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はじめに
皆さんは、「母乳バンク」という制度をご存知でしょうか?
未熟児で産まれた赤ちゃんに、お母さんの代わりに母乳を届けるシステムです。
なぜ、未熟児には「母乳」が必要なのでしょうか?
「母乳バンク」とはどういった役割をしているのでしょうか?
日本で生まれる未熟児は…?
全国の出生数は、2005 年以降は 100万人台で推移していましたが、2016年以降は、90万人台に減少しています。
出生体重別に見ると1980年では3000g以上が69.1%でしたが、2010年では52.1%と減少しています。
さらに2500g未満児の割合を見ると1980年で5.2%、2010年9.6%と割合が増加していますが、2005年以降は増加傾向に歯止めがかかったように見えます。
1500g未満の子どもは1980年の約6000人から2000年に約8000人となり、その後横ばいです。
2017年では500g未満が285人、500〜1000g未満が2375人1000g〜1500g未満が4243人、1500g〜2000g未満が11301人、2000g〜2500g 未満が71149人でした。
引用:低出生体重児/厚生労働省
画像引用:低出生体重児/厚生労働省
母乳バンクとは?
「母乳バンク」とは、「ドナーミルク(寄付された母乳)」を低温殺菌処理を行い、冷凍保管をしたのち、医療機関に提供する施設です。
母乳がたくさん出るお母様方から、余った母乳を寄付という形で提供していただき、適切に低温殺菌処理から、細菌検査を行い、冷凍保管をし、早産・極低出生体重児(体重1,500g未満の赤ちゃん)で産まれた赤ちゃんに、自分の母親から母乳をもらえない場合、NICU(新生児集中治療室)の要請に応じて、「ドナーミルク」として提供します。
世界初の母乳バンクはウィーンで誕生しました。現在では、50か国750か所以上の⺟乳バンクがあります。
しかし、⽇本の⺟乳バンクは、⼀般財団法⼈⽇本財団⺟乳バンクと⼀般社団法⼈⽇本⺟乳バンク協会(⽇本橋⺟乳バンク)の2拠点のみです(2022年3⽉現在)。
⽇本財団⺟乳バンクは、⽇本⺟乳バンク協会と協⼒しながら、⺟乳バンクの普及に努めています。
ドナーになるにはどうすれば?
まずは、ドナー登録は必ず日本母乳バンク協会のウェブを通してお申し込みください。
ウェブで申し込み内容を確認したのちに、日本母乳バンク協会からご住所に近い登録施設に受け入れについて確認ののち連絡が入ります。
登録希望が大変多く、対応に数週間かかることもあるそうです。
- お子さんが必要とする以上に母乳が出ること
- 血液検査の結果に異常がないこと
- 輸血や臓器提供を受けてないこと
- 過去3年間に白血病やリンパ腫など悪性腫瘍の治療歴がないこと
- タバコ・アルコール・薬剤についてのチェックをクリアしていること
粉ミルクじゃダメなのか?
現在は、NICU(新生児集中治療室)を持っている医療機関すべてが母乳バンクを導入しているわけではありません。
中には、『粉ミルクでいいのではないか』という考え方をする医療機関もあるようで、ドナーミルクは栄養価も高く、新生児を救うために適しているということを知らせていくことが求められています。
- 壊死性腸炎などの重い病気にかかるリスク・重症化を低減する
- 点滴で栄養を与える期間が短くなる
- 長期的な予後の改善ができる
小さく産まれた赤ちゃんは、様々な病気にかかるリスクを抱えています。
赤ちゃんにとって母乳は、「栄養」だけでなく、感染症や腸の病気から身を守ってくれる、「薬」のような大切なものなのです。
これからの課題
これからのドナーミルクの課題は、まずは認知してもらうことです。
粉ミルクでは補えない役割が、「ドナーミルク」にはあることを知ってもらいたいです。
そして、ドナー希望者への課題は、現在ではドナー登録をするのに時間がかかるという所です。
ドナー登録できる施設も全国で8カ所にしかなく、また、運営は日本財団の支援のほかは寄付で成り立っているため、資金面でもハードルがあります。
母乳バンクがもっと世の中に広がることを祈っています。
参考サイト
一般財団法人日本財団母乳バンク|公式サイト (milkbank.or.jp)
都内で「母乳バンク」が本格運用も テレ朝・林美沙希アナ「ドナー登録の期間が短くならないか」 認知度向上や運営には課題(ABEMA TIMES) – Yahoo!ニュース
小さな命を守るドナーミルクの安全性・有効性を伝え、利用への抵抗感を低減させる『ドナーミルクご利用家族向け・情報Book』が完成
一般社団法人 日本母乳バンク協会の国内2拠点目となる「東日本橋 母乳バンク」開設を支援
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