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こんにちは、翼祈(たすき)です。
日本でも、病気などをテーマにした映画が数多く、作られて来ました。
よく聞くのは、がんなどで余命が短く、亡くなった後で、書籍化され、それが実写映画化するケースです。
障害者などをテーマにした映画では、例えばワンシーンだけ出演者として起用されたり、障害当事者ではなく、俳優さんが障害者を演じられたりすることが多いです。
私はTANOSHIKAに入社して、障害者がテーマの映画について多く取り上げて来ましたが、その人が主人公、かつ障害者という映画は、ノンフィクションでない限り、ほぼありませんでした。
映画はどうしても、興行収入などを意識して、制作費を稼がないといけません。
興行収入が悪かったら…と考えると、まだ障害者への差別や偏見が根強い日本で、障害を抱えている人を主演に迎えて、映画を制作し、公開することは、ハードルが高いと感じています。
この記事では、インド映画ですが、障害を抱えている人を主演を迎え、配給には今まで縁がなかった出版社が、配給権を獲得し、日本公開に漕ぎ着けた、色んな縁があって公開される作品の1つを紹介します。
原題【Ahaan】が、日本では『アハーン』という邦題で、2025年9月5日(金)より、東京・新宿シネマカリテほか全国にて順次公開されます。
“インド映画史上、最も革命的な作品”と、インドのメディア[Firstpost]と評価されています。当事者でダウン症のアブリ・ママジさんは本作で主演として俳優デビューを果たしました。
ムンバイに住む、ダウン症を抱えている一人の青年のライフスタイルをコミカルかつストレートなテイストで仕上げた、異彩とも称されるインド映画です。
参照元:cinemacafe.net |「自立したい」ダウン症の青年が主人公『アハーン』公開決定(2025年4月16日公開)
ここからは、『アハーン』のあらすじと、どうして、主演にダウン症のアブリさんをニキル・ペールワーニー監督は起用したのか?などを述べたいと思います。
あらすじ
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ムンバイが舞台の本作は、ダウン症の青年アハーンと中年男性オジーが織りなすコメディ。両親とともに暮らすアハーンは不自由のない日々を過ごしているが、周囲の目を気にする両親の“配慮”によって家に縛り付けられていた。一方、オジーは気難しい性格と潔癖症によって妻のアヌに見限られ、家に1人取り残されることに。そんな中、アヌと親交があるアハーンがオジーの家を訪ねたことにより、彼は妻と会うためにアハーンを利用することを思い付くのだった。
画像・文章引用元:映画ナタリー| ダウン症の青年が主演のインド映画「アハーン」9月に日本公開、配給は生活の医療社(2025年4月16日公開)
予告編も公開中
ここからは、アブリさんを俳優として発掘した、『アハーン』が長編デビュー作となった二キル監督が託す想いに関して紹介します。
長編デビューを果たした、映画の舞台のムンバイ出身の、ニキル監督が自主制作品に、アブリさんを起用した理由は?
本作最大の注目点は、ダウン症を持つ主人公アハーン役を演じるアブリ・ママジである。ママジ自身がダウン症当事者であり、本作で俳優デビューを果たした。監督のニキルは、本作のリサーチで障がい者のためのデイケア施設でママジと出会った。当事者キャスティングは想定していなかったが、二人で時間を過ごし、映画への情熱を共有するなかで、「“アブリはダメだ、彼には無理だ”って誰が言えるんだろう、挑戦させもせずに?」という想いが生じ、主演に抜擢するに至った。この偶然に導かれた出会いによって、障がいのある人々が直面する現実を真摯に見つめながらも希望とユーモアを忘れずに、ダウン症青年の日常をストレートかつコミカルに映し出す、“あんまり歌って踊らない”異彩のインド映画が誕生した。
引用元:映画.com |ヒンディー映画初、ダウン症当事者が主演 青年の日常を希望とユーモアで描く「アハーン」9月5日公開(2025年4月16日公開)
この映画の本題の今まで観たことがなかった創造性のある、インド映画『アハーン』も、配給権を獲得した《生活の医療株式会社(通称:生活の医療社)》の代表の方が、たまたま乗り合わせた機内上映で流れたことが始まりでした。
涙が溢れるほど、感動して、感銘を受け、「これは絶対に日本でも公開すべき!」だと思い、公開できる様になりました。
その代表の方が機内上映で観ていなければ、上映される飛行機に乗っていなければ、観なかったでしょうし、知らなかったでしょう。
また、そのまま機内でしか楽しめなかった映画の1つに過ぎなかったのかもしれません。
本当に、色んな偶然や縁が、配給会社として手を挙げ、公開されることとなりました。公開に至るまで、そういう奇跡を感じる映画だと思います。
最近感じた、障害者を題材にした映画を作る難しさ
私は、「ああ、これなら、日本では障害者をテーマにした映画の制作は難しいだろうな…」と思った出来事があります。
それは、私が大好きな映画、[夜明けのすべて]のとある授賞式にて、プロデューサーの方が言われていたことでした。
[夜明けのすべて]はパニック障害の男性と、PMSの女性が主人公の映画です。映画の脚本は、監督が原作を大胆にアレンジし、原作には出て来ないプラネタリウムなどが出て来ます。
映画は、原作も高く評価されていて、映画も「こういう解釈もできるのか‼︎」と高く評価され、原作も映画も違う作品だけど、どっちも楽しめると言われています。
映画は公開時、それほど興行収入が伸びず、高い評価を集めていても、上映終了が早い映画でもありました。
この映画が広く知られる様になったのは、ネットでサブスクでの配信が始まり、誰でもスマホなどで見られる様になってからでした。
スマホなどの気軽に見れること、上質な作品なこと、パニック障害とPMS当事者に寄り添った内容だからこそ口コミが増え、2025年4月現在、復活上映が全国でされています。
それ位、今ではとても評価の高い映画ですが、プロデューサーの方が授賞式ではこのように言っていました。
『この映画は、何度も配給会社に持って行っては、「脚本は凄く良いんですけど、これでは配給できませんね」と、断られ続けて、ようやく公開に漕ぎ着けた映画でもありました』。
参照元:【公式】キネマ旬報| 日本映画作品賞:「夜明けのすべて」【2024年第98回キネマ旬報ベスト・テン(16)】(2025年2月21日公開)
監督は前作の聴覚障害者をテーマにしたボクシング映画[ケイコ 目を澄ませて]を制作し、こちらは国内外問わず映画賞を総なめにして、[夜明けのすべて]も監督始め、出演者が数々の賞を受賞しています。
監督は、昔公開した映画の作品でも、高評価を受けていた監督でした。
その監督ですら、映画公開まで配給会社が決まらない、それだけ障害者をテーマにした映画の公開は、日本ではまだまだ難しいんだなとお話を聞いていて、思いました。
参考サイト
noteでも書いています。よければ読んでください。
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