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はじめに
皆さんは子どもの権利条約を知っていますか?
日本ではあまり知られていないのが実情です。
日本は、1994年に子どもの権利条約に批准しました。
158番目の批准国です。これは非常に遅いと言われています。
なぜ、そのような経緯に至ったのか。そして、子どもの権利条約とは一体どんなことを意味するのかをなるべくわかりやすく、ご説明していきたいと思います。
「子どもの権利条約」とは
子どもとは18歳未満の人のことを指します。大人と同じく一人の人間として権利が認められています。さらに、成長途中である、弱い立場ににある子どもたちには特別な保護や配慮が必要な面もあり、子どもならではの権利も定められています。
「子どもの権利条約」には、4つの原則があります。この4つの原則は、それぞれ条文に書かれた権利であると同時に、条約で定められているほかの権利を考えるときに、常に合わせて考えることが大切です。
画像引用 子どもの権利条約カードブック
「子どもの権利条約」には、親(保護者)に責任があることを定めています。子どもたちの発達に応じてその権利が実現するよう指導する責任があり、条約にある権利が実現するよう法律などを整備し、最大限に利用できる手段を用いることを定めています。
条約に入った国は、大人と子どもに、この条約の内容を知らせるように定めています。
子どもの権利条約ができるまで
第二次世界大戦で多くの子どもたちの犠牲者が出ました。
その反省のもとに国連では以下の流れで、「子どもの権利条約」が作られてきました。
- 1948年「世界人権宣言」
すべての人は平等であり、それぞれが同じ権利をもつとした宣言
- 1959年「児童の権利宣言」
子どもは子どもとしての権利をそれぞれもつとした宣言
このときから、宣言だけでなく実際に効力のあるものができないかと考えられはじめました。
- 1978年「子どもの権利条約」の草案(はじめの具体的な案)がポーランド政府から提出される
- 1979年「国際児童年」
「児童の権利宣言」20周年。世界中の人が子どもの権利について考える機会になった。
国連人権委員会の中に「子どもの権利条約」の作業部会が設置される。
- 1989年「子どもの権利条約」国連で採択
ユニセフや多くの国の10年にわたる努力がみのる。
- 1990年「子どもの権利条約」が国際条約として発効
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2015年に南スーダンとソマリアが批准し、2019年2月現在、196の国と地域がこの条約を締約しました。
未締約国はアメリカ合衆国、1カ国だけです。
〈参考サイト〉子どもの権利条約 ユニセフ
4つの権利
この条約の定める権利には、大きく分けると以下のようなものがあります。
画像引用 子どもの権利条約カードブック
例えば、下記の様な親からの暴力や不当な扱いなどから守らなければならないという第19条や、
画像引用子どもの権利条約カードブック
教育を受ける権利について示された第28条などがあります。
画像引用 子どもの権利条約カードブック
この条約に日本は1994年に批准し、世界の中でも158番目の批准国で、非常に遅いです。
遅かった理由
一つは、紛争国や途上国のように国内外で武力紛争があるような国とか、乳幼児死亡率が高いとか、ストリート・チルドレンがいるような、そういう問題がある国のためにあるものだから、日本には必要ないという感覚に基づいた判断です。
もう一つは、当時の学校の現場からの不安で、校内暴力とか学級崩壊などでただでさえ言うことを聞かず、荒れている子どもたちに権利なんて教えたらどんなことになるのだという、そういう現場に立つ先生たちからの不安の声があったなどが背景にあったとされています。
〈参考サイト〉世界と日本における子どもの権利をめぐる動き(注) 弁護士・国連「子どもの権利委員会」委員 大谷 美紀子
2019年の3万人アンケートの結果から見る現状
子どもの権利条約に関する、2019年の3万人アンケートの結果から現状を見ていこうかと思います。
以上のように、約4割の大人が聞いたことがないと回答しており、「子どもの権利条約」はそれほどまでに認識されていないことが分かります。
また、大人と対等な立場であるという認識も薄く、「子どもだから」という理由で大人の都合によいように取り扱われている印象を受けました。
また、子どもと大人の半数ずつが第19条の「親からの暴力やひどい扱いから守られること」について、今の日本では守られていないと感じていることもこれらの資料から読み取ることができます。
子どもたちの声 ~子どもの権利が守られていないと思うとき~
こちらは「あなたはどのような時に子どもの権利が守られていないと感じますか。」という質問に対する、15〜17歳の子どもたちから寄せられた回答です。
第6条 生命の権利、 生存・発達の確保
- 簡単に殺されていると思う。
第2条差別の禁止
- 生まれる場所や生まれる家は自分で決められるわけではないのに、それを他人から評価されたり、 区別されたりするとき。
- 未だに障がいがある子ども、LGBTQの子どもがいじめられたり、暴力を受けたりしているから。
第3条子どもの最善の利益
- 学校で起きるいじめの問題や、家庭内のトラブルによる子どもの自殺、死亡のニュースを見たとき、子どもは大人の利益のためにさまざま制約に閉じ込められているように感じてしまうから。
第12条意見表明権
- 「子どもだから」とか「子どもの考えなんて」とかいう理由で子どもが必死に頑張って意見を述べても相手にしてくれない大人が多いから。
第19条親による虐待・放任・搾取からの保護
- 大きな事件が起こってからじゃないと、警察や、社会福祉が動かない現状だと思います。子どもの寂しさという目に見えないものは無視し、身体の傷などの目に見えるものだけで判断して、ホントの事、ホントの気持ちを言えない子どもたちは気持ちを吐く場、居場所がありません。
子どもがもっと暮らしやすくなるために、国や地域、家族にのぞむこと
さらに、アンケートではこのような意見が挙げられています。(15〜17歳の回答)
- 相談しやすい環境や空気を作ること。
- 貧困対策。育児放棄や虐待への対策。いじめへの対策。学校の過度な校則を減らす。子どもと大人と同じ一人の人間として扱うこと。
- 特に国や行政がより多くの公共サービスを提供し、その成果をはっきりと示す機会をもうけてほしい。
- 家族だけの閉鎖的な環境で子どもを育てるのではなく、子どもが自分の環境を選べたらいいと思う。そのために家庭だけに子どもを押し付けるのではなく、国や地域で子どもを育てていくという考え方を望む。
大人の入り口に立つ思春期の子どもたちの意見に大人はもっと耳を傾けるべきだと思います。
終わりに
日本では、良くも悪くも、子どもの教育は家庭内でおさめるべきだという考え方が主流だと思います。子どもの問題は親の責任という考え方のもとパターナリズムが横行し、本当に子ども自身の利益になっているのか疑問を持つケースも数多くみられます。
子どもの権利条約は国際的に長い年月をかけて取得された正当な権利です。日本でもその教育は必要だなと思いました。
昨今のいじめ問題の報道を見るたびに、それは「いじめ」ではなく、犯罪ではないかと私も思ってしまう事件が起きています。これは深刻な人権侵害が起きていると感じました。少年犯罪の厳罰化の前にキチンと人権教育をしてから、何が悪かったのか子ども自身も責任を取らせるようにしたら良いのではないかと個人的に考えてしまいます。
もちろん、その少年犯罪の温床に保護者などによる大人からの虐待が背景にあり、大人自身にも子どもの人権に対して希薄さがあり、大人の都合で子どもが搾取されているケースも数々あります。
社会全体が子どもたちの権利を知り、人と人の対等性のあるコミュニケーションの仕方など、我々大人自身も勉強してから子どもたちを教育していく必要性があることを痛感しました。
参考サイト
子どもの権利条約 採択30年 日本批准25年 3万人アンケートから見る 子どもの権利に関する意識
世界と日本における子どもの権利をめぐる動き(注) 弁護士・国連「子どもの権利委員会」委員 大谷 美紀子
noteでも書いています。よかったら、読んでみてください。
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