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こんにちは、ねこパンクです。
今回は、私の息子、次男について書かせていただきます。
ヒルシュスプルング病、そしてワールデンブルグ症候群。
聞きなれない病名かもしれませんが、どちらも先天性の疾患です。
次男は、この二つの病気を抱えて生まれてきました。
ヒルシュスプルング病 (指定難病291)
ヒルシュスプルング病とは、どんな病気か
ヒルシュスプルング病は、
消化管の蠕動(ぜんどう)運動に必要な神経細胞が、肛門側から連続して欠如している病気です。
そのため、神経細胞のない部分の腸は正常に動くことができず、
重度の便秘や腸炎、腸閉塞などを引き起こします。
簡単に言えば、
腸に神経がないため、腸を動かして排泄することができない病気です。
非常に厄介で、場合によっては命に関わることもある、
決して軽くはない疾患です。
では、どうすればいいのか。
治療は手術が基本となります。
神経細胞の存在しない腸を切除し、
神経細胞のある腸を、肛門のぎりぎりの位置につなぎ直します。
症例によっては、新生児期にすぐ肛門形成術を行う場合もありますし、
新生児期に一時的に人工肛門を造設し、
乳児期にあらためて肛門形成の手術を行うケースもあります。
参照元 :(おうち病院疾患コミュニティ )ヒルシュスプルング病|疾患情報【おうち病院】
参照元 : (MSDマニュアル) ヒルシュスプルング病 2023年8月
ワールデンブルグ症候群
ワールデンブルグ症候群とは、どんな病気か
ワールデンブルグ症候群(Waardenburg syndrome:WS)は、
先天性の難聴と、神経堤由来組織の異常を特徴とする疾患です。
具体的には、
・難聴
・眼、毛髪、皮膚などの色素異常
といった症状が、さまざまな程度で現れます。
ワールデンブルグ症候群は、
臨床的・遺伝学的に、次の4つの表現型に分類されています。
ワールデンブルグ症候群(Waardenburg syndrome:WS) 表現型
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1 型(WS1) |
WS1及びWS2は最も頻度の高い病型 |
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2 型(WS2) |
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3 型(WS3) |
WS4は比較的まれで、WS3 については現在までに世界で数例しか報告されていない。 |
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4 型(WS4) |
WS は先天性難聴の症例全体の約 3%を占めている。
次男の場合
次男の表現型は、
WS1、もしくはWS2と診断されました。
はっきりとどちらかに分類できるものではありませんでした。
症状としては、
・難聴(ほとんど聞こえていない状態)
・髪の色が金髪に近い色(現在は茶髪)
・目の色がブルーからグレー
・肌の色がとても白い
生まれたときは、
正直なところ「白人の赤ちゃんみたいだな」と思ったのを覚えています…。
参照元 : (Orpha.net) ワールデンブルグ症候群(Waardenburg syndrome)(PDF) 2P
参照元 : (Apollo Hospitals) ワールデンブルグ症候群 – 原因、症状、診断、治療、予防
生まれてから数日で緊急手術
当時、私たち家族は横浜に住んでいました。
次男の出産にあたり、妻と長男は久留米へ帰省し、
私は仕事があったため、出産当日まで横浜で待機していました。
妊娠中、特に問題はありませんでした。
検診でも大きな異常はなく、
私たちは「いつも通りの出産」を疑うことなく迎えていました。
出産当日、私は飛行機で横浜から福岡へ向かい、
病院に到着したのは昼過ぎ。
午後3時ごろ、次男は無事に生まれました。
産後の妻の体調も良く、
私たちは家族で、新しい命の誕生を心から喜びました。
あの時は、本当に幸せでした。
しかし、その時間は長くは続きませんでした。
生後三日目の夕方、
次男の容態が急変しました。
産婦人科の病院から、
聖マリア病院へ緊急搬送。
あれほど穏やかだった時間は、
わずか数日で、音を立てて崩れていきました。
産婦人科医からの説明では、
新生児は通常、生後24時間以内に初回の胎便を排泄するそうです。
しかし、次男は何らかの原因で排泄ができておらず、
症状から「腸閉塞の疑いがある」と告げられました。
聖マリア病院で、さまざまな精密検査が行われ、
その後、担当医師から告げられたのは
「緊急手術が必要です」という言葉でした。
その瞬間、頭の中は真っ白になりました。
説明を受けてはいるものの、
何を言われているのか、正直よく理解できない状態でした。
ただ、
「今すぐ何かしなければならない」
「このままでは危険だ」
それだけは、はっきりと伝わってきました。
ヒルシュスプルング病 ― 新生児期に見られる主な症状
ヒルシュスプルング病は、新生児期に次のような症状を伴うことがあります。
・出生後48時間以内に胎便の排泄がない
・腸蠕動(ちょうぜんどう)が確認されない
・肛門刺激(直腸診など)によって、便が爆発的に排泄される
・下痢(血便を伴うこともある)
・腹部膨満(胃部の拡張)
・嘔吐(胆汁性)
こうした症状や徴候が見られる場合、
ヒルシュスプルング病を疑い、
速やかに検査や処置を進めていく必要があります。
参照元 : (おうち病院疾患コミュニティ )ヒルシュスプルング病|疾患情報【おうち病院】
次男に施された緊急処置は、
一時的に人工肛門(ストーマ)を造設することでした。
まずは命を守ることを最優先に人工肛門を作り、
その後、成長の段階を見ながら、
乳児期、もしくは幼児期に根治術(人工肛門の閉鎖・肛門形成手術)
を行う、という治療方針でした。
※人工肛門(ストーマ)とは、
腸の一部をお腹の壁を通して体の外(皮膚)に出し、
肛門に代わって便の出口とするものです。
排泄は、専用の袋(パウチ)をストーマ部分に貼り付け、
そこで排泄物を受け止めて管理します。
参照元 : (日経BP社) 大腸がんを生きるガイド 人工肛門とは
初めて耳にする病名。
突然告げられた緊急手術。
そして、人工肛門の造設。
不安でいっぱいの中ではありましたが、
手術は無事に終わり、
次の治療段階へ向けて、療養の時間に入ることになりました。
ヒルシュスプルング病の関連としてのワールデンブルグ症候群
横浜に戻った後、
根治術(人工肛門閉鎖・肛門形成)をお願いする予定だった
国立小児病院(東京)への定期通院が始まりました。
しかし、次男の体調は安定せず、入退院を繰り返す日々が続きました。
「次こそ落ち着くだろう」
そう思っては、また病院へ向かう。そんな生活がしばらく続いていました。
その一方で、横浜市内の病院では、別の視点からの検査も同時に進められました。
・目の色が青い・髪色が金髪に近い
・肌の色が非常に白い
・音にほとんど反応しない
これらの特徴について、医師の判断で詳しい検査が行われていました。
そして、生後1年を過ぎた頃、ひとつの事実がはっきりと示されました。
「ヒルシュスプルング病に関連するその他の疾患としては、
ワールデンブルグ症候群、バルデー・ビードル症候群、
Goldberg-Shprintzen症候群、軟骨毛髪形成不全などがある。」
検査の結果、
次男はヒルシュスプルング病に加え、ワールデンブルグ症候群を
併せ持っていることが分かりました。
さらに、根治術を迎えるまでの間に、
重度の難聴、
自閉症、
知的発達の遅れ
も診断されることになります。
参照元 : (おうち病院疾患コミュニティ )ヒルシュスプルング病|疾患情報【おうち病院】
参照元 : (MSDマニュアル) ヒルシュスプルング病 2023年8月
根治術 〜 以降〜ヒルシュスプルング腸炎

3歳を過ぎた頃、国立小児病院で根治術を受けることができました。
長時間に及ぶ手術でしたが、術後の容態や経過は安定しており、
約1か月の入院期間を経て、無事に自宅へ戻ることができました。
本来であれば、根治手術が終わり、ようやく安心できるはずでした。
けれど、私たち家族にとっては、
「ここからが新たなステージの始まり」
そんな感覚のほうが強かったように思います。
次男は、自力での排泄が困難で、
日常的に浣腸による排泄管理が必要でした。
食事についても、通常の食事は難しく、
消化の良いお粥のようなものが中心。
水分管理も含め、常に細心の注意が必要でした。
「食べる」「消化する」「排泄する」
多くの人にとっては当たり前のことが、
次男にとっては、決して簡単なことではありませんでした。
それを支えることの難しさ。
少しでも気を抜けば、体調は一気に崩れてしまう。
新たな生活は、深い森の中を手探りで進むような、
そんな毎日の連続でした。
家族で険しい道のりを、何とか乗り越える日々。
時には笑い、時には悲しみ、立ち止まることもありました。
そんな中、次男は中学生への進学と同時に、
施設へ入所することになりました。
妻が癌を患い、在宅での介護が難しくなってしまったためです。
苦渋の決断でした。
この出来事は、
次男にとっても、私たち家族にとっても、
非常に大きな転機となりました。
それから数年。
次男は施設での生活にも慣れ、体調も安定し、
大きな問題なく過ごせていました
ところが、3年ほど前のある夜、
施設から一本の電話が入りました。
「緊急入院しました」と。
翌朝、急いで病院へ駆けつけ、
医師から説明を受けたとき、告げられたのは
重度の腸炎。生死をさまよう状態だという言葉でした。
【ヒルシュスプルング腸炎】
ヒルシュスプルング腸炎は、ヒルシュスプルング病と診断されている患者のおおよそ30~40%にみられるともいわれ、比較的頻度の高い合併症として知られています。便塊による閉塞が著しくなると、閉塞部より口側の腸管が拡張、腸菅壁が非薄化し、腸内細菌の増殖、組織への侵入の結果、腸炎(ヒルシュスプルング腸炎)や敗血症が起こり、時に致死的になる場合もあります。
死亡率は約1%ともいわれており、ヒルシュスプルング病の患者に、発熱、下痢、腹部膨満、嘔吐などの症状がみられる場合には、この腸炎を疑い適切な介入を早急に行う必要があります。
参照元 : (おうち病院疾患コミュニティ )ヒルシュスプルング病|疾患情報【おうち病院】
便塊による閉塞からの 重度の腸炎+腸管感染症
結果的に、入院期間は3か月。
その後、別の病院へ移り、さらに2か月間リハビリを行いました。
手術をすることはなく、医師の懸命な処置により一命を取り留め、
無事に退院することができました。
生きる
現在、次男は筑後市の施設で生活しています。
体調を崩すことも時折ありますが、
それでも彼なりに、必死に毎日を生きています。
入所してから、私は定期的に次男に会いに行っています。
そのたびに胸に浮かぶのは、
「すまない」という気持ちと、どうしようもないやるせなさです。
次男には自閉症と知的障害それと難聴があるため、
コミュニケーションは最低限のものになります。
お互いにぎこちなく、言葉も多くは交わせません。
それでも、限られた面会の時間を、
静かに、穏やかに、一緒に過ごしています。
難病と向き合いながら生きる彼の姿から、
私は本当に多くのことを学びました。
私たちにとっての「普通」が、
彼にとってはどれほど困難で、
そして、どれほど尊いものなのか。
その事実を知るたびに、
日常の一つ一つは、決して当たり前ではないのだと、
心から思わされます。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
それでは、また次の記事でお会いしましょう。
ねこパンクでした。



hibiki
お疲れ様です。
いつも、笑顔で来所されているねこパンクさんが、このような大変な想いをされていたとは存じ上げませんでした。
確かに、「日常」「平凡」が一番難しいですよね((+_+))
この間、社会協議会の方も同じ事をおしゃっていました。
でも、このところ、ふさぎ込んでいた私を心配して頂いたたり、適切なアドバイスが嬉しかったです。
いつも、笑顔で素敵です!
笑顔が多い方ほど、背負っているものが大きいのかもしれないと。
それで、人にやさしく出来るってすごいです。人生の先輩として、とても尊敬しています。
また、楽しく音楽やら他の話で盛り上がりましょう(*^_^*)