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一昨年、ユニクロを展開するファーストリテイリング社が初任給30万円を提示して驚いた事を書きました。
「ユニクロだけに、良い人材を取られるわけにはいかない」と言わんばかりに、去年は第一生命が32万円を提示したのを筆頭に、色々な業界の大企業が続々と初任給を引き上げている事も書きました。
そして今年は、遂に初任給41万円を提示する会社まで現れました。
参照元:(NHK)東京海上日動 初任給を最大41万円に 人材獲得競争が激化(2025年01月10日)
少子化で若者が減っている現代、少しでも多く良い人材を確保したいが為に各社なりふり構わない金額を提示している感じです。
その一方で、大企業の「早期退職者」募集の人数も増えています。
参照元:(東京商工リサーチ) 2024年の「早期・希望退職」募集1万人が目前 上場企業53社、人数非公開の大型募集相次ぐ(2024年11月19日)
「活きの良い若手はたくさん欲しいけど、歳を取り仕事の効率も悪くなった高齢社員は要らないよ」と言わんばかりの姿勢です。
今回は、会社の人材確保手段の変容と将来日本の労働力について書いてみます。
「人手不足倒産」が2年連続過去最多を記録
「人手不足倒産」とは、従業員の退職に伴って求人を出すけど応募者がいない、更にここ数年最低賃金のアップ率が高く人件費が高騰して行く事により、収支のバランスが崩れてしまい事業が続けられなくなり倒産してしまう事です。
この「人手不足倒産」は、2013年の調査開始以降2023年は260件、2024年は324件と2年連続で最多を更新しています。
特に、建設業と物流業が深刻でして倒産件数のうち、4割はこの2業種です。
この業界は従業員の高齢化も深刻でして、60歳以上の従業員の割合は、全業種平均の18.6%に対して物流業では18.8%、建設業では23.9%が60歳以上です。
参照元:(帝国データバンク)人手不足倒産の動向調査(2024年)(2025年01月09日)
求人を出しても、応募者がいない
地方の中小企業は特に悲惨でして、少子化のうえに若者が地元から都会へと出ていってしまうので、新しく人を採用しようとしても応募者すらいないと言う状態が続いています。
中小企業を対象にしたアンケートでは
・求人を出しても、応募してくる人がいない
・応募者はいたけれど、当社採用基準のスキル(技術力)に満たなかった
と言う回答がどちらも3割ほどの会社からありました。
地方企業の採用に特化した採用支援サービス「地方採用WORKS」を運営する株式会社リーピーの川口聡代表は、地方の企業は採用活動の方法にも問題が有ると指摘しています。
・指摘点
・採用担当者が総務などの業務と掛け持ちで行い、片手間状態。ハローワークに求人を出す
だけの採用活動になってしまう。・20、30代がほとんどいない会社が多く、新卒が入っても先輩は10〜15歳上。空洞化した
構造で辞めてしまう悪循環がある。・都市部に出て行った地元の若者を呼び戻す採用活動ができていない。
引用元:(ABEMAtimes) 地方の中小企業は人材募集しても「応募ゼロ」がザラ? ネックは「車通勤」「給与」「空洞化」? 対策は(2024年11月20日)
この国の労働力の予測
就職情報誌大手リクルートのリクルートワークス研究所が、5年に一度実施している「働くことの未来像」と言うシミュレーション。
2023年は「未来予測2040 労働供給制約社会がやってくる」と言うテーマで、2040年の日本では労働者の供給がどの様になるのか?の予測を発表しました。
それによりますと、2040年には労働力不足は約1100万人にも上り、各論①で書いた建設業や物流業だけでなく、介護や医療現場でも人手不足に陥り「身体が不自由だけど、介護が受けられない」や「病気をしたが、近所の病院が無くなってしまった」など生活に密着したサービスも受けられない状態が来るだろうと予測しています。
参照元:(株式会社リクルート) 2040年未来予測から見えた、日本が直面する労働供給制約社会と「4つの解決手段」とは(2024年03月14日)
障害者雇用の実態はどうか?
日本には「障害者雇用促進法」と言う法律が有り、企業規模によって雇用しなければならない障害者数が決められています。
厚生労働省が5年に1回行っている調査によりますと、身体・精神・知的・発達の各障害者とも前回の調査と比べて、雇用数は増えています(ただし、身体障害の「肢体不自由」のみ減っています)。
労働者が減って困っていると言うならば、私たちの様な障害者を法定雇用率にこだわらず「業務スキルが有る」と思えば戦力として、どんどん雇用してもらいたいものです。
参照元:(厚生労働省)令和5年度障害者雇用実態調査の結果を公表します(2024年03月27日)(pdf形式2ページ目)
終わりに
初任給41万円を提示した、東京海上日動は条件として「転勤可能な人のみ」としていますが、これだけの給料をもらえれば転勤も厭わないでしょう。
私が新卒で入社した会社はどうかな?と調べてみたところ
・2026年度より一律初任給制度を廃止して「ジョブ型雇用制度」を導入する
となっています。
この「ジョブ型雇用制度」というのは
・高度な専門知識を有し、その知識を使って仕事をする部門に配属された人には、相応の対価を払う
と言うものでして、最高で初任給40万円も可能となっています。
去年、遂に日本の赤ちゃんの出生数が70万人を割り込んでしまいました。
第二次世界大戦が終わった1940年代後半の、第一次ベビーブームの269万人。
そして、高度経済成長期の1970年代前半の、第二次ベビーブームの209万人と比べると、もの凄く減ってしまいました。
参照元:(日本総研) 2024年の出生数は68.5万人、婚姻数は47.5万組の見通し(2024年12月03日)
故に、大企業の人材奪い合いは益々激しくなるでしょうし、逆に若者がいない地方では人手不足倒産が更に増えるでしょう。
何か良い解決策は無いものでしょうか?
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記事を読ませていただきました。地方で働きたいと思ってもやりたい仕事があるか?と聞いたならどう答えるだろう。魅力的でスキルアップをしたい若者の取り合いになっているのではないだろうか。障害者にもいろいろあるけど、企業によっては働くことができたらすこしは違うのではないか?と思うことがあります。次の記事を楽しみにしています。
私が住んでいる自治体にも、アメリカの倉庫型ディスカウントストア「コストコ」が出来ました。
自治体では、当初出店を許可するか悩んだと聞いています。
「大胆な安い価格で大量に販売するお店が出来たら、地場企業の経営が圧迫されるのでは?」と言う意見が有ったからです。
でも、コストコが提示する求人の時給の高さに「地場企業も対抗して時給を上げて、求人を出してくれれば」と言う思いから出店を許可したそうです。
もちろんコストコは、障害者求人も出していますが、場所的に車通勤しか手段が無いところに出店しましたので車を持っていない私は応募は無理でした。