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コロナ禍の現在でも、理由があって外出する機会はあると思います。
通学、通勤だけでなく、その他の用事ということもあるでしょう。
そんな外出時、公共交通機関を利用するという方は少なくないと考えます。
誰でも使える公共交通機関ですが、時には嫌な思いをしたり、危ない目にあったりすることで、安心して利用できなくなることも。
誰もが安心して公共交通機関を利用できるようになるには、どうすれば良いのでしょうか。
今回の記事では、最近話題になった公共交通機関での迷惑行為の問題や、各種マークを巡る問題などについて見ていき、どうすればより安心な社会になるのかを考えてみたいと思います。
事例①〜悪用されたアナウンス〜
車椅子を利用している方や、視覚障害者の方が公共交通機関を利用する際、アナウンスが流れることがあるのをご存知でしょうか。
車椅子や視覚障害のお客様をご案内している旨の放送。
時には、どの号車に乗られ、どちらで降りられるかなどの情報もアナウンスされ耳に入ることがあります。
鉄道会社の乗務員同士で情報を共有し、スムーズにお客様をご案内するためのアナウンスですが、その情報が乗客にも聞こえることを悪用し、迷惑行為をする困った人が世の中にはいるようです。
車椅子利用者の女性や視覚障害者の女性が乗った号車にわざわざ乗ってきて、執拗に話しかけたり、付き纏ったり、体に触ったり。
そうした被害の報告が、障害者団体で作る「DPI日本会議」に10件以上寄せられていることが、明らかになったのです。
これを受け、DPI日本会議は国土交通省に対し、アナウンスが悪用されているとして、対応を求める要望書を提出。
国土交通省は、全国の運輸局に出した通知で、アナウンス以外の方法で情報共有することを検討するよう、各鉄道会社に働きかけることを求めました。
事例②〜マーク携帯で危険な目に〜
ヘルプマークやマタニティマークというものをご存知でしょうか。
ヘルプマークは「見た目では分かりにくい障害や制約を抱えた人」のためのマークで、マタニティマークは「妊娠している人」のためのマークです。
ヘルプマークについては、AKARIにも記事がありますのでそちらも良ければご覧ください。
助け合いのしるし「ヘルプマーク」を知っていますか?
うつ病viviの想い「普及してほしい!赤と緑のヘルプマーク」
ヘルプマークもマタニティマークも、対象になる人こそ違いますが、「配慮を必要とする人である」ということを示すという意味では同じです。
これらのマークは、周囲に配慮を促すと同時に、緊急時に一目見ただけで情報が伝わりやすくなるように作られています。
例えば、道端でうずくまっている人がヘルプマークをつけていたら、何か目に見えない障害や疾患が理由でうずくまっている可能性にすぐ思い当たることができます。
持っていることで緊急時に備えることができ、お守りのように持ち歩いている人も少なくないヘルプマークやマタニティマークですが、残念なことにこれらを持っている人に対して嫌がらせや迷惑行為を行う人がいます。
例えばマークをつけた人に対する暴言であったり、マタニティマークをつけた人のお腹を叩こうとしたり、あるいは実際に叩いたりという事例もあるようです。
マタニティマークをつけている・つけていた人の10人に1人ほどが、マークをつけていたことで不快な思いをしたり危険な目に遭ったりしていた、というアンケート結果も確認できました。
そうした話はネットなどですぐに情報として出てきます。
そのため、既にマークを持っている人も、これから持とうか考えていた人も、マークを利用することを躊躇うようになってしまい、せっかく作られたマークの普及がまた一歩遠のいてしまうという結果を招いています。
アナウンスを止めれば解決する?
車椅子利用者や視覚障害者をサポートする上で、必要であるから行われているアナウンス。
それが悪用されているとなると、何か対策を講じなければなりません。
鉄道会社によっては、アナウンスではなく、乗客には聞こえない鉄道無線を利用したり、ホームドアに設置したライトで連絡を取り合ったりするところもあるそうです。
そうした方法へと変えていけば、確かに迷惑行為の被害は少なくなるでしょう。
ここで筆者は、その迷惑行為は、アナウンスがなければ完全に防げるものなのか、と考えました。
残念ながらそれは違うと思っています。
アナウンスがなくても、たまたま居合わせてしまえば、車椅子や白杖を見て障害者がいることはすぐにわかってしまいます。
わざわざ同じ車両に乗ってきて、迷惑行為を働く人間がいないとは残念ながら言い切れません。
できる対策を講じても、100%は防げない。
迷惑行為を減らしていくには、やはり周囲の人間による協力が不可欠であるように思います。
困っている様子の人がいたら、障害者だろうとそうでなかろうと手を差し伸べられる社会になれば、迷惑行為はさらに減るだろうと思います。
しかしそれはとても難しいことです。
助けに入ったことで逆に助けに入った側が次の被害に遭ってしまうことも考えられ、そうした想像が働くからこそ、困っている人が目の前にいてもなかなか体が動かないものです。
改めて、この問題を解決する方法を編み出すことの難しさを痛感しました。
迷惑行為に対する罰則を強化するくらいしか、他には思い当たりませんでした。
そしてそれは、ヘルプマークやマタニティマークの問題についても同様だったのです。
マークについてもっと知ってもらいたい
ヘルプマークやマタニティマークには、未だ認知率が十分でないという問題点があります。
ヘルプマークを知っている人の割合はおおよそ50%ほどにとどまる、という調査結果も確認できました。
マタニティマークの場合、特に男性は、妊婦と接する機会がない限り認知する機会もなく、知らないままになっていることも多いようです。
これではせっかくマークを利用していても、何を意味するのか伝わらないという悲しい状態になってしまいます。
また、マタニティマークについて、一般の認識と妊産婦が利用する理由に差があることも調べていくうちにわかりました。
妊産婦以外の一般がどのような認識を持っているのかを聞いてみると、最も多かったのは「交通機関などで周囲にサポートしてもらうためのもの」で約半数の47.5%、続いて「妊娠していることを周囲にアピールするもの」(38.4%)、「緊急時に周囲に妊娠中だと知らせるためのもの」(13.9%)となりました。
一方、妊産婦が身につけている理由を聞いてみると、最も多かったのは「緊急時に周囲に妊娠中だと知らせるためのもの」が半数以上の56.8%、続いて「交通機関などで周囲にサポートしてもらうためのもの」(23.8%)、「妊娠していることをアピールするもの」(17.2%)となりました。
・「マタニティマークは危険」は本当?マタニティマークに関する意識調査
https://econte.co.jp/works/maternity/
こうしたデータからも、マーク自体の認知度を上げるだけでなく、正しい意味を認知してもらうことが大切であることが分かります。
これはマタニティマークに限らず、ヘルプマークについても同様と考えます。
正しい知識をつけてもらうことでヘルプマークやマタニティマークについての誤解を防げるのであれば、学校教育などでも触れてもらうことである程度の解決が図れるかもしれません。
しかし、こちらの問題もまた、認知してもらうだけでは不十分であると考えます。
マーク自体に不快感を持つ人もいます。それどころか、暴言を浴びせたり実際に危害を加えたりしてしまう人がいます。そうした人たちは、残念ながらマークの正しい意味になど興味はなく、認知度が上がっても同様の行動をすると思った方が良いでしょう。
改めて、マークをつけていることで危険な目に遭う可能性を低くするのは、とても難しいことなのだと実感できました。
どんな時でも安心できる社会を
残念なことに、悪意を持った人というのは存在します。
罰則の強化や、悪意を持った人に利用されないような対策は必要ですが、それだけで全て解決できるわけではありません。
そのため、私たちは自衛をする必要があります。
なるべく夜遅くに出歩かないようにしたり、なるべく同行者と共に外出するようにしたり、出来る工夫は私たちの側にもあるはずです。
本当は障害者、妊婦、女性など、比較的弱い立場にある人の方が我慢したり工夫したりせずに済む世の中が一番です。
しかし、何もせずに被害に遭うことほど辛いこともありません。
自分たちにできる自衛をしながら、工夫をしながら、いつかその工夫が必要でなくなることを願って、これからも記事を発信していきたい。
私はそのように思いました。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
参考サイト
・駅員のアナウンス悪用か 障害者の電車利用で情報共有の検討を
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210825/k10013221371000.html?utm_int=all_side_ranking-access_004
・障害者手助けの駅アナウンス 悪用してつきまとい 被害女性の声は
https://www.nhk.or.jp/shutoken/newsup/20210825a.html
・駅アナウンスによって障害女性が痴漢・ストーカー被害にあっています! 国交省から鉄道事業者に改善を求める事務連絡が出されました。
https://www.dpi-japan.org/blog/workinggroup/traffic/stop_announce/
・ヘルプマークをつけて外出してみたら
https://www3.nhk.or.jp/news/special/miraiswitch/article/article14/
・「マタニティマークは危険」は本当?マタニティマークに関する意識調査
https://econte.co.jp/works/maternity/
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