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こんにちは、翼祈(たすき)です。
無菌性髄膜炎(ウイルス性髄膜炎)とは、一般的に行う細菌検査で髄液から細菌を検出せず、細菌性髄膜炎と同じ様な症状が出現する感染症です。無菌性髄膜炎のほとんどはウイルス性である場合が多く、ウイルスの種類によってかかる種類も異なり、季節的な流行もあります。
潜伏期間は4~6日で、一般的に、頭痛と発熱、全身倦怠感、嘔吐・悪心(嘔気)で発症し、発熱は38~40度で起こり、5日間程度持続し、下痢、腹痛も現れる場合があります。進行するとけいれん、意識障害などが見受けられます。
また、理学所見では、項部硬直(うなじが硬くなって首が前に曲げにくくなる)、Brudzinski徴候、Kernig徴候などの髄膜刺激症状などの髄膜刺激徴候を認めること、細菌培養、髄液の塗抹によって細菌を検出しないこと、髄液一般検査で定型的な所見を呈することなどで診断されます。
それ以外にも、頭痛は後眼窩痛、前頭部痛の場合がほとんどで、羞明(眩しく感じる状態)が出現する場合もあります。
小さな子どもの場合には発熱と易刺激性、不機嫌、嗜眠(放っておくと眠り続け、強い刺激を与えないと覚醒し反応しない状態に陥る症状)がよく出現します。赤ちゃんでは、大泉門(おでこの上の方にある骨と骨の継ぎ目で、菱形の柔らかい部分)が膨れ上がって隆起します。
同じく新生児や小さな赤ちゃんなどでは臨床症状が明らかにされない場合が多いといいます。
40歳以上の発症は稀で、今見受けられるのはほとんどの場合、無菌性髄膜炎ともされています。様々な病原体によって感染しますが、特に大人の場合は悪性疾患、膠原病などの様々な非感染性疾患でも無菌性髄膜炎に感染する場合があります。
病原体によっては消化器感染症、呼吸器感染症、精巣炎や耳下腺炎などに合併するケースもあります。
今回は無菌性髄膜炎の原因、感染経路、治療法、予防策などをお届けします。
▽原因
全体の85%に達する病原体は、エンテロウイルス属のウイルスです。代表的なものとして、コクサッキーウイルスやエコーウイルス、エンテロウイルス71があります。
それ以外にも流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)の原因であるマイコプラズマやムンプスウイルス、一般的な細菌検査では検出されない種類の細菌、寄生虫、真菌などが無菌性髄膜炎の病原体になる場合があります。
エンテロウイルス属のウイルスの場合、発症年齢は幼児期、学童期がメーンとなります。
予後は全身状態や起因病原体に依存しますが、エンテロウイルス属のウイルスによる無菌性髄膜炎の時には通常予後は良好で、完全に治癒しますが、生後数ヵ月以内の赤ちゃんは、精神発達遅滞の危険因子となる場合もあって、その後暫く経過観察が必要です。
▽感染経路
様々な病原体が原因となりますが、主な病原体であるエンテロウイルス属のウイルスでは、感染者のくしゃみや咳、唾液などのしぶきに含まれる病原体での「飛沫感染」や、病原体が付着した手で鼻や口に触れることでの「経口(接触)感染」に感染します。
▽診断基準
髄膜炎で髄液一般検査でウイルス性が疑われた場合、髄液、便、咽頭ぬぐい液を採取して病原体を検出します。髄液検査で単核球優位の細胞数の増加、糖正常、たんぱくの軽度の増加などが細菌性髄膜炎との鑑別する分かれ目となります。
正常な髄液の中には白血球はありませんが、髄膜炎にかかると白血球(主にリンパ球)が増殖していきます。
髄液は見た目は透明で、細菌性髄膜炎に感染した時と違って濁っておらず、また培養しても細菌が生えてこないことから、無菌性と呼ばれますが、ウイルスが髄液の中に存在します。
▽治療法
無菌性髄膜炎では、特別な治療法は無く、症状に対応した対症療法(輸液や解熱鎮痛剤)が実施されます。
髄液検査をした後、髄液を抜くことで頭蓋内圧が下がって、嘔吐や頭痛が軽くなる場合が多いです。予後は良好で、1~2週間で自然治癒します。
▽予防策
・ムンプスウイルスによる感染など一部を除き、ワクチンはありません。
・十分な睡眠とバランスの良い食事をとりましょう。
・接触感染対策として、食事の前やおむつ交換の後、トイレの後、外出から帰宅した時には石けんと流水を利用して手洗いすることが大事です。また、タオルの共用を控えて下さい。
・公共のプールなどを利用する時には、下半身を消毒槽に十分浸してから入って下さい。
・症状が出現したら、早期にかかりつけの病院を受診し、感染させないために受診する時には、マスクの着用をして下さい。
参考サイト
無菌性髄膜炎 aseptic meningitis 東京都感染症情報センター(2018年)
無菌性髄膜炎 かわかみ整形外科・小児科クリニック(2017年)
▽登園・登校の目安は?
感染症法上、五類感染症(定点把握対象)として定義され、定点医療機関から毎週その患者数が報告されます。
無菌性髄膜炎の「無菌性」は「細菌が原因の感染ではない」という意味を表します。細菌以外の色んなウイルスやマイコプラズマなどが原因となる無菌性髄膜炎は、自然に完治する予後の良い感染症です。
その反面、同じ髄膜炎でも細菌によって感染する細菌性髄膜炎(別名:化膿性髄膜炎)と呼ばれ、こちらは生命に関わる重い感染症です。「髄膜炎」と診断を受けても、原因の病原体が細菌によるものかウイルスによるのかでは、病気の重症度は全く異なります。
無菌性髄膜炎は初夏から増え始め、夏から秋にかけて流行します。エンテロウイルスを原因の、手足口病やヘルパンギーナは夏の季節をメーンに流行りますが、同じ様にエンテロウイルスが原因の無菌性髄膜炎も、夏の季節に多い傾向です。
また、流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)が流行している季節は、ムンプスウイルスを原因の無菌性髄膜炎が多い傾向です。
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