看護師をメインに、8割の職員が辞めたがっている病院-医療現場の今-

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こんにちは、金次郎です。

 新型肺炎の感染症分類が、重い2類から軽い5類に移行して、10ヶ月。
 病院を除く、ほとんどの職場でマスクの着用は「任意」になりました。
 人々の暮らしも、元にもどった感じです。
 そんな中、勤務先の病院に対して「辞めたい」と訴える職員が続出している病院があります。
 それは、公立病院で働く、看護師・臨床検査技師・事務職員さんたちです。
 何故、病院を辞めたがっているのでしょう??

辞めたいと言っている病院職員の3割は「うつ症状」

 病院を辞めたがっている職員が多くいる事は、3月5日に公表された自治労の調査で明らかになりました。
 調査では、47都道府県の公立・公的病院に勤務する10代〜60代以上の看護師を含む男女1万184人の職員が回答しました。

 ・職場を辞めたいと「常に思う」       1479人
 ・職場を辞めたいと「しばしば思う」 2434人
 ・職場を辞めたいと「たまに思う」  4065人
 合計すると「病院を辞めたい」と言う職員は79%に達し、前年度を7ポイント上回りました。

 職種別では
 ・助産師
 ・看護師
 ・看護補助者  が多くいます。

 辞めたいと思う理由は
 ・業務が多忙
 ・人員不足
 ・賃金に不満  などが多かったそうです。

 調査用紙の自由記入欄には
 「業務が多すぎて、勤務時間内に仕事が終われないので辞めたい」
と言う回答もあったそうです。

 さらには
・気分の落ち込みや寝られないなど「うつ的症状がある」
 と回答した人が3590人もいて、前年度より9ポイント増加の36%になりました。
 調査を始めた2020年度の17%と比べると倍に増えた感じです。

参考:(毎日新聞)公立病院の看護師ら、8割が「辞めたい」 3割超がうつ症状訴え

医療現場の現状

自治労の調査結果

1・始業前の業務(前残業)が「ある」
  と答えた人の割合は、全体の72%にのぼり、そのうちの89%は時間外申請をしていない事も
  分かりました。

2・休み時間
  全てを取得できず、休み時間の一部を業務に割いているという人76%に上ります。

3・残業手当
  52%の職員「残業手当が出ない残業がある」と答えています。

これらの背景

1・時間外を申請しにくい風潮や環境、時間外労働は自己研鑽扱い
 などの理由があります。

2・人員配置
 「少ない」(かなり少ない、やや少ないの合計)に72%の人が回答しており、とりわけ看護師
 では79%の人が「少ない」と感じている結果が出ました。

3・収入への満足度
 「不満」(不満、やや不満の合計)と感じている人が全体の64%もいます。
 中でも
 看護補助者と助産師については70%の人が
 薬剤師と看護師では67%の人が「不満」と回答しました。

参考:(自治労)「職場を辞めたい」と感じる医療従事者が増加─衛生医療評議会が調査結果を公表─

看護師不足の原因

 厚生労働省の発表によりますと
・2025年までに必要な看護師数は188〜202万人
 
と予想されています。
 でも、現在の様な状態ですと2025年の看護師数は175〜182万人程度と想定されていますので、
 最大で27万人もの看護師が不足する見込みです。

 看護師不足の主な要因としては、日本の高齢者数の増加があります。
 2019年度の高齢者数は3,589万人ですが、2025年には「団塊の世代」が後期高齢者に突入しますので、高齢者の数は、3,677万人になり、超高齢化社会に突入すると予想されています。
 それ故、慢性疾患を有する人など日常的に医療や看護が必要な方の人数が増加し、現在よりもさらに看護師の需要が高まっていきます。

 ですから、看護師養成学校の定員を増やしたり、看護系大学も新たに開学したりしていますので、看護師をめざす方は増えています。
 結果として、2010年時点の看護師数は約132万人だったのに対して、2020年には約157万人と10年で約24万人も看護師資格保持者は増えています。

 では、何故看護師不足が続いているかというと、諸所の事情で退職した看護師が、その後に看護師として復職しないケースが多いからです。

 ・看護師の資格は持っているけれど、看護師として働いていない「潜在看護師」約79万もい
  る
と言われています。

 これが、看護師資格を保有している人数は増えているけれど、慢性的に看護師不足の状態が続い
ている原因です。

参考:(情報 かる・ける)【看護師不足】問題点の現状は?人手不足の理由や対策を紹介

看護師を辞めた理由

 看護師を辞めた理由として、主に以下の3つが挙げられます。

1・結婚・出産・育児などによるライフスタイルの変化
  上記理由で退職した看護師のなかには、復職を希望している方もいます。
  しかし、子育てや家事と両立できるような形で働きたいと考えている方のなかには

  ・「夜勤をすることができない」
  ・「短時間勤務で働きたいが、希望の職場がない」
  ・「看護師としてのブランクが長く、仕事についていけるか不安」

  等の理由で「復職するのは難しいだろう」と考えている看護師が多いのです。

2・超過勤務や不規則な勤務形態などによる、身体的&精神的な疲労
  看護師は仕事の特性から、不規則な勤務形態になってしまう事が多い職業です。
  勤務先や所属部署によって勤務形態はさまざまですが、救急病院など24時間体制で医療の提供
  が行われている医療機関の場合ですと
  ・夜勤や休日出勤
  ・早番や遅番
  ・2交代制勤務
  など、あらゆる勤務形態に対応しなければなりません。

  それゆえに、生活リズムが不規則になりがちですから
   ・「夜に寝れない」
   ・「疲れが取れない」
  など、身体的&精神的な疲労を感じる看護師が多いです。

3・近年流行している「新型肺炎感染症」による業務負担増
  2020年から流行しだした新型肺炎によって、通常の業務に加え、特別な対応をしなければいけ
  なくなりました。

  発熱している患者さんや新型肺炎に罹患した患者さんに対応する際には、
  防護服・フェイスシールド・マスクを着用して対応するなど、
  特別な感染防止対応が必要になりました。
  このような感染防止対応は、短時間でも身体的に負担がかかります。
  更には、新型肺炎の対応が求められている看護師がいることで、その他の看護師の業務負担が
  増加してしまったのもあります。

  また、業務時間外でも感染対策を続けなければいけないので
   ・プライベートな行動でも外食制限
   ・自身が罹患していないかという不安
  など、精神的に負担を感じてた看護師も多くいます

政府の解決策

看護師不足に対して、政府は以下の3つの取り組みを行なっています。

1・看護師の養成促進

 看護師の数を増やす為については、以下の2つの取り組みで、看護師の養成を促進しています。

   1・大卒社会人経験者から、看護師への養成

     看護学以外を学んだ大卒・短大卒の社会人で、次の仕事として看護師になる事を支援
     します。
     社会人経験者が看護師養成学校に入学し、安心して看護師を目指す事ができる様に
     「看護師養成所における社会人経験者の受け入れ準備・支援のための指針」
     を作成し、実践を促しています。

   2・教育訓練給付金の拡充

     看護師として働く事を目的とした養成学校の費用について、教育訓練の修了を条件と
     して、
一部を負担する給付金が支給されます。

 2・「潜在看護師」に対する復職支援

   1度看護師を辞めた「潜在看護師」が、再度看護師として働くことを考えた際に、スムーズ
   な復職支援を行う制度です。
   退職した看護師が、連絡先などの情報を「都道府県ナースセンター」に届ける事で、復職希
   望時に求人情報の提供や復職研修、復職体験談のメールマガジンの配信など
を受ける事がで
   きるような体制を整えています。

 3・職場定着率上昇に対する支援

   医療従事者全体の勤務環境を改善して、看護師の職場定着率を改善する支援です。
   医療機関が医療従事者の勤務環境を改善するために、労働環境の改善ができる様なシステム
   を作成しています。

終わりに 

 看護師の人手不足は、今現在だけでなく後期高齢者が年を追う毎に、どんどん増えて行くこの先も、考えなければならない大きな社会問題だと思っています。
 看護師が、どのような職場環境や待遇であれば、その病院を辞めずに働き続ける事ができるのか?
 また一度退職した看護師が、スムーズに復職できる様なサポート体制。
 これらは、医療現場の意見を聞きつつ、多くの看護師が安心安全に働き続ける事ができる様に、職場の環境整備を行ったりサポート体制を作っていく事が、今後は必要だと感じています。

  

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