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こんにちは、翼祈(たすき)です。
『フェーズフリー』とは、日常や緊急の時というフェーズ(時間や局面)の区分に考え込まず、日常生活が快適に送れることを目標とする考えです。普段使いのモノやサービスが災害時の助けにもなることを示し、「備えない防災」とも称されます。
学生時代に災害軽減工学を研究した佐藤唯行さんが2014年に『フェーズフリー』を提唱しました。佐藤さんは東京都に一般社団法人「フェーズフリー協会」を2018年に立ち上げました。理念に適したアイテムやサービスの認証制度を整え、普及活動などを行うことで、2021年は災害時にも凄く助かるアイテムなどを表彰する活動もスタートさせました。
今回はその『フェーズフリー』という考え方について迫ります。
『フェーズフリー』のある場所
普段通りと非常時とを分けない『 フェーズフリー 』という防災の新しい考え方をアイテムや商業施設などに導入する活動が拡大しています。素早く公園のベンチが「かまど」へとチェンジしたり、コンテナホテルが被災地まで持ち込まれて避難所に変わったり…。柔軟な発想で災害が起きた時に対策する「備えない」考えが注目を集めています。
2022年9月中旬に福岡県福岡市博多区にある商業施設「ららぽーと福岡」内にある緑地のエリアで、社員たちが既に設置されていたベンチの解体を行いました。座面のネジを外し、ベンチの中から取り出した複数のパネルを組み立てることで、「かまど」へとチェンジしました。
作業時間は2、3分しかかかりません。「かまど」は45リットルの鍋2つが煮炊きも可能な大きさとなっていて、地震が起きた時には温かい食べ物の支援も可能です。ベンチ横には組み立ての方法が記載された説明板が付けられており、どなたでも「かまど」を作れます。
同「ららぽーと福岡」は2022年4月より開業されました。ベンチは災害時で帰宅困難者なども足を運べる様に、幹線道路に近い距離に2台設置しています。ららぽーと系列施設では大阪、埼玉に続く3例目のベンチの設置で、同「ららぽーと福岡」の運営に携わる三井不動産商業マネジメントの男性によると「災害はいつ起こるか事前に予測が出来ない。安心して買い物に来て頂ける様に、『フェーズフリー』な設備を導入しました」と話します。
参考:「備えぬ防災」備えよし「フェーズフリー」広がる 公園ベンチ→かまどに早変わり/コンテナホテル→移動避難所に 読売新聞(2022年)
実際に『フェーズフリー』が役に立った時の話
実際、普段使いのものが災害時に助かる事例も起こって来ました。その1つの事例が、2019年に台風19号の影響で千葉県で停電が発生した時のことです。非常用発電機を所持していなかった人たちが、ハイブリッド車などから電気を貰うことで電源を確保できました。この事例も『フェーズフリー』だと「フェーズフリー協会」の代表理事の佐藤さんは言いました。
そして現在、ちょっとした発案で身近なものを『フェーズフリー』へとチェンジする活動が浸透しています。50ミリリットル毎に色が分けられている、サンナップの「デザイン紙コップ メジャーメント150ml 50個入り」(税込295円)は、「計量カップ」の様に活用可能です。
画像・引用:サンナップ
「フェーズフリー協会」の代表理事の佐藤さんによれば、「非常時にどんなことに対して困難が起こるかというと、例えば、赤ちゃんのいるお母さんが避難所で粉ミルクを飲ませたいと思うと、『何を使用したら粉ミルクに必要な量が計量出来るだろうか…?』と、粉ミルクを作る時の分量を計量することがいきなり難しくなるんです」と述べます。
参考:WEB特集 備えない防災 “フェーズフリー” NHK(2022年)
沢山の人が災害で家族や毎日の生活を無くしたくないと考える反面、万全の備えがしていない人は多いといいます。「フェーズフリー協会」の代表理事の佐藤さんによると、「従来の“備える”防災に反して、“備えない防災”とよく呼ばれます。備えをするには限界が起こる。備えることが困難だとすれば、備えるという考えをしないでみようと。普段使いのものが非常時に助かってくれればいいと思います」ということです。
「周りにあるものが災害時でも助かるなら、結果的に安全で安心な社会に繋がって来る。普段の私たちのライフスタイルを豊かにしているものが、非常時に私たちの生活や命を助けてくれるっていう考え方が『フェーズフリー』です。『備えなきゃ』っていう考えより、『既に備わっている』。この様に、解決していく。そのほうが実践しやすいし、沢山の人たちの暮らし、命を守れるのではないかと考えます。」とも述べました。
まだ沢山ある『フェーズフリー』アイテム
画像・引用:株式会社 ドリーム
違和感を持たず部屋に馴染む、カーキカラーのクッション。ファスナーを下ろして中を出してみるとと、成人男性でも入れるサイズの寝袋にチェンジしました。株式会社ドリームから発売されている「SONAENO クッション型多機能寝袋」(税込12800円)です。
画像・引用:三菱鉛筆
画像・引用:スコッティ
三菱鉛筆(uni)からの「加圧ボールペン パワータンク」(税込166円)では、ペン先で空気が専用インクを流すことで、濡れてしまった紙にも書きこめる「加圧式ボールペン」となります。日本製紙クレシアからの「ティッシュペーパー スコッティ ウエルネス5箱」(税込394円)では、災害時の運動不足でのエクササイズにも使用できます。
画像・引用:備え梅
また、一般的なものより半年ほどの賞味期限を3年まで引き延ばした“保存食”になる梅干しを販売するのは、株式会社バンブーカットからの「備え梅 4粒入り」(税込2160円)。可愛いパッケージで、手土産にもオススメ出来るアイテムとなっています。
画像・引用:BOUSAI FARM
この大きなバッグでは、災害時に水を入れることも可能な「heart bridge バッグにもバケツにもなる超撥水バッグ」(税込3278円)となります。壁にかけられた一見小さな絵画は「アートトワレ」(税込1760円)です。絵画の中にビニール袋と凝固剤が同封しており、便器に装着して使用可能な「簡易トイレ」に早変わりします。
画像・引用:アートトワレ
普段使いが出来る素敵なデザインにすることで、何かあった時の「どこに置いたか分からない」といった悩みも解決可能な、『フェーズフリー』なアイテムの数々です。
参考:「備えない」のが新常識? 今話題の「フェーズフリー」な防災 平時にはインテリアで有事にはトイレになるアート、防災をテーマにしたスポーツ…“ネオ防災”を一挙紹介|カンテレSPORTS(2022年)
最近流行しているキャンプも、『フェーズフリー』が活発です。電気もガスも通っていない場所で『フェーズフリー』を楽しむことが出来ると、ライフラインが止まった時でも戸惑わず対処することが可能です。
スーパーマーケットでも、少しずつ『フェーズフリー』が浸透している様で、イオン大阪ドームシティ店 課長の男性によれば、「“暮らしの予備”を“非日常の備蓄品”に。またここ数年に発売された非常食は、いつもの食事でも美味しく時短で作れますし、普段使いから活用手段が凝らされています」と話し、2022年8月イオン大阪ドームシティ店では防災の売り場を広げており、日常生活でも食べられる非常食は人気を高く集めています。
素敵な考え。
最低賃金は上がっても、今は円安で物価高が続いており、生活に余裕のない方も多いと思います。「南海トラフが来る」「首都直下型地震が来る」と言われても、目の前にある生活を送ることに精一杯で、防災しなきゃと思っていても、「どこから手をつけたらいい?」「何をしたら良いか…」と、備えるものが多くて、迷ってしまいますよね。
今回紹介させて頂いた『フェーズフリー』のアイテムは、それほど高くなく、これが普段使い出来るだけではなく、実は防災にも良いと知ったら、価格も相まって、防災への意識が高まっていくのではないか?と感じました。
防災にしろ、色々災害について考えていかなければならない昨今ですが、『フェーズフリー』を上手に取り入れて、防災していきたいなと思いました。
参考サイト
関連記事
『備えない防災』フェーズフリーとは NHK 解説委員室(2023年)
備えない防災「フェーズフリー」普及進む 読売新聞(2023年)
“フェーズフリー”な防災施設 NHK NEWS WEB(2024年)
noteでも書いています。よければ読んでください。
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