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こんにちは、翼祈(たすき)です。
意図しない、望まない妊娠をしてしまった時に、中絶する以外の手段として、緊急避妊薬が挙げられます。
緊急避妊薬は避妊に失敗したり、性加害を受けたりした後で望まない妊娠を予防するための薬です。
そんな緊急避妊薬ですが、2023年夏から日本での存在意義が転換しそうです。
予期しない妊娠を予防可能な緊急避妊薬を医師の処方箋が要らなくても買える様になることに関して、厚生労働省は、2023年6月26日、早ければ2023年夏頃から一定の要件をクリアした薬局で、試験的に緊急避妊薬『レボノルゲストレル』の販売を導入しつつ、医師の処方箋がない状態でもちゃんと販売可能かどうかを検証する調査研究を開始する方針を発表しました。
緊急避妊薬『レボノルゲストレル』を販売できる薬局は各都道府県に最低1ヵ所設置します。購入には現在の薬剤法では、医師の処方箋が必要となり、夜間や休日に入手しづらいなどの声が購入希望者からは上がっていました。
この試験的な販売の結果も踏まえ、これから先医師の処方箋がなくても購入可能な「OTC医薬品」にするか否かを判断します。
今回は販売される、緊急避妊薬『レボノルゲストレル』がどんなものなのか?など、多角的にこの問題について考えていきます。
緊急避妊薬『レボノルゲストレル』ってどんな薬?
緊急避妊薬『レボノルゲストレル』は、ホルモン剤が成分である錠剤の薬で、排卵を遅くさせる効果などがあって、性行為をしてから72時間以内に1回飲むことで、80%以上の確率で妊娠を予防できると言われています。
緊急避妊薬『レボノルゲストレル』は、頭痛や子宮からの出血などの副作用が報告されていますが、重大となる副作用はないとされます。
厚生労働省の専門家の検討会で提示された緊急避妊薬の資料によれば、海外では約90の国や地域で、医師の処方箋が要らずに薬局などから買えるということでした。若年者に無料で緊急避妊薬を提供する国もあります。
また、緊急避妊薬の購入に必要な費用はアメリカやイギリスなど7ヵ国の調査データでは、日本円で約6000円以下ですが、日本では平均で約1万5000円です。また、ジェネリックの緊急避妊薬も発売されていますが、それでも1万円以上する高額な病院も多いといいます。
乱用や悪用される懸念があるなどで、日本では医師からの処方箋が必ず要ることで、薬局では買えないことから、支援団体は▽性暴力に遭って病院の受診を躊躇している間に妊娠し、中絶手術を余儀なくされた人や、▽夜間や休日で早期に病院を受診できなかったりする人も多いとし、医師の処方箋なしで、薬局での緊急避妊薬『レボノルゲストレル』の販売解禁を要求していました。
厚生労働省は2023年6月26日に開催された専門家の検討会で、『レボノルゲストレル』の販売を行えるのは緊急避妊薬を調剤した実績を持つ薬局をメーンとする予定としました。
研修を修了した薬剤師が緊急避妊薬『レボノルゲストレル』の販売に対応することなどの条件をクリアした薬局を各地域で選定する方針でいて、地域差が出ない様に全47都道府県で選定し、公表することにしています。
同日の専門家の検討会議で「緊急避妊薬『レボノルゲストレル』の課題に応じた上で、迅速で正式な緊急避妊薬の市販化が望まれます」と打診しました。
一定の要件をクリアした薬局で、緊急避妊薬『レボノルゲストレル』を試験的に販売する調査研究は、医師の処方箋が要らずとも、ちゃんと薬剤師が販売可能か否かを検証することを目的に実施されます。
調査研究の対象者は、購入者、薬局、産婦人科の3者でアンケートが実施されます。
・購入者には、同意を獲得した場合のみで、妊娠検査実施の有無や産婦人科を受診したかどうか、避妊が成否したかなどを調査をする予定です。
・一定の要件をクリアした薬局には、販売事例の全部を対象に、購入者に薬の指導や説明ができたか否かなど販売状況を調査をする予定です。
・産婦人科へは、購入者へのフォローアップ体制の充実などを調査をする予定です。
薬局や産婦人科にも緊急避妊薬『レボノルゲストレル』の試験的な販売をしている時の状況などを調査する予定です。緊急避妊薬『レボノルゲストレル』の購入できる年齢制限は設置しません。
医師の処方箋が必要となる医薬品の一般販売をする前に、この様な調査研究を実施するのは初のケースです。
厚生労働省はこれから先、具体的な調査内容や対象となる薬局を決めた上で、2023年夏にも緊急避妊薬『レボノルゲストレル』を販売を開始し、2024年3月まで調査研究を実施する予定です。
厚生労働省の調査研究は、
▼夜間と土日祝日の休日に対応可能な薬局であること
▼オンライン研修を修了した薬剤師がいる薬局だということ
―などの要件を原則としてクリアしたことが販売可能な薬局の条件とします。それ以外にも、
▼近隣の産婦人科医や性暴力・性犯罪被害者のためのワンストップサポートセンターと連携している薬局であること
▼プライバシー確保ができる個室などが設置の薬局であること
―の条件も掲示しました。複数の市区町村からなる「2次医療圏」に最低1ヵ所程度の薬局が選出されると、最大で日本各地に335ヵ所となります。
専門家の検討会では「緊急避妊薬『レボノルゲストレル』を購入できる、対応可能な薬局を増やすべきです」との意見が相次ぎ、改めて厚生労働省では検討します。
一定の要件をクリアした薬局には休日・夜間の対応状況、緊急避妊薬『レボノルゲストレル』を購入した人には最終的に避妊に至ったか否かなどを質問し、研究結果を総括します。正式な緊急避妊薬『レボノルゲストレル』を市販化するには、それ以外にも薬事承認の手続きが必要となります。
医師の処方箋が要らずに薬局で緊急避妊薬を購入可能にさせる、一般販売に関しては2017年にも厚生労働省が専門家による検討会で議論をまとめていましたが、悪用や乱用される恐れがあるとの意見や薬剤師の緊急避妊薬への知識不足などを理由に意見が割れて、判断は見送られていました。
その反面、WHOは2018年に「望まない妊娠のリスクに直面する女性と少女の全員は緊急避妊の手段にアクセス可能な権利を一人ひとりが持っている」として、各国に緊急避妊薬への対応できる様に勧告し、2020年4月には、薬局での一般販売の検討も含め緊急避妊薬へのアクセスを確保する様にアドバイスをしていました。
WHOは「副作用は少なく済んで軽度」とし、女性の健康に欠かせない「必須医薬品」に位置付けています。世界およそ90ヵ国・地域では医師の処方箋なしで薬局で緊急避妊薬は購入可能ですが、日本では医師の診察と処方箋が必要でした。
この様に流れがあって、日本では2020年12月に閣議決定された男女共同参画基本計画で医師の処方箋が要らずに購入可能なことを検討することが明記され、厚生労働省は2021年から専門家の検討会で、緊急避妊薬『レボノルゲストレル』を導入した場合の対応策や課題に関連した議論を再開しました。
それから、厚労省の専門家会議は2021年から約2年間かけて議論が実施され、この中の2022年12月末から約1ヵ月かけて行った、「特に緊急避妊薬の医薬品アクセスの改善は喫緊の課題である」など、OTC化の需要が高いことを確認できました。
2022年12月末から行ったパブリックコメントも、4万6312件という異例の数字となり、その中で、OTC化の賛成が4万5314件にまで達しました。
その上で、「薬局で、どのように性加害に遭った女性へのフォローを行うのか」、「薬で必ず避妊が成功できるわけではないことも考慮し、薬剤師がどう購入者に説明するのか」などの課題も危惧されていました。
また、薬の悪用や薬局と産婦人科との連携などを指摘する意見も引き続き届いており、専門家の間では「課題を全部クリアにするにはまだまだ時間が必要だ」として、一部の地域の薬局のみ試験的に緊急避妊薬『レボノルゲストレル』の販売を開始し、データをまとめるなどして、緊急避妊薬の対応を判断すべきだとする意見が浮上していました。
参考:緊急避妊薬“処方箋なしで”一部薬局で試験的販売へ【詳しく】 NHK NEWS WEB(2023年)
「緊急避妊薬の薬局での入手を実現する市民プロジェクト」の共同代表の女性Aさんは「これから先、試験的な緊急避妊薬の販売や厚生労働省での調査研究が実施されるとすると、全47都道府県での薬局での緊急避妊薬の販売できる実現を果たすには2年以上必要になるだろうという意見も上がっていて、緊急避妊薬へのアクセス自体が阻止されているとさえ感じています」と語りました。
そして「緊急避妊薬『レボノルゲストレル』の試験的な販売を行うならで、早期にほとんどの薬局で販売して欲しいですし、どこの薬局だと購入可能なのかを認知して頂く機会がないと混乱を招きそうだと思います。また、調査研究で賛同する時にプライバシーが保護されるのかを心配して緊急避妊薬『レボノルゲストレル』を使うことを躊躇する人もいると思うので、当事者に負担がいかない形式で行って貰いたいです。どの時期に妊娠するかで人生を左右する大きな社会問題なので、国には全面的な薬局での緊急避妊薬『レボノルゲストレル』の販売を迅速に実現して頂きたいです」と述べていました。
2023年11月、
予期していない妊娠を防止する、緊急避妊薬の『レボノルゲストレル』を、医師の処方箋が無くても薬局の店頭で適正に販売可能かどうか調査研究を実施するために、日本薬剤師会が2023年11月28日から日本各地の約150の薬局で試験的に販売する運びとなりました。
『レボノルゲストレル』は、日本では現在、医師の処方箋が必要ですが、2023年6月に厚生労働省の検討会は、医師の処方箋が無くても適正に販売可能かどうかの検証を行うために、一部の薬局で試験的に販売する調査研究を実施することを決定しました。
日本薬剤師会によれば、『レボノルゲストレル』を購入できる人は調査研究への参加に同意した16歳以上の方となっており、16歳以上18歳未満の方は保護者の同意が必要だということです。
『レボノルゲストレル』の販売価格は7000円から9000円までを想定されています。
また、16歳未満の方へは、まずは薬局が産婦人科医などを紹介します。
参考:「緊急避妊薬」全国約150の薬局で試験的に販売 11月28日から NHK NEWS WEB(2023年)
2023年11月28日、
望まない妊娠を防ぐ緊急避妊薬の『レボノルゲストレル』を医師の処方箋なしで薬局で試験販売する調査研究が2023年11月28日、スタートしました。厚生労働省から委託された日本薬剤師会が、全国145ヵ所の薬局で試験販売を行い、市販化する時の課題を洗い出します。
各都道府県で2~6ヵ所の薬局でしか緊急避妊薬の『レボノルゲストレル』は販売しないことから、実際に購入できる人は限定的となります。
厚生労働省から委託された日本薬剤師会は、販売状況や販売体制、使った人のアンケート結果を総括し、適正な一般販売に向けたデータを2023年度中に集計したい狙いです。2024年度も試験販売を継続できる様に、厚生労働省は予算の確保を図ります。
厚労相は2024年11月28日の閣議後記者会見で、緊急避妊薬の『レボノルゲストレル』の試験販売の開始を受けて「今回の調査結果を踏まえて、緊急避妊薬の『レボノルゲストレル』が必要な人に適切なカタチで届く様に検討を進めて参りたいです」と説明しました。
参考:緊急避妊薬、処方箋なしの試験販売を145か所の薬局でスタート…市販化へ課題洗い出し 読売新聞(2023年)
2024年3月、
緊急避妊薬『レボノルゲストレル』を医師の処方箋なしで薬局で試験販売する国の調査事業に関して、日本薬剤師会は2024年3月29日、2024年1月末までのおよそ2ヵ月間に2181件の販売実績があったと発表しました。販売を中止する様な大きなトラブルは起こりませんでした。現在は全国145薬局で販売していますが、2024年4月以降は追加の試験販売を検討しています。
都道府県別の緊急避妊薬の『レボノルゲストレル』の販売件数は、東京都の266件が最多で、神奈川県(231件)、大阪府(169件)が続きました。10件未満も5県、ありました。
専門家や現場からは、都市部で販売薬局を増やすことを要望する声が高まっています。
参考:緊急避妊薬の薬局試験販売、2か月で2181件…東京266件が最多 読売新聞(2024年)
専門家の意見
日本産婦人科医会の常務理事の女性Bさんは「薬局で試験的に、『レボノルゲストレル』を販売をすることで緊急避妊薬を購入できるハードルは下がるかもしれませんが、妊娠した当事者は未成年だというケースや、性犯罪に遭っていたりするなど複雑な背景がある女性や少女も多いです。薬剤師がこの様な緊急避妊薬をなぜ使うのかの裏側を聞き取って必要なシーンでどれだけ多く、産科医と連携できるか詳細なデータを取っていく必要があります」と説明しました。
緊急避妊薬は既に妊娠しているケースには効果はなく、日本産婦人科医会の常務理事の女性Bさんは「緊急避妊薬を買いに来た時点で既に妊娠しているという場合もあります。この様な妊娠している人たちが正確に医療にアクセス可能な様に整備していかないとならないのです」とも述べています。
そして、「避妊用の低用量ピルを無料化にすることや、避妊を男性だけに委ねずに自分で自分のことだとして決心するためにもジェンダー教育など、社会的な性教育への整備も重要です」と語りました。
緊急避妊薬については別のライターさんがずっと書かれていましたが、遂に試験的とはいえ、薬局で処方箋なしで買えるところまで来たんだ!と思いました。
日本では海外みたいに簡単に処方までに審査があり、なかなか通らないのが難しいところですが、避妊ができなくて、希望しない妊娠をしてしまう前にも、この緊急避妊薬『レボノルゲストレル』があると救われる方も多いと感じました。
noteでも書いています。よければ読んでください。
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