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社会福祉の現場で様々な挑戦を実践している若手スタッフの声を、まだ福祉の魅力を知らないみんなに伝えるイベント、それがタイトルにある「社会福祉HERO’S」です。
1月28日に渋谷ストリームホールにて開催され、今回取材を行った、ラマ・サビナさんが、会場の特別審査員4名と、会場観覧・YouTubeでのライブ配信を見ていた学生審査員、SNSでの事前投票により、栄えある8代目のベストヒーロー賞を受賞されました。
日本式の介護に触れ、これを母国にも広め、ネパールに直面する社会課題を解決したいという熱い想いを持って、スピーチをなさいました。
サビナさんは、ネパール人初の介護技能実習生(1期生)の1人です。
国家資格「介護福祉士」に一発合格し、現在は特別養護老人ホームのリーダー介護員として働いておられ、世界に向けて「日本式介護」の素晴らしさの発信を目指しています。

【社会福祉HERO’S 2025】でプレゼンをするサビナさん
今回取材したのは、AKARIのライターhibikiと、編集長の島川です。
ぜひ最後までご覧ください!
日本式介護との出会いや、印象的なできごと
島川:まずは今回の受賞の喜びの声をお聞かせいただきたいです。
優勝したことはすごく嬉しく思っています。
特に外国人の私が介護をしている経験や、日本式介護のことを世界中に広めたいということが皆さんに伝わったと感じて、すごくありがたいです。
島川: 来日以前も、ネパールで看護師をされていたそうですが、その理由について聞いてもいいですか。
子供の頃から、看護師かお医者さんになりたかったです。
お医者さんになるには、勉強やお金が大変かかりますが、そこまでの余裕はなく、何の仕事に就くか悩んでいた時に、父に看護師を勧められました。
改めて考えると、「看護師もお医者さんも人を助けるという意味では医師も看護師も同じ」と思い、看護師を選びました。
島川:日本に来ることになったきっかけについて、教えてください。
元々、学生時代から日本の発展について勉強しており、日本のアニメなどが大好きで、以前から興味がありました。
1番のきっかけで言うと、2015年にネパールで大きな地震があったことが挙げられます。
地震の際に、日本の赤十字の方たちが助けにきてくれたことに、とても感動したのです。
その方達の対応の仕方や優しさに触れて、「いつか日本に行ってみたい」という気持ちが、大きくなりました。
その後、「日本で介護士として働くチャンスがありますよ」という話を聞いて、日本に来ました。
島川:日本に来て驚いたことは何かありますか?
交通ルールの厳しさです。ネパールでは、かなりアバウトなので、その違いに驚きました。
また、日本人の平均寿命の長さがネパール人と日本人とでは、大きく異なることにも驚きました。105歳まで生きている人達がいるという事実も、かなり衝撃的でした。
島川:介護の仕事をしていて、印象的なできごとについて、聞かせてください。
介護職について、色々な苦労をしましたが、1番大変で故郷に帰りたいと思ったことは、突然、ある利用者さんが、排泄物が付いたパットで私を殴ったことでした。
自分は一生懸命お世話しようと思ってたので、この行為は大変きつくつらかったです。
そのつらい時期に助けて頂いた方がいました。
別の利用者さんだったのですが、先ほどのつらい体験の話を聞いてくださいました。
その方が「あなたは悪くない。あなたは一生懸命、頑張っている」と励まされました。
違う利用者さんからは、「ごめんなさい」という言葉をかけられ、その方の優しさに触れ、とても救われました。
私を殴った人ではないのに、「なぜ?」と感じながら、驚いたのと同時にとても嬉しく、「私の気持ちが、この人には伝わっている」と実感することができた瞬間でした。
とても辛い時期だったので、その言葉が今でも印象に残っています。
島川さん:いいケアをするために大切なことはどんなことでしょうか?
当時の私は普通の挨拶ぐらいはしてましたが、人と話をすることがそんなに得意ではありませんでした。
つらい経験をしてから、人間関係を含めて心をケアすることは、とても大事だと気付きました。
人間関係を含めて、対応を話し合ってコミュニケーションを取ることで、いいケアに繋がるということを、その経験から得ました。
利用者様とコミュニケーションを取るようになってからは、お相手も段々と反応が変わって、好意的な反応が増えました。
関係性があるということは、とても大切だと考えるようになりました。
hibiki:サビナさんが感じる、日本式介護の良いところは、どんなところでしょうか?
私が感じる日本式介護のよさは、ただ毎日生きていくだけではなく、その方を中心にして「どう生きていきたいか」を考え、「その方の想いを尊重する」ところです。
日本とネパールの福祉の違いや、ネパールの置かれた状況
hibiki:日本とネパールと福祉の違いについて、聞かせてください。
児童福祉の面で言うと、ネパールには、お父さんお母さんに捨てられた子供達を保護して、寄付で成り立つ孤児院があります。
日本にはそういう子たちの為のちゃんとした施設があります。しっかりした制度があるので、「守られている」という感じがして、その部分が違うかなと思います。
ネパールでは今のところ介護施設もないし、介護福祉という仕組みがありません。
基本的には、「家族で介護はするもの」という考えが一般的です。
ネパール人の平均寿命が67、8歳と短いため、介護を受けたり、認知症になる前に亡くなってしまうということも、珍しくありません。
私は看護師の勉強をしていたので、「認知症」のことを勉強してるから理解していますが、
「認知症」という単語を、一般のネパール人の人達は知らないと思います。
そこではご飯を食べたり、寝たりなど、ただ生きていくという生活をしている状態です。
hibiki:なぜ今ネパールの方々は、「介護福祉士」を選択しているのだと思いますか?
私の周りの人達の話を聞くと、お世話をすることが好きで、優しいからです。
そして、人とコミュニケーションを取るのも得意な人達が多いです。
「私はこの介護福祉士という仕事に向いている」と思って選んでいると私は感じます。
待遇もネパールよりいいので、「介護福祉士」を選びやすいのではないかと思います。
今ネパールでは、若い人達の間で、海外に行って働くことが一種のトレンドのような状況になっていて、1つの家庭から1人の子が絶対に海外に出ています。
ネパールで仕事を見つけるのも多少は大変ですが、それだけが理由ではありません。
「皆が行っているから」「親戚の人達が行っているから私も絶対行きたい」など、競い合うような感じになっているのも理由としてあると思います。
いつか母国に「施設」を建てたい
hibiki:いつか母国に「施設」を建てたいとおっしゃていましたが、そのきっかけは何だったのでしょうか?
若い人達が海外に出稼ぎに行っている状況の中で、国内に高齢の人ばかりが残ってしまうことが心配でした。
私の親も、だんだん歳をとっていきますが、最期までその人らしく生きていける場所があれば、私のような親と離れて暮らす家族も安心できるはずです。そして、そういう不安を解消するためにも、高齢者の方たちの為に施設を建てたいという想いが生まれました。
島川:サビナさんの周りにも、同じような志の人はいらっしゃったりするのでしょうか?
私が働くこの法人でも、ネパール人が約100人ぐらい働いています。
皆色んな意見を持っていますが、みんなで会うたびに「ネパールでもいつか日本のような施設を建てて、両親にも利用してもらいたいね」という話をします。
皆同じような目標を持って頑張って働いています。
まだネパールでは子が親を最後まで見ることが当たり前ですが、高齢化が進んで若い人がいない状態だと見れなくなります。
独りにして、どこかで亡くなる様な状況だと皆心配なので、施設を建てたい、ちゃんとしたところが欲しいというのは、皆行動にしていないだけで、思っていると思います。
hibiki:今後の抱負などあれば、ぜひお聞かせください。
やっぱり日本式介護を世界中に広めたいことが1番です。
この社会福祉HERO’S 2025の受賞を期に、ただのお世話だけじゃない、日本式介護のすごさを皆さんに知って欲しいと思っています。
お話を聞いた感想
hibiki:ここまで日本式の介護の良さを理解してくださる方がいらっしゃるっていうのが、すごく日本人としても誇らしいです。
サビナさんも自信を持って介護に取り組んでいらっしゃるので、それが今回の受賞につながったのではと感じました。
以前ニュースで、ミャンマーなど東南アジアの女子高生の年齢ぐらいの方が、看護学校に行きながら病院で実習をしているのを見たことがあります。
彼女達は、日本人より真面目に取り組んでいて、実習先の病院のスタッフが褒めていました。素敵な笑顔で微笑んでおられたので、鮮明に印象に残っています。
いずれは日本人が日本人から学ぶのではなく、外国の方から学ぶということに、将来なるのではないかと感じました。
また、介護福祉士ではありませんが、ネパールの方が施設長になられてらっしゃるのをテレビで拝見しました。ぜひサビナさんにもネパールで施設長になってほしいなと感じました。
島川:先日のイベントの時のスピーチがとても素晴らしかったのですが、今日お話を聞く中で、ネパールの直面する現実も知れて、非常に学びの多い内容でした。
今回受賞なさったのは、そうしたサビナさんの想いが伝わったからだと感じています。
また、これから日本式介護を広めてくれることや、ネパールでの活動に対しての、サビナさんへの期待も込められているのではないかと思いました。
ネパールの直面する社会課題に疑問を持って取り組んでくださる方がいるというのは、本当にネパールの方や国にとって、ありがたいことだと思います。
ぜひ今後とも応援させていただきたいです。また何かの取り組みや、伝えていきたいことがあれば、いつでも声掛けていただけましたらと思います。
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