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こんにちは、翼祈(たすき)です。
胃潰瘍とは、多くがストレスが引き金で発症する現代病の1つで、胃液中のペプシンや塩酸が、胃を保護する粘膜を消化します。
胃潰瘍の「潰瘍」とは、皮膚や粘膜がただれたり、胃の壁が傷付いて、剥がれ落ちるという意味を持ち、胃潰瘍は「消化性潰瘍」とも呼ばれています。
胃粘膜は一般的に、粘液に保護されていることから消化酵素や胃酸によって溶かされる心配はありませんが、胃酸の量が多くなり過ぎたり、粘液が足りなくなると、胃粘膜が消化されてしまい、傷が浅い場合は「胃びらん」と言われ、傷が深くなると「潰瘍」などと言われている粘膜傷害を発生します。
胃には強力な酸性の胃酸や消化酵素が分泌されており、食物の消化や口から侵入した細菌の殺菌という役目を持っています。胃潰瘍は、胃を守る粘液と胃酸の分泌量のバランスが乱れることで発症します。胃液が過剰に分泌されると粘膜を傷付け、次第にさらに深い筋層まで攻撃し、胃潰瘍へと至ります。
そのことを受けて、「良性」の胃潰瘍は「消化性潰瘍」とも呼ばれていますが、注意しなければいけないのは、胃がんでの「がん性胃潰瘍」で、基本的にはどちらも似た症状と出現することから、症状だけでは見分けはつきません。
症状が進行すると胃に穴が空き、腹膜炎を発症する恐れもあるので、胃の痛みが2〜3日継続した時には病院を受診して下さい。
昔胃潰瘍は、男性に多い病気でしたが、最近では更年期の50代の女性にも多く見見受けられ、若い人の発症率も高い水準になってきました。胃潰瘍の患者さんの数は、2017年度の厚生労働省の調査によりますと、19.7万人ほどいると推定されています。
今回は胃潰瘍の症状、原因、合併症などを多角的にお知らせします。
▽症状
①みぞおち付近の腹痛
胃潰瘍の90%を占める自覚症状が腹痛で、多くが上腹部の「みぞおち」に痛みを生じます。
胃潰瘍は食後に痛み出し、多く食事を摂り過ぎると長い間痛みが持続し、空腹時にも腹痛が起こり食事を摂ると痛みが落ち着きます。
また、強い痛みの腹痛である程、胃潰瘍の様相が悪いわけではなく、胃潰瘍を発症しても何も痛みがないこともあって、知らぬ内に、潰瘍の悪化で胃に穿孔(せんこう)ができて、「穿孔性潰瘍」になって、初めて激痛が引き起こし、胃潰瘍が判明することもあるので早期に病院を受診して下さい。
②吐き気、食欲不振、嘔吐、体重減少、腹部膨満感、もたれ感
胃潰瘍になって胃液が多く出過ぎたことによる胃粘膜とのバランスが乱れると、胸やけ、呑酸(酸っぱいげっぷ)などの症状が出現し、吐き気、嘔吐、食欲不振で体重減少をするなどの症状が出現する場合があります。
また、胃もたれ、胸やけは胃液が食道に逆流して発生する症状で、胃液が多過ぎる場合に見受けられます。
③下血(重篤な場合)
胃潰瘍で便に血が混ざると、どす黒い便が出ます。「出血性胃潰瘍」は、潰瘍ができた部分の血管が破れるのが原因でなる病気です。下血の量が多い時には胃に孔(あな)が空きます。
下血の量が多い時にはめまいを引き起こしたり、貧血症状になったりする場合もあります。それ以外にも、血圧低下や冷や汗、脈が速くなる場合もあります。この便を「タール便」と呼びますが、下血の場合気付かない場合もあって、貧血になってようやく胃潰瘍で下血していると気付くケースも少なくありません。
また、胃潰瘍の症状は他の病気とも共通点があって、がんの可能性も大いに考えられます。下血は、大腸がんや胃がんの症状でもありますし、下血が大量にある場合、症状が出現したら速やかに病院を受診し、検査を受けて原因を明らかにしましょう。
④吐血(重篤な場合)
胃潰瘍の時は、胃酸でどす黒くなった血を吐血します。
吐血時には、冷や汗・動悸・立ちくらみ・脈拍が乱れる・息切れ・目眩・血圧低下・ふらつき・激痛を伴うケースもあります。
「出血性胃潰瘍」で、下血と同じく潰瘍のできた場所の血管が破れるのが原因です。
⑤口臭、呑酸、胸やけ
胃潰瘍を発症していると、胃酸過多によって引き起こす口臭、呑酸、胸やけなどの症状が出現する場合があります。また、口臭は胃潰瘍以外にも、慢性胃炎、肝炎、胃下垂などの病気でも引き起こされます。
⑥背中の痛み
胃潰瘍で炎症が広範囲に達している時は、背中にも痛みを感じる場合があります。胃潰瘍で腰痛になったという人がいますが、それは膵臓にまで炎症が達すると背中が痛むからです。
▽原因
❶ピロリ菌の感染
胃潰瘍の原因の7割以上が”ヘリコバクター・ピロリ”(ピロリ菌)と言われています。ピロリ菌は、口から侵入して感染すると想定されていて、ピロリ菌に感染すると、まず、慢性胃炎となって、そのごく一部が慢性胃潰瘍などに至ります。
ピロリ菌は主に幼少期に感染する場合が多く、感染すると持続的に胃の粘膜に炎症を引き起こし、萎縮性胃炎などにもかかります。胃潰瘍や胃がんになるリスクも高いことから、早期に除菌治療をすることが鍵となります。
ピロリ菌が原因の胃潰瘍の時は、抗生剤を1~2週間服用して、ピロリ菌を除去すれば完治します。
❷ストレス
過労、イライラ、睡眠不足、不安、緊張などから来る肉体的・精神的ストレスが胃潰瘍の原因となる場合は多く見受けられ、急性の強いストレスは急性胃潰瘍の原因にもなります。
❸刺激の強い香辛料や熱すぎる、冷たすぎる飲食物を摂取し続けた場合
みょうが、しょうが、ニラなどの香味野菜、強い塩味の干物や漬物や唐辛子、コショウ、にんにく、ワサビなどの香辛料、塩分高めの塩辛などは控えめに食べましょう。刺激の強い香辛料など、胃へ刺激を与えるものを過剰摂取すると胃潰瘍の原因となるケースがあります。
❹喫煙・飲酒・コーヒー
喫煙は胃粘膜の血流を低下させることで胃潰瘍を引き起こすリスクが上がります。
また、たばこの吸い過ぎにも注意が必要となります。たばこは血管を収縮させ、血流の低下を招くからです。胃の血流が低下してしまうと、炎症や潰瘍になってしまうケースもあります。
大量のコーヒーや飲酒は胃に大きな負担をかけ、胃潰瘍の原因となります。また、お腹が空いている時に、濃いコ-ヒ-や炭酸飲料、紅茶などを飲むのは止めましょう。
❺解熱鎮痛剤やステロイドなどの強い薬や長期にわたる服用
薬の長期服用などで胃に大きな負担がかかり胃潰瘍を発症することがあります。
腰痛、関節リウマチ、膝痛などの痛み止めとして使用される非ステロイド系消炎鎮痛薬(NSAIDs/エヌセイズ)や低容量アスピリン、ステロイドなどによる「薬剤性胃潰瘍」もあります。痛みを落ち着かせてくれますが、胃腸の粘膜を荒らしてしまう副作用があって、胃潰瘍を発症する場合もあります。
解熱鎮痛剤を服用したにも関わらず、逆に胃が痛くなってしまっているという時には、早めに病院を受診して下さい。
❻早食い、暴飲暴食など不規則な食生活
暴飲暴食、寝る前に食事を摂る、よく噛まない早食いなど、不規則な食生活は胃には大きな負担です。
▽合併症
胃潰瘍が悪化して以下の合併症を引き起こしている時は緊急手術が必要なケースがあります。
・穿孔
→胃の壁に穴が開いた状態。腹膜炎を引き起こす。
・大出血
→ショック状態に及ぶケースもある。
・幽門狭窄(ゆうもんきょうさく)
→幽門(胃の終わりの部分)が狭くなって食物の通過障害を引き起こす。
▽診断基準
胃潰瘍の診断基準では、「バリウム検査」と「胃カメラ検査(内視鏡検査)」などが挙げられます。
バリウム検査
バリウムを服用した上で、レントゲンで胃の状態を確認する検査となります。炭酸の粉薬である発泡剤と、造影剤であるバリウムとを飲んで、胃を膨らませて検査を実施します。胃の壁にバリウムを付着させ、そこにX線を照射することで、胃のひだや粘膜が観察可能となります。
また現在の胃の形を把握することもできます。バリウム検査は放射線技師が検査を行います。胃カメラ検査(内視鏡検査)に比較しても苦痛が少なく、検査時間も短く済むので、手軽に検査を受けることができます。
ですが、放射線を浴びる検査であること、便秘に気を付けないといけないこと、既往歴によっては受診できないことがあるといった、デメリットもあります。
胃X線検査で異常が見つかった場合は、胃内視鏡検査で精密検査を実施します。
もう1つの検査方法である、胃カメラ検査(内視鏡検査)よりも簡単ですが、胃潰瘍・十二指腸潰瘍の主な原因である、ピロリ菌検査を同時に行うことはできません。
胃カメラ検査(内視鏡検査)
口または鼻からチューブ状のカメラを挿し入れて、胃などの上部消化管を直接目で見て、胃の様子を観察する検査となります。胃以外にも、食道や十二指腸の様子を同時に観察することが可能です。
胃カメラ検査(内視鏡検査)は、医師が検査を実施します。検査中に異常が見つかった場合は、潰瘍部分の組織を採取し、生検することができます。採取する組織の大きさは1mm程で、痛みはありません。
同時に、ピロリ菌の検査を行うことが可能です。また、がんが疑わしい病変が見つかった場合には、病変の一部を採取して、病理組織検査を行うことも可能です。この胃カメラ検査(内視鏡検査)によって、病変が胃潰瘍か胃がんかを区別可能です。
ピロリ菌検査
以下の方法で、ピロリ菌への感染の有無を解析することが可能です。
・血液検査、尿検査
ピロリ菌に感染することで、人間の身体内では菌への抗体を生成します。尿や血液を解析することで、ピロリ菌に対する抗体の有無が判別できます。
・尿素呼気検査
診断薬を飲み、服用前と服用後の吐いた息を収集して実施する検査です。ピロリ菌に感染していると、服用前に比べて、服用後のCO2排出量が増加します。
・便検査
糞便中のピロリ菌の抗原を解析します。
▽治療法
胃カメラ検査で胃粘膜の様相を確認し、出血を引き起こしている時には止血処置を実施します。内視鏡で病変の組織を採取して病理検査を実施し、確定診断をします。
胃潰瘍になる原因の大部分を占めるピロリ菌が胃に存在する時には、除菌治療も並行して行います。ピロリ菌は胃がんや胃炎のリスクにもなってきますので、除菌することが推奨されます。
胃潰瘍は、ピロリ菌を除菌することで、再発率をグッと抑え込むことも可能です。
ここ最近、胃潰瘍に効果の高い薬が誕生して、多くの胃潰瘍は手術を受けずに治療可能となって、適切な治療を2~3ヵ月継続することで完治できることが多くなりました。ですが、症状が消失したからといって、服用を途中で独自の判断で止めてしまうと炎症自体や潰瘍が完治していないことで、胃潰瘍の再発を繰り返してしまう恐れが上がります。
治療薬は用量、用法を守り正しく服用して下さい。胃潰瘍の再発を防ぐためには、かかりつけ医の指示に従い、治療薬の服用を継続しましょう。
ピロリ菌の反応が陽性だった時には除菌治療が有効な手段ですが、潰瘍の様相を薬物療法で改善させてから除菌治療を施す時もあります。1回目の除菌で失敗しても、2回目では多くの方が除菌に成功します。除菌治療に成功すると粘膜が少しずつ正常に戻り、質の良い再発予防効果も獲得できます。
胃潰瘍の症状が軽い場合はH2ブロッカーやプロトンポンプ阻害剤(PPI)といった胃の血流を促進し、胃酸の分泌を抑制する治療薬の処方や注射に加えて、粘膜を守る1~3種類の抗生物質を数週間服薬します。ピロリ菌は治療薬を服用することで、およそ8割の方は除菌に成功します。
貧血や腹痛などの胃潰瘍の症状が強い時や、潰瘍が大きい時、出血を伴っている時などは、2、3日間絶食して点滴治療を実施します。経過観察や症状を落ち着かせることが必要になるので、始めの1~2週間程度は入院治療が必要となります。
最初の胃カメラ検査(内視鏡検査)で胃潰瘍の部位から出血が認められたり、出血後の露出した血管が認められた場合は、胃カメラで確認しながら、出血部の血管を焼きつぶしたり、出血部位をクリップと言われる小さい金具で縛ったりするなどの止血処置を施します。輸血や鉄剤など、貧血への治療が必要なケースもあります。
▽予防策
胃潰瘍の予防策は、原因の多くを占めるピロリ菌を除菌することです。
また、食生活を改善したり、ご自分に適したストレスとの上手な付き合い方を身に付けたりすることも、胃潰瘍の症状の改善と再発予防に役立ちます。刺激物など香辛料の過剰摂取を控える、暴飲暴食、過度の飲酒を止め、禁煙して胃にかかる負担を軽くして下さい。
今からでも改善できることが多くあることで、ご自身の生活習慣を見直して下さい。
ストレスを溜め込まない生活を送ることも胃潰瘍の予防の1つです。適度な運動を意識し、常日頃からストレスを発散する生活を送りましょう。
▽食事療法
・カフェインを含むコーヒー、紅茶、お茶は控えて下さい。
・アルコールは胃酸の分泌の増加を促すため、控えて下さい。
・香辛料を多く使われている料理も控えた方が良いでしょう。
・さつまいも、れんこん、ごぼうなどの根菜やフキ、きのこ類、たけのこ、海藻類、こんにゃく類など、食物繊維の多い食品は消化が悪い食べ物です。控えるか、細かく刻む、柔らかく煮込むなど調理法を工夫することを推奨します。また、脂肪を多く含んだ魚や肉も消化が身体に負担がかかることから、食べる量に注意しましょう。
・少しずつ、量をゆっくりと、よく噛んでから食べましょう。
・毎食の食事量に注意しながら、偏食は見直しましょう。過食は胃に大きな負担がかかります。ご飯や麺類などの主食は茶碗1杯程度を推奨します。炭水化物やたんぱく質は胃潰瘍を治療するのに必要な栄養素となります。たんぱく質は、きちんと程よく時に取り入れましょう。低脂肪の魚や肉などを使用した料理も良いと思います。
・胃潰瘍で痛みがある期間は、うどん、おかゆ、脂肪分が少ない魚や肉、豆腐、ヨーグルト、牛乳、麦茶、番茶を推奨します。
・漬け物や塩辛、干物など、塩分の強い食品は避けて下さい。また、酢の物は酢を控えめにして調理するなど、薄味に調理することを意識しましょう。
以上の注意は、少なくとも胃潰瘍の症状が落ち着くまで2週間続けて下さい。
参考サイト
ストレスの溜めすぎも原因に!?胃潰瘍について 安藤クリニック
胃潰瘍とは?症状や診断、治療について解説 Myメディカルクリニック(2023年)
▽なりやすい人とは?
胃潰瘍は、その人の性格と大きな関わりがあるといいます。
・神経質
・几帳面
・ストレスを溜め込んでしまう人
・一人で責任・悩みを抱え込む人
・生真面目
・よく気がきく
がなりやすいと言われています。
2017年の厚生労働省の患者調査によりますと、胃潰瘍の好発年齢は60〜70代と報告されています。また、男女比は1.7:1と男性に多い傾向だといいます。
私は胃潰瘍ではないですが、過食をよくするので、家族から胃拡張になっているだろうと言われます。
この記事を書いて、過食といった暴飲暴食も胃潰瘍の原因になると知りました。今のところ多分大丈夫だと思いますが、今後胃潰瘍にならないためにも、過食には気を付けたいと思います。
noteでも書いています。よければ読んでください。
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