中央省庁障がい者雇用水増し問題を考える インクルーシブな社会の実現のために

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1.障がい者雇用水増し問題

 今年8月、中央省庁が職員に占める障がい者の割合を計算する際、本来は対象外の人を加え、法律で定められた雇用率を達成しているように見せ掛けていた問題が発覚しました。

 弁護士らによる検証委員会の結果、国の指針に反する不適切計上が昨年6月時点で28機関の3700人に達し、退職者や死者を加えるなど恣意的なケースもあったといいます。

 政府は10月、厚生労働省の行政機関に対するチェック機能強化などの再発防止策と、今後複数年で約4000人の障がい者を採用する計画をまとめました。

2.何のための雇用率制度か

 日本では1960年に身体障がいのある人を対象とした「身体障害者雇用促進法」が制定され、その際に雇用率が義務付けられました。その後、1987年にはその対象がすべての種類の障がい者に拡大され、名称が「障害者雇用促進法」に変更されています。

 現在では民間機関は2.2%、国の機関は2.5%の雇用が義務付けられています。さらに今後、それぞれ2.3%、2.6%と引き上げられる予定です。

 このように障がい者雇用に関わる制度が整備された背景には、「障がい者の権利」に関する動きが背景にあります。

 国連はこれまで一貫して障がい者の「完全参加と平等」を謳い、各種宣言や条約が採択されてきました。

 近年では日本も批准した「障害者の権利の関する条約」の第27条の「労働及び雇用」という条文に、「障害者に対して解放され、障害者を包容し、及び障害者にとって利用しやすい労働市場及び労働環境において、障害者が自由に選択し、又は承諾する労働によって生計を立てる機会を有する権利」との記述があります。

3.雇用水増しの背景

 さて、雇用水増しの背景には何はあるのでしょうか。

 例えば、企業には特例子会社という受け皿があります。障がい者の雇用の促進及び安定を図るため、事業主が障がい者の雇用に特別の配慮をした子会社を設立し、一定の要件を満たす場合には、特例としてその子会社に雇用されている労働者を親会社に雇用されているものとみなして、実雇用率を算定できる制度です。

 その受け皿のなかでなんとか仕事を作りだし、収益には見合わなくても雇用率を満たそうと努力する企業もあれば、一方で障がい者を雇用せずに障害者雇用納付金といわれる、罰則金のようなものを一人当たり月額5万円払ってもいたりします。

 しかし、中央省庁には特例子会社という制度はありませんし、さらに近年にはアウトソーシングをしなければならないという動きのなかで仕事がスリム化され、障がい者向けの仕事は減り続けているのす。

4.障がい者手帳制度に縛られるのではなく

 一方で、障がい者手帳に縛られる必要なないとの意見もあります。例えば自分自身が“うつ”になって障がい者手帳を取得することができるようになったとき、手帳を取りたくないと言うこともできます。手帳を取ることは本人次第なので、取らなくてもよいのです。しかし、現状は、それでは障がい者雇用数にはカウントされません。

 ですが、フランス、ドイツには障がいを証明する証明書の仕組みがありますが、とくに手帳制度にしばられているのは主要国では日本と韓国だけという指摘もあります。基本的には、医師の診断が基本にとなっているのです。

5.インクルーシブな社会を目指して

 「雇用率の達成」は最終目標ではありません。本来の目的は、多様な人を内包・包摂する(インクルーシブ)な職場環境や社会を作り、障がいのある人もない人同様に働く機会を得ることで、障がいのある人の働く権利を守ることにあります。

 障がいのある人が働きやすい環境は、障がいのない人にとっても働きやすい環境でもありますから、この「インクルーシブ」というキーワードは大変重要なのです。

 参考

政治山(2018)「障害者雇用の水増しはなぜ起きたのか?雇用率や手帳に縛られない制度作りを」<https://seijiyama.jp/article/news/nws20181011.html>(2018年12月20日アクセス)

東京新聞(2018)「障害者4000人雇用 19年は困難 政府、計画2か月で修正検討」<http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201812/CK2018121302000160.html>(2018年12月20日アクセス)

野口晃菜(2018)SYNODOS「「働く上での障害:」をなくしインクルーシブな職場づくりを<https://synodos.jp/society/22331>(2018年12月20日アクセス)

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