文化の盗用と「KIMONO」問題について

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 2019年6月、インスタグラムでのとある投稿が物議を醸し、大きな反対運動が巻き起こりました。

 原因となった投稿をしたのはアメリカの著名人であるキム・カーダシアン・ウェスト。彼女はインスタグラムの投稿で、「KIMONO」という補正下着のブランドを立ち上げることを発表しました。しかし、その名称に対して「文化の盗用だ」と批判が殺到したのです。

 さらにはキム・カーダシアンが「KIMONO」という名称とロゴに対して商標登録を出願したことからも反発が強まり、インターネットでは「#KimOhNo」のハッシュタグをつけた投稿や署名活動などが盛んに行われ、日本でも京都市がウェブサイト上でブランド名について再考を求めるメッセージを発信しました。

そもそも「文化の盗用」とは何か?

 今回の騒動で焦点となっているのは「文化の盗用」です。

 日本人にとっては聞きなれない単語ですが、文化の盗用は「Cultural appropriation」という言葉を訳したもので、「文化の剽窃」などとも訳されます。主に、「国・民族に根付いた固有の文化を、その文化を持たない国・民族の人が利用すること」を指した言葉です。

 文化の盗用が問題となった例として、2017年の「Vogue」の炎上が挙げられます。アメリカのファッション誌Vogueの特集内で、白人のモデルであるカーリー・クロスが芸者風の着物を着た写真が掲載されたことに多くの批判が集まり、これを受けてカーリー・クロス自身がTwitter上で謝罪する事態に至りました。この他にも、雑誌の表紙や広告などでモデルに異文化の装いをさせた写真が「文化の盗用」と批判を浴びる事例は少なくありません。

 文化の盗用で問題視されることが多い部分は、人種的なマジョリティによるマイノリティへの文化の搾取です。アメリカは「人種のるつぼ」と呼ばれるように数多くの民族・人種が暮らす国ですが、その歴史の背景にはネイティブ・アメリカンや黒人への人種差別がありました。

 白人至上主義に基づいた差別意識は今も残っており、人種的マジョリティである白人とマイノリティである黒人の間の格差は完全には解消されていないのが現状です。文化の盗用への批判には、マジョリティがマイノリティの文化をあたかも自分の所有物のように扱うことへの反発も込められているのかもしれません。

 しかし、他国の文化を使って利益を得る行為が搾取と見なされる一方で、「リスペクトがあれば問題ない」「行き過ぎた批判は文化の発展の妨げとなる」という声も見られ、文化の盗用に対しては意見が割れることもあるようです。

キム・カーダシアンの「KIMONO」の問題点は?

 では、キム・カーダシアンの新ブランド「KIMONO」は、一体どこが文化の盗用と見なされたのでしょうか。

 問題点は、「ブランド名にしたこと」「商標登録を出願したこと」のふたつです。キム・カーダシアンの発表した補正下着は日本の着物とはまるで関連性がなく、ただ名前を使っただけのように見られます。もしこれが着物を意識したデザインであったとしても批判は出ていたかもしれませんが、着物と無関係の商品を扱うブランドに「KIMONO」という名称を使う行為が文化へのリスペクトを欠いていると見られたのでしょう。

 それだけでなく、キム・カーダシアンは自身のブランドのものとして「KIMONO」という名称とロゴをアメリカで商標登録しようとしていました。この点に関して、他国の文化の名称を自分のものとし、それによって金銭を得るのはまさしく文化の盗用であるとの批判が続出しています。

 単にモデルに着物を着せたりするだけならば、おそらくはここまで問題が大きくなることはなかったでしょう。「着物」という名称を私物化するようなキム・カーダシアンの行動が、今回の騒動を生んだと言えます。

 キム・カーダシアンは現在ブランド名の変更を発表しており、発端となったインスタグラムの投稿も削除されています。しかし、なぜ自身のブランドを「KIMONO」と名付けようとしたのかについてはコメントされていません。キム・カーダシアンが本当に「着物」という文化を搾取しようと考えていたのかは不明ですが、一連の騒動で文化の盗用という概念とその脅威が広まったように思えます。

参考元:WWD JAPAN J-CASTニュース

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