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はじめに
皆さんは児童婚(チャイルド・マリッジ)という言葉を知っていますか?
「18歳未満での結婚、またはそれに相当する状態にあること」を国連では児童婚と定義し、女の子や女性の人権を大きく損ねることとなっているこの問題に、厳しい態度を取っています。
これまで子どもの人権に関する記事を何件か書いてきましたが、今回はかなりヘビーな内容となっています。ですが、非常に大切な内容ですので、ぜひ最後までお付き合いください。
児童婚(チャイルド・マリッジ)の悪影響
児童婚は、子どもの権利の侵害であり、子どもの成長発達に悪い影響を与えます。女の子は妊娠・出産による妊産婦死亡リスクが高まるほか、暴力、虐待、搾取の被害も受けやすいのです。また、学校を中途退学するリスクも高まります。
児童婚は特別なことではなく、世界各地で起こっている
現在、世界の6億5000万人以上の女性が、18歳未満での結婚、または法律婚ではない形でパートナーと同居し生活をしています。
そして世界の20歳~24歳までの女性の19%、実に5人に1人が、18歳未満でパートナーと結婚または同居をしています。
児童婚が最も多く行われているのは低所得・中所得の国で、その42%が南アジア、26%が東アジアと太平洋地域、17%がアフリカで暮らしていると言われています。しかし、これはどの国であっても起こりうるものです。
また全ての児童婚やパートナーとの同居が、親や保護者の決定でなされたものではなく、18歳未満の若者たちが、自ら児童婚を選択する場合があります。
その理由として、親から独立するためや、深刻な貧困や家庭内暴力などの困難から避難するためなど、それぞれに抱えた生きづらさを解決する手段として選ばざるを得ない状況にあります。
また、婚外の性行為は制限されるため、性行為を正当化するための手段に使われることもあります。
妊娠・出産のリスク
児童婚は若年妊娠につながる行為です。発展途上国の思春期の少女の出産はほとんどが婚姻関係にあります。
十分に身体が発達していない少女の妊娠、出産は深刻なダメージを体に与えます。
世界中の15歳から19歳の少女の死因のうち最も多いのは、妊娠・出産に関わる合併症です。
児童婚は世界的に禁止されているが、厳密には守られていない
世界で最も広く賛同されている人権協定である、子どもの権利条約(CRC)と女性差別撤廃条約(CEDAW)では、児童婚を禁止しています。
この2つの条約は、ほぼすべての国によって署名・批准されているにも関わらず、国や地域の法律により、条約の趣旨の解釈が異なる場合があります。
例えば、親の同意、宗教法、慣習法の下での児童婚を認めている国があったり、法的に登録されない結婚も多く存在しています。
児童婚を違法としている地域でさえ、厳密には守られていない場合があります。
児童婚を終わらせるためのコストは、手の届かないものではない
ここまで世界の児童婚についての問題を述べてきました。これを終わらせるのは相当に時間やコストのかかることだと思われたかもしれません。ただ、意外に思われるかもしれませんが、そのコストは実は全く手の届かないものではないということが示された例があります。
2019年11月、UNFPA(国連人口基金)は、児童婚の90%を占める、68の国々で終了させるために必要な費用を試算した結果を公表しました。
それによると、「68ヵ国で2020年から2030年の間に児童婚を終了させるためには350億ドルしかかからない」ということです。
報告書では、「1件の児童婚を防ぐための費用は、600ドルである」と述べられています。
具体的な取り組みとして、教育への介入、エンパワーメントの取り組み、生計スキルトレーニングおよび児童婚に関する社会規範を帰るプログラムに350億ドルの投資をすれば、約5800万件の児童婚をやめさせることができるとのことです。
また、結婚を免れた少女たちに教育を施せば、地域社会の活性化に繋がり、大きな利益が見込まれます。
児童婚を無くすために
児童婚の背景には、経済的な要因、教育の欠如などの構造的な要因、古くからの慣習などの社会的要因があります。
慣習的なものは特に根強く、考え方を変えるには時間がかかることですが、ユニセフなどの支援団体などが地道に活動を行い、児童婚の根絶に取り組んでいます。
児童婚を無くすことは、女性の社会参画や貧困の連鎖を止める手助けとなります。教育や権利を与えられた女の子は、自分たちの子どもにより良い栄養や適切なケアを提供することができ、より豊かな生活を送れるようになります。
ユニセフは下記の様な支援を児童婚を無くすために行なっています。
- 女の子が教育を受け続けられるようにする支援
- 両親や地域の方に対し、女の子が成長してから結婚することの大切さを伝える啓発活動
- 女の子の家族への経済的な支援
- 児童婚根絶のための法整備に関する支援
こうした状況を知ってもらい改善するために、アンジェリーナ・ジョリーがプロデューサーとなって2014年に制作された映画がありますので最後にご紹介します。
児童婚をテーマにした映画「チャイルド・マリッジ」
あらすじ
舞台は、エチオピアの郊外。14歳の聡明な女子中学生ヒルトが下校途中、男たちに攫われた。彼女はライフルを手に軟禁生活からの逃亡を図るが、強引に結婚させられそうになった男を誤って射殺してしまう。彼女の村には、結婚のために娘を誘拐するという、伝統的なしきたりが、いまだに残っていたのだ。絞首刑に処せられそうになるヒルトであったが・・・・
『チャイルド・マリッジ 掠奪された花嫁』予告編
終わりに
児童婚は、日本では関係ないことではありません。日本でもつい最近まで、女性は16歳から婚姻できました。国連の基準からいいますと、日本は民法で男子は18歳、女子は16歳から結婚できるということになっていましたので、これは児童婚です。国連からは、子どもの男女の差別であり、また、児童婚を許しているということでもう何度も言われてきて いた問題でした。
日本の政治家にも「女性は子を産む機械」と発言したように、女性を「モノ」扱いしている例がありました。世界各国でも、女性を「モノ」扱いしている文化、宗教などが根強くあります。
女性にもしっかりとした教育と適切なトレーニングを受けられる機会があれば、男性と同等に社会で活躍することができます。
この記事を最後まで読んでくださった皆様方に、改めてジェンダーの平等について考えてみてはいかがでしょうか。
参考サイト
gooddo SDGs目標5「ジェンダー平等を実現しよう」の取り組み内容とは?
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