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こんにちは、翼祈(たすき)です。
厚生労働省の薬事・食品衛生審議会の専門部会は2023年2月27日、鼻にスプレーして接種するインフルエンザのワクチン、第一三共が開発した『フルミスト』点鼻液について製造販売を認める方針を承認しました。
2歳以上19歳未満が対象で、注射式のワクチンは2回接種する必要があったのに対し、1回の接種となります。鼻に霧状に吹きかけるいわゆる点鼻液のワクチンで、日本国内で初となる鼻スプレーのワクチンが実用化します。小さなお子さんでも恐怖感なく接種可能だと期待されています。
これまでの注射式が重症化の予防に重点を置いていましたが、『フルミスト』は感染予防への効果を期待できると提唱する専門家もいて、活用が浸透する可能性も秘めています。
今回は『フルミスト』が承認に至るまでの道のり、どんなワクチンなの?、どんな副反応があるの?、実際に使っている病院の話などを、多角的に特集します。
『フルミスト』ワクチンってどんなワクチン?副反応は?
厚生労働省によりますと、『フルミスト』は4種類の弱毒化させたインフルエンザウイルスを投与する生ワクチンで、これまでの注射式とは違い、霧状のワクチンを鼻の中に左右それぞれスプレーして使用します。それで、注射型のワクチンと異なり、痛みを余り感じずにワクチン接種が可能です。
細いスプレーノズルを鼻に差し込んで液を噴霧し吸い込むタイプとなっていて、左右の鼻腔に0.1ミリリットルずつ(計0.2ミリリットル)を噴霧します。痛みが少ないことで、接種しやすいのが大きな特長です。ウイルスは、鼻や口、気道を通って体内に入ることが多く、経鼻ワクチンを使用することで、鼻の粘膜の感染防御効果も高まると想定されます。
インフルエンザのワクチンは、今までは注射式のものしか認められていませんでしたが、製薬大手の第一三共が2016年に承認を求めて『フルミスト』を申請しました。イギリスのアストラゼネカ社が開発し、第一三共とライセンス契約を締結しました。有効性に関して注射式のものと同様に期待されるとして、2023年2月27日の薬事・食品衛生審議会の専門部会の承認を受けて厚労相が後日、正式に承認します。
経鼻ワクチンは、2022年12月時点でアメリカやヨーロッパなど30以上の国と地域で既に承認されています。アメリカでは2003年に承認されました。審査に7年近く費やしたことについて厚生労働省は、追加の臨床試験などが必要になり、評価に時間がかかったためだと説明しています。
厚労省によりますと、日本国内の臨床試験では、約29%のインフルエンザの発症予防効果が確認されました。一方、鼻水やせき、喉の痛みなどの副反応も報告されました。
『フルミスト』の効果の持続期間も注射式のワクチンより長いと思われ、季節外れの流行にもある程度の効果を見込めることがあります。13歳未満の場合、注射式のワクチンでは2回の接種が推奨されていますが、『フルミスト』は原則1回で、「通院の手間がかからなくて楽です」という親御さんの声も上がってます。
ですが、『フルミスト』は、感染して増えない様にインフルエンザウイルスを使用した生ワクチンと呼ばれ、毒性は弱いですがウイルスが生きている状態にあります。注射式の不活化ワクチンと異なり、軽い感染状態になることで免疫が作られます。
注射式のワクチンの接種後には余りない、風邪みたいな鼻水などの副反応が出ることもあります。鼻づまりの症状が強い人は、注射式のワクチンを選択する人もいます。また、高齢者や2歳未満の乳幼児、妊婦らには推奨されていません。
日本国内では現在、医師の判断で『フルミスト』を輸入して接種機会を届ける医療機関もあります。健康被害が起こったケースでの救済制度は対象外ですが、厚生労働省の承認を受けられれば健康被害救済制度の対象になります。
参考:インフルエンザワクチン 点鼻液を国内初の承認へ 厚労省 NHK NEWS WEB(2023年)
約10年前から『フルミスト』を海外から輸入し、希望者に接種を行っている、東京都港区にある「おりつこどもクリニック」。
接種に「主たるウイルスの感染経路である鼻の中に免疫を作ることで侵入を防ぎ、理論上は高いインフルエンザの発症予防効果に期待が持てます」と、「おりつこどもクリニック」の院長の男性は説明します。『フルミスト』と流行しているインフルエンザのウイルスとで株が違ったケースでも、一定の効果が見込まれます。
最大の特徴は、今まで注射式のワクチンと比較しても痛みが余りないことです。「小さなお子さんなど注射が苦手な人に合う」そうで、噴霧は一瞬で終わることもあり、『フルミスト』を接種した人の中には「えっ、もう終わったんですか?」ととても驚く人もいるということです。
院長の男性によりますと、今までは海外からの輸入は『フルミスト』の供給が安定せず、追加の発注が困難でした。さらに、過去に重篤な副反応が出た人はいなかったですが、未承認薬であることで、国の健康被害救済制度を利用することができません。接種費用は全額自己負担となり1回8000円かかります。こうしたポイントに関しても、接種を希望する人に理解を求めていました。
その上で院長の男性は「『付与』が国から承認されることで健康被害救済制度補償の対象となり、私たちとしても推奨しやすくなります。国内で製造されれば供給が安定し、かかりつけ患者にも行き渡るようになると思います。より沢山の人にとって、自分に適したワクチンを試せる選択肢が1つ増えるのではないか」と語ります。
2024年10月、
新しいインフルエンザワクチン『フルミスト』はスプレーを、インフルエンザウイルスの感染経路となる鼻の中に入れ、そのまま吹きかけるタイプのインフルエンザワクチンで、2023年、国から承認を受け、2024年10月からお子さんが接種可能となりました。
東京都港区にある小児科のクリニック「クリニックばんびぃに」では2024年10月7日から、『フルミスト』の接種をスタートし、早速、接種を希望する親子がやってきました。
『フルミスト』の接種を希望した5歳の女の子は、「注射するタイプの不活化ワクチンより痛みはなく、『今、終わった?』ってソフトなタッチな印象を受けました。来年も『フルミスト』を希望したいと思います」と語りました。
女の子のお母さんは、「娘は例年注射タイプの不活化ワクチンを接種した後に、『打った場所がかゆい』と訴えるので、今日は『フルミスト』を選択しました。接種も1回で完了しますし、娘の体調不良といった、急なスケジュール変更が入った時の管理も行いやすく助かりました」と言いました。
「クリニックばんびぃに」の院長の男性は、「注射タイプの不活化ワクチンを摂取することが怖いと逃げ回ったり、暴れたりするお子さんもいて、インフルエンザのワクチン接種もできないと嘆いているご両親もいます。『フルミスト』は痛みもないですし、チクッとした注射の痛みが苦手なお子さんにとってはとても効果的なワクチンだと思います」と説明しました。
参考:“鼻にスプレーのインフルエンザワクチン”子どもに接種始まる NHK NEWS WEB(2024年)
日本小児科学会の予防接種・感染症対策委員会の委員長の女性は、
「スプレータイプのワクチンは注射タイプの不活化ワクチンと有効性は変わらないという研究成果もあって、お子さんの健康状態をよく把握しているかかりつけ医と相談して、『フルミスト』か、注射するタイプの不活化ワクチンの二択のワクチンで、どれを希望したいのかを、選択して打って頂きたいです」
と述べました。
私の知り合いの男性は、
たまごアレルギーがあります。なので鶏卵を使う、従来のワクチンは打てないそうです。
この間その人に、「インフルエンザのワクチンで、鶏卵を使わないmRNAワクチンが今開発中らしいですよ」と話した時、「じゃあ、僕もそれなら打てるね」と嬉しそうでした。
私はアレルギー持ちではありませんが、アレルギーがあるとあらゆるものに気を遣い、選んで食べたものに、アレルギー物質が使われていて、間違って口にした場合、命に関わる重篤な状態に陥ると聞きます。
『フルミスト』も鶏卵を使わないことで、たまごアレルギーの人にワクチンを打つという選択肢ができます。海外で多く承認されていますし、日本で接種の新たな選択肢になる日は、すぐそこまで来ていることでしょう。
このワクチンも早く主流になって欲しいですね。
noteでも書いています。よければ読んでください。
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