「働く」とは何か — B型事業所とアウトサイダー・アート

沢山の人が描かれた画像

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私はAKARIで記事を書きながら、

福祉や就労支援について調べる機会が増えました。

その中で何度も感じるのは、

「働く」という言葉の意味は、

人によって大きく違うということです。

一般的な就労では、

生産性や効率が重視されます。

雇用契約を結んで働くA型事業所では、

実働4〜5時間程度のパートタイムで働くことができます。

そこは、一般就労に向けた知識や能力の向上を目指す場所でもあります。

一方、B型事業所では事情が少し違います。

令和5年度の全国平均工賃は

月額23,053円。

非常に低い金額になっています。

体調や特性に合わせて働く。

自分のペースで働く。

そうした柔軟な働き方ができる一方で、

その結果として、収入はどうしても低くなってしまう。

それがB型事業所の現状でもあります。

そんなB型事業所の状況に、

新しい視点を持ち込んだ企業が

株式会社ヘラルボニー」です。

前回の記事でも紹介しましたが、

ヘラルボニーはアートを「知的財産」として扱い、

ロイヤリティという形で収入を生み出す仕組みを作っています。

それは、

B型作業所の「工賃」という概念を

少し変える可能性を持っているように感じます。

 

ヘラルボニーと連携する施設のひとつに、

PICFA(佐賀県基山町)という施設があります。

私は実際に、この場所を訪れたことがあります。

PICFAは医療法人が運営している施設で、

病院の一角がアトリエとして活用されています。

施設に入ると、まず目に入るのは

受付のようなスペースに並べられたプロダクト商品です。

バッグや雑貨など、

アートが日常に溶け込んだ形で展示・販売されています。

さらに奥へ進み、階段を上がると、

そこにはまったく違う景色が広がっていました。

アート作品、そして制作途中の作品があふれる空間。

一見すると、とても福祉施設とは思えないほど、

濃密でエネルギーに満ちた場所です。

そこからさらに各部屋へと分かれ、

アーティストそれぞれのアトリエへとつながっています。

絵画、大小さまざまなオブジェ

作品はどれも個性的で、強い存在感を放っていました。

特に印象的だったのは、

奥のスペースに設置された巨大なオブジェです。

天井から吊るされたその作品は、

空間全体を支配するような迫力があり、

まさに圧巻でした。

PICFA公式サイト

PICFAの公式サイトでも

多くのアート作品やバッグなどのプロダクトが販売されています。

こうした商品が売れることで、

アーティストや施設へと収益が還元されていきます。

そして今、PICFAだけでなく、

多くの施設がアート作品の販売や

プロダクトデザインへの活用に力を入れ始めています。

アートは単なる創作活動ではなく、

社会とつながる仕事のひとつになりつつあります。

アウトサイダー・アートとは何か

ねこパンクがギターを弾いている画像

“アウトサイダー・アートとは

アウトサイダー・アート(Outsider Art)とは、独学で学んだ、

型にはまらない、時には認知度の低いアーティストによる作品のことを指します。

1980年代までは、この言葉はフランス語の「アール・ブリュット(Art Brut)

と同義語として扱われていました。

アール・ブリュットとは、ファインアートの学問的伝統にとらわれず、

訓練を受けていないアーティストによって制作された作品を指します。

言葉の原義は同じですが、最近では英語圏でのアートマーケットが

フランス語圏よりも拡大しているため、「アウトサイダーアート」

の呼称の方がより一般的になったと言えます。”

引用元:(Art to Heritage)アウトサイダーアートとは?歴史と有名アーティストを解説! 2023/02/15

ここでは、このアウトサイダー・アートについて

少し書いてみたいと思います。

アウトサイダー・アートは、
ジャン・デュビュッフェ(1901–1985)

によって提唱されたアール・ブリュット( Art Brut )

の思想から生まれた概念です。

既存の美術教育や価値観にとらわれない、
純粋で衝動的な表現を指し、
独学で強い個性を持つ作品が特徴とされています。

参考元:(美術手帖)ジャン・デュビュッフェ

その代表的な作家が
アドルフ・ヴェルフリ(Adolf Wölfli,1864-1930)です。

精神病院で生涯を過ごしながら、
約25,000ページにも及ぶ膨大な作品を残し、
アウトサイダー・アートの象徴的存在となりました。

参考元:アドルフ・ヴェルフリ 画 服部正 監修 『アドルフ・ヴェルフリ 二萬五千頁の王国 』国書刊行会

参考元 : (日本財団 DIVERSITY IN THE ARTS)世界中を冒険する魅惑の画家『アドルフ・ヴェルフリ 二萬五千頁の王国』、 日本初となる大回顧展がついに東京へ上陸!2017年04月28日

アウトサイダーアートと福祉

アトリエで沢山の人たちが作品づくりをしている画像

アウトサイダー・アートは、

精神病院や福祉施設などで生まれることも多く、

障害のある人の表現と深く関わっています。

近年では、

こうした表現がアートとして評価され

社会の中で広く紹介されるようになってきました。

たとえば、

障害のあるアーティストの作品を

「異彩」として社会へ発信する

株式会社ヘラルボニーの活動も、

この流れの中にあると言えるでしょう。

福祉の現場から生まれた表現が、

芸術として評価され、

社会の文化として広がっていく。

アウトサイダー・アートは、

そうした可能性を感じさせる存在でもあります。

参考元:(Art to Heritage)日本のアウトサイダーアート作品とその独特な世界 2023/05/12

山下清という存在

水辺に花火が打ち上がっている画像

日本におけるアウトサイダー・アートを語る上で

名前が挙げられる人物のひとりが

山下清(1922–1971)です。

「裸の大将」

「日本のゴッホ」

「放浪の画家」

といった愛称で広く知られ、

多くの人に親しまれてきました。

山下清は、

専門的な美術教育を受けておらず、

驚異的な記憶力と内発的な衝動で「貼り絵 (ちぎり絵) 」

の作品を生み出しました。

旅先で見た花火や風景をスケッチなしで再現し、

細かな紙片を緻密に重ねたその作品は

見る者の心を揺さぶります。

道標となる存在としての山下清

岸辺で花火の絵を描いているねこパンク画像

山下清を

「アウトサイダー・アーティスト」と呼ぶことについては、

実は賛否が分かれています。

彼は言語障害や知的障害があり、

若い頃から福祉施設で生活していました。

しかしその一方で、

精神科医であり美術評論家でもあった

式場隆三郎

の存在が大きかったと言われています。

式場隆三郎は山下清の才能を見いだし、

作品の保存や発表の機会をつくり、

個展の開催などを通して社会へと紹介しました。

また、山下清の放浪生活の後も、

長く支援者として関わり続けた人物でもあります。

その意味で言えば、

山下清は

「純粋なアウトサイダー」とは

言えないのかもしれません。

アウトサイダー・アートは本来、

美術制度や教育、

美術市場の外側で生まれる表現を指す言葉です。

山下清の作品は、

支援者や社会との関わりの中で、

広く紹介されていったという側面もあります。

そのため、

「純粋なアウトサイダー・アート」と呼ぶべきかどうかは、

議論の余地があるとも言われています。

しかし、

彼の作品が持つ強烈な個性と

独自の表現世界は、

多くの人にとって、

アウトサイダー・アートを考える上で

重要な存在であることも確かです。

そして彼の存在は、

異彩を放つ作家たちにとって、

ひとつの道標となる存在なのかもしれません。

福祉の現場から生まれる未来

仲間達とアート作品を作っているねこパンク画像

今後、福祉施設でのアート活動は、

さらに広がりを見せていくのではないかと思います。

それに伴い、

低賃金が課題とされてきた

B型事業所の状況も、

少しずつ変わっていくかもしれません。

その中で大切になるのは、

山下清

にとっての支援者であった

式場隆三郎

のような存在ではないでしょうか。

才能を見いだし、表現を守り、社会へとつないでいく人。

多くの「異彩を放つ作家」たちのそばに、

式場医師のような存在がいれば、

今の状況を変えていくこともできるはずです。

福祉に携わる皆さんに、

ひとつお願いがあります。

どうか、

アーティストを世に送り出せる環境を 作ってほしいのです。

きっと今も、

全国の福祉施設の中に、 まだ知られていない

多くのアーティストがいるはずです。

その表現が社会へと届いたとき、

福祉の現場から

新たな文化が生まれるのかもしれません。

おわりに

今回は、

「働く」とは何か – B型事業所とアウトサイダー・アート

というテーマで記事を書いてみました。

B型事業所が抱える課題。

そして、それをアートの力で変えていこうとする動き。

福祉の現場から生まれた表現が、

文化として社会に広がっていく。

そんな流れが、これからさらに増えていくことを

期待しています。

そしてそれは、

「働く」という言葉の意味を、

少しずつ変えていくことにもつながっていくのかもしれません。

ねこパンクがギターを弾いている画像

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

また次の記事でお会いしましょう。

ねこパンクでした。

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