日本人と長時間労働 日本人の働き方を考える 働き方改革のゆくえ

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1.はじめに

 過労死という言葉は、今やオックスフォード英語辞典にも掲載され、国際的な話題となっています。月に80時間以上・1日4時間以上の残業をすると、一般的に過労死になるとされています。

 まず一人当たりの平均労働時間の国際比較を見てみましょう(2014年)。日本の一人当たりの年間平均労働時間は1729時間でした。諸外国の場合、アメリカ1789時間、イタリア1734時間、イギリス1677時間、スウェーデン1609時間、フランス1473時間、ドイツ1371時間となっています。

 このデータから見る限り、日本の労働時間はアメリカ、イタリアに次いで高い水準となっており、必ずしも、日本人だけが「働きすぎ」なわけではありません。ただしこのデータの見方には注意が必要で、データには非正規のパートタイム労働者の勤務時間も含まれています。

 結果的に、短時間で働くパートタイム労働者の割合が増えて全体の平均労働時間が減り、一方、正規の労働者の労働時間はあまり変わっていないのが実情です。また、このデータには、実際に働いた時間よりも少ない時間を勤務先に申告する「サービス残業」の時間も含まれていません。

2.なぜ長時間労働は発生するのか

 ではなぜ、長時間労働が発生するのでしょうか。厚生労働省の「平成28年版過労死等防止対策白書」による調査によると、「なぜ所定外労働が発生するか」の問いに、企業側と労働者側とも、「仕事量の多さ」「突発的な業務の発生」「取引先からの不規則な要望」「人手不足」「業務の繁閑が激しいため」といった内容の回答が多くを占め、つまり長時間労働の発生は、労働者個々人の能力や資質によるものではない原因であることがわかります。日本の労働システムは「残業ありき」で設計されているのです。

 時間外労働の割増率は日本では25%ですが、これも他の国と比べて低いのも長時間労働の要因の一つかもしれません。アメリカ、韓国、マレーシア、シンガポールは50%もあり、ドイツにいたっては最大で60%にまで至ります。

 また特別条項付きの36(サブロク)協定さえ結べば基本的に無制限に労働時間を延長できる日本とは違い、だいたい10時間を超える労働をさせた場合に管理職に最大で1万5000ユーロ(約180万円)の罰金がかさせるドイツとは、そもそも残業の捉え方が違うのです。

 日本はILO(国際労働機関)の労働条件の改善のための条約のうち、1号条約(工業部門の1日8時間・週48時間労働)さえ、批准していません。これは、36協定があるためともいわれていあます。そしてヨーロッパ諸国の強力な長時間労働対策として、「インターバル規制」が挙げられます。これは、24時間につき最低でも連続11時間の休息時間を与えることを義務化したものです。

3.長時間労働は労働生産性を低くする

 長時間労働は、労働生産性(労働者1人当たりが生み出す成果)の低さの問題に直結します。日本の労働生産性は主要先進7か国で最低水準です。労働時間と労働生産性は、週49時間勤務までは正の関係にありますが、週49時間を超えて働いても生産性の上昇は見られないとのデータもありまます。一人当たりの労働時間が10%減少すると、25%生産性が増大するともいいます。残業をしても仕事の疲れやストレスを十分に回復できなかったり、長時間労働によって人件費が増大し、逆に生産性が低下してしまうのです。

 世界の幸福度を調査した「世界幸福度報告」に毎年上位を占める国であるデンマークの法定労働時間は週37時間です。労使協約によって、通常、週の労働時間は月~木曜日までは8時から16時、さらに金曜日は8時から13時までとさらに短いのです。確実にいえることは、「労働時間の短さ」と人々の「幸福度」は、密接に関係していることです。

 長時間労働は、たとえ本人に自覚がなくても心身の健康を損ないやすく、また職場だけで過ごす時間が長いと、職場の外での関係が孤立化し、退職後のセカンドライフにおける孤立にもつながりやすいです。

4.長時間労働の削減のために

 長時間労働の削減のためには、政府、企業経営者、管理職だけでなく、労働組合、そして労働者自身にそれぞれ役割がありますが、とくに、「確実な勤務時間の把握」だけでも有効だといいます。IDカードでの管理、タイムレコーダーへの打刻など、客観的な出退勤管理、また、ノー残業デー、退勤時刻の際の終業の呼びかけだけでも、かなり効果があるとされます。

   参考

小川慎一・山田信行・金野美奈子・山下充著(2015)『「働くこと」を社会学する産業・労働社会学』有斐閣.

小倉一哉(2007)『エンドレス・ワーカーズ 働きすぎ日本人の実像』日本経済新聞社.

常見陽平(2017)『なぜ、残業はなくならないのか』祥伝社.

中村東吾(2017)『誰が「働き方改革」を邪魔するのか』光文社.

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