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こんにちは、翼祈(たすき)です。
コロナ明けしてから、1ヵ月以上が経過しました。街中を歩いていて、マスクをして出勤する人も、1ヵ月以上経過すると、少なくなって来ました。
子ども達もコロナ前の日常を取り戻しつつあります。ですが、最近体育祭などで起きた季節外れのインフルエンザの集団感染、RSウイルスやヘルパンギーナなど、コロナ禍の時には爆発的な感染がなかったことでの免疫力の低下で、様々な子どもの感染症が流行り、病院を受診するケースが増えているそうです。
今回は今流行っている子どもの感染症の1つである、溶連菌感染症について、多角的に取り上げたいと思っています。
溶連菌感染症とは?
溶連菌とは、「溶血性連鎖球菌(ようけつせいれんさきゅうきん)」と呼ばれる細菌の略語です。この溶連菌は「常在菌」の1つで、健康な人の身体にも存在する菌です。
α溶血とβ溶血の2種類があって、後者でヒトに病原性を由来するものは、A群、B群、C群、G群など様々あります。溶連菌感染症の90%以上がA群による感染です。
一般的な感染部位は鼻粘膜、扁桃腺、咽頭粘膜などの上気道です。感染経路は、唾液やくしゃみなどによる飛沫感染が最も多いです。溶連菌感染症による咽頭炎は鼻水や咳は出ないのに、強い喉の痛みが発生するのが最大の特徴です。皮膚症状や発熱も伴う症状を猩紅熱(しょうこうねつ)と呼びます。
溶連菌感染症は、1年中発症しますが、喉は12~3月に、皮膚は7~9月に多い傾向です。5歳から15歳のお子さんに発症することが1番多く、幼稚園や保育所、学校などの集団生活で流行るケースがあります。また、大人も発症するケースがあります。
なお、3歳未満のお子さんでは、溶連菌感染による免疫反応や、溶連菌毒素に対する皮膚所見などが、前述の症状が典型的に現れないケースが多いと言われ、発熱や鼻汁、咳、元気がない、哺乳不良などの非特異的な症状を出ます。
5〜15歳のお子さんの咽頭炎の15〜30%は溶連菌が原因とされています。
A群β-溶血性連鎖球菌には様々なタイプがあり、4~5回は再感染する恐れがあるとされています。前に感染した溶連菌とは別の型の溶連菌だったケースや、前回の治療が十分に終えていなかったことで、身体内に菌が残っていたために再発するケースなどもあります。
▽症状
溶連菌感染症の代表的な症状は、頭痛と発熱(38〜39℃)、全身倦怠感、食欲不振、唾を飲み込むと痛い“喉”の痛みです。ですが、3歳未満ではほとんど熱が高く出ないとされています。そして、体や手足に小さくて紅い発疹である猩紅熱が全身に出て、紙やすりの様にざらざらとした感じのブツブツで、痒くなることもあります。イチゴ舌と呼ばれている舌にいちごの様なツブツブができたりする場合もあります。扁桃に白色〜黄色の膿が付いて、喉はかなり赤くなります。
それ以外にも首すじのリンパ節や、喉の腫れ、口の中に白い部分ができて、出血斑という赤いぼつぼつが口の奥にできたり、膝、肘、足、腰など比較的大きい1~3㎜程度の関節の痛みが起きて、腹痛や吐き気、嘔吐などの腹部症状も出ます。急性期を迎えると、発疹の後で落屑(らくせつ)という皮むけが認められる様になります。
風邪と異なり咳やくしゃみ、鼻水や鼻詰まりが出ないというのもこの溶連菌感染症の特徴です。溶連菌感染症には潜伏期間があり、実際に感染してからおよそ2〜5日経過して症状が出ます。
症状の重い風邪・インフルエンザと類似した症状になります。 特に11月~2月の冬の期間の感染ではインフルエンザとの診断の区別が困難になる季節になります。
症状は3〜5日で落ち着いてきます。
▽感染経路
菌の付いたタオル・ドアノブ・おもちゃ・食器・お箸・リモコン・コップ・手すりなど他の人がに触って唾液が付いて、菌の付いた食品から感染し、目や口などの粘膜に付くことで感染する飛沫感染や、口を拭いたり、食器の共有で直接感染者から飛んだ分泌物・唾液を口・鼻などから吸い込み、触って感染する接触感染が主な感染経路です。
また、溶連菌は感染力が非常に強いことで、家族内感染の確率は、きょうだいで50%弱、親御さんで20%程度とされています。喉の痛みや発熱がある時は、検査して菌が出ていれば抗菌薬などで治療します。
一人が感染すると、きょうだいや親御さんも感染する可能性の非常に高い病気なので、しっかり感染対策を行うことが重要となります。
溶連菌感染症に感染しやすい年齢は、お子さんは4~12歳※ピークは5~10歳で、大人も感染します。
▽合併症
日常よく見受けられる病気では、
・膿痂疹(のうかしん)
・急性咽頭炎
・猩紅熱(しょうこうねつ)
・蜂窩織炎(ほうかしきえん)
などが挙げられます。これら以外の病気にも、
・髄膜炎
・丹毒(たんどく)
・肺炎、中耳炎、骨髄炎、リンパ節炎、気管支炎、副鼻腔炎、化膿性関節炎
・とびひ(伝染性膿痂疹)
・敗血症
なども引き起こすケースがあります。また、菌が直接悪さを行ったわけではなく、感染した人の免疫を通して、
①結節性紅斑
②溶連菌感染後急性糸球体腎炎
③リウマチ熱
なども重大な合併症を引き起こすケースがあることも知られています。
①結節性紅斑は、主に「すね」に出る痛みを伴う赤色の皮疹のことを指し、手足に紫色の出血斑が出現し、関節痛、むくみ、腎炎、腹痛を起こします。そのほとんどは特発性と呼ばれる原因不明な場合もありますが、続発性の中で1番多いのは溶連菌感染症が原因となります。(それ以外では、サルコイドーシス・ベーチェット病など)
数週間の経過を迎えしこりと色素沈着を残して回復しますが、完治までに長い時間がかかるケースと慢性型に移行するケースがあるので、注意が必要となる疾患です。
②溶連菌感染後急性糸球体腎炎は溶連菌感染症に感染してから2~4週間して症状が出ます。尿の回数が少なくなり、コーラの色の様な黒っぽい血尿が大きな症状の特徴です。また、たんぱくを含む尿が出ている場合には尿が泡立ちます。顔面や上まぶたが腫れ、足がむくんでいきます。一過性の高血圧にあり、頭痛が起こる場合もあります。
回復後は良好ですが、入院して食事制限が必要となる場合もあります。溶連菌感染後急性糸球体腎炎を見逃さない様に2~4週間後に尿検査を行います。この時点では、尿検査では異常数値が出なくても、その後に溶連菌感染後急性糸球体腎炎を発症するケースもあります。まぶたや顔面の腫れや明らかな濃い黒っぽい血尿が出ているケースでは注意を払って下さい。
発症してから、時間の経過することで自然に回復していきますが、時々尿所見異常が持続し腎機能障害が残るケースもあって、こちらも注意が必要となる疾患です。
③リウマチ熱は、発熱して病型で、心炎によって起こる胸痛または動悸、息切れや移動性の多関節炎、皮膚の発疹やしこり、多関節炎、輪状紅斑、皮下結節、心臓弁膜症などの症状が出ます。
また、リウマチ熱に感染した後何ヵ月か経ってから手足が自分の意志と関係なくクネクネと不随意に動いてしまう、舞踏病が起こるケースもあります。
特に心臓などで炎症が出ていると、後遺症が残る恐れもあって、後遺症が残らないように「いかに早く溶連菌感染症を治療を始めるか」がキーとなります。
20-30年前にはリウマチ熱は小児科の日常診療でよく見かけた症状でしたが、現在ではリウマチ熱の存在が広く浸透し、社会環境が整備され、早期の検査と治療ができる様になったことで、リウマチ熱を発症することは極めて珍しくなりました。
▽劇症型溶連菌感染症
溶連菌感染症の中に劇症型というものがあって、かつて「人食いバクテリア」と呼ばれて恐れられ、多くの人に知られる様になりました。日本では1992年に初報告がされ、30-70歳代の大人に多い症状ですが、お子さんでもみられます。
劇症型溶血性連鎖球菌感染症を発症する感染者では、免疫不全などの重い基礎疾患をほとんど持病にはないにも関わらず、突然発病するケースがあります。
劇症型溶連菌感染症の初期症状では、発熱、手足の痛みや腫れ、血圧低下などから現れます。発病して病状の進行のスピードが、非常に急激な悪化かつ劇的なのが最大の特徴に挙げられます。
劇症型溶連菌感染症を発病してから数十時間以内には、軟部組織が壊死し、急性腎不全に至り、成人型呼吸窮迫症候群 、多臓器不全、播種性血管内凝固症候群を引き起こし、ショック状態に陥って死に至ることも多い病気となります。
とても珍しい感染症ではありますが、毎年100~200人が感染し、その約30%が亡くなっていて、死亡率の高い病気となります。
近年、妊産婦でも溶連菌感染症に感染した後この劇症型溶連菌感染症に至った事例も報告されています。
▽診断基準
◉迅速診断
→綿棒で喉をぬぐって溶連菌が存在しているか否か、溶連菌のたんぱく質との反応を見ながら診断する方法です。病院内ですぐ判明する検査です。検査結果が判明するまでの時間はおよそ5-10分間です。
迅速診断キットは、他のタイプのA群連鎖球菌でも陽性反応が出たり、溶連菌の数が身体内に少ないケースでも陰性反応が出るケースもあります。その上、ただ咽頭部分に溶連菌を保菌している時だけであっても陽性反応に出るケースがあることもあって、症状と照合しながら判断する必要性が求められます。
◉抗体検査
→血液の溶連菌の中の特定のたんぱく質の上昇が有るか否かを確認する方法です。検査機関で分析する必要があるので、結果が判明するまでに時間を要します。
溶連菌感染症に感染すると、身体の中にあるASOとASKという特定のたんぱく質が上昇していきます。この2つのたんぱく質を測定することで、溶連菌感染症に感染しているか否かを判断します。
ASOなどが上昇するケースでは、早くても溶連菌感染症に感染してから1週間後経過していて、一般的に2週間程度とされています。そのことで、急性期の溶連菌感染症の診断には余り適切ではありません。
ASOなどは、溶連菌感染症に感染してから3〜5週間後(およそ4週後)にピークに達します。2〜3ヵ月で正常値まで回復する場合が多く見られます。
◉培養検査
→リウマチ熱や溶連菌感染後急性糸球体腎炎などを合併している疑いがある時に実施します。喉の擦過物を培養し、溶連菌が身体内に存在しているか否かを目で確認を行う方法です。検査機関で分析する必要があるため、結果が判明するまでに時間を要します。
病院を受診する前や培養検査を実施する前に抗生剤を飲んでいると、溶連菌感染症に感染していても溶連菌が培養検査で検出されないケースがとても多くなります(抗生剤を飲んでいる6〜12時間後には、咽頭培養検査を実施したとしても、培地があることで、溶連菌が増殖しません)。A群溶連菌というタイプの菌は健康体な状態の人であっても、鼻や咽頭に保菌されている場合もあります。
▽治療法
予防できるワクチンがないことで、溶連菌感染症の治療のメーンとなる治療法は抗生剤治療となります。溶連菌感染症は抗生物質治療をした方が良いとされる喉の感染症の数少ない1つと言えます。
ペニシリン系の抗生物質(ワイドシリン、サワシリン、パセトシンなど)を使います。ペニシリン系の抗生物質にアレルギーを抱えている時にはエリスロマイシン(エリスロシンなど)、クラリスロマイシン(クラリシッド、クラリスなど)を使います。
また、セフェム系の抗生剤(フロモックス、メイアクトなど)などを使う時もあります。リウマチ熱、溶連菌感染後急性糸球体腎炎など、非化膿性の合併症を防ぐためには、少なくともペニシリン系の抗菌物質であれば10日間、セフェム系の抗生剤であれば7日間は確実に飲み続けることが必要となります。
抗生物質による治療の目的は合併症を防ぐことであり、溶連菌の合併症である中耳炎、扁桃周囲膿瘍、副鼻腔炎、リウマチ熱、溶連菌感染後急性糸球体腎炎などになる可能性を少なくしてくれます。ですがその他の合併症には予防効果は見受けられません。
迅速に使用することで症状はかなり改善します。溶連菌感染症の診断が付いて、抗生物質をきちんと飲み続けることで、通常24時間以内に周りの人へ移る溶連菌感染症の感染リスクは、ほとんど消えます。
抗生物質を飲むことで、下痢などの副作用が現れる場合もあります。下痢など気になる症状が出たら、病院を受診して下さい。
翌日には溶連菌感染症の症状が落ち着いたと油断して、途中で薬を飲まなくなる人がいますが、それは非常に危険な行為です。溶連菌は、薬を途中で飲まなくなった途端にまた増殖していきます。
途中で飲まなくなることで、溶連菌感染症の再発やリウマチ熱、結節性紅斑、腎炎などの合併症を引き起こす恐れもあることで、完治したと思ってもぶり返すことが大いにあるため、病院で処方された薬は全部飲み切ることが非常に大切です。また、薬を途中で飲まなくなったことで薬剤耐性菌を生み出す素因に結び付きます。
また、18歳以下のお子さんでも使うことができる消火鎮痛剤を処方します。※大人用鎮痛剤の中には、お子様が飲めないタイプの薬剤もありますので注意が必要となります。水でのうがいも有効な治療法です。
▽再診の目安
「苦しそう」「反応が鈍く、ぐったりしている」など全身症状が悪化した時、「耳を痛がる」「コーラみたいな色の濃い血尿になった・尿が出ない」など、普段は違う症状や症状の改善が見受けられないケースには、早期に病院を受診して下さい。
▽予防策
溶連菌感染症の基本的な予防対策は手洗いとマスク着用の咳エチケット、うがいです。なお、溶連菌感染症にはアルコール消毒も有効な方法となります。
日常生活で出るくしゃみや咳、鼻水などにも溶連菌が潜んでいるため、鼻水を取ったり、食器を触った後などはしっかりと手洗いをして、アルコール消毒をして下さい。また、親御さんはお子さんとの食器共用を溶連菌感染症の感染期間中は止めましょう。
喉に痛みがあって、食事を摂ることが困難なケースには、ヨーグルトやプリン、ゼリー、冷ましたおかゆ、柔らかく煮たうどん、アイスクリームなどを冷ましたものなどのど越しが良いものを食べさせる様にしましょう。
※オレンジジュースなど酸味がある食品は、喉に染みる恐れもあるので、避けた方が良いです。熱かったり、辛かったりする食品なども、喉に刺激を与えるので避けるようにして下さい。
▽登園・登校の目安
溶連菌感染症は、学校保健法で定められた管理を受ける「条件によっては出席停止の措置が必要な病気」の感染症の1つとなります。
少なくとも、病院を受診した日とその翌日は出席停止が求められている感染症です。抗生剤を飲み始めてから24時間以上経過して、全身の状態が良い状態になれば登園・登校もできます。
▽溶連菌の「保菌者」について
→ 学童の20%位が溶連菌の保菌者と言われます。保菌とは、のどに菌が住み着いているものの、感染は起こしていない状態です。この場合「のどの痛みや熱」などの症状はなく、治療の必要も周囲に感染することもありません。のどの痛みがない場合や、繰り返し溶連菌が検出される時は、単なる保菌者である可能性が高く治療は必要ありません。
参考サイト
子供も大人もかかる溶連菌感染症について【原因・症状・感染経路 ひまわり医院(内科・皮膚科)
溶連菌感染症とは?原因・症状・治療方法について解説|【医師監修】救急病院一覧あり 新宿ホームクリニック
溶連菌感染症ってどんな病気?合併症にも注意が必要 クリニックプラス
日本のワクチン事情。
溶連菌感染症については、SNSで「今流行っている子どもの感染症」の投稿で、知りました。
コロナワクチンは義務化ではなく、任意なので、打つ人はかなり減りました。コロナワクチンに抱いた悪い影響が、他のワクチンへの意識にも波及していました。
はしかの記事を書いていた時に知った話ですが、コロナワクチンでワクチン全体をよく思わなくなったことで、親御さんがお子さんに定期接種指定の他のワクチンの接種を、適齢期になっても打たせず、ワクチンの接種率そのものも大幅に低下しているそうです。
私が思うに定期接種のワクチンは、発症後重篤な後遺症が残ったりと、重大な問題が過去に多発して、予防できる感染症は、ワクチンを打って予防していきましょう、になったと思うんです。
私も定期接種のワクチンを打っていたので、おたふくかぜも、りんご病も軽症だったと思います。
この記事で書いた溶連菌感染症にはワクチンはありませんが、ワクチンがある感染症は予防できたり、発症しても軽症で済む。
私は定期接種のワクチンまでも遠ざけず、守れる大切な生命は、ワクチンを打って守って欲しいなと思っています…。
noteでも書いています。よければ読んでください。
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