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こんにちは、改めましてM. Jです。
皆さんは「代償機能」という言葉を聞いたことがありますか?
代償機能とは「身体のある部分の機能が低下した際に、他の部分がその部分の代わりを果たすことで補うこと」を指します。
基本的に人間の身体は、身体機能が低下した時に「代償」を用いて「日常生活」を送ることができるようになっていると考えられていて、特に脳の機能は「代償」が行われているといわれています。
以前は、脳の神経細胞は、一度死んでしまうと二度と戻ることはなく「運動を司る領域が損なわれると、手足を動かすことができなくなる」といわれていました。
しかし、最近の脳科学の研究の結果、脳を損傷してもリハビリによって「損傷した脳領域の周辺などに新たな神経回路ができる」ことがわかっており、【脳の機能の可塑性:代償機能】ということがいわれてきています。これはわかりやすくいうと、特定の領域が損傷を受けても、その損傷を「自らカバーしようとする機能」が備わることです。
一方で障がい者には、どうしても「できない動作・行動」があり、それによって日常生活や仕事などの社会活動に支障を来たしています。
「代償機能」による補助的なものが必要不可欠なのです。精神障がい者や発達障がい者も、「代償機能」を使うことによって充実した生活ができるようになればと考えています。
そこで今回は、障がい者にとってプラス(ポジティブ)になる「代償」を使った「生活の充実」という視点で記事を書いていこうと思います。
障がい者の「代償機能」について以下の項目に沿って触れていきます。
- 視覚障がい・聴覚障がい者の優れた感覚
- 精神・発達障がい者の代償機能:鈍感力
- 精神・発達障がい者の代償機能:認知行動療法
- 精神・発達障がい者の代償機能:考え方の切り替え
- 代償機能のポジティブな利用方法!
視覚障がい者・聴覚障がい者の優れた感覚
一般的に障がい者は、どのようにして「代償」の機能を使っているのでしょうか?
「代償」の機能を使っていると思われる例を挙げていきましょう。
第1に、視覚障がい者の「代償」についてです。
◇視覚障がい者は「音をきいて自分のいる位置を把握する能力」が優れている。
◇Belin(工学研究員・助教授)たちは、視覚障がい者の「音の識別能力が健常者よりも優れていること」を発見した。
第2に、聴覚障がい者の「代償」についてです。
◇聴覚障がい者は、聴覚を司る脳神経細胞が視覚に割り当てられている。
◇ロンバー氏の研究チームはネコの動物実験で「耳の聞こえないネコは、耳の聞こえるネコよりも、周辺視覚と動体視力を持つことを確認した」としている。
以上のような研究結果から、視覚障がい者と聴覚障がい者が脳機能の発達によって「代償機能」が生じ、社会生活ができているようです。
「ネガティブな面」ばかり言われていますが、代償動作は「ポジティブな面」もあり、「障がい者のQOL(生活の質)が充実していく上で重要なもの」として位置づけられています。
一方でまだ、精神障がい者や発達障がい者において「代償機能」は、明確になっているわけではありません。
しかし、精神障がい者や発達障がい者にとって「支えになるもの」は必要不可欠です!
どうにかこの「代償機能」を、精神障がい者や発達障がい者には応用できないものでしょうか?
身体障がい者でいうところの杖・歩行器などの「補助具」といった「代償の手段」が、精神障がい者や発達障がい者にもあれば「充実した生活」を送ることができるのではないでしょうか?
精神障がい者や発達障がい者は、「ストレスに対して過剰に反応して、それによって生活に支障が出ている」と考えられています。
よって、ストレスとなりうる「考え方」を変えていき「代償機能」を発揮すればいいのではないかと考えてみました。
充実した生活を送るために必要な要素として「鈍感力」と「認知行動療法による考え方の切り替え」を代償機能として活用することを今回は提案したいです。
次の項では、代償機能「鈍感力」について触れていきます。
精神・発達障がい者の代償機能:鈍感力
【鈍感力とは・・・】
小さなことにあくせくせずに「ゆったりと生きる力」のこと。
自分が傷つきそうな出来事や言葉を「意識して忘れること」で心のダメージを少なくする力。
ポジティブな意味を持っている言葉。
2007年に渡辺淳一さんの書かれた「鈍感力」という本がキッカケで有名になった。
では、どのようにすれば「鈍感力」を身につけることができるのでしょうか?
【鈍感力を鍛える方法】
①あるがままを受け入れる
◆人生の中で「嫌なこと」が襲ってくることはある程度避けられない。
◆「嫌なこと」が起こった時「あるがまま」に受け入れる。
◆「まあ、いいや」「何とかなるさ」という気持ちでやり過ごす。
②他人は変えられないことを理解する
◆他人の意見を受け入れつつも「深刻に捉え過ぎない」ことが重要。
◆他人は「そんなに自分のことに興味がない」ので・・・
→自分も他人に対して深刻にならなくてもいい。
◆自分を「嫌ってくる」人のことを気にし過ぎない。
③過敏な反応をやめる
◆他人を攻撃したり、無視したりする人に対して「過敏」に反応することを抑える。
◆何か嫌なことがあっても「ふーん」くらいな感じで済ませるように意識する。
④受け流す
◆周囲からの攻撃に対して、いつも真正面から反応してしまうと疲れる。
◆「言っていることは聞きつつも・・・」という感じでサラリと流そう。
◆「聞いています」というスタイルは必要。
⑤完璧主義をやめる
◆他人や自分の顔色をうかがって「完璧な自分を演じる」ことは疲れる。
◆自分自身を「追い詰めない」。「80点くらいを目指せばいいか」と肩の力を抜く。
社会にはさまざまな人間が存在して、中には自分と著しく異なる意見を持っている人もいます。
すると、意見が衝突することも多くなり、精神的にダメージを受けやすくなります。
そこで「鈍感力」が重要になります。
「あるがままの受け入れ」「深刻に捉え過ぎない」というように「意識的に鈍感になること」で、生活が充実していくと考えられます。
「鈍感力」には、次のようなメリットがあります。
《1》ポジティブな考え方になれる
《2》ストレス耐性が高まる
《3》失敗を引きずらず前に進める
《4》他人の評価を気にしないので、自信を持って物事を進められる
精神障がい者や発達障がい者にとって「鈍感力」は、メリットが多いと感じます。
「鈍感力」を発揮することで、身体障がい者にとっての「杖・歩行器」のような存在になればと思います!
次の項では、代償機能「認知行動療法」について触れていきます。
精神・発達障がい者の代償機能:認知行動療法
【認知行動療法とは】
1970年代に、アーロン・T・ベック(アメリカ)がうつ病の患者さんに対して行なった治療法。
困ったことにぶつかった時に「困難を乗り越えていけるような心の力」を育てる方法。
「認知(物の見かた)」に働きかけて「心のストレスを軽くしていく」治療法。
【認知行動療法のポイント】
- ストレスに対して強くなるためには「自動思考」に気づいて、それに働きかけることが重要。
- 「自動思考」を「穏やかで過ごしやすい」かつ「多くの場面で適応しやすい」考え方に変化させる。
「自動思考」には、次のようなものがあります。
【自動的思考の種類】
- 感情的決めつけ:証拠もないのにネガティブな結論を引き出しやすいこと。
- 選択的注目:ささいなネガティブなことに注意が向く。
- 拡大解釈と過小評価:失敗は大きく、よくできたことは小さく考える。
- 自己非難:自分に関連のないことに対して、自分に関連づけて自分を責める。
- 白黒思考・完璧主義:白黒をつけたがる・完璧を求める
「認知行動療法」は、どのようにして行うのでしょうか?
【認知行動療法の方法:コラム法】
①状況:起きた出来事の事実のみを書きます。
②感情:出来事が起こった時の感情をパーセントの度合いで書きます。
③自動思考:出来事に対して、その時浮かんだ考えやイメージを書きます。
④根拠:自動思考を裏づける具体的な事実を書きます。
⑤反証:自動思考と矛盾する考え方、つまりポジティブな考え方を書きます。
⑥適応的思考:じっくり考えたうえで、現実的な考え方について書きます。
⑦感情の変化:どのように考え方が変化したかパーセントの度合いで書きます。
認知行動療法は自分でしようと思えば「できる方法」ですが、考え方の幅が狭いと難しいです。
重要なことは、ストレスを誘発しやすい考え方、上記③の「自動思考」について見ていき、上記⑤の反証「ポジティブな考え方」を多く出した中で、上記⑥の「適応的思考」を導き出すことです。
特に、精神障がい者や発達障がい者においては「ポジティブな考え方」を出すことが難しいので「出せる限り多く出していくこと」がものすごく重要です!
そうすることによりネガティブな感情から上記⑦の「感情の変化」につながっていきます。
一体、具体的にどのような方法を用いると「考え方の切り替え」ができてくるのでしょうか?
次の項では、代償機能「考え方の切り替え」について具体的に触れていきます。
精神・発達障がい者の代償機能:考え方の切り替え
精神障がい者が具体的に「考え方の切り替え」を行う方法はどのようにすれば良いのでしょうか?
【適応的思考を導き出す方法】
①現実を見直す:「根拠」と「反証」の文章をつなぎ合わせる。反証することが重要!
②シナリオ法:「最悪のシナリオ」と「最高のシナリオ」を見て、その中の「現実的なシナリオ」を導き出していく。
③視点を変える質問をする:以下のような質問について考えていく。
◆「ほかの人が同じような状況でしたら、あなたはどのように声をかけますか?」
◆「自分の置かれている状況に対して、親しい人だったらどのような声をかけてくれますか?」
◆「元気な時には、違った見方をしていませんか?」
◆「以前にも似たような経験をして、役に立ちそうなものはありますか?」
ここで、重要なことは上記①の活動を通じてネガティブな感情と「反対の考え方」をして「良い面を見つけていく」こと、②を通じて「一番最悪のシナリオ」を考え、それより良い場合は「いいことが起こった!」と喜ぶことです!
この2つのことを意識すれば、精神状態の悪化を防ぐことができると思います。
どうしても難しい場合、上記③の「視点を変える」方法を取り入れて「ほかの人が自分と同じ状況の時にどうするか」を考えてみると「違った見かた」ができると思います。
困っている人に対しては、厳しい対応はしないのではないでしょうか?そうすれば「自分に対してもやさしくできる」と思います。
精神障がい者や発達障がい者にとっての「代償機能」について少しずつわかってきました。
「考え方の切り替え」をすることで、精神障がい者や発達障がい者の生活が充実していくと思います!
次の項では、精神障がい者や発達障がい者にとっての「代償機能のポジティブな利用方法」について書いていきます。
代償機能のポジティブな利用方法!
以上、障がい者の代償機能についてでした。
代償について「ポジティブ」に捉えることは、ものすごく大事なことです!
障がい者にとって「代償機能」を用いることは必要不可欠なことです!
実際に、身体障がい者や視覚障がい者・聴覚障がい者は「代償機能」によって生活を充実させることができています。
しかし、精神障がいや発達障がいの「代償機能」については、まだまだ明らかになっていません!
今回の記事の方向性としては、精神障がい者や発達障がい者が「充実した生活」をするために「どんなことが必要となってくるのか」という視点で書きました。
あえて「代償機能」として表現してみましたが、これは身体障がい者にとっての「杖・歩行器」のような存在が精神障がい者や発達障がい者にもあればいいなと思っています。
以下に、精神障がい者や発達障がい者が「充実した生活をするためのポイント」を挙げてみました。
【充実した生活をするためのポイント】
◎できることから少しずつ行うこと
◎心の中の障害物を取り除くこと
◎気持ちが楽になる行動を見つけること
◎普段と違った見方をしようという考え方をすること
◎自分には「できる」という思いを続けて行うこと
これらのことができるようになれば、精神障がい者や発達障がい者のQOL(生活の質)を向上させることができると思うので、今後「精神障がい者や発達障がい者の代償機能について」の研究がもっとなされることを期待しています。
記事をご覧いただき、どうもありがとうございました。
今回の記事は、以下の文献を参考にしました。
参考:メディカルノート:脳の可塑性ーリハビリで期待できること
ナショナルジオグラフィック:聴覚障がい者の視覚能力が高い理由
MUKIAI.NET:こころのスキルアッププログラム(PDF)
大野裕の認知行動療法活用サイト:心のスキルアップトレーニング
これに加え、認知行動療法を行なうための表を添付しております。実行していただけると有り難いです。
今後について
興味があることや、今後書いていきたい記事のテーマとして、精神疾患に特化した旅行の推進構想、やせ過ぎに潜む危険!女性に多い摂食障害やその改善方法・海外の事情、骨を大切にしよう!骨折を防ぐ、があります。
皆さんに役立つ情報を届けていければと考えています。
今後ともよろしくお願いします!
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