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こんにちは、翼祈(たすき)です。
私は去年の4月に子どもの原因不明の小児肝炎の記事を書いて、それが5月に載りました。その後続報がなく、今年に入ってアデノウイルスが原因でなるプール熱の記事を書いた時にも何もなく、「収束したのかな?」と思っていました。
しかし、それから数日後続報が入り、「原因不明の小児肝炎の原因は、【アデノ随伴ウイルス】の可能性が非常に高い」とのことでした。
確かに私が書いた記事でも「アデノウイルスでは?」とお伝えしていましたが、この随伴ウイルスは通常では悪さをしないウイルスで、ニュースでは「他のウイルスにも感染した結果、【アデノ随伴ウイルス】にも感染したかもしれない」との話でした。
今回は去年書いた原因不明の小児肝炎の続報について、発信します。
原因不明の小児肝炎の原因は、【アデノ随伴ウイルス】の可能性が高い⁉︎との研究が明らかとなる
原因不明の子どもの急性肝炎は、相次いでヨーロッパとアメリカをメーンに2022年4月から報告がありました。
WHOの2022年7月8日現在の報告によりますと、急性肝炎の症状が現れたと報告されているのはアメリカやイギリスをメーンに35ヵ国の1010人超となり、5%程度の46人が肝臓の移植が必要で、2%程度の22人が亡くなりました。
そして、日本でも2023年2月16日までに子ども1人が亡くなっていたことが、国立感染症研究所の発表で明らかとなりました。
日本で亡くなった人が報告されるのは初のケースです。国立感染症研究所は、亡くなった子どもに関連する性別や年齢などは明らかとしていません。
国立感染症研究所によりますと、2023年3月までに、日本では原因不明の急性肝炎は162件報告され、ICUに入室するなどより高度な治療を受けたケースは18件、肝臓の移植が必要だったケースは3件に上りました。
症状は、37度5分以上の発熱以外にも、下痢や腹痛、嘔吐という消化器の症状が多く見受けられました。
それ以外にも、咳、皮膚などが黄色になる「おうだん」、意識障害、便が白色になる症状もありました。
日本での患者の年齢は1歳4ヵ月から9歳2ヵ月で、中央値では4歳6ヵ月でした。
◉男女差
男の子 |
女の子 |
|
性差 |
54% |
46% |
◉基礎疾患の有る無しによる割合
有り |
無し |
|
割合 |
25% |
75% |
国立国際医療研究センターのWEBサイトによりますと、肝炎の種類によっては、1%から2%程度の患者で急激に悪化し、亡くなるケースもあります。
子どもの肝臓病に詳しい、勇村医院の医師の男性によりますと、子どもでも、「お腹のかぜ」の時に肝機能が低下し、肝炎を発症するといいます。ですが、特に赤ちゃんではほとんど肝炎の症状が出ないケースもあります。
肝炎の原因が鮮明ではない時には、ビタミンを投与する対症療法を行い、大半は短期間で回復し、一般的に、悪化する事例は限定的ですが、「おうだん」が悪化すると脳への障害を発症し、肝機能が著しく低下した場合、出血を止めるたんぱく質を合成できず、ごくまれに肝臓の移植が必要です。
通常、急性肝炎はA型からE型まで5タイプある肝炎ウイルスが素因で発症します。それ以外にも、薬物の摂取で発症する肝炎やアルコール肝炎もあります。
ですが、WHOの専門家によりますと、急性肝炎になった子ども達から、肝炎のウイルスや毒物、細菌、薬物など、一般的に、素因であると想定される原因は発見されていません。
このことを受けて、「原因不明の急性肝炎」としてWHOは世界中の保健当局に注意を促しました。
WHOからの連絡を受けて厚生労働省は全国の自治体へ、2021年10月まで遡り、血液検査で肝臓の酵素の値が上がっていた16歳までの子どもがいるか否かを調査し、報告する様に催促しました。
その上で、子どもの肝臓病に詳しい専門医などで構成された「日本小児肝臓研究会」も調査チームを発足し、原因不明の小児肝炎の詳細な症状や原因を調査しています。
原因不明の肝炎が報告されて1年が経過しましたが、未だに全容は分かっていません。
◉下痢や喉の痛みなどを発症する割合(WHO調べ)
アデノウイルス |
その他 |
合計 |
|
ヨーロッパ |
193人(52%) |
175人(48%) |
368人 |
日本 |
16人(10.6%) |
135人(89.4%) |
151人 |
全容が分からない中で、注目すべき研究データが発表されています。2023年3月30日、イギリスなど2ヵ国の研究チームによる、個別に新しい分析データがイギリスの科学雑誌[ネイチャー]に掲載されました。
どの研究データでも、大半の患者から「アデノウイルス」と関連が疑われる【アデノ随伴ウイルス】が検出されました。
◉アデノ随伴ウイルスが占める割合の研究グループ毎の結果
アデノ随伴ウイルス |
その他 |
合計 |
|
アメリカ・カリフォルニア大学など |
13人 |
1人 |
14人 |
イギリス・グラスゴー大学などの |
26人 |
6人 |
32人 |
イギリスのユニバーシティー・カレッジ・ロンドンなど |
27人 |
1人 |
28人 |
さらに、ユニバーシティー・カレッジ・ロンドンなどの研究グループは、【アデノ随伴ウイルス】が身体の中で増加するのを手助けする別のウイルスも検出しました。
どの研究グループの研究データでも、健康な子どもや、肝炎とは関係を持たない病気の子どもも同時に分析しましたが、これらの子ども達からは【アデノ随伴ウイルス】はほぼ検出されませんでした。
これまで、【アデノ随伴ウイルス】は、重い病気を発症させることはないと言われて来ましたが、カリフォルニア大学などの研究グループは「複数のウイルスに同時に感染することが、原因不明の急性肝炎に影響を及ぼしている恐れがある」と危惧しています。
参考:「原因不明」子どもの急性肝炎 症状は 最新の分析結果は NHK NEWS WEB(2023年)
日本小児肝臓研究会の運営委員長で、近畿大学奈良病院小児科の教授の男性は、原因不明の小児肝炎で亡くなった例が報告されたことに関して「これまでにも、急性肝炎で肝移植が必要だった子どもは毎年約10人から15人いて、亡くなる事例もありました。まだ全容が明らかではないことは多いですが、今回のケースだけで何か新しい病気が現れたとか、怖い状況に陥っているということではありません。親御さんも、この情報だけで過剰に心配する必要はないと思われます」と説明しています。
そして、原因不明の小児肝炎が【アデノ随伴ウイルス】との関連性が指摘されていることに関しては、「【アデノ随伴ウイルス】自体は強い病原性であるわけではなく、【アデノ随伴ウイルス】が直接の原因という単純な話ではないのではないかと思いますが、もっと研究データの分析が待たれる現状です。日本でも【アデノ随伴ウイルス】に注目した研究データや分析を加速させていて、研究データの分析結果を待ちたいと思います」と述べました。
埼玉県立小児医療センター医師の男性は「原因不明の小児肝炎の原因は特定されていませんが、仮説で【アデノ随伴ウイルス】が関係していても、従来から日本に存在するウイルスだということもあり、新型コロナウイルスの様に海外から日本へ侵入し、原因不明の小児肝炎が感染拡大することには起こらないだろう」と話し、「どういうウイルスかは関わらず、うがいや手洗いなどの基本的な対策は継続すべきがまず第一の方法です。また、肝炎では発熱、食欲不振、倦怠感、腹痛などの症状がありますが、さらにおうだんの症状が起こっていれば速やかに病院に行って下さい」と語ります。
新型コロナウイルスの関連性の疑いも
新型コロナウイルスとの関連性に関して、グラスゴー大学などの研究グループは、分析を行った地域で新型コロナウイルスに感染していた原因不明の小児肝炎を発症した子どもの割合は、地域全体での子どもの感染割合よりも低い水準で、新型コロナウイルスと原因不明の小児肝炎に直接的な関連性はないと思われます。
専門家は「原因不明の小児肝炎以外でも、どんなウイルスが検出されたかといえば、比較的多くなったのは、腸などに感染症を発症させる『アデノウイルス』と、新型コロナウイルスでした。最新の分析データでは、どちらの感染症にもおよそ1割の患者から検出されました」と言い、「2022年に取材した、アメリカの女の子(当時4歳)には、おうだんの症状が起こっていました。目が黄色になり、オレンジ色の尿も出ていました。病院で女の子は、原因不明の小児肝炎だと診断を受けました。女の子のケースは、肝臓を移植する手術をしなくてはならない状況にまでに至り、その後回復しました。女の子は新型コロナウイルス抗体検査で陽性でした。女の子の経過を観察した主治医は『新型コロナウイルスとの因果関係は否定できない』」と述べました。
国立感染症研究所の集計でも日本では、原因不明の小児肝炎患者の中で新型コロナウイルスに感染したことがあったのは15%、新型コロナウイルスのワクチンを接種していたのは17%でした。
1年ぶりに原因不明の小児肝炎の続報を書きましたが、真相に迫りそうで、まだ確証ではないことにもどかしさを感じました。1年経てば解決するのでは?と去年期待を込めて書きましたが、感染症っていうのは解明することが凄く難しいんだな…と改めて気付かされました。全貌が明らかとなるまで、まだまだ時間が必要となりそうですね。それまでに罹患する子ども達が出ないことを願うしかできません。
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noteでも書いています。よければ読んでください。
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