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はじめに
みなさんは、「児童養護施設」という場所をご存じでしょうか?
最近ですと、お笑い芸人のやすこさんが、自身が養護施設出身であることを告白され、24時間テレビで「児童養護施設」への募金を呼びかけ、マラソンを走られました。
実をいいますと、私の甥、姪は現在、「児童養護施設」に入所しております。
私にとっては、とても身近な存在である「児童養護施設」を、もっと知ってほしい。
そう思い、今回「児童養護施設」で働いていらっしゃる、現役の職員さんへインタビューすることができました。
児童養護施設 佐賀清光園(さがせいこうえん)の原口先生とのインタビューをお届けします!
(salad)では今から児童養護施設について、インタビューをしていきたいと思いますので、よろしくお願いします
(全員)よろしくお願いします。
(どんはれ)現在何歳から何歳までどれくらいの人数のお子さんたちを何人の支援員さんたちが受け持っておられるのでしょうか?
(原口)8歳から17歳までの児童が在籍しており、小学2年生から高校2年生まで全部で20人で、直接子どもと関わる職員が全部で11名おります。
あとは専門職の調理の職員だったり、心理士だったり、というのもいます。
(どんはれ)勤務時間はどうなっているのでしょうか?夜勤とかありますか。
(原口)うちは勤務時間が早出と遅出、それと宿直があるのですが、早出が6時〜16時まで、遅出が13時15分〜21時30分です。
泊まりである宿直は朝の9時30分に入り、翌日の11時30分までが勤務になっています。
【本園】
朝 宿直2人 早出1人/夜 宿直2人 遅出2人
【分園】
朝 宿直1人 早出1人/夜 宿直1人 遅出1人
(どんはれ)早出とかは何人の職員さんでやってらっしゃるんでしょう。
(原口)一応、本体施設と分園施設があり、そのうち男の子フロアと女の子フロアが、本体施設にあるのですが、そこに宿直職員が1人ずつ入って、翌日の朝もう一人早出の職員が来ます。
本園の朝は3人、夜は各フロアに遅出が3人入るので、夜は4人になります。
分園は子どもたちが5人いるので、職員1人ずつ入る感じになります。
(どんはれ)どんな専門職の方が働いているのでしょうか?
(原口)ファミリーソーシャルワーカーというんですけど、子どもたちの家庭復帰のために動いたりとか、退所した子どもたちのお世話や相談事を聞いたりしている専門職がいます。
また、里親支援専門員、これは里親に関する仕事をメインにやっている職員になります。
あとは心のケアをメインにする心理士と、栄養士と調理師がいます。

(どんはれ)地域との関わり合いはあるのでしょうか?
(原口)はい、うちも地域で生活させてもらっていますので、地域の行事ごとには参加させていただいています。
また分園施設が別にあり、本園とは別の地域で生活しているので、近所に挨拶をさせていただきまして、近所の川掃除や公民館の掃除だったりは職員が参加させてもらったり、子どもたちも参加したりしています。
(どんはれ)子どもたちが犯罪とかに巻き込まれたりしたときに、何か地域のネットワークみたいなものがあったりするんでしょうか?
(原口)ネットワークというネットワークは構築できてないんですけど、またそうなった時は警察に動いてもらうしかないので、地域の人とどうにかするってのは中々難しいところはありますね・・・。
子ども達の個人情報だったり守秘義務だったりするのもありますので、その辺はちょっと難しいなとは思いますね。
(どんはれ)施設にいることで、子どもたちはいじめにあったりしますか?もしあるとしたらどんなふうに対処していますか?
(原口)施設だからいじめられている、というケースは以前の職員からは聞いていないんですけど、その子の特性によってちょっかいを出されたり、とか学校でトラブルが起こったりとかはあります。
学校の先生たちと協力して話をしたり、子どもによっては他の子を叩いたりとかそういった時は、施設職員が相手の保護者さんに一緒に謝罪しに行ったり、ということはありますね。
(どんはれ)子どもたちの情報はどこまで把握しているものなのでしょうか?保護された状況や整理区域虐待の種類など知っている情報は全て知っておかなければならないのでしょうか?また、知らないでケアすることは難しいでしょうか?
(原口)まず入所するにあたって、児童相談所からの情報のみになりますが、全て施設に通知されます。その情報を知ってケアする方がこっちとしてもやりやすい。虐待を受けている子どもたちのトラウマだったり、そのような情報を吟味しながら情報は学校等に伝えたりします。
(どんはれ)在所年数が1年未満が一番多いようですが、子どもたちはどこに引き取られていくんでしょうか?長期と短期が進んでいると聞きますが、その原因は何だと思われますか。
(原口)これがどういった経緯で1年未満になったのかはわかりませんが、まぁ子どもたちいろんな家庭の状況で施設に入所している子がいます。いろいろなケースがあり、県外からの入所や施設から施設にいく子どもいます。また、家庭環境が修復して、家庭帰る子もいます。
(どんはれ)退所後の子どもたちには、どんな支援があるのでしょうか?
(原口)さきほど専門職の方で、家庭支援専門相談員(ファミリーソーシャルワーカー)の方を挙げさせていただいたんですけれども、支援という支援が出来ているのかは分かりません。
退所した子が、親との関わりがあまりなかった子とかは、施設を実家ではないですけれど、拠り所にしているので、正月に遊びにきたり、お世話になった職員に挨拶に来たりとか、そういった時に話したりして、連絡が取れるときは連絡を取って、外でご飯を食べたり話をしたり、そういったところで子どもたちの悩みを聞いたり、今悩んでいることや困っていることを聞いて職員が出来ることがあればそこで手助けをしたり、そういったことはさせてもらっていますね。
(どんはれ)財源はどこから来ているのでしょうか?国の助成金だけですからそれとも寄付もあったりするのでしょうか?
(原口)市という形で運営するにあたって、お金が出ているんですけれど、措置費として国と県から2分の一ずつで賄われているます。
寄付もありがたいことにいただいておりまして、子どもたちのために使わせていただいております。
(叶夢)職員として仕事を行う上で大変だったことや苦労されたことなどのエピソードはありますか。
(原口)私入社して8年になりますが、最初の1年2年は特に高校生や年齢があまり変わらない子どもたちとの関わるところで、自分が伝えたいことが伝わらなかったりとか、反発してぶつかったりするところが結構多く、それがかなり大変だったなと思います。
(ゆた)お子さんとの関わりについてなのですが、今度は子ども同士で喧嘩したり仲が悪くなったりすることはありますか。
(原口)子どもたちの喧嘩は日常茶飯事で、よく物のやり取りで喧嘩することもあったりしますので、みんなが使える物であったり、個人の物だったりしっかり分けて、共有の物はどうやって使うかなど必要に応じてルールを決めたり、ということもさせていただいています。
トラブルになった際、どうしても子どもたちで解決できない時は、職員が介入してトラブル解決には務めていますね。
(ゆた)職員として子どもたちに接するときに気を付けている点は何かありますか。
(原口)一応子どもと大人が接する上で、言葉使いだったり言動だったりそれを真似して、悪い行動や悪い言葉だったり、そういう所を真似することも多々ありますので、その辺を気を付けて、大人らしい対応や態度だったりするのは気を付けています。

(ゆた)思春期とそれまでの対応というのは変わりますか。
(原口)そうですね、年齢に応じての対応や支援を心がけています。自分もそうだったのですが、特に思春期は親の言うことを聞かなかったり、ということがありましたので、話せる機会に「最近どう?」という感じで、無理に距離を詰めずに話してくるのを待つというのは結構意識してやっています。
(ゆた)児童養護施設で暮らす子どもたちにとって、両親や家族の存在ってどんなふうに感じてますか。
(原口)やっぱりみんな家族と生活したいっていう気持ちはあるので、できるだけそういった一緒に暮らせるという支援はしていきたいんですけど、意外に子どもたちが心の内でどう思っているというのは、分からないんです。
親と会える帰省だったり、外出だったりがあるのですけれど、それを楽しみにしている子は多いと思います。
「やっぱりどうしても早く家族と生活したい、帰りたい」という気持ちは強いんじゃないかなと思います。
(どんはれ)発達障害など障害のあるお子さんはどれぐらいの割合でいるのでしょうか?
(原口)佐賀清光園では半数が発達障害などがあるのではないか、という話を心理士の人と共有しています。
全国的にそういう発達障害という理解だったり、認知がかなり増えてきたというのもありまして、実は大人になって発達障害が分かったという方もいらっしゃいます。
なので、そういう認知が増えたことによって、障害が増えたのかなというのも思っています。
(Pink)児童養護施設で働いている8年間の中で、児童養護施設に対して先生ご自身の考え方に何か変化はありましたか。
(原口)私も入社する前は、実習でお世話になっていたんですけど、子どもたちと関われて、少し宿直は大変だなと思ってたんですが、楽しいなと思います。
先ほども言いましたが働いてみると、最初のころは同じ年代の高校生とぶつかったりして「やだなぁ。」という部分もあったりしたんです。
今となっては、子どもたちも成長がみれるという所はあるので、すごく面白いなと。
まぁ子どもたちと自分も一緒に成長が自分もできた。というところが大きいかなと思います。
(Pink)様々な事情を抱えたお子さんたちと接するのはとても大変だと思います。職員同士でのメンタルケアなどはありますか。
(原口)メンタルケアというのも、子ども達と接していて「あぁくそ」と思うこともあるのですが、同じチームの職員や先生、先輩だったり話をして「こういうことがあった」という吐き出し口のようなところがあると思いますし、職員同士プライベートでご飯を食べに行ったり、職員同士でスポーツをしたりとか、そういったところで交流をし、メンタルケアといった形でしてるとは私の中では思っています。
(mako)施設で過ごす子どもたちにとって、原口先生はどういう存在だとご自分では感じていらっしゃいますか。
(原口)実際どう思われているんだろうと思ってSaladさんの姪に聞いてみたんですよ。
お兄さんでもお父さんでもないけど親族みたいだなって言われました。
しかし「それくらい親しい存在になれたのかな」と思ったのは嬉しく思いましたね。
けれど、嫌なことだったりをいうのは自分が言う立場に居るので、年頃の子からしたら少しうざがられてるのかなという所はあります。
けど、そう思っている(親戚のように)子もいるんだなと嬉しくなりました。
(mako)ご自分のご家庭をお持ちの職員の方もいらっしゃると思うんですけれど、子どもたちとっての家庭と、ご自分の家庭、二つの家庭があることでのご苦労や気をつけていらっしゃることってありますでしょうか?
(原口)私も結婚させていただいて、子どもはいるんですけど、仕事でも家庭でも子育てをしているような感覚になるので「ずっと仕事をしているな」という感覚ではありますね。
自分が結構きついなと思うところがあるのですが、他の先輩もご家庭をもっている方々ばかりで、もうバリバリ仕事をされてるのですごいなって思う部分もあります。
ただ今こっちで学んだことを育児スキルじゃないですけど、「風邪の時どうしたらいいか」とか「どこどこの小児科がいいよ」とかそういった情報は入ってくるので、先輩や職員たちに聞いたりして、すごくありがたいのかなとも思います。
(mako)いろいろな境遇の子どもたちと関わる中で、大変なご苦労があると思うのですけれど、その中で一番大変だと今までに思われたこと、そして何かまた、嬉しいと思われることはどんなことでしょうか?
(原口)やはり子どもたちが家に帰るとなった時、こっちとしては大丈夫かな?と思ったりするんですけど、それでも家に帰さないといけない。となった時、自立のために色々と自分で何でもできるようになってほしい、という気持ちがあります。
そこで私としては、やってあげたい気持ちはあるのですが、自立のために自分でできるようになってほしいので、話したりじゃないですけど、促す程度で成長を見届け、そういったところで何でもしてあげたい気持ちが少し強くなります。そこが大変だと感じます。
嬉しいことは、この前小学校六年生の授業参観に保護者の方と行ったんですけど、保護者の方に手紙を書いてもらい、それを子どもから親に渡すという行事があったんです。
私もどうしているかなと見に行った時、その子が保護者とは別に職員宛てに手紙を書いていて、もらった時はすごく嬉しいなという思いで他の職員に手紙を見せたり、「施設の先生ありがとう」ということでメッセージも付いたりしていて、小さいころから見ていたので親の気持ちになれるというか「嬉しかったなぁ。」とは思います。

制度や虐待防止について
(ゆた)制度や虐待防止についてなのですけど、日本で里親制度をもっと活発化させるにはどうすべきだと思いますか?
(原口)一番は里親さんの研修と言いますか、そういったところは大事になってくるのではないか思います。
パーセンテージははっきりとは分からないですが、佐賀県は里親に力を入れているのですけど、そういったところで里親さんの研修、さっと親に関わる児童関係の研修をどんどん進めていけば、活性化につながるのではと思います。
(ゆた)児童虐待についてお聞きしたいです。8年間、児童養護施設で働いてこられて、どのような対策をすれば、児童虐待する家庭が減っていくと思いますか?
(原口)11月が「オレンジリボン啓発期間」ということで「児童虐待防止月間」になっていて、そこは啓発活動を佐賀県では佐賀県の児童養護施設協議会がメインでやっている活動なのですけど、そういったところで「どんどん啓発していく」。
これも先ほどの話と似たようなところですが、施設職員は研修を毎年やっているんですけれど、今度参加して自発活動にも参加して呼びかけていくしかないのかなと思います。
(Salad)私からの質問です。養護施設で、分園という形ができていますが、原口先生は一つの大きな施設にいるのと、小規模な分園と、どちらが子どもたちにはいいとお考えですか?
(原口)政府が小規模化をずっと推奨しているのが、より家庭的な生活を送ってほしいからということでどんどん大人数から、小規模の施設になっていこう。という国の方針ですよね。
そういったところがあるので、小規模化というのはやっておりますけれど、子どもたちがのびのびと生活ができているのではないかと思いますし、施設に本園の子達は分園に行きたい。とかそういう所はありますけれども、やはり職員からすれば一人で見とかないといけない時間が長くて、責任感と言いますか何かあったらどうしようというプレッシャーなどそういったところもあります。
子どもの一人と職員と言い合いになったりとか他に助けが呼べず一人になったり職員の負担が大きいのかなとは思いますね。
本園の方は、頼れたり、誰かしらはいるので、子どもたちは分園のほうがいいのかなとは思いますが、職員のスキルじゃないですが、そういうところは必要になってくるのではないかなとは思います。
(どんはれ)子どもたちをケアする先生たちの離職率が高いと聞きました。それをくい止めるためにはどんな対策がなされると良いと思いますか?
(原口)さっきの話に関わってくるとは思うんですけど、やっぱり職員の負担と言いますかサポートできるところはしっかりしていってですね、「児童養護施設とはこういうところだよ」というのを発信していって、いろんな施設に興味を持ってもらって、施設で働く職員に関わってくれる人を増やしていかなくてはいけないのかなとは思います。
そこで興味を持った職員がそのまま入ってくれたり、そういったところにはつながりますのでどんどん「児童養護施設とはこういう所だよ。」と発信していくのが大事かなと思います。
(どんはれ)施設で暮らしている子どもたちのために、一般の人たちができることは何かありますか?
(原口)同じく「児童養護施設ってこんなところなんだ」と興味を持ってもらってあとは子どもたちが施設に偏見を持たない。というところはしていただけると助かります。
施設だろうが、一般家庭だろうが関係なく子どもは元気に生活しておりますので、そういったところで偏見を持たずに接していただける、それだけでも施設で暮らしている子どもたちにはすごく生活がしやすいのかなと感じます。
後編へ続く→
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