石灰沈着性腱板炎~治療方法・予防対策

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はじめに

ある日のこと、同僚のYさんが右腕を三角巾で吊るしながら職場にやってきました。どうやら、骨折ではないらしいです。お話を聴いてみると骨が石灰化したと言っています。スマホでレントゲンの写真を見せてくれました。右肩の腱板の骨の辺りに小さな塊の影が映っていました。それが下記の写真です。

「どうして、石灰化しているってわかったのですか?」と尋ねたら、腕が上がらないなと思ったら、骨が折れたくらいの激烈な痛みを感じたそうです。そして、その痛みのせいで夜眠れなかったと言っていました。

それが、「石灰沈着性腱板炎」の典型的な症状だったのです。

石灰沈着性腱板炎とは、腱板という、肩のインナーマッスルが骨につくところに、カルシウムがたまる疾患です。

肩の使い過ぎで起こるものではなく、原因は不明ですが、その多くは自然に軽快する疾患です。

石灰沈着性腱板炎と五十肩の違い

石灰沈着性腱板炎は五十肩(肩関節周囲炎)とよく似ている症状ですが、五十肩とは、肩関節を覆っている関節包に炎症が起こっている状態のことで、筋肉が炎症を起こしているわけはなく、石灰沈着性腱板炎は筋肉に炎症が起こっている状態のことです。

自分で肩を回した時に痛みがあれば、石灰沈着性腱板炎寄りの症状となり、他人に肩を回してもらって痛みがある場合は五十肩よりの症状となります。

治療方法

激痛を早く取り除くためには、腱板に針を刺し、濃厚なミルク状の石灰を破り、石灰を吸引する治療が多く取られます。三角巾やアームリングで固定して安静をはかり、消炎鎮痛剤の内服や、水溶性副腎皮質ホルモンと局所麻酔剤の注射などが有効です。

多くの場合、保存療法で痛みはやわらぎますが、石灰の塊が石膏状に固くなり、激しい痛みが再び起こることもあります。痛みが強く、肩の運動に支障がある場合、手術で取り除くこともあります。

また、体外衝撃波という治療が行われることもあります。圧力波で衝撃を与え、石灰を砕き吸収を促し、血管新生を促し、神経に作用して痛みを感じにくくするといった順番で痛みを治療していきます。国内でも専門の器械を取り入れ、治療に使用している施設が増えてきています。

痛みがとれたら、ホットパック、入浴などの温熱療法や拘縮予防、筋肉の強化などの運動療法、つまりリハビリを行います。

予防対策

石灰が沈着する理由ははっきりしませんが、体内のカルシウム代謝異常や、腱板の変性が関係すると言われます。女性ホルモンに関係して起こる症状であり、閉経期前後の40~60歳代の女性に多くみられます。

水分不足で起きやすいとも言われています。脱水に気を付けてこまめに水分補給をすることをおすすめします。

石灰沈着性腱板炎は治っても再発することがあるため注意が必要です。

終わりに

石灰沈着性腱板炎は、自然に軽快することが多く、約500人に痛み止めの内服、ステロイド注射、理学療法(リハビリ)を3か月行うと73%の方は痛みが軽快します。

それでも、改善しない場合、石灰の穿刺吸引、体外衝撃波などの治療が行われ、さらに難治性の場合には手術が行われます。

約9割の患者さんは飲み薬や注射、衝撃波や石灰の穿刺吸引で改善します。残りの1割の患者さんが痛みが続き、日常生活に支障をきたし、手術することになります。

同僚のYさんも注射を受けて、保存療法で痛みが軽減していったと言っていました。

私も石灰沈着性腱板炎になりやすい一人として、こまめに水分補給していこうと思います。



参考サイト

石灰沈着性腱板炎(せっかいちんちゃくせいけんばんえん) – 独立行政法人国立病院機構 霞ヶ浦医療センター (hosp.go.jp)

いまがわ整骨院・鍼灸院 『五十肩』と『石灰沈着性腱板炎』の違い

 

noteでも書いています。よかったら、読んでみてください。

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