユーザーやよく知らないWebメディアなど信用に値するかどうかわからないものから発信された情報は鵜呑みにしないほうがよいでしょう。

 また、発信者が情報源を提示している場合も、発信者が内容を正しく読み取れていなかったり、そもそも情報源自体が誤った内容を記載している可能性があるので、しっかり精査しましょう。

4.すぐに拡散しない

 事実かどうか判断するための材料が十分になく、真偽を見極めるのが難しい場合は拡散せずしばらく様子を見るのもひとつの手です。

 情報が間違っているのならば、後から反論・訂正という形で正しい情報が現れます。フェイクかもしれない情報はいったん触れずに放置し、ある程度時間を置いてから調べ直してみましょう。

5.悪質な発信者は通報・ブロックする

 検索する際のノイズを減らすために、意図的にデマを流したり誤った情報を載せたりするユーザーやコンテンツは通報するか、目に入らないようにブロックしてしまうのがよいでしょう。

 多くのSNSは運営への通報機能がついています。また、Google Chromeの場合は「拡張機能」をインストールすることで特定のサイトを検索に表示させないサイトブロックや通報フォームへのショートカット機能を使えるようになり、Yahoo!では有害な情報を検索結果から省くセーフサーチとチャイルドブロックが使えます。

 Google Chrome用の拡張機能はChrome ウェブストアからダウンロードできます。Yahoo!のセーフサーチはYahoo!検索ヘルプに設定のしかたが掲載されているので、参考にしてみてください。

まとめ

 今の時代はスマホひとつで簡単に情報にアクセスしたり発信したりできるようになりましたが、情報の受信・発信が容易になることには「有害な情報に触れてしまう危険」と「不正確な情報を広めてしまう危険」のふたつのリスクがあります。

 そういったリスクから身を守るためにも、正しい情報を見極めて有害な情報を遠ざける「ネットリテラシー」を身につけておきたいものですね。

参考元:総務省 NHK クローズアップ現代+ WIRED 

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