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今福岡に、世界から注目を集めるビジネスがあるのを皆さんご存知でしょうか?
その主役は、地域で暮らす『ばあちゃん』です。
それもただのばあちゃんではなく、75歳以上で、中には認知症を抱える方もいます。
意外かもしれませんが、私はこの目でその力強い胎動、そして希望を目の当たりにしてきました。
AKARIの読者の皆さんこんにちは、編集長の島川です。
いつもはAKARIのライターの皆さんに記事を投稿していただいていますが、今回は私がタイトルの『ばあちゃん喫茶』城南地区梅林店の2月27日のプレオープンに招待いただき、その様子を取材した内容を皆さんにお届けしたいと思います。
ぜひ最後までお付き合いください!
ばあちゃん喫茶とは?
タイトルにあるばあちゃん喫茶とは、福岡県うきは市にある、『うきはの宝』という企業さんが運営する、高齢者の方の雇用を創出する取り組みの1つです。
私が訪れたのは、福岡市城南地区梅林にあるばあちゃん喫茶です。
「ロハス梅林たまりば」と書いてある看板が目印です。

こちらは元々「あつまるシェアオフィス&シェアハウス」という施設に、ばあちゃん喫茶店を組み込んだ形になっています。介護施設なごみの家さんと連携して、利用者のばあちゃんたちが料理をしに来ている形となっています。
梅林店の基本情報はこちらになります。
住所:〒814-0144 福岡県福岡市城南区梅林3丁目28−6
営業時間:毎週木曜日11:30〜14:00
こちらの店舗は、4月に正式オープンを目指しているそうです。
プレオープンの様子
ここでは75歳以上の高齢者の方が料理の提供などをされているのですが、驚くのはその年齢を感じさせない元気さです。
こちらで本日トンカツを揚げて下さったのは、『トンカツばあちゃん』こと、料理長の谷口さんです。

若い頃から50代まで中洲でスナックを経営されていて、お店で手料理も出されていた腕前で揚げておられます!
谷口さんは70代だそうですが、自分の足でしっかり立って我々にトンカツを休まず振る舞い続けて下さいました。
こちらが実際にご馳走になったトンカツ定食です!

トンカツを一口かじると大変柔らかくて、後で伺うと下ごしらえでたくさん叩いて筋を取ったとのことで、お年を召した方でも簡単に噛み切れそうでした。

絶品のトンカツ!
一緒に提供されたたっぷり具材の豚汁も大変美味しく、同じく取材や招待されて来ていたお客さんにも、思わず笑みがこぼれました。


皆さんおいしそうに召し上がっていました!
70歳どころか、90歳を超えた方や認知症を抱える方も中にはおられましたが、みなさんまだまだ背がしゃんと伸びて、立派に活躍されていました。



皆さん背中が伸びてまだまだお元気でした!
お話も聞かせていただきましたが、「こうして一緒にご飯を作って食卓を囲むことが楽しい」とお話されていました。
普段から近所の子ども達と一緒にカレーや餃子、ピザを作って食べる会も催しているそうで、生活の張りになったり、楽しくおしゃべりする機会になっているそうです。


立派なピザ窯があってびっくり!

色んな年代のスタッフが協働しています!

お座敷の席も奥にありました!
もちろん、年齢的な部分や、認知症もあれば、生活の部分で誰かの手を借りないといけない場面もあります。
でもこうしてこれまで培ってきたことで、誰かに喜んでもらえることも提供できるし、収入も得られます。
施設で余生を穏やかに過ごすのも決して悪くないですが、まだまだ場があれば活躍できる方を「もうお年だから」と押し留めてしまうのは、地域にとっての「損失」だと改めて感じました。
もちろん、事業である以上は、収益を上げなくてはならず、簡単なことばかりではないと思いますが、これから全国的な広がりを見せる予感を感じるこの取り組みに今から期待せずにはいられません。
次項では、今注目を集めるされている『ばあちゃんビジネス』について、掘り下げたいと思います。
『ばあちゃんビジネス』に誕生のきっかけとコンセプトなどについて
一緒にお仕事をしている高齢者の皆さんを、代表の大熊さんは愛を込めて「ばあちゃん」「じいちゃん」とお呼びし、立派な戦力として扱っています。
大熊さんは、2006年にバイク事故で4年に渡る長期の入院・リハビリをしていた際、社会から必要とされていない感覚に襲われ、精神的に不安定になっていました。
そんな時期に、認知症のばあちゃんからリハビリの度に名前を聞かれるなど話しかけてくだったことに救われたそうです。
そうした経験や、退院後に地元うきはでデザイン会社を立ち上げる傍ら、地域のばあちゃん達が路線バスの路線減少による深刻な交通事情を抱えていたり、あと数万円の収入が欲しい感じていることを交流の中から知り、恩返しのつもりで始めた送迎サービスが事業の始まりでした。
その後大熊さんがサービスを通じて1万人以上のばあちゃんたちと直接対話する中で、ばあちゃんたち高齢者を保護することだけでなく活躍してもらったほうがいいんじゃないか、日本の社会保障費の増大を防いでいくにはどうしたら良いのかを真剣に考え、一つの解決策としてこの挑戦は始まりました。
参照元:ばあちゃんが働けて、稼げる会社をつくる! 大熊充氏が見つけた「うきはの宝」とは|Qualities
今は地域の農家さんと協働して手作りのスイーツなどを販売する『ばあちゃん飯』をはじめ、様々な事業にばあちゃん達と若者で手を取り合って挑戦しています。
以下がうきはの宝株式会社がHPで示している、コンセプトとビジョンです。
コンセプト
「75歳以上のばあちゃんたちが働く会社」
75歳以上のおばあちゃんたちが身体は元気で動くが国民年金の受給だけでは生活もままならくなってきている。
この問題に対して、おばあちゃんたちの働く場を創り「生きがい」と「収入」を創出します。
おばあちゃんたちの得意と特性を活かした「食」と「料理」を商品・サービス化しています。
ビジョン
おばあちゃんたちが「働く」ことで地域・社会に参加することで孤立するのを防ぎ、働くことで誰かに必要とされお客様からありがとうが働きがいに生きがいになる世界を事業で創っていきます。
主役はおばあちゃんたちですが、サポートする若い世代のスタッフたちと共に多世代が協力して働く「多世代型協働モデル」を完成させ20代〜80代までの全員参加型ビジネスを創ります。
大熊さんが立ち上げたこの事業は現在、様々な個人・企業・団体からの応援やメディアからの取材を受け、視察が国内だけでなく、海外からも毎日訪れる状況になっています。
2021年には農林水産省主催のビジネスコンテスト「INACOME(イナカム)」にて日本一、最優秀賞を受賞し、福岡県第20回男女共同参画表彰社会における女性の活躍推進部門で受賞するなど、公的にも活動が認められるようになりました。
参照元:福岡県服部誠太郎知事より表彰頂きました | うきはの宝株式会社
参照元:日本一になりました!農林水産省主催のビジネスコンテスト「INACOME(イナカム)」で最優秀賞に | うきはの宝
また、2024年10月には、発刊以来大好評の『ばあちゃん新聞』や『ばあちゃん飯』などの取り組みが評価され、ばあちゃん新聞 / うきはの宝株式会社が、GOOD DESIGN AWARD 2024 グッドデザイン賞・ベスト100を受賞しました。
参照元:GOOD DESIGN AWARD 2024 グッドデザイン賞・ベスト100を受賞しました。 | うきはの宝株式会社
ではなぜ今この「ばあちゃんビジネス」が脚光を浴びているのでしょうか?
なぜ今「ばあちゃんビジネス」が脚光を浴びているのか?
皆さんご存知の通り、日本は2025年より、国民のおよそ5人に1人が75歳以上となる、超高齢化社会に突入しました。
団塊の世代が75歳以上となり、医療・介護等の社会保障費の増加も見込まれています。
また人材不足が叫ばれる一方で、少子化に歯止めはかからず、即効性のある対策がなかなか打てない中、地方では若者が減って過疎化が進み、世代間の溝も深まる状況もあります。
そんな未来に希望が持てない中で、地域に眠る人材を生かし、若い世代と手を携えて経済活動を通して共に発展していくこの取り組みは、地方に住む多くの方々にとって、一筋の光に感じた人も多いのではないでしょうか。
地域のばあちゃん達が元気で働くことで健康寿命が伸びれば、社会保障費の削減や、社会との繋がりの広がりで孤独も解消され、経済活動による地域の活性化など、この取り組みが将来的にもたらす波及効果は計り知れません。
今回のプレオープンには、福岡市役所の方や、メディアの方、高齢者施設で働く方、グループホームの方など、顔ぶれは様々でしたが、皆一様に今回の取り組みに強い興味と期待を寄せていました。
それだけ関係者にとって、切実な問題なのです。
地域や施設で暮らすばあちゃん・じいちゃん達が、今後連携を深めて行く中で、もっと活躍していくことを望まずにはいられません。
大熊さんが語る今後の展望
現在出店しているジーバー喫茶の情報もお聞きしてきました。
3/1(土)より、福岡県春日市でもグランドオープンしました!
こちらは毎週土曜に開店するそうです。
週替わりで店長が変わり、ちらし寿司やら洋食のワンプレートランチなど、それぞれの得意分野の料理をふるまっておられます。
ばあちゃん喫茶 春日ぶどうの庭店
〒816-0864 福岡県春日市須玖北5-155
また、今後早良区URしかた団地や、TANOSHIKAのある久留米付近での出店も視野に入れているとのことです。
年末からこの2ヶ月で4店舗開店という、スピード展開に正直驚いていたのですが、大熊さんと梅林店でお食事をした際に伺ったのですが、これだけにとどまらず、今後は県外にも出店の予定があるそうです。
そして今はばあちゃんが中心ですが、いずれは「じいちゃん」達の活躍の場も広げようと奮闘されています。
また、若い世代の方にも積極的にこの事業への参加を呼びかけておられ、実際にインターン生など、若いスタッフの方もプレオープンの現場にたくさんおられ、一緒に料理を作ったり、片付けなどのサポートをされていました。
若い世代が積極的にこの事業に参加することで、より自分たちの未来も豊かになるのではないでしょうか?
今後のばあちゃんビジネスの展望については、大熊さんのSNSで、このように語られています。
聞けば聞くほどワクワクする内容が多いです!
まとめ
今回実際に伺ってみて感じたのは、『社会に必要とされることは、何歳になっても大切なことである』ということです。
近年投資等で不労所得を得て、経済的自立と早期リタイアを目指す『FIRE』が若い世代で流行っていますが、もし達成して、生きるのに必要なお金「だけ」があっても、それだけで満足できるように人間はできてないと私は思います。
暮らしが保障されたなら、自己実現欲求も出てくるのが人間本来の姿ではないでしょうか?
働くのは辛い、怖い、嫌だ、ぴえん、病む、というのが今の世代の感覚としてあるかもしれません。
実際、若い世代が働きたくなくなるくらいに競争は苛烈で、社会は厳しい場所ですが、社会との繋がりを失うこともまた、同じくらい辛く、怖いことです。
それは、障害福祉サービスに携わる者として、また病気で働けなかった期間がある人間としても、ひしひしと感じることです。
私は正直言って70歳の自分がどんな暮らしをしていて、どんな世の中になっているか、想像もつきません。
元気に働いているか、働く場所があるのかすら、不確かな状況ですが、分かっているのは、いつかその時は平等に訪れると言うこと、そしてその時になって慌てても遅いということです。
未来とはいつだって、現在の連続の先にあるものです。
現在を変えなくては未来も変わりません。
未来に投資をするなら、今から始めないといけないのです。
今回の取材を通じ、大熊さんが実現しようとしている、年齢や認知症などに関係なく活躍できる世界をもっと見てみたいと改めて感じました。
そんな世界に将来自分も住めるように、これからも応援し続けたいと思います。
追加情報「ばあちゃんビジネス」の書籍が販売されます!
これまでのうきはの宝のばあちゃんたちが働く取り組みを一冊の「ばあちゃんビジネス」という本にまとめたものが小学館さんから発売されるそうです。
既に予約販売が開始されています。お値段は税込1,650円だということです。
予約は以下からできます。僕も買いました。
もしご興味あれば、皆様も一冊いかがでしょうか?
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AKARIは福岡県久留米市にある就労継続支援A型事業所TANOSHIKAが運営する、当事者の当事者による当事者のためのwebメディアです。
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