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こんにちは、翼祈(たすき)です。
ロタウイルス感染症は、赤ちゃんを始め子どもに多い急性胃腸炎を引き起こす感染症で、毎年2〜3月にかけて1番多く感染します。他のウイルス性胃腸炎と比較しても下痢や嘔吐などの症状が特に激しく、入院が必要となる小児急性胃腸炎の起因の中で50%を占めると想定されています。
大人もロタウイルスに感染しますが、感染を繰り返す毎に症状は軽症になります。ロタウイルスに感染した子どもと接触した大人の中で30〜50%が感染するとされていますが、大人はそれ以前の感染の影響で、軽症で済み、発症しなかったりするケースが多いようです。
ロタウイルスは感染力がとても強く、ごく少量のウイルスが体内に入るだけで感染します。生後6ヵ月〜2歳の乳幼児に多く感染し、5歳頃までにはほとんどの子どもが感染します。
5歳頃までの急性胃腸炎を発症し入院患者の中で、約40~50%の人がロタウイルスが起因での入院です。
今回はロタウイルスの症状や予防策、ワクチンの種類、副反応で起こる腸重積症などについてお知らせします。
▽症状
潜伏期間は1〜3日で、通常は39℃以上の発熱と嘔吐から症状が始まり、その24〜48時間後から便の色が白色になる米のとぎ汁の様な水に近い下痢、鼻水、腹部の不快感などが起こることで脱水になりやすく、急激に水分が体内から失われるので、特に赤ちゃんでは脱水症状に気を付けなければなりません。
ロタウイルスより発熱を伴うケースの多くでは感染後、2〜7日程度で症状は治ります。一般的に、胃腸症状は数日から1週間ほどで回復しますが、特に初めてのロタウイルスの感染では重症化するケースもあります。けいれん、血圧低下、急性腎不全、肝機能異常、心筋炎や、まれに急性脳症を合併し、命に関わる重大な場合に陥るケースもあります。ぼーっとする、話しかけてもすぐに眠ってしまうなど意識の低下やけいれん、ぐったりしているなどの症状が現れたら、速やかに病院を行って下さい。
▽ロタウイルスワクチン
画像・引用:ロタウイルス 厚生労働省
赤ちゃんへのロタウイルスワクチンでのロタウイルス胃腸炎の重症化や合併症の予防が大事となります。日本では、2011年秋に「ロタリックス」、2012年8月に「ロタテック」の2種類のロタウイルスワクチンが承認されています。どちらもロタウイルスを弱毒化した経口タイプの生ワクチンです。ですがその推奨期間はかなり短く、出生した後すぐにロタウイルスに感染するケースもあるので、赤ちゃんの間に接種しておかなければならないというマイナスな面もあります。
ロタウイルスワクチンは、赤ちゃんのお腹が一杯ですと上手に飲めない時があって、接種前の約30分間は授乳を控えることを推奨します。なお、ワクチンを上手く飲む事ができなかったり、吐いた時でも、少しでも飲み込みが確認が取れればワクチンの効果に問題はなく、再接種する必要はもないです。
なお、WHOは、この2つのロタウイルスワクチンの定期接種化を推奨し、日本でも2020年10月から定期接種となりました。欧米では数年前に定期接種となり、ロタウイルス腸炎は劇的に減少しました。
2歳未満の子どもがロタウイルス腸炎に発症すると10人に1人は入院が必要となり、重症化しやすく、ワクチン接種を推奨します。
▽ロタウイルスワクチンの副反応
副反応としては、いつもより怒りっぽく不機嫌になったり、下痢、ぐずり、嘔吐、便秘、食欲不振、咳、胃腸炎咳、発熱などがみられることがあります。また、まれに重篤な副反応としてアナフィラキシー(発疹、舌の腫脹など)が出現することがあります。特に接種してから1~2週間は「腸重積症」に注意を払って下さい。
腸重積症は、腸の一部が隣接する腸管に入り込む病気です。腸が圧迫されることで血流が阻害され、腸の穿孔(穴があく)、腸の壊死を引き起こしたり、発見が遅れると命に関わることもあるため、迅速な治療が必要となります。0歳児の場合、ロタウイルスワクチンを接種しなくても発症する病気で、生後3~4ヵ月齢位から月齢が上がるにつれて多く発症します。(日本では0歳児で年間約1000人が発症しています)。
次のような症状が見られた場合は、速やかに医師の診察を受けてください。
・ぐずったりする
・突然激しく泣く
・機嫌が良かったり、不機嫌を繰り返す
・嘔吐を繰り返す
・お腹が張る
・ぐったりとして元気がなく、顔色が悪くなる
・吐血
・血便が出る(最初はイチゴゼリーのような粘液が便に少量付く程度、その後イチゴジャムの様な血便)
・突然数分間の腹痛(くの字に、お腹を抱え込むこともある)を繰り返す
▽腸重積症以外の副反応について
ロタリックス:易刺激性、発熱、下痢、食欲不振、嘔吐、血便排泄、鼓腸、腹痛、胃腸炎等
ロタテック :下痢、嘔吐、便秘、発熱、中耳炎、胃腸炎、鼻咽頭炎、ラクトース不耐症等
※ いずれも一過性で、重篤なものはまれです。
▽接種できない人
以下に該当する人は、ロタウイルスワクチンを接種できません。
・接種直前に明らかな発熱(37.5度以上)がある人
・明らかに重篤な急性疾患にかかっている人
・ロタウイルスワクチンに含まれる成分によってアナフィラキシーを起こしたことのある人
・重症複合型免疫不全(SCID)のある人
・メッケル憩室などの先天性消化管障害があり、未治療の人(その治療が完了したものを除く。)
・腸重積症の既往歴がある人
・生ワクチンの場合、妊娠中の女性
・その他、ワクチン接種が不適当と医師が判断した人
また、以下に該当する人は、ロタウイルスワクチンの接種をするに際し、十分な注意をすることが必要です。
・心臓、血液、肝臓、血管、腎臓などに持病がある人またはその発育に障害がある人
・過去に受けた予防接種で接種後2日以内の発熱、発疹、じんましんなど全身性のアレルギーなどが見られた人
・過去にけいれん(ひきつけ)の既往歴がある人
・免疫抑制をきたす治療を受けている人
・過去に免疫不全の診断を受けた人
・先天性免疫不全の病気を持つ近親者がいる人
・ロタウイルスワクチンに含まれる成分によってアレルギー反応を起こす可能性のある人
・胃腸障害(活動性胃腸疾患、慢性下痢)のある乳児
▽診断基準
一般的に、感染者の症状や周りの感染状況などから医師が総合的に判断して、ロタウイルスが起因だと推定して診察します。ほとんどの場合は、便の色や下痢などの臨床症状で診断が可能です。
ですが症状だけでは確定診断ができないケースもあり、診断を下す前の補助的な手段で医師が必要と判断した場合には感染者の便を使った迅速診断検査(イムノクロマト法)を実施することもあります。
▽感染経路
10~100個くらいのロタウイルスの経口感染で発症します。ロタウイルスは、ロタウイルス由来の胃腸炎感染者の便に大量に混入しています。感染者の便を片付けた後、十分に手洗いをしていたとしても、手や爪に数億個ものロタウイルスが残ってしまう時もあり、ロタウイルスが付着した手などから口へと感染が拡大します。
▽ロタウイルスの種類
ロタウイルスの中にも複数の型があります。
人間に感染することが判明している型はA、B、C群の3つとなり、通常のロタウイルスといえばA群のことです。B群は以前に中国で流行りましたが、日本では検出されていません。C群による胃腸炎は主に3歳以上の年長児や大人に多く、A群の様に大規模な流行はほとんど起こりません。
「ロタ」とはラテン語で車輪という意味を持ち、電子顕微鏡で拡大すると車輪の様な形状から名付けられました。
▽対処法
現在、ロタウイルスに効果のある抗ウイルス薬はまだ開発されていません。治療は一般的に、症状を落ち着けるための対症療法となります。
脱水を予防するための水分補給として経口補液や点滴などが治療のメーンとなります。感染で電解質バランスも崩れやすくなります。電解質も身体内から失われているので、電解質が含まれているイオン水や牛乳、湯冷ましなど、少し暖めてから飲むのが好ましいです。
下痢止め薬は、ロタウイルスからの回復を遅らせる場合があるので使用しないことが良いと思われます。
▽予防策
ロタウイルスは、衛生状態に関係なく世界中の子ども達に胃腸炎を発症します。その理由はロタウイルスの感染力の強さにありました。
ロタウイルスはどんな環境にも強く、乾燥した場所では約10日間生き続けています。その上、せっけんや消毒用アルコールにも強いことから、次亜塩素酸ナトリウム(家庭用塩素系漂白剤)や哺乳瓶用の消毒液などでしっかり殺菌しないと死滅しません。
感染を拡大させない様にするには、おむつの適切な処理、手洗いやうがいの徹底などが重要です。おむつを換える時には使い捨てのゴム手袋などを使用し、おむつを捨てる時はポリ袋などに入れます。指輪や時計など身につけているものを外してから手洗いし、せっけんで30秒以上もみ洗いをして下さい。洋服が便や吐物で汚れた時は、次亜塩素酸ナトリウムで付け置きして殺菌した後で、他の洋服と分けてから洗濯して下さい。
▽登園・登校の目安
下痢、嘔吐などの症状が落ち着き、全身状態が改善すれば登園・登校も可能です。
参考サイト
ロタウイルスワクチン予防接種について 梶山小児科・アレルギー科
この感染症は、
以前からあるみたいですね。母も「三大夏風邪以外の感染症で、それなら名前を聞いたことある!」と言っていましたし、このロタウイルスだけは主要な感染症の中で唯一専用のワクチンもあります。
ロタウイルスはこれまで書いて来たお子さんがかかる感染症と違い、ワクチンがあることで検索では各都道府県の市町村の公式ホームページが接種のお知らせとして検索上位に引っかかり、病院などの専門の医療機関がそこまで引っかからないことが2つの大きな違いでした。
ワクチンがあることで予防できることもあれば、重篤な副反応を起こす、ワクチンのある感染症では悩ましい両極端なことだなと、改めて感じました。
ワクチン接種できるのも赤ちゃんの、しかもかなり短い期間のみなので、予防接種のことを熟知していないと、打てないなど大変なことになるなとも感じました。
お子さんの重大な感染症に関してはこれで全部書き切った気がしますが、最後のロタウイルスに関しては、これまで書いた5つの感染症と違うアプローチに至ったのも、書いた者としても驚きと新発見でした。
noteでも書いています。よければ読んでください。
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