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この度、聴覚障害者の情報を発信されている『キコニワ』様というWebメディアの方に、お話を伺うことができました。
『キコニワ』様は、聞こえない、盲ろうのライターを中心に発信するWEBメディアです。
聴覚障害や盲ろうにかかわるライフスタイル、イベントや聞こえない人が経営する事業などの情報を集め、記事や動画を発信しています。
『キコニワ』の名前に込められた想い
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聞こえない・聞こえづらい人、盲ろうにかかわる多くの記事(=彩り)をこのメディア(=庭)で発信し、障害あるなし関係なくだれでも集まり、その中で聞こえない・聞こえにくい人、盲ろう者の人生により良く豊かになれるようにという願いが込められています。
ライフスタイル、仕事、インタビュー、イベントなどで自分の人生に何かしらヒント、行動につなげていけたら嬉しいです。
画像・文章引用元:キコニワのこと – キコニワ
今回インタビューするのは、ライターの翼祈、どんはれと、編集長の島川です。
『キコニワ』様の言葉については、全て太字で記載しております。
『キコニワ』様について

翼祈:キコニワ様には、聴覚障害者のライターさんが多く在籍されていますが、どのように情報を集められていますか?
キコニワのライターには、聴覚障害者だけでなく、その周囲にいる聞こえる人もいます。最初は社内メンバーからスタートし、情報発信を行ってきました。昨年ライター募集を行い、今年も2回目の募集を実施し、多くの方にご応募いただきました。
翼祈:現地の写真が見出しに使われていることもありますが、実際に現地に取材に行くことが多いのでしょうか?
現地に足を運んで取材をしているライターが多くいます。
翼祈:キコニワ様のWebメディアとしての強みや良さは、どんな点にあるとお考えですか?
情報があふれる社会の中で、聞こえる人の視点から経験や工夫が語られることが多いですが、キコニワでは「聞こえない・聞こえにくい、盲ろう」という特性を、それぞれのライターがどう受け止め、どのように工夫しているか、そのひとりひとりのストーリーが発信されています。そうした発信によって、読者が新たな気づきや視点を届けられることが、キコニワの強みだと感じています。
どんはれ:ライターさんを定期的に募集していますが、どんな点を重視して採用されていますか?私は取材力が求められているような気がします。
取材力ももちろん大切ですが、それ以上に「人間性」を最も重視しています。聞こえる聞こえない、盲ろうに関係なく、人として対等でいられるかという点です。例えば、「かわいそうだから支えなければ」「聞こえないから無理だろう」といった無意識の押しつけになっていないか。困難なことがあっても、「こうすればできるかもしれない」と代替案を提示できるような姿勢を持っている方を求めています。
翼祈:キコニワ様で働く方にとって、キコニワとは、どんな存在になっていますか?
聞こえない聞こえにくい、盲ろうに関する情報は、さまざまな場所に点在しています。それらをキコニワで集めて発信することで、当事者にとっても情報が届きやすいプラットフォームになっていると感じています。
また、キコニワライターにとって、自分の経験や思いを発信できる場であり、同じような立場の方に届くことで「自分の発信が誰かの役に立っている」と感じられる、やりがいのある存在になっていると思います。
翼祈:小耳症など、耳の障害の記事がありましたが、今後耳の障害だけを取り扱った記事も増える予定はありますか?
耳の障害を取り扱った記事は、基本的にライターさんの判断に委ねていますが、今後さらに増えていくと思われます。障害について発信していくことは、聞こえる読者の理解を深めるためにも大切であり、新たな気づきにつながると考えています。
聴覚障害を扱う映画などのエンタメ作品や字幕などについて

翼祈:「ぼくが生きてる、ふたりの世界」など、数年前より、手話を取り入れたエンタメも増え、賞を獲るなど、高く評価されている作品が、増えました。
手話が1つのエンタメのエッセンスになっていることは、聴覚障害者として、どう思われますか?
とても嬉しいことだと思います。手話を言語としてエンタメに取り入れることは、ひとつの選択肢として楽しみ方の幅が広がったと感じています。今後もこうした作品が増えていくことを期待しています。
翼祈:バリアフリー日本語字幕の映画も以前よりかなり増えました。実際に字幕があるのと無いのとでは、映画の没入感などは、違いますか?
聴覚障害者といっても感じ方は人それぞれですが、字幕があることで、内容が理解しやすくなり、映像の迫力や感情がより伝わってくるため、映画を楽しめる機会が広がるのは確かだと思います。ただ、「字幕が本当に増えたか」という点では、見たい映画に字幕がなかったり、限られた期間のみの上映であったりと、まだ課題も多く感じます。
翼祈:オーディオディスクリプションに関する記事を読んで、非常に興味を持ちました。
まだなかなかこういう取り組みは少ないと思いますが、今後オーディオディスクリプションが一般的になるためには、どんな取り組みが必要だと思いますか?
キコニワでは、「こういうことがあるんだ」「知ってよかった」と思えるような「知るきっかけ」を大切にしています。現在取り組んでいる方々が、発信し続けられるようにできるかぎりのサポートをしていきたいと考えています。
翼祈:2025年5月にハリーポッターの舞台が、手話通訳付き公演を行い、メディアに広く取り上げられました。舞台鑑賞も、このような配慮があれば、聴覚障害があっても、楽しめるエンタメになっていくと思いますか?
「機会均等」という言葉があるように、聞こえる・聞こえないに関係なく、誰でも楽しむ権利があります。そういう意味でも、手話通訳付きの公演が当たり前になっていく社会を心から願っています。
翼祈:2025年2月に、忍足亜希子さんが、第98回キネマ旬報ベスト・テンで、2025年6月に、第34回日本映画批評家大賞で、助演女優賞を受賞しました。障害当事者がその障害の役を演じる様に、日本も変わるためには、キコニワ様は何が必要だと思いますか?
ろう者が俳優として出演し、素晴らしい賞を受賞されたことは、当事者にとっても、子どもたちにとっても大きな希望になったと思います。こうしたことをこれからも継続的に発信していくことが大切だと考えています。
聴覚障害者を取り巻く環境や、取り組みについて

翼祈:私は左耳が、感音性難聴で、原因は内耳水腫かもしれないと言われました。イヤフォン難聴や突発性難聴も増える中で、そういう人を減らすために、聴覚障害者の私たちは、どうしたら良いと思われますか?
感じ方は人それぞれなので一概には言えませんが、突然の聞こえにくさに悩む方が増えている背景には、社会側の無理解や偏見が影響している面もあると思います。そうしたバリアを取り除いていくためにも、キコニワを通して継続的に発信していくことが重要だと考えています。
翼祈:昔、私はアルバイトに行こうとした時、「聴覚障害があるから、接客には雇えない」と言われました。
キコニワ様で仕事をされている方で、接客業のアルバイトをされている方がいますが、聴覚障害があっても採用されたのは、どんな背景があったのでしょうか?
人によって異なりますが、出会う人や環境の影響も大きいと思います。その中で、自分自身のことや代替手段についてきちんと説明し、その中で、工夫を重ねている姿勢があったのではないかと感じました。
翼祈:補聴器を使うことで生活をすることにハリが生まれますが、最近は高機能で高額なものが多く販売されています。失敗しない補聴器を選ぶコツはありますか?
補聴器の選び方は人によって本当にさまざまで、高機能なものでも合わずに使わなくなる方もいれば、「自分には合っている」と感じる方もいます。補聴器販売店では、お試しできる機種もあるそうなので、実際に使ってみるのも一つの方法ですね。また、まわりの経験談を参考にするのも良いかもしれません。
翼祈:手話カフェなどの聴覚障害に関するコンセプトカフェの浸透は、今後聴覚障害者の生活に、どんな影響を与えると感じますか?
聴覚障害者の存在や、手話という言語の存在を知り、理解を深めるきっかけになると思います。また、手話を学んでいる聞こえる人はもちろん、そうでない聞こえる人にも興味を持ってもらえるきっかけになり、日常生活の中で「手話がある」「聞こえない人」がいることへの気づきにつながるのではないかと感じます。
翼祈:2022年頃から、コンビニでも耳マークなど、障害を表すマークが、昔より広く使われるようになりましたが、耳マークがある方が、コミュニケーションは取りやすいと感じられますか?
コミュニケーションの手段が広がったという点で、とても良いことだと思います。
翼祈:電話リレーサービスなど、聴覚障害があっても話せるサービスの登場について、どのように感じられていますか?
コンビニでのやりとりと同様に、聞こえる人が電話かメールかを選べるように、聞こえない・聞こえにくい人にもいくつかの選択肢ができたことは、生活の質の向上につながっていると感じます。
翼祈:近年、Land Heyという姉妹が手話を解説した動画を発信したり、理解を広めようとする当事者の動きもありますが、キコニワ様の体感では、障害者と健常者は、少しずつ交わることができていると感じますか?それとも、まだ足りないと思いますか?
キコニワで大切にしているのは、聞こえない・聞こえにくい人、盲ろうの人、聞こえる人、それぞれに見えにくい障害や生きづらさがあることを前提に考えることです。そうした困難が、社会の無理解によって、より大きな差として現れている面もあるため、交わりが進んでいる部分もあれば、まだ足りない部分もあると感じます。だからこそ、しっかりと「根」を張り、できていることは広げ、足りないことには理解を促すよう発信していけたらと思っています。
翼祈:災害で、音が聞こえず巻き込まれたり、地方特有の手話を解説できる手話通訳士がおらず、大変だったという話を聞きました。障害があっても、誰一人取り残さない社会にするためには、何が必要だと思いますか?
キコニワを通じて発信し続けることで、公的機関などに関わる読者の方々が「大切な取り組みだな」「参考になる」「自分もやってみよう」と思えるようなアクションにつながることを目指しています。
どんはれ:障がいがある人同士がつながることや、障がい者が情報を発信することで世界はどのように変わると思いますか?
「自分だけじゃない」と感じられることや、「こんな工夫がある」と知ることで、自分自身のアイデンティティーが確立され、心が孤立しない社会に近づくのではないかと思います。そうした世界になることを願っています。
終わりに

翼祈:キコニワ様が今後叶えたい夢や、将来の展望を教えて下さい。
聞こえない・聞こえにくいというマイノリティにいる方の中には、手話やろうコミュニティを通じて、自分なりのアイデンティティーを確立する方もいれば、そうでない方もいらっしゃいます。そうした方々にも目を向け、広く発信していきたいと考えています。
また、盲ろうの方もいらっしゃいますが、まだ環境整備が十分ではなく、理解されにくい現状があります。だからこそ、キコニワを通じて、「知る」きっかけを届け、もしも日常の中で出会ったときに、「あ、キコニワで見たことがある」と思い出して、何かしらのアクションにつながれば嬉しいです。
翼祈:この記事で初めてキコニワさん達というWebメディアの存在を知った方もいます。
AKARIの読者の皆さんに向けて、メッセージをお願い致します。
キコニワでは、聞こえない・聞こえにくい、盲ろうのライターたちが、経験談やライフスタイル、知見など、さまざまな情報を発信しています。
「こんな工夫があるんだ」「こんな生き方があるんだ」「やってみようかな」などそんなふうに思っていただけるような、皆さんにとって心強い存在でありたいと願っています。ぜひ一度、キコニワをご覧になってみてください。
関連情報▶︎『キコニワ』様のHPや各種SNS情報
Instagram https://www.instagram.com/kikoniwa?igsh=c3MzejNpNnhrY2dv

インタビューを終えた感想

翼祈
この度は、インタビューに回答して下さり、ありがとうございます。
キコニワ様で掲載されている記事は、聴覚障害の記事でも、実際に取材に行き、撮影されて、それを見出しの画像などに使えることが、Webメディアとしての強みだと感じています。
私もAKARIに書いた、手話駐在所も実際の写真で、「凄い!」と思いました。
弊社では地域的な問題もあって、インタビューなどもオンラインでしかできず、実際に現地に行くにも、足がないので、物理的に取材できるエリアが、かなり限定的になってしまいます。
そんな中、キコニワ様という、取材にも行って、記事も書けるライターさんもいる、ただ、場所的に恵まれているだけではなく、行動力も凄いと思います。
私も将来取材して、自分で記事を書くライターが夢です。
同じ聴覚障害者として、キコニワ様にお話を伺えたことは、刺激やパワーを頂きました。
今回の経験が、私もいつか、現地にも行って、取材できるキコニワ様に近付けるよう、これからも精進します。
本日は、インタビューを受けて下さり、本当にありがとうございました‼︎
どんはれ
本日はインタビューに回答してくださってありがとうございます。
私は勉強不足で耳が聞こえない方々の活躍を知らないことが多くて、忍足亜希子さんを初めとする俳優さんの存在や、オーディオディスクリプションなどの取り組みなど今まで知らなかったことを知ることができてよかったと思います。
私は聞こえる側ですが、聞こえない側の人たちの思いや、先人が培われてきた文化などを知るメディアとしてキコニワさんは最適なメディアではないかと思います。
聞こえる側、聞こえない側、両方がなにができるのかを歩み寄り、化学反応を起こして相互の理解が広がれば、誰一人取りこぼしのない世界が実現できるのではないかと思います。
私も新たな世界が広がりました。
今後のご活躍を期待しております
島川
キコニワ様のメディアを拝見しましたが、とても洗練されたサイトで、非常に刺激を受けました。多様なバックボーンを持つライターさんが自分の角度から記事を書かれている点も共通点があって、シンパシーを感じました。
AKARIのライターさんにも片耳難聴や聴覚障害の方もいて、今後弊社を卒業しても発信活動をしていきたいと思っている方もいるので、今回お話を聞かせていただいて、光栄でした。そうした方の目標とするメディアとして、今後も活動を追っていければと思います。
今回は素晴らしい出会いをいただき、ありがとうございました。

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