「言っていません。」発達障害のわたしがついた最初で最後の嘘。

ケーキ屋さんのショーケースにケーキが並んでいる

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わたしは発達障害を持っています。
発達障害の種類としては、ASDを持っています。
最近は「ADHDもあるかもしれない」と主治医に言われました。

わたしが21歳くらいの時に、検査で「発達障害」があることが判明。

それまでは「双極性障害」だけだ、と思っていました。

自分が発達障害であることを知らなかった10年前の高校生のわたし。

一念発起して、とある飲食店のアルバイトの面接を受けました。

無事受かり「明日から出勤してね」と店長に言われました。

そのアルバイト生活が壮絶な苦い経験になるとは…当時のわたしには全く想像できませんでした…。

そして人生最大級に後悔する…あの出来事が起こるとは…。考えてもいませんでした。

ミスだらけのアルバイト

ケーキ屋さんのショーケースに並ぶケーキたち

わたしは、当時の高校生のみんなの憧れの的だった、とあるケーキ屋さんで働きだしました。

可愛いユニフォームを着ることができる!
可愛いお姉さんたちと!キラキラしたバイトができる!

そんな憧れを抱き、アルバイト初日を迎えます。

しかし、わたしにとっては思ったより難しかった。

初日はミスだらけで怒鳴り声がわたしに向かってきました。

思ってもいない現実でした。

また同僚たちに「めんどくさい」「ウザい」とすれ違いざまに言われることがありました。

最初は「気のせいかな?」と思ったのですが、わたしがミスをするたびに笑い声が巻き起こりました。

バイトを始めてから、数ヶ月経っても、一日に何回もミスをしました。

今考えたら、向いてなかった。

だからその時辞めておけばよかった。

周囲にも迷惑をかけていたから。

それでもわたしのプライドが、辞めることを、許しませんでした。

まだまだ若く、何より自分が発達障害であることを知らなかった。

だから「自分ができない人間なんだ」と認めることができず、ついズルズルと働いてしまいました。

「まだ数ヶ月目。もう少し頑張ってみよう。そしたらミスもなくなるはず。」

毎日毎日、自分の書いたメモを見返しました。

気づいたらアルバイトの日が怖くなってきました。

四六時中仕事のことを考えて、肝心の高校での勉強が疎かになってきました。

5ヶ月目のとある日。

繁忙期に、発達障害の特性からだと思いますが、自分の決めたルールで勝手な仕事をしてしまったわたし。

「気持ち悪いんだよ」
「キモい」
「めんどくさいんだよ」

と同僚数人に言われました。

その時、今まで「ウザい」とか「めんどくさい」と聞こえていた声は、わたしへ向けられたものだったんだ、わたしは迷惑だったんだ、と初めて気づきました。

その時は「すみません」と言いました。

それでもわたしは何故かバイトを辞めませんでした。

そんなことを言われても、やっぱり「自分ができない」ということを認めたくなかったんです。

嘘をついてしまった後悔

そんなある日。

ケーキの試食をお客さんに勧めている時、店長から呼び出されました。

「あなたはフルーティケーキ、と言っているけれど、フルーティーケーキよ。」

つまり店長はわたしが商品名を間違えたことを指摘してくれたのです。

しかしわたしは最低なことをしてしまいました。

「フルーティケーキとは言っておりません。」

嘘をついてしまったのです。

店長は首を傾げ、わたしに背を向けて去っていきました。

その時、わたしは「自分のことが怖い」と初めて思いました。

わたしとしては「いつもメニュー表を熱心に見てくれてありがとう」と言ってくれた店長をがっかりさせたくなかった。
でもそれより…商品名を間違えているということが恥ずかしかった。

今まで「嘘をつかない素直な性格」が自分の誇りでした。

人生でほとんど初めて、『よくない嘘』をつきました。

最低だ。最低だ。

その時の後悔は凄まじいものでした。

自分は追い詰められたら、そこまで行くのだ、と思いました。

辞めた時にもらった手紙

手紙と花がテーブルに置いてある

結局、わたしは短大進学のため、アルバイトをする時間的余裕がなくなり、そのアルバイトを辞めることになりました。

忘れられないのは、辞める日に店長から大きな花束、お店のホールケーキ、それからお手紙をもらったことです。

その手紙には

「素直で優しいあなたのことが人間として大好きでした。」

と書いてありました。

わたしはその時、嬉しかったのと同時に、改めてあの時ついた嘘を、心から…恥じました。

店長の気持ちを裏切った。店長はきっとわたしが嘘をついたことをわかっていた。

恥ずかしい。

あの時、ついた嘘は、ずっとずっとわたしの心を痛めつけます。

わたしは追い詰められたら、人間としてそうなってしまうんだ、と知ったのでたまに自分を信じられなくなります。

あの時の嘘は、本当に色々な意味で罪深いものでした。

対策を考えた

ノートにペンで何かを書く人

21歳の時に発達障害であることがわかり、わたしは「あの時のあれは全部この特性が原因だったのか」と初めて知りました。

ほっとするのと同時に、でも、あの嘘は発達障害のせいではなく、わたしの人格が招いたものだと思う自分がいます。

それから、就労継続支援A型事業所 TANOSHIKAに入り、メモの取り方を学びました。
今ではメモの取り方はとてもうまくなった気がします。

それから病院ではSST(ソーシャル・スキルトレーニング)に参加しました。

「ソーシャルスキル・トレーニング(SST:Social Skills Trainingの略)」とは対人関係や社会で必要なスキルを身につけるためのトレーニング(訓練)をすることです。「出来ること」を増やして、より生活しやすくなることを目的としています。

トレーニングの過程ではロールプレイを行います。また、自分ひとりで考えるのではなく、グループワーク形式をとり、参加メンバーで意見を出しあいながら進めることが多いというのも大きな特徴です。

前項に挙げたような人と関わるスキルや日常生活に必要なスキルなど幅広いテーマの中から、生活のために最低限必要なことや自分が今困っていることなどを中心に、コミュニケーションや問題解決のためのスキルの獲得・向上を目指します

引用元:(LITALICO仕事ナビ)SST(ソーシャルスキル・トレーニング)とは?SSTはどこで受けることができる?対人関係を学ぶとは?仕事に困難を感じる方への活用などについてお伝えします。2025/11/17

SSTとは主に発達障害、精神障害の方が社会的なスキルを身につけるための練習のことです。
そこでは「こんなに頑張っている子は初めて見ました!」と言われるくらい必死でした。

徐々に就労継続支援A型事業所の仕事が楽しく、ミスもなくなってきました。

あの時のように、追い詰められて、嘘をつきたくない。
その気持ちも大きかったと思います。

必死に頑張って特性と向き合い、今のわたしがあります。

今、あの頃の自分に声をかけるなら

今。あの頃のわたしに声をかけるなら。

「無理しないで辞めようよ」と言っていたかもしれません。

人間には向き不向きがあります。

その仕事に向いてないからって、何も自分がダメ人間ってわけではないんです。

世界にはたくさんの仕事があります。
世界にある無限の数に近い仕事のうちの、たった一つの仕事、たった一つの職場が会わなくてもあなたは、ダメ人間ではありません。

だから、無理せず辞めようよ、と言います。

今、発達障害で仕事がミスだらけで苦しんでいる方にも、ぜひその言葉をお伝えしたいです。

嘘はよくない

海を見つめる女性の後ろ姿

そして、働く上で、嘘はよくなかったな、と思います。

本当に嘘はよくないです。

何より自分が信じられなくなります。

周りからももちろんですが、自分で自分をずっと責めます。

わたしはこれからも、あの時についた嘘を背負って生きていくんだろうなあと思います。

そして、これからは「仕事で嘘をつかない」そんな人間になりたい、ずっとそんな気持ちを持って働くんだと思います。

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2 件のコメント

  • 記事を読ませていただきました。貴女は一つずつ階段をのぼってそれぞれの時をみれるようになりましたね。その時思ったことや感じたことを書けるようになり、今の職場が成長とやりたい道を広げていってくれるでしょう。貴女の記事を読んで思うことは、いろんな意味で頑張る力と忍耐力がついてきていることがわかりました。これからも記事を楽しみにしています。

    • パグさん、いつもコメントありがとうございます😊
      今回も素敵な文章のコメント嬉しく思います。
      「頑張る力」と「忍耐力」がついていることをわかってくださり、嬉しいです。
      ひさしぶりのAKARIの投稿になってしまいましたが、コメント嬉しかったです。
      いつもありがとうございます😊

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