この記事は約 4 分で読むことができます。
本当の愛国心とは?
現在、サッカーのロシア・ワールドカップが開かれ、日本でも大いに盛り上がっています。テレビ各局も毎日のように試合を放送していますが、そんな中、ひとつ注目を集めているのが、映画『君の名は。」の主題歌で有名なRADWIMPSが6月6日にリリースした「HINOMARU」という楽曲です。
「HINOMARU」はフジテレビ系のサッカー番組の主題歌「カタルシスト」のカップリング曲で、曲中には、「風にたなびくあの旗に 古よりはためく旗に意味もはく懐かしくなり こみ上げるこの気持ちはなにか」という問いかけがあり、「受け継がれた歴史」や「気高きこの御国の御霊」、「日出づる国の御名のもとに」という歌詞が登場しました。そしてこの曲をめぐって「国歌にしてほしい」あるいは「軍歌のようだ」と賛否の声が上がりました。
RADWIMPSだけではありません。2人組のミュージシャン「ゆず」は4月4日にリリースしたアルバム「BIG YELL」の収録曲「ガイコクジンノトモダチ」の中で、「なのに 国歌はこっそり唄わなくっちゃね」「TVじゃ深刻そうに 右だの左だのって だけど 君と見た靖国の桜はキレイでした」と唄いました。
また椎名林檎は、4年前の2014年サッカーワールドカップのNHK中継のテーマソング「NIPPON」の中で、「この地球上で いちばん 混じり気の無い気高い青」「our native home」「我らの祖国」と唄いあげました。このように、2020年に東京オリンピック・パラリンピックを控えた中、特に愛国心を歌い上げた曲が続々と登場したことで物議を醸し出しました。
ところで、愛国心とはなんなのでしょうか。
たとえばイギリスの文学者サミュエル・ジョンソンは「愛国心は卑怯者の最後の逃げ口上」と発言しました。
また、2006年に、第一次安倍内閣において教育基本法が改正さえ、「教育の目標」として「伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛する」と明記されましたが、同時に「他国を尊重し、国際社会の平和と発展に寄与する態度を養うこと」と書かれました。
つまり、自国の歴史と文化を尊重するだけでは不十分で、同時に他国の歴史と文化も尊重しなければならないのです。
私は、愛国心について次のように考えます。
第一に、愛国心の歴史は新しく、愛国心とは近代になって国民国家(国家内部の全住民をひとつのまとまった構成員=国民として成り立つ国家)が成立するようになって生まれた概念であり、極めて近代的な産物である学校教育、国語、国歌、国旗、そしてさまざまなメディアによって想起されるもの。
第二に、愛国心は、抵抗権・革命権(人民により信託された政府による権力の不当な行使に対して人民が抵抗する権利)も含むものだと思うのです。
実際に「戦う民主主義」を標榜するドイツの憲法では、「すべてのドイツ人は、この秩序を除去しようと企てる何人に対しても、ほかの救済手段が存在しないときは、抵抗権を有する」と規定されています。アメリカの独立宣言の中でも、革命権に関する規定が盛り込まれています。
自分の国を愛することは大切だと思います。それと同時に、自分の国を軽蔑し、憂い、ときには政府に抵抗したり、「変革しよう」と思うことも大事です。それが本当の愛国心です。ただ「国歌を歌え」とか「国旗に忠誠を捧げよ」と命令するだけなら、それは陳腐な愛国心に過ぎないと、私は思うのです。
コメントを残す