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こんにちは、翼祈(たすき)です。
2023年9月25日に、アルツハイマー病の治療薬[レカネマブ]が日本でも正式承認されてから、1年が経過しようとしています。
今医療の現場で、[レカネマブ]が使用されていますが、高い治療費など色んなデメリットが聞かれてきて、最近世界ではあることが起きました。それは巻末の自分の感想にて、触れさせて頂きます。
[レカネマブ]の記事を書いていた頃、2023年から注目していたことは、2番目に開発された、アルツハイマー病の治療薬「ドナネマブ」でした。
その「ドナネマブ」が、2024年8月、日本でも正式承認されました。
厚生労働省の専門家部会は2024年8月1日、アメリカの製薬大手イーライリリーの病気の原因物質を除去して、進行抑制を狙う新しいタイプのアルツハイマー病の治療薬「ドナネマブ」(商品名ケサンラ)に関して、製造販売の承認を了承しました。有効性が確認できて、安全性にも重大な懸念はないとして国が製造販売を認めることを了承しました。
今回は、新しい治療薬「ドナネマブ」のことを、2023年から時系列で追っていきたいと思います。
2023年9月26日、
アメリカの製薬大手イーライリリー日本法人は2023年9月26日、アルツハイマー病の治療薬「ドナネマブ」について、厚生労働省に製造販売の承認申請を完了したと発表しました。
病気の原因とされる物質を取り除くことに働きかけるメカニズムの「疾患修飾薬」と呼ばれる新しいタイプのアルツハイマー病の治療薬で、承認されると日本の製薬大手エーザイなどが開発した[レカネマブ]に次いで2例目の薬となります。
「ドナネマブ」の前日の2023年9月25日に承認された[レカネマブ]と同様に、新しいタイプの治療薬で、厚生労働省の可否の判断は2024年になる見通しです。
アルツハイマー病は、脳内に「アミロイドβ」という異常なたんぱく質と、「タウ」という別のたんぱく質が蓄積することで、脳の神経細胞が破壊され、認知機能が少しずつ低下すると想定されています。
「ドナネマブ」は脳内に蓄積し、病気の原因になると想定される異常なたんぱく質「アミロイドβ」に結合し除去する抗体薬です。「アミロイドβ」の塊を除去し、認知症の進行を緩やかにすることに期待が持たれています。4週間に1回点滴を行います。
投与対象は、アルツハイマー病による軽度認知症と、認知症の前段階である軽度認知障害(MCI)の人です。破壊された神経細胞の再生は困難で、症状が進行した人は対象外となります。
最終段階の臨床試験(治験)では、病気の原因として疑われるたんぱく質「タウ」の脳内への蓄積度合いで「ドナネマブ」が効果が出やすいか調査しました。
臨床試験(治験)では、アルツハイマー病の早期患者さん1182人を対象に1年半解析しました。「ドナネマブ」を投与したグループは、偽薬(プラセボ)を投与したグループに比較すると、日々の暮らしを送る能力や認知機能の低下が35%が抑制されたといいます。
脳内の微小出血やむくみが認められた人は「ドナネマブ」を使用した人の36.8%、偽薬(プレセボ)を使用した人は14.9%でした。
参考:アルツハイマー治療薬「ドナネマブ」、米製薬大手が日本で承認申請…可否は来年の見通し 読売新聞(2023年)
イーライリリーによりますと、アメリカでは2023年6月末までにアメリカ食品医薬品局(FDA)への承認申請を完了し、年内にも判断が得られるとされています。ヨーロッパでも既に申請中です。
2024年7月2日、アメリカ
アメリカ食品医薬品局(FDA)は2024年7月2日、イーライリリーの「ドナネマブ」を承認したと明らかにしました。イーライリリーは日本でも製造販売承認を申請していて、現在も審査が続いています。
イーライリリーは1瓶695.65ドル(およそ11万円)で「ドナネマブ」を販売します。30分間の点滴を13回行う年間の治療費は3万2000ドル。[レカネマブ]がアメリカで2023年に発売された時の価格は年2万6500ドルでした。
外部の専門家によるFDAの諮問委員会は2024年6月、イーライリリーが後期の臨床研究で「非常に有意な結果」が出たと述べ、「ドナネマブ」の承認推奨を全会一致で決定しました。FDAの諮問委員会の採決では、この「ドナネマブ」を使用しての治療に関して効果的かつ安全と判断しました。
今回の承認に関して、FDAは「アルツハイマー病は患者さんや親しい人にとって非常に深刻な病気で、今回の承認は、より効果的で安全な薬を使用できる様にしようというFDAの責任を示すものです」と説明しています。
参考:米FDA アルツハイマー病の新薬「ドナネマブ」の承認を発表 NHK NEWS WEB(2024年)
2024年8月1日、日本
「ドナネマブ」は病気の原因とされる物質を除去するタイプの治療薬では、日本の製薬大手エーザイなどが開発した[レカネマブ]に次いで2例目で、これから厚生労働省が正式承認する見通しで、2024年11月にも公的保険が適用される見込みです。
点滴で月1回、最長1年半(18ヵ月)投与します。アメリカの薬価を比較すると[レカネマブ]より高いですが、1年を目処に検査して「アミロイドβ」の除去を確認できれば投与を止めることができます。
[レカネマブ]と「ドナネマブ」に大きな違いはありませんが、「ドナネマブ」では、「アミロイドβ」の除去が医師の判断により認められた時には、投与を止めてもアルツハイマー病の進行を抑制する効果が確認されています。
日本の「ドナネマブ」を投与できる対象はアルツハイマー病の患者さんの中で、軽度の認知症の人や認知症を発症する前の「軽度認知障害」(MCI)の人となっています。
およそ1700人が参加した最終段階の臨床試験(治験)では、認知機能などの低下を22%抑制する効果が確認できました。病状がより早期のグループでは35%の抑制効果がありました。副作用として脳の微小出血やむくみが認められました。
その上で、「ドナネマブ」の投与との関連が疑われる亡くなったケースも3例ありました。
2023年8月、厚生労働省に承認申請が出され、アメリカでは2024年7月2日に承認されていました。アメリカでの年間治療費はおよそ3万2000ドル(およそ480万円)となっています。日本での薬価についてはこれから検討していきます。
日本の薬価は厚生労働省相の諮問機関、中央社会保険医療協議会で議論される見通しで、薬価の算定には製造販売承認から原則60日から90日ほど要します。
認知機能に障害を抱える高齢者の割合は増加傾向で、2060年の認知症とその前段階の軽度認知障害(MCI)の高齢者は計1277万人に達すると推計されています。
[レカネマブ]は2023年9月に国内で承認され、2023年12月から保険診療で使用されています。
認知症の患者数は年々増加しています。内閣府の高齢社会白書によりますと、2022年の認知症の高齢者数は443万人、軽度認知障害は558万人に達します。対症療法が主流だった認知症治療で使用できる新しい治療薬が増えたことで、選択肢が拡大することになります。
参考:アルツハイマー病の新薬「ドナネマブ」承認へ 国内2例目 NHK NEWS WEB(2024年)
2024年9月24日、日本
厚生労働省の専門家部会は2024年9月24日、アメリカの製薬大手のイーライリリーが開発したアルツハイマー病の治療薬である「ドナネマブ」(商品名ケサンラ)に関して、製造・販売を承認しました。
原因物質を脳内から除去するタイプでは「レカネマブ」(同レケンビ)に続いて、2剤目となります。治療薬の公定価格である薬価の決定の審議を経て、2024年11月にも保険適用になる見通しで、医療現場で活用できる様になります。
2024年7月に承認されたアメリカでは1年分の費用は3万2千ドル(およそ460万円)で、日本でも高額な薬価に至ることが予想されています。
製造・販売の承認を受け、イーライリリーの日本法人は、「新しい選択肢としてアルツハイマー病の人たちにお届けできることを、とても嬉しく思います」とのコメントを発表しました。
参考:アルツハイマー病治療薬「ドナネマブ」の製造販売を承認…11月にも保険適用 読売新聞(2024年)
また、大塚製薬が開発した、うつ病などの治療で活用されている治療薬[ブレクスピプラゾール](商品名レキサルティ)に関して、アルツハイマー病が原因で発症するアルツハイマー型認知症に伴って出現する暴言や暴力などの治療に活用できる様に適応を拡大することを承認しました。
この治療薬[ブレクスピプラゾール]は、脳内の神経伝達物質である機能の調整を担う飲み薬で、認知症患者の焦りや不安、興奮から出現する暴言や暴力を抑制する治療薬としては、アメリカなど4ヵ国・地域で承認されています。
2024年11月、
2024年11月13日、中央社会保険医療協議会(厚生労働相の諮問機関、中医協)は、アメリカの製薬大手イーライリリーのアルツハイマー病治療薬「ドナネマブ」を公的医療保険の対象とすることを決定しました。薬価(公定価格)は1人当たり毎年308万円です。
薬価は、2023年承認された同じタイプのアルツハイマー病の治療薬[レカネマブ]の薬価(体重50kgの場合、毎年298万円)を基準とし、算定しました。投与開始1年の時点で治療を終えられる可能性を評価する加算が付きました。
参考:アルツハイマー病治療薬「ドナネマブ」、公的医療保険の対象に…薬価は年間308万円 読売新聞(2024年)
2024年11月20日から保険の適用対象とされ、年内にも医療現場で活用がスタートします。
医療費が高額となった場合の自己負担に上限を設ける「高額療養費制度」の対象になることから、年収に応じての支払額となります。
[レカネマブ]に突き付けられた現実
先にアルツハイマー病の治療薬[レカネマブ]を販売しているエーザイなどは、今ある岐路に立たされています。
[レカネマブ]は日本やアメリカなど6ヵ国・地域で承認され、日本・アメリカ・中国では既に発売されています。
2024年7月26日、欧州連合(EU)の薬事当局「欧州医薬品庁(EMA)」は、エーザイがアメリカの製薬会社バイオジェンと共同開発したアルツハイマー病の治療薬[レカネマブ](商品名レケンビ)に関して、加盟国代表などによる評価委員会が、販売承認に否定的な見解を総括したと発表しました。
EMAの下部組織である欧州医薬品委員会(CHMP)が見解を示しました。EMAはこれから、再度承認の可否を判断する見込みですが、ヨーロッパでの[レカネマブ]の実用化が見送られる可能性も出てきました。
[レカネマブ]はアルツハイマー病の進行スピードを27%緩やかにする効果が確認されていますが、「[レカネマブ]の有効性は、認知機能の低下を遅らせる効果も小さく、脳出血などの副作用リスクを十分に上回っていません」との理由で、CHMPの見解を受けてEMAが承認の是非を判断します。EMAの判断はヨーロッパ各国の承認に大きな影響を与えます。
エーザイとバイオジェンは「極めて残念です」とコメントを出して、再審議を要求する方針です。EMAの再審議の開始時期は未定だといいます。
エーザイのチーフクリニカルオフィサーであるリン・クレイマー氏は、EMAの見解に対し、「今回の否定的見解は極めて残念で、多くのアルツハイマー病のコミュニティーで大きな失望を抱いて、受け止められています。患者さんやその家族に有意義な変化をもたらすことに引き続き注力をします」と述べました。
ヨーロッパではEMAの判断をベースに、加盟各国が承認や保険適用などに関して審議しますが、医薬品の価格が高額になる場合は保険適用を推奨しないケースが多いといいます。
このことを受けて、2024年7月29日の東京株式市場でエーザイ株が急落し、株価は一時11%安の5851円に下落しました。[レカネマブ]に関して、EMAが販売承認しない様に勧告したことが伝わり、嫌気する動きが先行しています。
東海東京インテリジェンス・ラボのシニアアナリストの男性は、「日本とアメリカなどでは、承認した上で使用対象を絞り込む流れで、ヨーロッパでも[レカネマブ]は承認されると想定されていたことから、ネガティブサプライズといえます」との見方が聞かれています。
市場では「費用対効果を慎重に顧みて、時期尚早という判断だったのでしょう」との受け止めがあります。
2024年8月22日、英医薬品・医療製品規制庁(MHRA)は、[レカネマブ]を承認しましたが、国立医療技術評価機構(NICE)は「薬の効果は小さ過ぎて、費用を正当化できない」として、公的医療保険の適用に否定的な勧告案を露わにしました。
2024年7月に、EUの欧州医薬品庁(EMA)も、承認に否定的な勧告を出していて、ヨーロッパでの[レカネマブ]の普及が困難な状況だとされています。
[レカネマブ]がEMAの見解で否定的な意見が出始めたことや、「ドナネマブ」の承認で、今後アルツハイマー病の市場はまた変化していくと思います。
どちらの記事も書いた私は、いかにアルツハイマー病を完治できるものではなく、あくまで進行を遅れらせることしかできないことに、治療薬の開発の難しさを肌で感じました。
noteでも書いています。よければ読んでください。
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