アップル、アマゾン、グーグル、フェイスブックの現在と未来

アップル、アマゾン、グーグル、フェイスブック

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1.アップル、アマゾン、グーグル、フェイスブック

 私たちが普段からよく耳にする、あるいはそのサービスを使わないことはない、アップル、アマゾン、グーグル、フェイスブックの4つの企業。

 アップルは人々が日々持ち歩くスマートフォンを販売し、今や電話の領域を超えたものへと進化させました。アマゾンは人々の生活にとって必要なモノを手軽に買えることことを日々追求しています。グーグルは世界中の情報を整理し、電子機器を使って誰もが無料でアクセスできるようにしてます。フェイスブックは一国の人口をはるかに超える膨大な数の人々にコミュニケーションの場を提供しています。

 これら4社のビジネスの業態や理念は異なりますが、しかし共通点もあるのです。それは決して他社にはまねできないコア(核)となる製品やサービスを持っていること、そして一見、本業とは無関係とも思える分野に多額の投資を果敢に行い、次世代を見据えた研究開発をしている点です。

 4社は本業で得た巨額の資金を投じ、さまざまな企業を買収し、新技術を導入しています。また自社で一貫して開発や関連事業を行う垂直統合のスタイルも共通しています。時には投じた大金を無駄にし、あっさり事業撤退する時もありますが、それでも彼らはその挑戦をやめることはありません。

 それではアップル、アマゾン、グーグル、フェイスブックの巨大IT企業の立ち位置は現在どうなっていて、将来、何を見据えて事業を展開しているのでしょうか。

2.アップルの現在:業界全体のほぼすべてを稼ぐ

 市場調査会社が公表するスマートフォン市場のレポートでは、「メーカ別」の出荷台数を比較・分析している場合が多いです。そうしたレポートの近年の傾向は、サムスン電子が首位で、次いでアップル、そのあと中国勢が続いています。たとえば2017年4~6月期は、サムスンが7980万台で首位、アップルはその半分程度の4100万台。これに続くのがファーウェイで3850万台、シャオミは2120万台でした。

 しかし、メーカー別ではなく「機種」別の出荷台数を見ると、違った構図となります。たとえば2016年秋に発売された「iPhone 7」は、その翌年の1~3月期の機種別販売ランキングでトップになりました。

 「iPhone 7」のこの四半期におけるシェアは6.1%、これに次いだのがその上位モデルの「iPhone 7 Plus」でシェアは4.9%、そしてこのあとオウポの「R9s」(シェアは2.5%)、サムスンの「Galaxy J3(2016)」(シェアは1.7%)、「Galaxy J5(2016)」(シェアは1.4%)と続きます。この期間の世界トップ5のスマートフォンにiPhoneは2モデル入りました。その要因として、iPhoneの使いやすいデザイン、豊富な対応アプリ、大規模な販路などが挙げられています。

 さらに注目したいのが、iPhoneがもたらす「利益」です。アップルがiPhoneを販売したことで得た営業利益は、業界全体の91%を占めました。iPhoneの3か月における営業利益は約85億ドル(約9300億円)であるのに対し、スマートフォン業界全体の合計利益は約94億ドル(約1兆290億円)でした。

 アップル以外で利益が多かったのは、ファーウェイ、ビーボ、オイポでしたが、これら3社の中国のメーカーの3か月における営業利益は、いずれも約2億ドル(約219億円)程度で、アップルのわずか2%程度に過ぎませんでした。

3.アップルが描く未来:自動運転、医療・健康、AR(拡張現実)

 “秘密主義”で有名なアップルですが、「自動運転」、「医療・健康」、「AR(拡張現実)」の分野で研究開発を進めているとされています。

 アップルには「Titan(タイタン)」というプロジェクトがあり、自社でいちから自動車開発を行うのか、あるいは自動運転システム(ソフトウェア)の開発を行うのか、現在検討中だと言われています。たとえば、2017年4月にはアメリカカリフォルニア州で走行試験に関する許可を得ています。しかし、アップルはこの分野では後発の企業となっています。

 アップルが自動運転車と同様に力を入れて開発しているとされているのが、医療・健康分野の技術です。アップルには、故スティーブ・ジョブズ氏がCEO時代に着想した、生物医学の専門家で構成される秘密のチームがあり、そこで血糖値を測定するときに生体を傷つけない非侵襲的な方法による血糖値測定センサーの開発に着手しているとされます。

 これは、光を皮膚に浸透させ、血液内のグルコースレベルを、患者に痛みを与えるなく継続的に測るという技術です。糖尿病患者の中には毎日何度も血糖値を測定しなければならない人たちがいます。アップルが目指すこの開発が実現できれば、生命科学の分野では歴史的偉業になり得るだろう、とされています。

 人間の目の前の現実の場面にデジタル情報を重ね合わせて表示する技術を「AR(augmented reality、拡張現実)」と呼びます。ARは、利用者が実際の場面から離れ、完全にデジタル世界の中に身を置く「VR(virtual reality、仮想現実)」とともに注目されていますが、アップルのクックCEOはかねてARに強い関心を寄せており、この分野に投資していることを明らかにしました。

 2017年には、モバイルOS「iOS 11」でAR用アプリの開発を支援する「ARKit」を導入、これにより開発者は、ARアプリを簡単に開発できるようになりました。ARは2016年に大ヒットした「ポケモンGO」をきっかけに、一般消費者に身近なものになり、現在のところ、エンターテインメント分野が最も市場規模が大きいですが、今後、製造業、小売業、サービス業をはじめ、物流、医療、建設、教育、観光など多岐にわたる分野で活用されるだろうと予測されています。

4.アマゾンの現在:「Prime」で顧客を囲い込む

 アマゾンの強さは、なんといっても会員制有料プログラム「Prime(プライム)」にあります。Primeの会員数は公表されていませんが、アメリカの市場調査会社のレポートによると、2017年6月時点で8500万人に到達しているといいます。これはアメリカの人口の25%、実に4人に1人の割合です。また、アメリカのアマゾンの全顧客の63%を占めています。

 Prime会員はアマゾンに巨額の収入をもたらしています。1人のPrime会員が1年間にアマゾンで買い物をする平均金額は1300万ドル(約14万3000円)です。これは、Prime会員ではない人の購入額700ドル(約7万7000円)のほぼ2倍です。

 また、アメリカにおける現在のPrime年間費は99ドルですので、会員費全体でも年間84億1500万ドル、つまり1兆円近くの会費をAmazonにもたらしているのです。

 Prime会員のそうでない非会員の違いは、「買い物回数」だといいます。Prime会員はアマゾンで年間25回の買い物をしますが、非会員は14回。それぞれ1回の買い物金額に大きな差はないですが、回数の違いが買い物金額の差につながっているのです。

 アメリカでは、追加料金なしで商品が2日後に届く「Two-Day Shipping」のはか、1回の買い物金額が35ドル以上になれば追加料金なしで商品が即日に届く「Same-Day Delivery」といった特典もあり、これらが買い物をする際の障壁を取り除いているといいます。

5.アマゾンが描く未来:物流の陸・海・空を制覇する

 配送料などのアマゾンの物流コストは年々増加しています。2006年の実質配送コストは3億1700万ドル、しかし、その10年後の2016年には71億9000万ドルと、実に20倍以上に膨れ上がっています。こうしたなかアマゾンは、物流コストの削減を狙い、自前の物流事業を拡大しています。

 陸上輸送の分野では、輸送トラックを配車するためのモバイルアプリの技術を開発中と伝えられました。そのアプリとは、荷主と輸送トラックをマッチングさせるもので、ウーバーが手掛ける配車サービスのようなことが可能になるといいます。2017年には、自動運転車関連の特許を取得したことが報じられました。幹線道路などにおいて、複数の自動運転車を制御するための技術だそうです。自律走行する乗用車やトラックは将来、Amazonの物流事業の需要ような役割を担うだろうと期待されています。

 海上輸送の分野にも進出しており、中国の小売業者がアメリカのアマゾンのサイトで販売する商品を大型輸送船で運んでいます。自ら輸送船を保有はしていませんが、通関や書類手続きなどを行って貨物輸送を取り扱っています。こうしたアマゾンの業務は、積み荷スペースの予約から、港から倉庫までの陸上輸送など多岐にわたり、海運業者や外部の物流事業者が行う一連の業務を一手に引き受けるサービスを構築しているそうです。

 アマゾンの物流事業は空の領域にも広がっています。2016年8月、「Amazon One」と呼ばれる自社ブランドの貨物航空機を利用した輸送業務を始めたことを明らかにしました。2017年1月にはアメリカに航空貨物のハブ拠点を建設する計画も明らかにしています。ケンタッキー州に東京ドーム4個分の面積の広さを用意し、約15億ドル(約1700億円)を投じる計画をしています。また次世代の物流のシステムとして、ドローン(小型無人機)を使った配送システムを設備する計画もしています。

6.グーグルの現在:Android、ついにWindowsを抜く

 ウェブのデータ通信解析を行っているアイルランドのスタットカウンター社は、2017年4月、世界でインターネットにアクセスしている機器の中で、グーグルのOS(基本ソフト)「Android」を搭載する機器比率が37.93%となり、マイクロソフトのOS「Windows」を搭載する比率37.91を初めて上回ったと報告しました。

 これは、パソコン(デスクトップ、ノート)やモバイル機器(スマートフォンなど)、タブレット端末のデータ通信量を調査したものです。2012年3月時点では、Windows機のネットアクセス比率は80%超と非常に高い水準でした。その時点におけるAndroidの比率はわずか2.4%に過ぎませんでしたが、Windowsはその後一貫して右肩下がりで推移、これに対し、Androidは右肩上がりで伸び続けました。

 Windowsは、今もパソコン市場を支配しています。しかし、2016年におけるパソコンの年間出荷台数は約2億7000万円、タブレット端末は約1億7000万台。これに対し、携帯電話の出荷台数は約19億台でした。このうち約15億台がスマートフォンで、その約8割の12億台近くがAndroid搭載機でした。

7.グーグルが描く未来:自動運転車で他社を大きくリード

 自動運転車の技術を開発している企業として、度々、海外メディアに取り上げられる企業には配車アプリのウーバーやリフト、マサチューセッツ工科大学の研究者が立ち上げたヌートノミー、バイドゥ、アップル、そしてグーグルなどがありますが、この中で他社を一歩リードしていると言われているのが、グーグル(グーグルの持株会社アルファベット傘下のウェイモ)です。

 アメリカの市場調査会社IHSによると、自動運転車を実現するための重要な鍵となるのはソフトウェアです。ソフトウェアは各種の車載センサーからの情報を分析したり、熟練ドライバーの運転技術や経験を学習したりする役割を果たしますが、グーグルはこの分野で強みを持つといいます。

 たとえばグーグルは、ロボット工学やドローンなどのプロジェクトに投資してきました。これらの事業の技術は、自動運転車に必要なAI(人工知能)やマシンラーニング(機械学習)、コンピュータービジョン(視覚情報処理)の開発を促進させているのだといいます。

 グーグルのアプローチが特徴的なのは、大手自動車メーカーのようにドライバーの運転操作を補助する自動運転機能を段階的に導入するのではなく、ドライバーの運転操作が一切不要の完全自律走行車を初めから目指している点です。

 グーグルが目指しているのは、たとえば視覚障害者が自動運転車に乗って昼食に出かける、あるいは一人暮らしの高齢者が行事に参加するために利用するといった用途です。また、都市部のオフィス街でスマートフォンアプリを使って車を呼び寄せる、といったシステムもグーグルが取り組みたい分野の一つだといいます。

8.フェイスブックの現在:20億人を超える世界最大のソーシャルメディア

 フェイスブックは2017年6月、同社が提供するFacebookサービスの世界利用者数が同月27日付で20億人に達したと発表しました。ここで言う利用者数とは、月間利用者数(MAU=月間アクティブユーザー数)で、1か月に一度以上、Facebookのウェブサイトやモバイルアプリを利用する人の数です。

 その数は2010年9月末時点で5億人を超え、その2年後の2012年9月末で10億人を突破しました。さらにその3年後の2015年9月末には15億人に達しており、それから2年足らずで20億人の大台に到達しました。

 20億人という数は世界のどの国の人口よりも多く、今やFacebookは国家を超える規模の巨大コミュニティーとなっています。ドイツのスタティスタ社がまとめたデータによると、Facebookの利用者数の世界人口に占める比率は26.6%で、実に世界の4分の1以上の人が、Facebookを使っていることになります。

 Facebookなどのアメリカ発のソーシャルメディアは、中国でサービスが遮断されています。そうした中、フェイスブックは中国を除くアジア圏の新興国などで利用者数を増やす施策を講じています。新興国では、大半の人がパソコンではなくスマートフォンなどのモバイル機器を使ってインターネットにアクセスしています。

 そこでフェイスブックは、通信速度が遅いインド、インドネシア、フィリピン、ブラジル、メキシコなどの国で、モバイル用の軽量版アプリの提供を開始、この施策が成功し、2016年10月、インドにおけるモバイル経由の月間利用者数は1億4700万人に達しました。

9.フェイスブックが描く未来:次に目指すのは動画配信

 フェイスブックは2017年8月、オリジナル動画番組を配信する「Watch(ウオッチ)」と呼ばれるサービスを始めると発表しました。これはフェイスブックのモバイルアプリのほか、パソコン用のウェブサイト、映像配信用アプリで提供するもので、まずはアメリカの一部の利用者を対象に始まり、その後、順次規模を拡大していく計画です。

 ウォールストリート・ジャーナルやニューヨーク・タイムズが報じるところによると、フェイスブックの計画は従来の口コミ動画のような簡素な単発のものではなく、より品質の高い番組コンテンツを配信するというものです。

 シリーズものでは、すべてのエピソードを一挙に配信するものではなく、毎週1話ずつ配信することを計画しています。これによりフェイスブックは、より高額な広告収入が得られると同時に、ユーザーにより長時間サービスを利用してもらえ、より頻繁にFacebookに戻ってきてもらえると考えています。そのための仕組みとして、ユーザーの友人が見ている動画を勧めたり、番組のコンテンツ専用のページを通して交流してもらったりすることを考えているといいます。

   参考

小久保重信(2017)『ITビッグ4の描く未来』日経BP社.

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