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こんにちは、翼祈(たすき)です。
この記事のテーマは「脊椎小脳変性症」ですが、まずは説明したいと思います。
「脊椎小脳変性症」とは、歩行する時や起立する時のふらつきや転んだり、ボタンかけや字を書くことなど指先の細かい動作がやりづらくなる、嚥下障害といった物の飲み込みにくさ、手を動かそうとすると上手に使えず震えたり、物を掴みづらい、箸を上手に持てない、
感覚が鈍くなったり、しびれを感じたりする、喋る時に舌や口がもつれる、ろれつが回らないなどを症状とする神経の国の指定難病です。動かすことは出来るのに、言語や発声を上手に舌や口などを動かすことが出来ない(酔っぱらった時みたいな喋り方になる)、眼球が揺れて視点が定まりづらくなるという症状も起こります。
下肢のつっぱりなどの錐体路症状や尿漏れなど排尿障害・便秘・下痢、立ちくらみなど起立性低血圧などの自律神経症状が認められます。
主に小脳という、後頭部の下側にある脳の一部が病気になった時に出現する症状です。該当するこの症状を、運動失調症状と言います。昔は、原因不明な病気の一群として、変性症と言われていました。病気によっては病気の場所が脊髄にも拡大する時があるので、「脊髄小脳変性症」と言われています。
「脊髄小脳変性症」は1つの病気ではなく、この運動失調症状を生じさせる変性による病気に該当し、その病気の原因も多種多様です。現在では、「脊髄小脳変性症」の原因のほとんどが、判明していますが、まだ一部原因が解明されていない病気も残されています。
なお、歩行障害や足のつっぱりが主な症状である痙性対麻痺(けいせいついまひ)も、一部の疾患では小脳症状が出現する時があるため、脊髄小脳変性症に該当します。
痙性対麻痺は脊髄梗塞や脊髄損傷、ウイルス感染症(HTLV-1関連脊髄症)、脳性まひなどが原因になる以外にも、遺伝性のものもあります。
痙性対麻痺では、歩きにくさ、足の突っ張りが特徴的な症状です。脊髄小脳変性症では、これらの症状が少しずつ進行し、ちゃんと運動が出来ないという症状を運動失調症として該当します。脊髄小脳変性症として総称されている病気では、各種類で、運動失調以外にも色々な症状を伴います。
今回は、2025年2月にモデルの瀬戸あゆみさんが「脊椎小脳変性症」を公表したことなど、基礎知識を取り上げたいと思います。
2025年2月、
2025年2月3日、モデルでデザイナーの瀬戸あゆみさんが公式インスタを更新し、難病「脊椎小脳変性症」を発症していることを明らかにしました。「脊椎小脳変性症」の説明と現在の心境を長文で書き記しました。
まず最初に、「今まで、皆さんにずっと、言えずにいた話があります」と書き出し、「それは、私の持病に関してです。私は、難病を発症しました」と明かしました。
続けて「今日は、最初に私の病気がどんなものかを知って頂くために、なるべく感情的なものは抜きにして、淡々と語っていきたいと思います」と述べ、難病の定義に関して添えながら「病名は、脊椎小脳変性症です」と説明し、
「運動神経を司る小脳が段々破壊・消失していって、運動失調を主な症状とする神経疾患の病気です」「手が上手に使えない、歩行時にふらつく、舌や口がもつれて話しにくいなどです。今はもう全ての症状が、大小あれど私に出現している感じです」と、主な「脊椎小脳変性症」の症状を明かしました。
「いつ『脊椎小脳変性症』を発症したのかは、断定はできません」としつつ、27歳頃から身体の変化に気付き、病院を受診しました。
治療法は、「明らかな治療法はなく、リハビリで進行を遅らせていく方法しかありません。この『脊椎小脳変性症』は、個人差はありますが、少しずつ、ですが確実に進行してゆく、そんな病気です。リハビリ次第ではありますが、数年後、歩けなくなり、車椅子に乗る様になり、そして更に数年後は、寝たきりの生活となって、長生きはできないことが、一般的な予後と言われています」と述べました。
2024年1月に結婚と妊娠を発表、2024年3月に第1子男児を出産して以降、「日々の生活でも動かない時間が長くなってしまい、『脊椎小脳変性症』が進行してしまった自覚があります」と明かし、「1年前や2年前のことを思い返しても、顕著に今の方がずっと身体の動きにくさを感じています」とも説明しました。
瀬戸さんの歩き方などを見て「大丈夫ですか?」と声をかけられることが多くなったと言い、「周りの人からの目線が気になって、外出したくありません。そうすると、どんどん『脊椎小脳変性症』が進行してゆく悪循環で、もういっそのこと、皆さんに知っておいて頂きたい。それが、公表する最初のきっかけでした」と吐露しました。
「私の『脊椎小脳変性症』のことを知っているのは、家族と、数人の友達と、事務所の大人たちだけでした。ずっと『脊椎小脳変性症』に関して何も触れずにきましたが、今回、どうして公表したかと説明しますと、1つには、もう言わずにいることに限界を感じたからです」などと明かし、「同じ『脊椎小脳変性症』の人と、情報交換できたらいいなと思っています」とも述べました。
「もしも同じ『脊椎小脳変性症』の人で、子どもが欲しいと考えている人がいたら。何か伝えられることが、私にもあるかもしれません。こんな私でも、誰かの役に立てたら。そんなに嬉しいことは、他にはありませんね」とし、
「今後皆さんがこの『脊椎小脳変性症』のことを認知して下さって、もっと研究が加速し、有効性のある根本的な治療薬が開発に至ることを、期待をしています」と伝え、これからも「脊椎小脳変性症」に関して発信していきたいといいます。
参考:31歳・瀬戸あゆみ、「難病を患っています」告白 脊椎小脳変性症、産後に進行「自覚があります」 ORICON NEWS(2025年)
この投稿にファンからは、
「胸がギュッと苦しくなりました。あゆみさんの気持ち、全部受け止めました。ずっとずっと応援しています」「勇気を出して『脊椎小脳変性症』を公表してくれてありがとう。幸せに心地よく過ごせる日々が少しでも長く続けばいいなと願っています」
などのコメントが届きました。
ここからは、「脊椎小脳変性症」の基礎知識を紹介します。
▽推定患者数
画像引用・参考:脊髄小脳変性症 (せきずいしょうのうへんせいしょう)とは 社会福祉法人 恩賜財団 済生会(2016年)
日本では、10万人に対して5~10人程度の割合で患者さんがいると推定されています。
多系統萎縮症は、病型により程度は違いますが、運動失調症が、その症状の主体になる時があります。そこで多系統萎縮症の一部も脊髄小脳変性症の扱いです。この多系統萎縮症を合算して、脊髄小脳変性症の患者さんは、全国で3万人超います。
その中で、遺伝歴のない脊髄小脳変性症(オリーブ橋小脳萎縮症や、多系統萎縮症と言われています)が最多で、およそ2/3を占めます。1/3は遺伝性の脊髄小脳変性症です。痙性対麻痺は脊髄小脳変性症の5%ほどを占めます。
▽原因
・脳出血、脳梗塞などの脳血管障害(脳卒中)
・奇形
・細菌性脳炎、ウイルス性脳炎などの感染症
・悪性腫瘍(がん)
・睡眠薬やアルコール、化学薬品などの中毒
・脳の代謝障害
・ビタミンE欠乏などの栄養素欠乏
・小脳炎、多発性硬化症などの自己免疫性神経疾患
・プリオン病
・ミトコンドリア脳筋症
▽遺伝率
脊髄小脳変性症は、遺伝性のものと遺伝性でないものに分類されます。脊髄小脳変性症のおよそ1/3の方が遺伝性です。遺伝性のものは、遺伝様式により、常染色体顕性遺伝(優性遺伝) 性と常染色体潜性遺伝(劣性遺伝) 性に分類されます。常染色体顕性遺伝性の病気は、お子さんに遺伝するケースがありますが、常染色体潜性遺伝性の病気はお子さんに遺伝するケースはありません。
▽診断基準
症状、経過から神経学的診察や遺伝学的検査、画像検査と問診を実施し、筋肉がこわばったり、動作が乏しくなったり、すくみ足になるパーキンソン症状や、しびれや感覚の鈍さなどの末梢神経障害、小脳性運動失調症状の有無などを確認します。
神経学的診察では、刺激に対する身体の反射や反応などを確認し、麻痺の程度や有無を解析します。
遺伝子検査では、原因となる遺伝子を保有しているかどうか、遺伝子を解析します。実施する病院は限定的で、予めカウンセリングなどの相談が必要です。重症度分類で、医療費助成で受けられる可能性もあります。
また、画像検査では、必要に対応して糖質の代謝機能を解析するPET検査、頭部CT・MRI、アイソトープを用いてCT撮影を実施する脳血流シンチグラフィなど脳幹部や脊髄、大脳などそれ以外の部位や小脳の異常・萎縮の有無に関して解析します。
微量の放射線物質を含んだ薬剤を投与して、薬物が集積した場所で医療評価します。
問診では、今までの病歴や家族内に同様の症状が認められる人がいないかなどを確認します。家族内で「脊髄小脳変性症」を発症した人がいる時には、病型の診断や確定診断のために遺伝学的検査を実施するケースもあります。
末梢神経電導検査では、末梢神経障害が合併していないか解析するために実施します。皮膚の上から電気刺激を実施し、刺激が伝わる速さを測定する検査です。
一部の薬剤やアルコールの多量摂取、自律神経失調症や脳血管障害、悪性腫瘍などでも二次性に小脳失調を生じる時がありますので、二次性運動失調症を除外するための画像検査や血液検査、髄液検査を追加する時もあります。
さらに、若い年齢で「脊椎小脳変性症」を発症している時には、知的能力障害やてんかん、意思とは無関係に身体が動く不随意運動を合併するケースもあります。
参考サイト
脊髄小脳変性症(多系統萎縮症を除く)(指定難病18) 難病情報センター
脊髄小脳変性症 – さいたま市 ねぎし内科・神経内科クリニック
▽治療法、予防策、予後は、
「脊髄小脳変性症」の根本的な治療方法は未だ確立されておらず、対症療法が主な治療法です。
運動失調に対しては、甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン(TRH)誘導体であるタルチレリン水和物や、甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン(TRH)製剤であるプロチレリン酒石酸塩が用いられます。
めまい感や反復発作など足のつっぱり感にはアセタゾラミドなど、抗痙攣薬や筋弛緩薬である塩酸メキシレチンを使用して、症状に対応して治療薬を処方します。
また、HTLV-1関連脊髄症や、遺伝性痙性対麻痺に対しては、新しい機器を利用した歩行リハビリテーションとしてHAL医療用下肢タイプによるロボットスーツの様な「歩行運動処置」が2023年10月から、追加保険適用になりました。歩行機能を改善する効果が得られています。
パーキンソン症状が認められる時にはL-ドパをメーンに抗パーキンソン病薬を用います。
小脳失調に対してはタルチレリンの内服が第一選択となりますが、酒石酸プロチレリンを注射する時もあります。
排尿障害・便秘や起立性低血圧に対しての導尿や便秘薬など薬物治療も実施します。
これ以外にも、症状の進行によって嚥下障害を発症して、飲み込みが困難になった時には、胃に増設した胃ろうや、鼻から挿入したチューブに直接栄養を投与する栄養療法が実施される時もあります。
予防策は、
・嚥下障害がある時には、誤嚥を予防するために正しい姿勢での食事や柔らかい食事を意識しましょう
・QOL(生活の質)を維持するために、福祉機器や移動補助具を利用するなど福祉サービスを活用
・病気の進行に伴って日常生活での介護が必要になる時があるので、介護保険の申請が推奨
・転倒の予防には、床の滑りやすい段差や場所に注意し、適切な杖や靴の使用が推奨
予後、少しずつ進みます。進み方は、同じ「脊椎小脳変性症」でも、個人差があります。急激に症状が悪くなることはありません。「脊椎小脳変性症」が進行すると、一部では末梢神経障害によるしびれ感や、血圧や呼吸の調節など自律神経機能の障害などを伴う時があります。「脊椎小脳変性症」が進行しても、会話は十分にできて、極端な認知症は伴いません。
「脊椎小脳変性症」は、2005年に放送された、[1リットルの涙]で主人公の女の子が、この難病だったそうです。
それから20年経過したのに、治療法が確立されていないことに、難病の治療薬や治療法の開発の難しさを感じました。
少しでも、この「脊椎小脳変性症」が良くなる様に、研究が進んでいきます様に。
noteでも書いています。よければ読んでください。
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