『わたしのかあさん-天使の詩-』。知的障害があってもー。母と娘の二人三脚の映画。

わたしのかあさん

この記事は約 9 分で読むことができます。

こんにちは、翼祈(たすき)です。

皆さんは障害者の恋愛だけではなく、結婚、妊娠、出産、子育てなどには前向きな意見がありますか?それとも後ろ向きな意見をお持ちですか?

厚生労働省によりますと、知的や精神、身体の障害がある人を対象としたグループホームの事業所数は、2023年時点で全国でおよそ1万1000で、およそ16万人が利用しています。

グループホームは、障害を抱えている18歳以上の人が地域でサポートを受けながら共同生活を営む場で、利用者の子育てへのサポートはありません。子育てをする時には、グループホーム外に住み、母子保健や障害福祉などの既存制度を利用しつつ生活することが想定されているからでした。このことで、グループホームで生活しながら子育てを希望する人は、制度の狭間に置かれていました。

知的障害などを抱えている人の出産、子育ては実態が不透明な部分が多いとされています。上州水土舎の理事長の男性は、「知的障害の当事者が子育てをしたくても、自治体を含めて周りの人が理解せず、乳児院に預けるケースが多いのではないでしょうか」と説明しています。厚生労働省は2023年度、障害者の支援を巡る課題や児童福祉、母子保健との連携の好事例の調査に乗り出しました。

障害を抱えていると、子育てだけではなく、恋愛や結婚でも周囲の大人から厳しい目を向けられてしまいます。特別支援学校高等部の学年主任に向けた専門家の実態調査では、およそ7割が男女交際を制限または禁止していました。

グループホームの利用者が出産しても、我が子と一緒に帰ることすら困難だといいます。望んでも、子育てできない八方ふさがりの現実があります。障害があることで、恋愛も、結婚も、子育ても「できない」と一方的に決め付け、制限する根強い風潮があります。

この記事では、「共生社会を目指して福祉を描く」ことを目指して、92歳の女性の監督によって公開されている、知的障害があっても子育てをする母と娘の成長記となります。

知的障害の母に複雑な思いを抱える娘の成長を描いた映画『わたしのかあさん-天使の詩-』が、2024年3月30日(土)から公開中です。

国内最高齢の女性監督で、重度の知的障害を持つ長女の母親でもある山田火砂子(ひさこ)さんが、母娘や周りの人との触れ合いを映し、「幸せ」「共に生きる」とは何かを投げかけています。主演に寺島しのぶさん、娘役に落井実結子さんを起用しています。

この映画には、知的障害者役で知的障害の人や、ダウン症の人など、障害当事者も多く出演しています。

今回はこの映画についてと、この映画が制作された理由について説明します。

あらすじ

障がい者特別支援施設の園長である山川高子はある日、母親の清子のことを本にしないかと声をかけられる。今でこそ福祉に従事する高子だが、かつては障がい者を疎ましく思い、憎んですらいたこともあった。実は高子は両親が知的障がい者で、そのことを恥じていた時期があったからだ。小学3年生の頃、子どものように騒がしくおどける母の清子を同級生に見られるのが嫌で、高子は授業参観のお知らせを隠していた。しかし、お知らせを見つけた清子は授業参観に来てしまい、高子は同級生に笑われてしまう。その後、両親が知的障がい者であることを知らされた高子は激しく動揺するが、そんな彼女の心を癒やしたのは、ほかでもない母・清子の娘を愛する気持ちだった。

画像・引用:わたしのかあさん 天使の詩 映画.com

予告編も公開中

ここからは映画の制作秘話について話をします。

『わたしのかあさん-天使の詩-』制作秘話

山田火砂子監督は女性の自立や社会福祉をテーマにした作品を数多く手がけてきました。

今作が監督して節目の10作目で、山田監督の長女が通った養護学校(当時)の先生、菊地澄子さんの児童文学[わたしの母さん]が原作です。

山田監督は、1960年代に知的障害を持つ長女の美樹さんを出産し、育てました。

当時は福祉制度が十分に整備されていなかった時代でした。

「何度も死を考えた」、と当時を回顧します。

「でも、『福祉国家になって』と社会に訴えた方が利口だと思って」と、東京都にある映画制作と配給に携わる「現代ぷろだくしょん」で夫と一緒に、障害者などを取り巻く女性の人権や環境などを問いかける作品を数多く作り続けてきました。

初の制作作品の公開から今年で50年。今では福祉制度の整備は進みましたが、「障害者が今も差別されているのを私は知ってます。世の中には弱い人も強い人も、貧しい人もお金持ちもいます。『強者』だけが生き抜けばいいって言う人に警笛を鳴らしてやろうか」と笑いました。

障害を理由にいじめられた長女がまだ子どもだった50年前に比べて、山田監督は「共生社会になってきて嬉しく感じます。弱者を切り捨てる社会は戦争に繋がります。涙も笑いもある作品を楽しんで頂き、共生の輪がもっと広がって欲しいと願っています」と説明しました。

参考:障害のある母と娘の映画「わたしのかあさん」 先駆けて奈良で上映会 朝日新聞デジタル(2024年)

俳優の寺島しのぶさんは、「主人公の清子は今を生きている人で、母性というよりも直球勝負でした。その場で肌で感じたことに集中して演じました」と、事前に台詞を覚えずに撮影に臨みました。

映画がクランクインする前に何人もの知的障害者に会い、日常生活の様子や親との関係性などを質問しました。「なら私の役はこういう風にいこう、と思えるヒントを多く頂きました」。夢中になると、つい周りが見えなくなってしまう清子のキャラクターに「僕もそうだよ」と共感する声も多かったといいます。

清子を演じるのは、自分の中にある偏見と向き合う作業だったと述べました。

「偏見に当たる演技をしてるんじゃないか、やり過ぎていないかととても考えて、考えれば考えるほどにそれが偏見になるのではとまた考えました」。山田監督から「もっと高いトーンで話して」と求められる場面もあって、話し時に緩急の付け方にも苦労したといいます。

作品には知的障害などを抱えている人も多数出演していて、彼女達との共演も障害者との関わり方を考えるきっかけになったらといいます。「『隔たりを無くそう』は、監督が訴えたかったことだと思います。映画を観た人にもそのことを感じて頂けたら」。

後日談

知的障害がある神奈川県茅ヶ崎市在住のある夫婦が家族で生活する賃貸マンションの一室は、グループホームとしてNPO法人「UCHI(うち)」が運営する住居です。このご夫婦は、それぞれ独身の頃から、「UCHI」のサポートを受けていて、結婚に至りました。複雑な家庭と施設育ちだったことで、2人は自分たちの家族を作ることを強く望んでいました。

2人は共働きで、妻は今は育休中です。「UCHI」の事務所のある一軒家へ、毎日の様に子どもを連れて立ち寄って、他の利用者たちと夕飯を共に食べています。計算が苦手なご夫婦にとって、「UCHI」の職員から受ける家計管理についてのアドバイスは、大きな支えになっています。

専門家の看護学が専門の西南女学院大学の教授の女性Aさんは「グループホームで生活しながら仕事をする障害者が増加し、出産や子育てを希望する人もいます。女性が出産や子育てができるケースは氷山の一角で、断念せざるを得ない人もいます。社会全般で子育て支援が進みつつありますが、障害者を想定した国の仕組みが欠落していて、現行のサポートの枠組みではグループホームでもそれ以外の生活でも希望を叶えることが困難な状況です。行政も障害福祉と子育て支援の部署間で連携が取れていないケースが多く、国には制度の見直しと関係職員への研修を同時に進めるべきです」と危惧しています。

また、東京家政大学の教授の女性Bさんは「障害の有無に関係なく、誰かを好きになることや子どもを持ちたいと思う気持ちは自然なことです。それを阻止する制度の不備や社会の差別が当事者を追いつめています」と警鐘を鳴らしています。

私は2023年に知的障害者の方向けの母子手帳の記事を書いたのですが、SNSを観ていても障害者が恋愛はしたとしても、結婚し、その後は妊娠、出産、子育てをするという話には、2024年を迎えても否定的な意見が根強く残っています。

私はこの映画の予告編を観た時に、鳥肌が立ちました。映画自体は、2023年10月21日に山田監督と寺島さんによる製作発表会見の時から存じておりました。「製作発表ということは、これから撮影ということか」と思っていたら、2024年2月までに映画が完成し、次の月には公開されるとのこと。

何より寺島さんの演技力に驚かされました。「凄い俳優さんが演じると、障害者の特性とか話し方、そういうものまで憑依してしまうのか‼︎」と、本当にびっくりしました。

この映画に関しては劇場公開のみならず、上映会も積極的に行われている様です。山田監督が子育てされた50年前からあった障害者への偏見も未だに残っていますが、その偏見がこの映画を通して少しでも減ってくれたらいいなと、思って、この記事を書かせて頂きました。

参考サイト

noteでも書いています。よければ読んでください。

→HOME

わたしのかあさん

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

ABOUTこの記事をかいた人

左耳感音性難聴と特定不能の発達障害(ASD,ADHD,LD全ての要素あり)、糖尿病、甲状腺機能低下症、不眠症、脂漏性皮膚炎、右手人差し指に汗疱、軽く両膝の軟骨すり減り、軽度に近いすべり症、坐骨神経痛などを患っているライターです。映画やドラマなどのエンタメごと、そこそこに詳しいです。ただ、あくまで“障害”や“生きづらさ”がテーマなど、会社の趣旨に合いそうな作品の内容しか記事として書いていません。私のnoteを観て頂ければ分かると思いますが、ハンドメイドにも興味あり、時々作りに行きます。2022年10月24日から、AKARIの公式Twitterの更新担当をしています。2023年10月10日から、AKARIの公式Instagram(インスタ)も担当。noteを今2023年10月は、集中的に頑張って書いています。昔から文章書く事好きです、宜しくお願い致します。