米「オピオイド危機」年間死者数5万人に及ぶ社会問題とは

薬物依存

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 現在アメリカで鎮痛薬における社会問題を知っていますでしょうか? 「オピオイド」という鎮痛薬で、日本では「がん」の疼痛や手術時に使用されるぐらいなので、誰もが触れるワケではなく日本ではモルヒネの方が多用されます。

 しかしアメリカではオピオイドが蔓延してしまい、現在年間で5万人もの死亡数も確認されています。個人的には対岸の火事ではないと思いますのでぜひ現状を知ってほしく、記事にしようと思いました。過去には関連記事「医療用大麻」のことも書いていますので、そちらも合わせて、ご覧頂ければと思います。

【大麻】その害と依存性や医療大麻の可能性について

1.アメリカが戦う社会問題「鎮痛薬の歴史と現在」

 アメリカの麻薬性鎮痛薬との戦いは長く、1860年代に南北戦争の時には「モルヒネ」が戦場で広く使用され、兵士達の依存症が問題になり、規制の重要性が認識されました。その後は1898年にモルヒネよりも安全な鎮痛薬として「ヘロイン」が開発されましたが、1924年には危険性が高いことが認知されて、アメリカ国内で生産や販売が禁止されました。

 1917年にはドイツでオキシコドンが開発され、アメリカではモルヒネの代用として使用されるようになりました。後に商品名は「オキシコチン」や「パーコセット」などがあります。

なぜオピオイドは蔓延したのか

 現在のオピオイド系の鎮痛薬の蔓延にはさまざまな原因があります。発端は製薬会社の問題で1996年には、パデュー・ファーマ社がオキシコンチンは常用性が低く安全な鎮痛薬として、積極的に広報・販売し始めたことが最大の問題です。こういった文言で紹介されてました。

モルヒネなど既存の鎮痛薬よりも強い効果があり、長時間持続するという特徴に加えて「オキシコンチンはがんを始めとしたさまざまな痛みを抱える患者が、夜中に痛みで目を覚ますことなく朝までぐっすり眠れる」という大胆な触れ込みで売り出され、瞬く間に最も多く処方される鎮痛薬として全米に広がりました。

オピオイドの危険性

 オキシコンチンは錠剤の表面に特殊なコーティングによって、持続的に有効成分が放出される「徐放性(メリット成分を少しずつ分泌する)」が特徴ですが、それだけ多くの鎮痛成分、つまり「オピオイド」が含まれていることを意味しています。医師から処方された容量以上に服用したり、錠剤を砕いて吸引したりなどをすることによって、強力な陶酔感を得られるため結果的に、麻薬として愛用されるようになってしまいました。

2.死者数年間5万人「オピオイド危機」

 アメリカでは過去にも麻薬による社会問題はたびたびおこっています。上記にも書いた60~70年代はベトナム帰還兵を中心にモルヒネ中毒が蔓延し、当時のニクソン大統領は「麻薬との戦争」宣言もありました。80~90年代はクラックと呼ばれるコカインの結晶の蔓延が問題にもなってアメリカという国は、常に麻薬が社会問題として付きまとっているのです。

 しかし過去のこういった麻薬問題と今のオピオイドの決定的な違いは、ひどい麻薬問題が起きても麻薬に起因する年間の死者数が5千人を超えるということは無かったのですが、オピオイドは5万人を超えていて過去20年間をいれると700万人にも及んでいるということです。2017年では交通事故での死者数を超えており、米疾病対策予防センターによるとオピオイドの過剰摂取で死亡する人は、1日平均130人を上回っています。

 これはアメリカ的に危機状態で、トランプ政権は2017年11月24日に「非常事態宣言」を発し処方箋を乱発した医師や、違法な取引に関わったディーラーに対する処分を厳しくするなど手は尽くしていますが、効果は上がっておらず死者の増加ペースも衰えてはいません。

止められない深刻さ

 なぜ危機を止められないのか、それは「処方薬という壁」があります。医師によって正しく処方された薬という起因があるため、違法ドラッグのように製造元を抑えたり禁止にはできません。

 この薬のおかげで、長年の疼痛から解放され日常生活を取り戻した患者が多いにいるのも事実です。このような薬の乱用者がいるといって、簡単に違法化にしたり流通を止めたりはできないという問題が重くのしかかっています。

依存症で自治体の財政は疲弊そして訴訟へ

 依存症になった住民の対応にも自治体によって異なりますが、財政事態も危機を迎えています。

 人口6万5000人のオハイオ州マリオン郡では、薬物の過剰摂取による緊急コール1件に警官2名、緊急医療サービス隊員3名、車3台が派遣されるようになっています。深刻な事態でなくても出動回数は1日3、4件もあり、時間や設備も含めればコストは多いにかかってしまいます。

 郡の留置所の受刑者70%は依存症か精神衛生上の問題を抱えていて、最近だと収容能力20%上回ってしまい州予算の70%を食いつぶす状態です。依存症治療が増え続ける状態で、2010~2016年の間にコストが7倍に膨れ上がってしまいました。

 現在多くの地方政府や民間が米大手製薬会社「パデュー・ファーマ」を集団告訴しています。その数は2000件以上に膨れ上がり、原告側には和解金として100~120億ドル(約1兆2700億円)の提示を伝えられています。

 オクラホマ州地方裁判所では8/26日にオピオイド蔓延を理由に米大手製薬会社の「ジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)」を訴え、5億7200万(約606億円)の制裁金を支払うように命じられました。J&Jはこの判決に上告の意向を示しています。

まとめ・オピオイド危機は避けられなかったのか? 

 製薬会社も商売をしなきゃいけなく多大な宣伝をするのは分かりますが、なぜ病院側は認可をしてしまったのか? という疑問に尽きます。しかもケガや頭痛などの痛み止めとしても処方されてしまった経緯もあったりして、フットボール選手やバスケット選手が中毒となってしまうケースも珍しくありません。それぐらい「緩く流れていた薬」が「最も強い効用」なんて誰が思うのでしょうか? しかも病院からの処方を疑うのも難しいと思います。

 だからこそ対岸の火事として見ず、日本でも安心な病院や医師に頼りきるというのが時代とマッチしていないと感じました。もしかしたら今後すごい薬が出来てその後に……なんてことも起こりうるかもしれません。

 1人では不安な人は誰かに付き添ってもらって病院に行ったり、ちょっとした疑問でも流さず注意深く、服用する薬は納得してから使いましょう。最終的に自分を守れるのは自分ですから。

参考元・NewSphere REUTERS 笹川平和財団 RS JAPAN ビデオニュース・ドットコム HUFF POST

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