この記事は約 8 分で読むことができます。
はじめに
毎年、9月は「障がい者雇用支援月間」となっており、この月間は、事業主だけでなく、広く国民に対して障がい者雇用の関心と理解を深め、障がい者の職業的自立を支援することを目的としています。
厚生労働省や独立行政法人高齢・障がい・求職者雇用支援機構などの関係機関が協力して、様々な啓発活動を行っています。
今回は、「法定雇用率の引き上げまで1年を切った中で、株式会社マイナビパートナーズ様の主催セミナー「法定雇用率引き上げに伴う、中小企業の新たな課題『0.2%の壁』」へ参加してきました!
第一部では、株式会社マイナビパートナーズ 代表取締役 社長執行役員の藤本 雄様より、
- 法定雇用率とは何か
- 障がい者雇用市場で起きていること
- 中小企業が直面する壁
- 「戦力としての障がい者雇用」とは
これらを軸とした講演が行われました。
第二部では、戦力としての障がい者雇用を実施する東京都ビジネスサービス株式会社 代表取締役社長の根津さま、支援機関の立場から株式会社LITALICOパートナーズの服部様、そして当事者の方の3名の登壇者から、障がい者雇用について、様々なお話を聞くことができました。
それでいいのか?法定雇用率
今回のセミナーで大きく取り上げられたのが、法定雇用率についてです。
年々引き上げられている法定雇用率ですが、今後も段階的に引き上げられる予定です。
民間企業の法定雇用率は、2026年7月から2.7%に引き上げられることが決まっています。
それに伴い、雇用義務の対象となる事業主の範囲も、従業員37.5人以上に広がります。
一部の業種で設定されている「除外率」についても、2025年4月から一律に10ポイント引き下げられる予定です。
ただ、法定雇用率をあげることが障がい者への雇用への一歩となるかは、疑問が残ります。
雇用率も上がっていますが、離職率が高いことも現実だからです。
障がい者雇用における高い離職率は、うつ病や双極性障がいなど、ご自身の病気や特性への理解が不足している当事者と、適切なサポート方法や経験がない企業との間のミスマッチが大きな要因です。
セミナーでは精神障がい者の就職一年後の定着率が49.3%と、5割を切っていること、また、65歳未満の障がい者の人口動向を見ると、身体障がい者よりも、精神障がい者の方が人口としても増加しているというお話もあり、今後ますます精神障がいの方への定着へ向けたサポートや理解を深めることは企業の課題となることが予想されます。
また、法定雇用率を達成するために本業とは関係のない業務を作って数合わせの障がい者雇用が行われている実態について、セミナーでも特に問題視されていました。
そうした実態の背景として、企業側に受け入れの準備ができておらず、雇用義務を果たさないといけない中で、障がい者雇用を「負担」としてしか捉えることができない企業が多くなっていることが指摘されていました。
中小企業における、理想的な障がい者雇用の形としては、以下のように示していました。
①雇用義務が発生する前に準備を始める
②「欲しい人物像」「任せる仕事」「活躍してもらうイメージ」をはっきりさせ、まずはハローワークやA型の就労支援施設など、コストのかからない採用方法で雇用する
③試行錯誤しながら、活躍する障がいのある社員を生み出す
④「戦力としての障がい者雇用」を実現し、人手不足解消につなげる
特に中小企業においては、社員数が増えて、雇用義務が発生する前に準備を進めておかないと、つまづいてから立て直すことが大変ということも実感を持ってお話しされていました。

採用企業×支援機関×当事者のクロストーク
第二部では、4つの議題があり、それぞれ詳細に説明したいのですが長くなるので、簡潔にお話をしていきたいと思います。
テーマ① 職場で障がい者が活躍するには?
障がい者が会社で活躍できるようにするには、企業が考え方を変え、具体的な仕組みを作ることが大切です。
・無意識の偏見をなくすこと。「障がいがあるからこの仕事は無理」という思い込みをやめ、一人ひとりの個性を見て、その人に合った仕事を任せることが大事だということ。
・個人の得意なことや希望を知ること。当事者が、どんな仕事がしたいか、何が得意かを社員一人ひとりに聞いて、それを記録し、仕事に活かす。
・失敗を恐れない環境を作ること。新しい仕事に挑戦する中で、ミスをしても大丈夫なように、会社全体でサポートし、一緒に解決策を探すことが大切だということ。
テーマ② 障がい者雇用を会社の強みに
法律で決められた障がい者の雇用率を、ただの「数合わせ」で終わらせず、会社の力に変えていく。
・会社の成長につなげること。障がいのある社員は、事業を支える大切な戦力です。彼らの能力を活かせば、会社の業績を上げたり、新しい仕事を生み出したりできます。
・働きやすい会社になること。障がい者を受け入れるために、仕事のやり方やルールを見直すと、結果として、会社全体が働きやすくなり、みんなが辞めずに長く働けるようになります。
テーマ③ 課題をどうやって乗り越えるか
障がい者雇用で困ったことが起きたとき、当事者、企業、支援機関が協力して解決することが重要です。
・企業でできる工夫としては、トラブルが起きたらすぐに報告し、再発しないようにルールを決めます。また、誰もやったことのない新しい仕事に挑戦してもらうことで、本人の成長にもつなげることができます。
・心理的な安心感を作ること。社員がミスを恐れず相談できるような、安心できる人間関係を作ることが大切です。「できていないこと」を指摘するのではなく、「できていること」を褒めることから始めます。
・当事者の心構えとして、自分の障がいの特性を理解し、それをうまくコントロールすることが重要です。困ったときは、遠慮せずに助けを求めることも大切です。
テーマ④ 中小企業の役割と可能性
・これから障がい者雇用を始める中小企業には、大きな可能性があります。
・みんなで協力すること。障がい者雇用に取り組む会社同士が、お互いに情報交換をしたり、助け合ったりすることで、より良い取り組みができます。
・外部の力を借りるのも大切。会社だけで抱え込まず、専門の支援機関に相談し、サポートしてもらいます。
・多様な人材を活かす。障がい者雇用は、女性や高齢者、外国籍の人など、あらゆる人が活躍できる会社を作るための第一歩です。これからの時代、こうした多様な人材を活かすことが、会社の大きな強みになります。

わたしが感じること
テーマに沿ってのお話を伺っていると、やはり当事者としては、会社にどれくらい自身の配慮事項や特性を理解してもらうかが鍵となることがわかりました。
障がいのとらえ方もそうですが、自分自身のことを深く知ることで、企業とのミスマッチを減らすことができますし、例えミスマッチが起こったときも、支援してくれる支援機関と繋がっていれば、安心して仕事をすることができます。
さいごに
障がい者雇用は、一部の人材だけを対象にした特別な取り組みではありません。
性別や年齢、国籍の壁を越え、誰もがその能力を発揮できる会社を目指すための「最初の一歩」です。
多様な人材が互いに協力し、企業が外部の支援も活用しながら、働く環境全体をより良くしていく。これからの時代、障がいのある人もない人も共に活躍する、そんな社会を築くために、私たち一人ひとりができることを考え、行動に移していくことが大切だと思います。
関連記事
noteはじめました。こちらもどうぞ
おすすめ記事の紹介
コメントを残す