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あなたは「感覚過敏」という言葉を聞いたことがありますか?
「感覚過敏」とは、視覚、聴覚、嗅覚、触覚、味覚などの感覚が敏感であるがために、日常生活に支障をきたしている状態のことを言います。
発達障害を持つ人には感覚過敏の状態にある人が多くいると言われていますが、発達障害を持つ人の全てが感覚過敏の状態にある訳ではありません。
また、発達障害を持っていない人の中にも、感覚過敏の状態にある人がいます。
この記事では、「感覚過敏」とは具体的にどのようなものなのか、上手に付き合って生きていく方法はあるのか、一緒に考えていきたいと思います。
感覚過敏だとどう感じる?
一口に「感覚過敏」と言っても、どの感覚が敏感なのかによって悩みは変わってきます。
どの感覚が過敏な人が、どんな悩みを抱えているのか、一例ですが挙げてみましょう。
視覚
・光を眩しく感じる→太陽光が眩しく、外出が困難。スマホの光が苦痛。など
・特定の色や形が苦手→プレゼン資料などを見るのが苦痛。など
・視覚情報が多いと疲れる→人の多いところなど、沢山の情報が目に入る場所が苦痛。など
聴覚
・特定の音が苦手→電車の中、教室の中などざわざわした環境が苦痛。蛍光灯や時計の秒針の音など些細なものが気になる。など
・大きな音が苦手→必要以上の恐怖を感じる。頭痛など体調に響く。など
・聞きたい音だけ聞き取れない→他の人の話し声と目の前の相手の話し声が同じ音量で聞こえ、会話がしづらい。など
嗅覚
・特定の匂いが苦手→化粧品、洗剤、食べ物、体臭、香水、芳香剤、など
触覚
・人に触られるのが苦手→人が近くに来ただけでも距離をとってしまう。など
・特定の肌触りが苦手→着られる服が限られる。タグを取らないと服が着られない。マスクが付けられない。など
味覚
・特定の味や食感が苦手→極端に食べられないものが多い。など
温度感覚
・温度変化が苦手→屋外と屋内の温度差で気持ち悪くなってしまう。など
平衡感覚
・体が傾くのが苦手→乗り物酔いしやすい。少しの傾きでも気持ち悪くなってしまう。など
ざっくりと挙げただけでもこれだけ幅広い悩みがあります。
苦手なものを感じると、体調を崩してしまう場合も多く、日常生活に支障が出てしまいます。
もし自分にも当てはまる節を感じた方がいるなら、もしかしたら感覚過敏かもしれません。
私の体験談〜感覚過敏と自分〜
同じ感覚過敏を持つ人でも、一つの感覚が敏感な方もいれば、複数の感覚が敏感な方もいます。
一つの例として、筆者、ツワブキの感覚過敏についてお話できればと思います。
ツワブキは複数の感覚が敏感なタイプの感覚過敏当事者です。
敏感なのは聴覚と嗅覚で、他の感覚はそれほど敏感だなと思ったことはありません。
まず、聴覚過敏がある関係で、他の人の話し声がするところで別の会話をするのがとても苦手です。全部同じ音量で聞こえてしまうので、会話に集中できないのです。
また、人が多いところ、ざわざわしているところに長時間いると、疲れて体調が悪くなってしまいます。必要な音だけ聞く、ということが出来ないのです。
嗅覚過敏の方はというと、芳香剤や制汗剤の匂いがとても苦手です。
学生時代、体育の後の教室が地獄だと思っていました。複数の制汗剤の匂いが混じり合って、気持ち悪くなってしまいます。
また、単体ではいい匂いだと感じていた芳香剤が、食事時になると食べ物の匂いと混ざって不快で仕方がなくなるという経験もあります。匂いが混ざるのが苦手なのかもしれません。
感覚過敏という言葉を知る前は、そんな症状があるということも知らなかったので、よくみんな耐えられるな、気にならないのだろうか、と悩むことも多くありました。
今では自分なりにやんわりと周りに伝えたり、対策をすることで感覚過敏と付き合って生きています。
大袈裟?ワガママ?周囲との認識のズレ
感覚というのは共有することが出来ません。
なので、他人が何らかの刺激についてどう感じているか、私たちは想像以上のことは出来ないのです。
それゆえに、「大袈裟に言い過ぎだ」「少しくらい我慢すべきだ」と言われてしまうこともあります。
ツワブキもかつて、感覚過敏というものを知らなかった頃、素直にこれが嫌だと言ったら「言葉が強すぎる。大袈裟だ」と眉をひそめられたことがあります。
その時は納得できないながらも自分は大袈裟なのかと思ったのですが、それは認識のズレによるものだと後から分かりました。
例えば感覚過敏がある、と分かっていれば、周りも「この人は自分が思う以上にこの刺激が辛いと思っているんだな」と理解しやすくなると思います。
一度、近しい人と「どんな時に自分は苦痛を感じるか」という話をしてみると、新たな発見が得られるかもしれません。
なぜ起こる?感覚過敏
感覚が敏感すぎることで起こる様々な悩み。
そもそも、感覚過敏はなぜ起こるのでしょうか。
私たち人間は、外部からの刺激を目や耳、肌などで感じます。
そして受け取った刺激は脳に送られ、実際に認識されます。
この時、脳の刺激の感じ方に違いが出ることで、同じ刺激でも感じ方に違いが出ます。
これが感覚過敏と呼ばれるものの正体です。
発達障害など、元々発達に凸凹があるタイプの人に感覚過敏の方が多いのは、生まれついて脳の刺激の感じ方にも凸凹があることが多いからなのでしょう。
また、元々体調が悪かったり、疲れていたり、ストレスが溜まっていたりすると、感覚過敏の症状が出やすくなるとも言われています。
感覚過敏との付き合い方を考える
感覚過敏は、病気ではなく症状です。
根治する手段は今の所見つかっておらず、それぞれの症状に対して対処するという方法が取られています。
苦痛を感じる刺激に対して、どのように対処すれば苦痛が和らぐか。
どのような工夫をすれば、苦痛に困らされずに日常生活を送ることができるか。
症状ごとにいくつかの例を挙げてみてみましょう。
視覚過敏
・サングラスをする
聴覚過敏
・耳栓やイヤホン、イヤーマフなどをする
嗅覚過敏
・マスクをする
触覚過敏
・服のタグを取る
・着られる服は複数持っておく
味覚過敏
・苦手な食べ物は無理に食べない
温度感覚過敏
・冷暖房を有効に使う
平衡感覚過敏
・苦手な乗り物などには極力乗らない
全般的に「苦手なもの・状況を避ける」ことが対処の工夫になります。
ある程度の年齢まで成長していればそういった状況を自分で避けることができるようになると思いますが、子供だとそうはいかないことも多いです。
そもそも、「何が嫌なのか、何が苦痛なのか」を上手に説明できない場合もあります。
そのため、感覚過敏とうまく付き合っていくためには、周囲の理解が必要不可欠になってくると私は考えています。
感覚は共有できるものではないことは既にお話しましたが、それでも感覚過敏というものについて知っていれば、相手が苦痛を感じているかもしれないことを想像することは出来ます。
当事者としては、ただ「苦痛を感じているんだな」と理解してもらえるだけでも充分ありがたいです。
勿論刺激による苦痛がない方が良いですが、それ以上に、「大袈裟に言っていると思われる」「理解してもらえない」苦痛を感じずに済むのですから。
敏感な感覚と生きていくために
前項でもお話しましたが、感覚過敏と生きていくためには、周囲の理解が不可欠だと私は考えています。
感覚過敏というものがある、ということを知っているだけで、身近な人にもそうでない人にも「もしかしたらこんなことが辛いのかもしれない」と想像を働かせることが出来ます。
私自身、感覚過敏の当事者ではありますが、自分が持っているものではない感覚過敏の辛さについては想像以上のことが出来ません。
コロナ禍でマスクを常用する時代になりました。
嗅覚過敏の人間としては不意に苦手な匂いを嗅いで嫌な思いをすることが減りましたが、触覚過敏を持つ方にとってはとても大変なのだろうなと記事を書きながら思いました。
私は触覚過敏を持つ人間にはなれません。
でも、触覚過敏を持つ方が辛い思いをしているんだろうな、と想像することは出来ます。
想像できたなら、少なくとも頭ごなしに否定しないよう心がけることが出来ます。
自分がそうして欲しいと思うことを、実践できるのです。
この記事を通して、感覚過敏というものに理解を示し、想像を働かせてくれる方が増えることを願います。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
参考サイト
感覚過敏[かびん]と鈍麻[どんま]─発達障害にともないやすい感覚の特性
https://kidsinfost.net/disorder/illust-study/neurodevelopmental_disorders/hyperreactivity/
【感覚過敏とは?】原因や解決方法を当事者のみなさんと一緒に調べてみました!
https://kabin.life/hyperesthesia
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