テキサス州の中絶禁止法を考える~それぞれの信念~

中絶禁止法

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アメリカで一番厳しいテキサス州の中絶禁止

アメリカで一番、厳しいといわれていたテキサス州の「中絶禁止法」が一時停止となっていたが、わずか2日後に一時的に復活することになりました。

テキサス州では、妊娠6週目以降の中絶が禁止となりました。しかし、実際に妊娠した女性の85%~90%が6週目以降に中絶手術を受けることになります。

つまり実質、「中絶が不可能」になったのです。

そもそも、アメリカでは1973年のロー対ウェイド裁判で、胎児が子宮外で生きていけるようになるまで(妊娠22〜24週)女性が中絶手術を受ける権利が保障され、中絶を不当に規制する州の法律が違憲とされた。

差し止めを求めていた中絶の権利擁護者たちは、テキサス州の法律が違憲だと訴えていたが、最高裁は5対4で請求を退けていたのです。

テキサス州の「中絶禁止法」では、同州で妊娠6週目以降の中絶を施した医療関係者や、中絶を「手助け」や「ほう助」した人を一般市民が訴えることができます。民事訴訟で勝訴すれば、最低1万ドル(約110万円)報奨金とかかった裁判費用が得られるのです。

「ほう助」には、中絶にかかるお金を援助した人や、車で病院に連れていった人も含まれる可能性があります。

ただ、車で病院に送迎しただけなのに、罰金をとられるのです。

参考:妊娠6週目以降の中絶が禁止に。レイプも例外なし…全米で物議を醸すテキサス州の法律、その問題点は? | ハフポスト (huffingtonpost.jp)

BBCのニュース動画を見て感じたこと

BBCのニュース動画で興味深いものがありました。

動画の中に出てくる実際に妊娠している女性が、中絶の理由に「感情的にも精神的にも経済的にも育てられない。」と答えていました。実際に、赤ちゃんを産み、育てる母親となる女性が無理だと言っているのに、中絶することは法律でできないなんて・・・と印象的でした。

彼女は、妊娠6週目未満だったので、薬を使って中絶することができましたが、支援者のもとには、性的暴行を受けた。」「妊娠しているかもしれない。」「この法律のせいで不安でたまらない。」という多くの相談が寄せられています。

実際に望まない妊娠をしてしまった場合、彼女たちの「人権」はどう守られるのでしょうか?

日本での中絶手術の場合

では、日本ではどうなのでしょうか?

日本では、中絶は妊娠22週まで可能ですが、妊娠12週をすぎた場合は、手術後に役所での「死産届」が必要となり、胎児の埋葬許可の手続きが必要となってきます。

日本ではあまり知られていない【アフターピル(緊急避妊薬)についての記事】です。

では、12週以前の胎児はモノ扱いなのか?

それは、ヒトの受精卵を使った研究をする研究者の間でも議論されています。

今年1月に亡くなった有名な発生学者、ルイス・ウォルパートの「人生において最も重要なときは、誕生でも結婚でも死でもなく、原腸陥入(げんちょうかんにゅう)のときだ」という言葉があります。

まさに胚で原腸陥入が始まるのが、受精から14日目ぐらいなのです。

ヒトの胚は細胞分裂をしながら、受精から1週間弱で子宮に着床します。そこからさらに分裂を繰り返し、細胞が上の層と下の層の二層に分かれます。

ここまでは厳密な意味で、まだ細胞の運命は決定されていません。

そして、14日目ごろに「原始線条」という線ができて、上の層の細胞の一部がその線に沿って下に落ち込んでいきます。これが原腸陥入です。

さらに、14日目ごろにもう一つ大きなイベントが起きます。体に「左右」ができるのです。心臓が若干左側にあるように、ヒトの体は左右対称ではありません。

受精から14日目ぐらいに一部の細胞に生えた毛がぐるぐる回り始めます。その回転によって物質の流れができて、ある遺伝子は必ず左側だけではたらくようになるのです。

引用:ヒトはいつからヒトか 胚「14日ルール」解禁の意味は:朝日新聞デジタル

最後に~強い信念~

今回のニュースを見て、思ったことがあります。

それは、中絶禁止法に反対派、賛成派のお互いに強い信念を持って行動しているということです。

お腹に宿った命を守りたいと思う人たち、望まない妊娠をしてしまった女性の権利を守りたいと思う人たち。

それぞれが戦っているのです。

ヒトが始まるのが14日目からだと言う学者もいます。

その一方で、1987年、バチカン法王庁は「受精の瞬間から一人の人間としての権利を尊重されなければならない」と宣言しました。カトリック教会はこれを守っているのです。

 

参考サイト

ヒトはいつからヒトか 胚「14日ルール」解禁の意味は:朝日新聞デジタル

一時効力停止となったものの…テキサス州の「中絶禁止法」が2日で復活 (cosmopolitan.com)

人工妊娠中絶について教えてください。 – 日本産婦人科医会

インターネット医療と健康よろず相談室

妊娠6週目以降の中絶が禁止に。レイプも例外なし…全米で物議を醸すテキサス州の法律、その問題点は? | ハフポスト (huffingtonpost.jp)

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8 件のコメント

  • 「報奨金」というのは、<勤勉、勤労をたたえ、さらなる努力を奨励する意味合いで贈られる金品。「寸志」などとして贈られることも多い>という意味で、ここでは、中絶に「ほう助」した人が一般市民から裁判に訴えられて、訴えた人が勝ってから得るということになるようですが、「報奨」という意味とそぐわないように思うので、原文はどうなっているのか教えてください。

    • コメントありがとうございます。
      このたび参考にさせていただいた記事でも報奨金となっておりました。
      調べたところ、報奨金という言葉は弁護士費用の成功報酬金という意味でも使われているようです。
      なので、今回は裁判で勝訴(または和解)した際に払われる成功報酬金を指して報奨金と表現されていたのではないでしょうか?
      原文の中に、「bounty」という単語があったので、「報奨金」という意味のようです。
      原文の記事のURLです。よろしければ、ご覧ください。https://www.huffpost.com/entry/supreme-court-texas-abortion-law_n_61304e4ce4b05f53eda33f74

      • そうですね。訴えた側が報奨金を受け取ることには理解できるのですが、<車で病院に送迎しただけなのに、報奨金をとられる>という説明に疑問を感じたのです。原文では、そこに相当する記述がよくわからなかったので、具体的な記述をお示しください。

        • コメントありがとうございます。ハフポストの直接の記事ではないですが、リンクをたどると報奨金のところでこんな記述がありました。このテキサス州の法令が特に厄介なのは、テキサス州で中絶を試みている女性を積極的に探し出し、訴えることを民に代理することです。その人を訴え、中絶プロバイダであれ、妊婦の友人であれ、診療所で彼女を降ろしたライドシェアの運転手であれ、10,000ドルの報奨金を受け取ります。
          https://www.huffpost.com/entry/texas-abortion-ban-sb-8_n_6129383ce4b0231e369bab25
          こちらの和訳を読んでこのように記事に致しました。

          • 原文をよく読み直しますと、”If you successfully sue that person — whether it’s an abortion provider, a pregnant woman’s friend, or even the rideshare driver who dropped her off at a clinic — you receive a $10,000 bounty.”で、訴えた「あなた」が報奨金を受け取るということだけが書かれており、訴えられた様々な援助者が金をとられる、という意味は何もないですね。

          • AKARIの編集をしている者です。saladに業務に集中してもらうために私が代わって返信いたします。
            まず先のハフポストの文ですが、「中絶プロバイダであれ、妊婦の友人であれ、診療所で彼女を降ろしたライドシェアの運転手であれ、その人を訴えた人は、10,000ドルの報奨金を受け取ります。」というのが本来の意味になるかと思います。文法が違うので、和訳すると語順などに違和感が生じたのだと思います。

            挙げて下さった原文で部分で書かれているように、訴えた人が報奨金を受け取れるということで間違いありません。
            ただし、他の様々な記事をあたってみると、「訴えられた者は損害賠償を請求される」とか「罰金が科せられる可能性がある」というような表現で書いてありました。
            これは中絶を支援する人達の動きを抑制するためにできた制度かと思いますが、裁判所が報奨金を全て払うとしたら訴えられても支援する人は困らないので不自然です。
            総合的に見て「中絶の支援者は訴えられると罰金を取られる」というのが解釈としては自然ではないでしょうか。

            一番最初のご指摘のあった「ただ、車で病院に送迎しただけなのに、報奨金をとられるのです。」という表現ですが、
            厳密に言うと「報奨金(の原資となる罰金)をとられるのです。」のような形になっているので、ご指摘の通り報奨金という言葉をここで使うのは不自然です。
            ここはご意見を真摯に受け止め、「ただ、車で病院に送迎しただけなのに、罰金をとられるのです。」という表現に変えせせていただきました。
            貴重なご意見ありがとうございました。

          • その通りの意味だとすると、<車で病院に送迎しただけなのに、報奨金をとられる>と書かれていますが、送迎した人は援助者として告発され、金をとられるのではなく、むしろ、中絶者を告発する側に立つことによって報奨金を得ることになるのではないですか。

  • 対応有難うございます。それでしたら、正確を期すると、「罰金」よりは、「訴えられた者は損害賠償を請求される」とか「罰金が科せられる可能性がある」というような表現に留めた方が良いのではありませんか。

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    ABOUTこの記事をかいた人

    TANOSHIKAライター。うつ病、AC(アダルトチルドレン)、機能不全家族育ち。現代詩を勉強中です。セクシャルマイノリティ当事者。読みやすい、わかりやすいをモットーに様々な記事を書いていきます。