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はじめに
コミュニケーションロボットのマナブくん
「マナブくん、こっち向いてー」
「おはよう、鈴木さん、元気ですか?」
「マナブくんは?」
「元気ですよ。鈴木さん、抱っこしてよー」
大人気のコミュニケーションロボットのマナブくんを抱いて微笑む鈴木さんを、介護士の佐藤は苦笑いして見つめている。
「あれ、なんとかならないんですかね。」
「いいじゃない、あれで利用者さんたちが元気になったって評判よ」と先輩の田中が言う。
「でも、あれ見ているとなんだかたまらないでんですよ」
「そうねー、あなたも一緒に可愛がられてきなさいよ。佐藤マナブくん」
「やめてくださいよー」
機械浴
機械浴という名はついているものの、実際は人間が入浴介助を行っている。
ベッドに寝ている利用者様の左右に2人1組で立ち、サイドから体の下に手を入れ、腕を交差させてお互いの両手を握り、いっせいのせで持ち上げる。
そして、もう1人がベットを引き抜き、2人組は横にくるりと回転させながら利用者様を入浴用のベッドに移動させる。
「こういう力を使う単純作業をロボットにさせればいいんですよ。3時間で30人も持ち上げなくてはならないのが続いたら、俺たちの腰がおかしくなっちまう。例えば、ベルトコンベアみたいなので運んで・・・・」
入浴介助後、腰を押さえながら話す佐藤を先輩の田中はたしなめるよう話す。
「そうしたら、利用者様に怪我をさせてしまうだろ。冷凍マグロじゃないんだから、失礼なこと言うな。ここも以前はクレーンで吊り上げてお風呂に入れていたけど、機械の間に腕が挟まって事故が起きて、結局人間が持ち上げるのが一番安全だって理由から人力で持ち上げるようになったの。人のお世話はやっぱり人がするのが一番なのよ。」
「そうかも知れないけど納得行かないっすよー」
施設長と佐藤
「佐藤、マナブくんのことが何やら気に入らないらしいな。」
施設長に話を振られると、佐藤は口を尖らせる。
「気に入らないっていうか、コミュニケーションって人間特有の高尚な技術じゃないですか。
それを機械に取られて、俺たち人間が機械に変わって入浴介助みたいなきつい肉体労働をさせられていることに皮肉を感じているだけですよ。」
「そうはいっても、このマナブくんが来てから笑顔が減っていた利用者様も表情が明るくなったと評判がいいんんだ。」
「そうですかー」
「お前、おばあちゃん子だったろ?」
「なんですか、いきなり」
「お前、マナブくんにやきもち焼いているな」
「そんなまさかー」
この物語はフィクションです。
スーパーマンにはなれない!?
現在、介護現場ではマッスルスーツなるものが話題に上がっています。
マッスルスーツとは、装着すると自分の力が倍増するというものではなく、あくまで腰を補助するための製品だそうです。長期的に腰に負担がかかるような仕事をしている人のために腰にかかる負担を軽減することで腰痛を予防する人工筋肉を使ったものです。
マッスルスーツを使っても自分の力で持ち上げられるもの以上のものは持ち上げられません。ただし、自分の力で持ち上げられるものでも、持ち上げる時に必ず腰に負担がかかります。それをサポートするのがマッスルスーツです。
作業をスムーズに補助でき、装着が簡単にできるそうです。
腰痛予防
腰痛は国民病と言われており、経済的負担、精神的負担が多いと言われています。
腰痛は、単に痛いというだけにとどまりません。例えば腰痛の治療費や入院費として、平均13万円かかるとされています。また治すためには、約22日間の在院が必要です。
当人も大変ですが、そんなに仕事を休まれては会社としても困りますね。
精神的リスクとしては、腰痛によるストレスももちろんのこと、うつ病になりやすいというデータもあります。
介護ロボットってどこまで必要?
介護ロボット業界は盛り上がりを見せている反面、誤解やネガティブイメージを抱えている職員の方もいます。介護の分野においては、人の手でないとできない部分が確かにあると思います。すべての作業がロボットに取って代わることはないでしょう。だからこそ、人を支援するためのロボットが必要になるはずだと考えます。
「身体機能補助ロボットの導入に賛成」と回答した人は、なぜ賛成ですか?
- 補助的に使えれば一人一人の対応が出来るようになる
- 身体的な負担の軽減をすることで、精神的な余裕が生まれてケアの質の向上に役立つ。
- 身体的負担の軽減により、経験のあるスタッフの離脱や担い手の減少を防げる。
「身体機能補助ロボットの導入に反対」と回答した人は、なぜ反対ですか?
- 機械の故障で事故が起きたら責任はどうなるかわからないから。
- 人間だからできる介護じゃないですか! 将来的にはそうなるかもしれないけど、味気ないですよ。だから反対です。介護の仕事をはっきり言ってなめないでください。
- 利用者の残存能力を生かした、その時その時の動きが対応がロボットに出来るのか?
- 消耗が激しく自分達で出来るところは修理しながら使っている現状。壊れるのが早いんじゃないかと思う。
「コミュニケーションロボットの導入に賛成」と回答した人は、なぜ賛成ですか?
- 仕事に追われちゃんとしたコミュニケーションがなかなか取れないので少しは役に立つ可能性がある。
- 普段もコミュニケーションを図ろうとしていますが、利用者様が退屈にしている時間など相手になってもらうと助かる。また利用者様が職員には言えない愚痴や本音を言える時間になり、ストレスを取り除ける可能性がある。
- 「利用者の笑顔が少しでも多く見られるなら導入はあっていいと思う。
- 介護職が思っているほど、高齢者に拒否感はないという事実が、検証する機会があり、実体験を通してわかったから。
「コミュニケーションロボットの導入に反対」と回答した人は、なぜ反対ですか?
- コミュニケーションは人間同士でなければ、成立しないと思う。
- ロボットなんかと話すよりやっぱり人同士で話すべきだと思います。温かみがないから。
- 介護は心のケアや温かさも重要。高齢者たちは私たち世代でさえロボットになれないのにどうなるのでしょうか。人と人との繋がりを重要視する世代でもあります。介護ロボットを作る前に、ロボットを導入するお金があるなら人件費を増やせば求人もあつまるのではないでしょうか。
- 介護ロボットにはっきり言って人の命が救えますか?
参考:約3割が「反対」、なぜ介護ロボット導入に賛否が分かれるのか。ウェルクスが「介護ロボット」に関する調査を実施
介護に携わる方たちにもいろいろな意見があるようです。
終わりに
私、個人の意見ですが、現状利用できるところは介護ロボットを利用していけば良いのではないでしょうか。将来的にどこまで発達するかわかりませんが、全てが介護ロボットで賄える日はまだまだ遠い未来のように感じます。
人対人とのお付き合いです。ちょっとした声かけから高齢者の方たちの脳が活性化する様を認知症の母を持つ私でも感じます。それを忘れずに上手に利用していただきたいものです。
参考サイト
約3割が「反対」、なぜ介護ロボット導入に賛否が分かれるのか。ウェルクスが「介護ロボット」に関する調査を実施
コミュニケーションロボットの現状は?活用事例と未来の動向についても解説
なごや福祉用具プラザ〈介護ロボット普及モデル事業〉への取り組み 腰痛予防のロボットスーツ」を検証しました
noteでも書いています。よかったら、読んでみてください。
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