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こんにちは、翼祈(たすき)です。
レット症候群は、1966年にウィーンの小児神経科医であるAndreas Rettによって初めて報告された疾患です。本症は神経系を主体とした特異な発達障害です。”大人しく、よく眠る、手のかからない子”と表現される如く日中の睡眠時間が長く、筋緊張低下、外界からの刺激に対する反応に欠けることが大きな特徴であり、これらの症状は通常であれば見逃され、”当初乳児期早期は正常”とされることが多い傾向だといいます。
発症するとほとんどの子が言葉を話さず、発症は乳児期早期にあり、睡眠障害、重度の知的障害、言葉の遅れ、自閉症状、てんかん発作、姿勢運動の異常、後天的な小頭症、運動能力の遅れ、体のこわばり、歩行時の異常、脊柱の側彎筋緊張の異常、ふらつき、情動異常、体が硬くなり、捻じるような動作、夜間に覚醒して騒ぐ、ジストニア、歯ぎしり、過呼吸―無呼吸を交互に繰り返す呼吸障害、小さく冷たい手足、頑固な便秘などの自律神経症状、側彎などの症状が年齢依存性に出現する特徴が出ます。
日本の厚生労働省の研究班で実施された20歳までの有病率調査によりますと、推定患者で約1,020人であり、1万人の女児に対し、0.9人くらいの有病率と報告されています。根本的な治療方法は見つかっておらず、対症療法で症状を和らげるしかありません。
今回は娘さんがレット症候群を発症し、NPO法人「レット症候群支援機構」を立ち上げたお父さんの想いなどをお話しします。
NPO法人「レット症候群支援機構」を立ち上げた父が語る、娘への想い
生後1歳を過ぎた頃、娘の異変に気付いた一人の父親。「今の医療では、レット症候群の治療法がない」と診断を受けた帰り道、団体を発足することを決意しました。NPO法人「レット症候群支援機構」を発足して11年、娘は中学3年生になりました。
大阪府に住む谷岡哲次さんの娘の紗帆(さほ)さんは、生後半年ごろから首の据わりが悪く、体に力が入らないようになりました。2歳で難病のレット症候群だと告げられました。
「今までできていたことがどんどんできなくなっていくことが増えていく様子を見守ることしかできず、できることなら僕が紗帆と入れ替わりたい、もし自分の命と引き換えに紗帆が普通の子になることができるなら…。『神様、できるなら自分の命と引き換えにそうして下さい』と何度も繰り返し願いました」と診断を受けた当時を振り返る谷岡さん。
「少しずつできないことが多くなる中でも、なるべく家族で過ごす時間を楽しくしたいと大切にしてきました」と言います。
医師から「治療法がない」と言われ、「そうだったらレット症候群の治療の研究を後押しする団体を発足しよう。紗帆の代わりになれないのなら、他のアクションで、紗帆のためにできるだけのことをするしかない」と、根本的なレット症候群の治療法開発のために、患者家族として立ち上がり、研究者との関係性を構築することを目的に、NPO法人「レット症候群支援機構」を2011年に発足。会員や支援者からの寄付を集め、今までに累計1,600万円の研究助成を行いました。
「未だレット症候群の治療法の確立には至っていませんが、海外では症状を和らげる薬の治験が最終段階に入っていて、結果も悪くないという話でした。遠からず日本にもその薬が入って来るのではないかと思います」と谷岡さん。さらにレット症候群の根本治療としての遺伝子治療にも進展があるとします。
谷岡さんはホームページなどでレット症候群の活動を紹介し、同NPO法人「レット症候群支援機構」に携わる患者は少しずつ増えました。「日本の企業が海外の製薬企業と業務契約を締結しました。今まで、遺伝子治療のジャンルに積極的に行って来たのは海外の企業ばかりで、日本の企業が参入したことで、大きく日本のレット症候群の治療法が転換するのではないか?と考えています」
そんな中、レット症候群の治療法や薬の開発のバックアップ体制を整えることが患者家族会としての役割だと考えると谷岡さんは、「家族会としてのネットワークを生かし、レット症候群の根本的な前進をサポートしたい」と述べます。
「一日でも早期のレット症候群の治療法の確立には、まずは全国に散らばっている患者が1つにまとまることが大事」と、同NPO法人「レット症候群支援機構」が舵を取り、アプリの制作を始めました。開発会社を探して約1年を費やし完成させ、2021年10月には、レット症候群の患者家族専用アプリ【レッコミ】をリリースさせました。
【レッコミ】で居住地や症状を登録すると、ペンネームでやりとりが可能です。日本各地に20歳以下で1000~1500人いると想定されるレット症候群の患者家族の中で、同じ症状を抱える患者家族同士が結び付き、掲示板で悩みや疑問、不安の相談も可能なほか、マップから同じ都道府県に住む人に質問もできて、症状や治療、地域などに関連する情報交換ができる居場所となっています。
その上で、製薬企業や研究者がレット症候群の患者家族の状況を把握するためのアンケートのお願いや、治験のリクルートの発信も積極的に取り入れたいと考えています。
「レット症候群の患者家族だと、どなたでも【レッコミ】に無料で登録が可能です。谷岡さんによると、同NPO法人「レット症候群支援機構」以外の患者会などを合算してもサポート団体との繋がりを持つ【レッコミ】の登録者の数は現在、300名を超えました。レット症候群の当事者や家族が何にどれ程苦しんでいるのか、【レッコミ】がより密接な情報を得られる方法があるとのポイントでは、治療薬や治療法の加速にも大きく貢献しています」と谷岡さんは語ります。
インターネットやSNSが発達し、レット症候群の症状や治療、生活に関わる情報が簡単に調べられる中でも、「レット症候群の当事者と患者家族が結び付きを維持する方法として【レッコミ】が活かされるのではないか」と期待を持ちます。
谷岡さんは「ホームページはどうしても一方的な情報提供に陥りがちとなります。スマホだと質問へのレスポンスも迅速です」と、スマホならではの双方向性が【レッコミ】登録者の増えたことにつながりました。
患者や患者家族同士の交流の活発化に併せ、レット症候群の治療法の確立に至るまでの研究が加速し、治験などの段階に入った時に、条件に適した参加者を探せないかと期待しています。「【レッコミ】の登録者が500人程度に集まれば、研究者も一目置き、相互に話し合いも可能なのでは」と言葉に力を込めます。
参考:1.5万人に一人、女の子の難病「レット症候群」と闘う父親 alterna(2023年)
紗帆さんがレット症候群と診断だと告げられてから経過した13年の年月を、「あっという間でした」と振り返った谷岡さん。
「NPO法人『レット症候群支援機構』を発足した当時は、『5年後を目処に製薬企業と締結して、10年後には治療薬が開発されるんじゃないか』と思っていましたが、なかなか難しいですね。気が付くと10年経過していました。ですが、今後10年で、治療法に関連する様々なことが活発化しそうな気がしています」
「今日までを振り返ると一瞬の出来事でしたが、2歳でレット症候群だと告げられるまでがとてもキツかったです。紗帆もきっと苦しい思いをしていた中で、レット症候群だと告げられたことで、進むべく方向性も固まりました」
「NPO法人『レット症候群支援機構』を発足して11年が経過し、患者家族、製薬企業、研究者…、団体としての役割ができてきたと実感していますし、これからは点と点を結んでいくこと。それが【レッコミ】が果たすべき役目だと思います。レット症候群の研究ジャンルへの助成も、これからもっとしたいと思っています」と説明しました。
父が感じること
この春高校生になる娘を「紗帆がこの世に僕たちの元に生まれてきてくれた、その意味を、生きている間に発見したい。それが僕のモチベーションとなっています。レット症候群を理解し、興味を少しでも持って頂けたらと思います。レット症候群のことを誰かに伝えてみる、ホームページを見てみる、どんな些細なことでも良いので、何か1つでも、アクションをして頂けると嬉しく感じます」と話していた谷岡さん。
よく「人が出会うのも縁があったから。縁が無かったら出会いたくても出会うことはない」とか、「その人がそれを罹患するのにも、何か意味があるのでは?」という話がありますよね。
私も特に20代で色々罹患して、その言葉に「意味があるなら、何でこんなに背負わせるの?」と悲しくもなります。でもそれが本当なら、私が障害や病気を罹患していなかったら、今の病院にも行っていないし、TANOSHIKAという素敵な職場にも出会えなかったんだろうなぁと思うと、色々罹患していることは苦しいけれど、全部が悪いわけではなかったと、今は前向きな気持ちも入れて、解釈しています。
私は難病ではありませんが、身体に病気や障害を持つ者としては、「娘を救いたい。助けたい。代わってあげたい」という気持ちが痛い程分かります。まだまだ情報が少ないレット症候群ですが、NPO法人「レット症候群支援機構」、【レッコミ】などを介して、研究など進んでいくことを私も望んでいますー。
参考サイト
noteでも書いています。よければ読んでください。
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