筋ジストロフィーをおしゃれに生きる!ジーパンで取り戻す自信!

筋ジストロフィー

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 あなたはファッションをどう捉えてますか? 気にする人もいれば、着用できればイイと様々な方がいらっしゃると思います。私は気にする方で、お気に入りのブランドもいくつかあり、ネットで新商品を見たり、実際にお店に足を運ぶぐらい好きです。

 そんなお気に入りのブランド「トミーヒルフィガー」を先日、何気なく検索してみたら、障害者向けのファッションも展開してるという記事を見つけました。私は今まで、手足が不自由だったり、筋肉が動かない、という人たちの、洋服の「着脱」を考えたことがありませんでした。

 ボタンを閉める、ジッパーを上げる、裾をなおす、といった事が難しかったり、全くできなかったりと。一方、機能性を重視すると、似たような服が多くなってしまい「オシャレ」ができないと悩みは、さまざまみたいです。そういう声に対応したのが「トミーヒルフィガー」で、どういった経緯で展開していったのか、気になったので紹介していこうと思います。

1.日常生活も難しい「筋ジストロフィー症」の苦悩とは

 まず「トミーヒルフィガー」が障害者向けのファッションを展開していった経緯で、重要なのは非営利団体「Runway of Dreams」と協力したことから始まります。そこの代表を務めるミンディ・シャイアーはファッションデザイナーを職としている人で、寝る時は明日どんな洋服を着ようかと、洋服の虜になっているような人でした。

 結婚をして3人の子どもを持つのですが、第二子のオリヴァーくんが「筋ジストロフィー症」という障害を持って生まれてきました。筋ジストロフィーは、筋力や肺機能に影響するほか、成長に伴い身体が変形して、日常生活すらも困難な障害です。2歳半でようやく歩けるようになり、安定を求めるため短下肢装具を必須としたり、発育が遅いために栄養を取るべく鼻からチューブを常にいれておかなければならない幼少期でした。

自信喪失を1着のジーパンで「自信」を取り戻すオリヴァーくん

 筋ジストロフィーは知能に影響はしないので、オリヴァーくんが小学校に上がると、できること、できないことが明白に分かってきました。

 毎日、1人で服を着ることも難しいオリヴァーくんの日常に、母親のミンディはこう言っています「自分で服を着るという私が大好きな行動さえも、息子にとっては悪夢なの」と辛辣に当時を語っています。少しでもストレスを取り除くために、スウェットパンツを履かせることにしたそうですが、オリヴァーくんが8歳の時に「他の子たちのように僕もジーパンを履いていく」と言い出しました。

 ジーンズだとボタンとファスナーが難しく、トイレに付き添う必要があります。学校まで付いて行くには難しい、かといって8歳の息子に「着たいものを着ちゃダメ」とは言えませんでした。そこでミンディが考えたのが、ボタン穴にゴム紐を通してボタンを留めるというもので、ジーパンに伸縮機能を追加し、ファスナーの部分は外してマジックテープで改造して、外したり付けたりすることで、補うことにしました。

 完成したジーパンをオリヴァーくんに見せると、目をキラキラ輝かせたそうで、私に似てオシャレが好きなんだとミンディは思ったそうです。1着のジーパンで「1人で着替えられる、1人でトイレに行ける」という自信を与えたそうです。

2.気分や自信は服で変われる?「オシャレ」は科学的に証明されていた

 オリヴァーくんはジーパンによって自信がついたのですが、この心理は「着衣認知」というもので化学的に証明されています。2つの要素が絡み合っていて、衣服の象徴的意味と服を着るという身体的な経験です。これらが合わさって自己認知となるのですが、分かりやすくいうと、身に着ける服に人は適応するというものです。

 例を出すと、重くてガッチリした革ジャンを着るとロックスターの気分になったり、オシャレなワンピースを着ると綺麗な気分になったりするものですよね。オリヴァーくんは自分だけがスウェットパンツを着用していて、クラスの子はジーパンなどを履いています。

 そんな状況にオリヴァーくんは、孤立したような気持ちを味わっていたのです。そこから「ジーパンを履きたい」とお願いしたことに繋がります。現在日本では936万人、世界だと10億人の障害者がいます。その1割が服の着脱が困難で、着たい服を着れずに自信を持てないと感じているならば、それを何とかしたいとミンディは「Runway of Dreams」を立ち上げます。

3.必要なのは情報 徹底した「リサーチ」

 ミンディは2013年に「Runway of Dreams」を立ち上げました。その使命として、ファッション業界に対して、メインストリームの服を着られなかった人々のために、服は改造できると教えるため最初の1年間は、障害者の人が何に困っているかを調べるため、徹底的にリサーチしました。

 学校や施設、病院にも足を運び、道で通りかかった車椅子の人や足を引きずっている人など徹底的に調べました。

浮かび上がってくる問題点

 脳性麻痺を患っている18歳の青年は、ハーヴァード大学に入学が決まっていても「僕の夢はキャンパスで他の新入生たちにまじって、ジーンズを履くことなんです」とジアンナという少女は左前腕が無く、袖がだらりと下がってしまいます。人と違うこで目立ってしまうということが耐えられないジアンナの母は、長袖のシャツはすべてプロに直してもらうそうです。それに費やす時間とお金は膨大なことでしょう。

 元フットボール選手のエリック・ルグランドという人は、2010年にプレー中のタックルで麻痺になってしまいました。体格が大きいエリックの着替えには介助2人と機械が必要で、そこから2時間以上かかってしまいます。ミンディは衝撃を受けたとエリックに伝えると「これが日常なんだ。しかたないさ、ビシッと決めたいからね」と。リサーチが完了したミンディは集めた情報を元に、3つの問題点を突き止めました。

3つの問題点

1.閉じる部分・ボタン、ホック、ファスナー、留め金にはほぼ全員が困難でした。そこに代用するのは扱いやすい磁石でした。磁石のおかげで、ハーヴァード大学の青年はジーンズで大学に行けました。

2.調節・ズボンや袖の長さ、腰回りなどは様々な体型に合わせるのは難関です。そこでゴムを内側に通すことによって、調節可能にしました。これでジアンナは片方の袖を調節して既製品の服が着られます。

3.服の着脱・基本の頭からかぶる方法をやめて、腕から着る方法をデザインしました。これでエリックのような人も、着替える行程と時間を減らせます。

 こうした消費者がまったく考慮されていないことを、ファッション業界に伝えるべく、ミンディはこうして変革を行い「トミーヒルフィガー」の目に留まり、機能性とデザインを組み合わせた服を、生み出す事に成功しました。

まとめ・熱意を行動に移す素晴らしさを教えてくれたミンディ・シャイアー

 ミンディは徹底したリサーチを行う際に、学校や施設はアポを取れますが、道行く人まで追いかけて話を聞いたそうです。この時ミンディは「頭がおかしいと思われたかもしれないが、本当に変化を望むなら、できる限り多くの人の、様々な衣服にまつわる困難をきちんと理解しなければならない」と語っています。

 息子が障害を持って衣服で困っている、職業がファッションデザイナーという要素は揃っていましたが、ここまでの「救いたい」という熱意を行動に移し、努力の結果、業界を動かしたミンディ・シャイアーは素晴らしい偉大な人間だと思います。

 なにもファッション業界だけではなく、さまざまなニーズに合わせた変革は必要だと思います。困っている人達の声に耳を傾けて、1人1人が自信を持って行動できる世の中になればいいと心から思いました。

参考元・TED BizSeeds IDEAS FOR GOOD 内閣府(Cabinet Office) 国際連合広報センター

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