なぜ香港でデモ?参加者「200万人」の怒りと政府の対応とは

香港でデモ

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 ニュースで知っている方も多いと思いますが「逃亡犯条例改正問題」の香港デモが、鎮静することなく、6月9日から始まって現在7月16日、一ヶ月近くも続いています。なぜこうも香港の国民達は怒って、抗議を続けてるのか詳しく紹介していきたいと思います。

1.「逃亡犯条例改正案」の発端からデモへ

 2018年2月に香港のカップルが台湾へ旅行中に、19歳の男性が妊娠中の20歳の恋人を殺害した事件が起こりました。

 事件後に19歳の犯人は逃亡し香港へ帰国後に、自白しました。事件は台湾で起こったので台湾警察が、この男の引渡しを要請しましたが香港は台湾との「犯罪人引き渡し協定」を結んでいないのでこれを拒否しました。

 この事件を発端に、香港政府は「犯罪人引き渡し協定」を結んでいない【中国全土・マカオ・台湾】にも、重大犯罪者の身柄を引き渡せるようにする「逃亡犯条例改正案」を2019年4月に議会に提出しました。

 香港は「犯罪人引き渡し協定」はイギリス、アメリカ他22ヵ国とは結んでいて今回はその引き渡せる国を広げる、法の穴をふさぐためという、一見して良いことに見えます。ではどこが問題なのでしょうか。説明していきます。

一国二制度が脅かされる

 もともと香港は150年間イギリスの植民地でしたが、1997年には中国に返還されました。返還後の香港は中国の一部になりつつも、独立行政区として政治経済や立法などは別組織として運営され、表現の自由や権利なども保障されています。これを一国二制度といいます。

 しかし逃亡犯条例の改正案が通ってしまうと以下のことが予想されます。

・実質的に香港市民や滞在している外国人までが中国当局の取締り対象になる恐れがある

・法律上の安全弁があっても中国本土から政治圧力や批判に晒され公正を保てなくなる 

・事実上の一国二制度が崩壊する

 上記3つ可能性が懸念されており、更には親中派の林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官を初めとする香港政府は、充分な議論も重ねずに、通常の立法手続きを踏まずに2019年6月20日には採決を行うと強行したため、100万人以上のデモに発展しました。

中国政府への不信感「私たちは香港人」

 このデモには一般市民だけではなく、学校や弁護士、教会グループなどが人権擁護団体とともに、改正案へのデモに参加しています。この背景には香港大学が行った調査によると、自分たちを「香港人」と思っている人がほとんどで、「中国人」と思っている人は15%でした。

 これは若くなるほど大きくなり18~29歳の回答者のうち、自分は「中国人だ」と答えた人はわずか3%でした。なぜ国としては独立していない香港で、このようなことが起こっているかというと、一番は中国政府を信用していないに尽きると思います。最近でも中国とカナダ間にある、不当な死刑判決人質外交などもあってのことで、より不信感を持っているのでしょう。

想定される最悪なケース

 具体的に想定されるケースとして、香港の活動家などが中国政府に批判的な人物が容疑をでっち上げられ中国本土へと引き渡されるといった懸念を反対派は挙げています。香港を訪れるビジネスマンや旅行客も引き渡しの対象になってしまいます。

 このような大事なことを2~3カ月で決めようとして、反発が起きるのは至極当然なことで、デモが起きてしまうのも納得せざるを得ません。

2.香港政府の主張と動き

 香港政府の主張をまとめてみました。

・凶悪事件で容疑者を現地の捜査当局に引き渡すためには「逃亡犯条例」の改正が必要

・引き渡しの対象となるのは重大犯罪に限定する

・政治的、宗教的罪を負ったり拷問を受ける恐れがある場合、引き渡しを阻止する「安全弁」を設ける

・死刑に処される可能性がある場合、容疑者は引き渡しされない

 という主張ですが、なし崩し的に結局は守られない可能性も大いにあります。

林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官「完全撤回」はせず

 6月20日に逃亡犯条例改正案の採決を行う予定でしたが、デモの影響を受けて延期を香港政府は発表しました。7月9日には逃亡犯条例は「死んだ」と林鄭月娥行政長官は会見で発言をしました。

 「政府の誠意がまだ疑われ、立法会(議会)で審議を再開するのでは、という懸念がまだ残っている。なのでここで今一度、そのような計画はないと重ねて申し上げる。条例案は死んだ」と発言しましたが、デモ隊が求めている「完全撤回」には明言しませんでした。

 この発言はまだ条例案は審議の途中とも取れる発言であって、デモが鎮静すれば議会でいつでも審議の再開はできるでしょう。デモ隊はより一層、林鄭月娥行政長官の退任を要求していて、現在分かっているデモ参加者は増え続け、200万人を超えていると伝えられています。

 7月15日林鄭月娥行政長官は、14日に起きた数千人規模のデモを暴徒と批判しました。ショッピングモールでデモ隊が警察隊と衝突し、傘やプラスチック製のボトル、警察隊が警棒などを使い激しく殴り合いました。

 林鄭月娥行政長官衝突の結果、3人が病院に搬送された病院で「職業意識を持ち忠実にに社会秩序を保っている警察官に感謝する。彼らは暴徒による攻撃を受けている」と指摘しました。14日のでデモでは警察官への攻撃や違法集会の罪で、40人以上が逮捕される結果となりました。ちなみに香港で暴徒罪に問われると、10年の懲役刑が科せられる可能性があります。

まとめ・香港を愛する人たちの闘いは今も続いてる

 2014年にも香港で起きた反政府デモは、総参加者120万人にも及んだが結局は失敗に終わり、無力感だけが残ってしまった。それもあって今回のデモは失敗を繰り返さないためにも、参加者200万人を超える強大なデモに膨れ上がったと感じました。暴力的に感じてしまうところもあったりしますが、私は抗議するという活動には誰もが持つ権利ですし、闘っている姿に胸を打たれました。

 約1カ月間という非常に長いデモとなっていますが、見守っていきたいと思いますし、また大きな動きがあったら紹介したいと思います。ここまで読んでくださってありがとうございました。

参考元・BBC Media Sunshine JIJI.com ロイター

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