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地下鉄の赤ちゃん~Our Subway Baby(ぼくらのサブウェイ・ベイビー)~
先日、好評のまま終了したクラウドファンディングがあります。
一冊の絵本を日本で、翻訳出版しようというクラウドファンディングです。
※現在はクラウドファンディングは終了しています。
その絵本というのが、「Our Subway Baby(ぼくらのサブウェイ・ベイビー)」文:ピーター・マキューリオ、絵:レオ・エスピノーサ。
地下鉄の駅で生み捨てられていた赤ちゃんを、ゲイカップルが偶然にも見つけて、育てていくという絵本です。
実話が元となっていて、出版元のアメリカでは有名な話となっています。
この素敵な物語を皆さんにもシェアしたいと思います。
地下鉄で生み捨てられた赤ちゃん
悲しいかな、赤ちゃんが生まれながら、育てられず遺棄するのは、日本でもアメリカでも変わりません。
今から20年前、当時35才のダニーさんは、パートナーのピートさんとのディナーのために、NYの地下鉄の駅にいました。
その時、壁に寄りかかるような形で、スウェットに包まれ産み落とされたばかりの赤ちゃんを発見したのです。
最初は、人形か何かだと思ったとダニーさんは、当時の様子を語っています。
すぐに警察に連絡をし、赤ちゃんは適切な機関に引き取られていったのです。
※写真はイメージです。
ゲイカップルに育てられることになった赤ちゃん
保護された赤ちゃんは、男女の養親の元に送られる。自分には、関係のないことだと思っていたダニーさんですが、拾った経緯を家庭裁判所で証言することとなり、その際に裁判官に驚く一言をかけられました。
「この子の養親になる気はないですか?」
驚いたダニーさんだったが、「なりたいです。でも簡単なことではないでしょう?」と尋ねると裁判官は「いいえ、簡単なことにできますよ。」と答えました。
そして、赤ちゃんは、ダニーさんとパートナーのピートさんに育てられることになりました。
しかし、赤ちゃんを引き取るまでには、二人の間には様々な話し合いが行われ、破局寸前まで言い合ったこともありました。
そんな中、引き取ることに反対していたピートさんを連れて、ダニーさんは赤ちゃんに会いにいくことにします。
その時、
初めて赤ちゃんを抱きあげると、ダニーは優しく声をかけました。「僕を覚えてる?」。
続いてピートが、赤ちゃんを抱きます。すると、「たちまち温かい感覚が押し寄せた」のだとピートは言いました。
「赤ちゃんが手で、僕の指をものすごい力でぎゅっと握りしめた」と、ピートは話す。
「ただ僕を見上げていた。僕は彼を見下ろしていて。僕の指のどこをどう押せば、僕の心と頭が開くか分かっていたみたいで。そこをぎゅっと握られた瞬間、自分がこの子の親の片方に、この子の父親の片方になれるって、教えてもらった」
そして、3人は家族になることになったのです。
それから20年。
それから20年がたち、赤ちゃんはケヴィンと名づけられ、今では大学で数学とコンピューター科学を勉強しています。
ダニーが地下鉄で見つけた小さな男の赤ちゃんは、今では身長が180センチを超え、2人の父親より背が高くなり、アルティメット競技が大好きで、何度もフルマラソンを完走しています。9歳から14歳の間には、子供にダンスを経験する機会を提供するナショナル・ダンス・インスティテュートに参加していました。
20年の間には、同性婚が認められ、3人は改めて家族となりました。
私が忘れられない言葉
私は、赤ちゃんや子どもの悲しい事件を見るたびに思い出す言葉があります。
「子どもって意外と簡単にもらっていいんだよ。」
と言ったのは、漫画家・西原理恵子氏の元夫で、ジャーナリストの鴨志田譲氏の言葉でした。海外で、肌の色の違う家族を見て、鴨志田氏は言いました。
「その子のルーツを時々、教えてあげればいいんだ。」
そうだよね。となぜか目から鱗が落ちる感じがしたのを覚えています。
鴨志田氏は、戦場カメラマンとしても世界中の紛争地に赴き、取材を重ねる中で、紛争地で生きる子供たちを多くみてきたと言います。そんな鴨志田氏だから言える言葉なのかもしれませんが、その言葉の通りに、もう少し日本や世界のシステムが変われば、この地下鉄の赤ちゃんのように、素敵な家族になれるチャンスがあるのです。
愛さえあれば、どんな形でも家族になることはできるのです。
たとえば、同性同士でも、子どもに恵まれない夫婦にもこの言葉がかけられたら、どれだけ素晴らしい世界になるでしょうか。
「いいえ。簡単なことにできますよ。」
参考サイト
20年前、男性カップルはNYの地下鉄で赤ちゃんを拾った。その子は現在、カップルの息子として大学生に成長|FINDERS
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