精神科の特殊医療:電気療法について

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こんにちは、改めましてM. Jです。

この記事をご覧の皆さん、精神科医療の「治療法」について、どのように感じていますか?

現在、精神科医療の主なものとして「支持的精神療法(医師の診察)」「薬物療法」「カウンセリング」「集団精神療法」「SST(社会生活技能訓練)」などが行われています。

前回の記事で、薬の副作用について深く掘り下げていきました。

普通に処方していただいている薬は、精神症状に対しての効果がある一方、それ以外の部分は「副作用」として作用するという「デメリット」があります。

この「副作用」は、脳という「局所」だけでなく「全身に大きな悪影響をぼす」という問題があります。

また、薬の種類が多くなると「重い副作用」に悩まされます。

日本においても「外科の特殊な手術」「がん治療における陽子線・重粒子線治療」などの医療はものすごい勢いで進んでいます。

しかし、「精神科医療」だけは「まだまだ乗り遅れている部分」があります。

精神科医療の大きな問題点は「治療の選択肢がまだまだ少ないこと」です!

何とか「精神科医療に多くの選択肢がないだろうか?」と思ってしまうのは、私だけでしょうか?

この記事をご覧の皆さん、精神科における「治療の選択肢を増やす」という視点で一緒に考えてみませんか?

今回は、主に薬以外の精神医療ついて以下の項目に沿って書いていきます。

  • 精神科の主な治療
  • 精神科の治療;M-ECT治療《修正型電気けいれん療法》
  • MーECT《修正型電気けいれん療法》のメリット・デメリット
  • 精神科の治療:TMS治療《経頭蓋磁気刺激療法》
  • TMS治療《経頭蓋磁気刺激療法》のメリット・デメリット
  • 今後の精神科医療:選択肢を増やそう!

精神科の主な治療

現在、精神科の治療としてどのようなものがあるのでしょうか?

【精神科の治療】

支持的精神療法

  • 精神科で多くの患者さんに対して行われている治療法。
  • 精神科医師が患者さんの話を聞き「共感」をして「能力を伸ばす関わり」をする。

薬物療法

  • 精神療法においては基本の治療法。
  • 精神科の患者さんに対して最も行われている治療法。

通電療法→  M-ECT治療・TMS治療

  • 電気で頭部を刺激することにより、精神的な病気を改善する治療法。

④カウンセリング(詳細は文献に記載)

⑤集団精神療法(詳細は文献に記載)

⑥SST:社会生活技能訓練(詳細は文献に記載)

⑦認知行動療法(詳細は文献に記載

精神科で行われている治療法は、基本的には上記①・②の「支持的精神療法」と「薬物療法」です。

「支持的精神療法」は、精神科医が診察をしている中で行われる治療法です。

ほとんどの精神科で「薬」が処方され、精神科医療で「薬物治療」は実施されています。

「薬」は精神の病気の症状を改善する反面、さまざまな「副作用」を伴います。「眠気・食欲増進・口渇・パーキンソン症状」などがあり、副作用による「日常生活への支障」があります。特に「仕事などの社会活動への支障」は、ものすごく大きいと言えます。

ほとんどの精神科の患者さんにおいて「薬によるキツイ副作用」との付き合いは避けて通ることができません。

もう少し精神科医療、一般の患者さんに「選択肢」はないものでしょうか?

次の項からは、薬の副作用が少ないとされる電気治療について書きます。

精神科の治療:MーECT治療《修正型電気けいれん療法》

精神科の治療で副作用が少ないとされる「電気療法」にはどのようなものがあるのでしょうか?

最初に、修正型電気けいれん療法(以下、MーECT)について書きます。

【MーECT(修正型電気けいれん療法)とは・・・】

◆額から数秒間の電気刺激を与えて、精神状態を改善させる治療法。

◆速やかな治療効果が必要な場合、薬物療法が効果を示さない場合に適応。

◆特に、副作用で日常生活に支障を来たす場合はこの治療法が用いられる。

【MーECTのポイント】

◆以前の電気けいれん療法とは異なり「けいれんの危険性」がなくなるように改良されている。

◆治療は、精神科医・麻酔科医・看護師のもとで「入院治療」となる。

→事故の「危険性」を避けるために原則として入院となっている。

【MーECTの頻度・回数】

◆1週間に2回行い、3〜6週間繰り返す。

◆6〜12回の施行が必要となることが多い。

◆12回行なって効果がない場合→「無効」と判断(別の治療法に切り替える)

【MーECTの実施方法】

①術前検査

◆治療前日までに以下の検査を行なう。

  • 血液検査・尿検査・心電図・レントゲン・頭部CT検査・脳波検査などを行なう。

◆自費でマウスピースを3000円で購入する。

②治療前日

◆内服薬の一部を中止する。

◆誤嚥防止のため、前日21:00から絶飲・絶食する。

③治療当日

◆病衣に着替え、アクセサリー・入れ歯・コンタクトレンズを外す。

④点滴治療

◆麻酔薬と筋弛緩剤を投与(眠ったまま治療)

⑤治療

◆全身麻酔で、最小限の電気を脳神経に通電する。

⑥治療後

◆「体温・血圧・脈拍数・酸素飽和度」を測定する。

◆1時間程度横になり酸素マスクを装着。:その後、飲水→食事の流れ。

◆その後は「薬物療法」で経過をみていく。

治療器具や治療の様子について

画像引用:難治うつ病の治療法――無けいれん性通電療法(mECT)福井大学医学部附属病院

かなり前から電気けいれん療法はあります。ただ、以前の電気けいれん療法は「副作用が強い」こともあり「敬遠されてきた」経緯もあります。

「麻酔薬」「筋弛緩剤」という部分で「敬遠される」のでしょう。

通常の精神科医療と違い「大きな設備」「麻酔科医」が必要となってきます。上記のようにさまざまな「注意事項」があるので、なかなか「MーECT」という電気療法が難しいのかもしれません。

ただ、この「MーECT」ですが「メリット」もあるようです。

次の項では、MーECT治療のメリットについて書いていきます。

MーECT治療《修正型電気けいれん療法》のメリット・デメリット

MーECT治療を受けるメリットとはどのようなものでしょうか?

【MーECT:適応となる病気】

◆うつ病 ◆双極性障害→躁うつ病 ◆統合失調症 

◆パーキンソン病 ◆慢性疼痛 など

◎高い効果と「即効性」があり、有効率が8割〜9割の治療法。 

◎最近「パルス波治療器」が開発されたので副作用は劇的に減っている。

【MーECT治療の副作用】

◎基本的に、薬物療法よりも「副作用」は少ない。

◎一般的に副作用の危険性は「出産」よりも低い。

◎一般的には、「せん妄・記憶力の低下・頭痛・頭重感・口の中が傷つく」など。

◎副作用は「一時的」で「短時間」で回復する。

精神科の薬で「キツイ副作用」が出現する人、案外多いと思います。「MーECT治療」ですが、薬の「副作用の軽減」という部分では考えてみてもいいのかもしれません。

以前の「電気けいれん療法」よりも副作用が「少なくなるように」改良されているようです。「出産よりも副作用の危険性が低い」というのは大きな「メリット」かもしれません。

今後、「MーECT治療」が精神科医療の選択肢に入ることを望みます。

次の項では、もう1つの電気刺激療法について書きます。

精神科の治療:TMS治療《経頭蓋磁気刺激療法》

精神科の治療で新たな治療法が出現しました。どのような治療法でしょうか?

次に、経頭蓋磁気電気刺激療法(以下、TMS)について書きます。

【TMS(経頭蓋時期刺激療法)とは・・・】

◆前頭葉(背外側前頭前野を含む)を電気刺激によってケアする治療法。

◆磁気によって「身体を傷つけることなく脳細胞を刺激する」治療法。

◆脳を治療することができる「副作用の少ない」新しい治療法。

【TMS治療の経緯】

◆もともと、脳内科(以前→神経内科)で使用されていた。

◆2000年頃から急速に精神科領域でもTMS治療の研究が進むようになった。

◆2019年、うつ病の治療として「保険適応」となった。

【TMS治療の現状】

◆TMS治療は、海外では主流の治療法。

◆日本では、TMS治療の経験がある医療者が少ない。

◆主に「薬の副作用が不安」「減薬したい」人などに提供している。

【TMS治療のメカニズム】

◆前頭葉にコイルを当て「磁気による刺激」を行う。

◆コイルに電流を流して「磁場を発生させる」ことによって「磁場が変動」する。

◆磁場の変動で、脳細胞が刺激されることによって・・・

→「脳の血流を良くする」「脳機能を調整する」「集中力・思考力・意欲を高める」などの効果がある。

【TMS治療の実施方法】

①初診

◆医師が「問診・説明・検査」などを行なう。

◆治療(TMS治療)の適否を判断する。

②TMS治療についての説明

◆TMS治療が適応の場合、医師または専門のスタッフが注意点を説明する。

③TMS治療

◆頭部にTMS治療機器をセットして、磁気を当てていく。

◆患者さんは「ゆっくりした状態:静止状態」で治療を受ける。

④治療後

◆医師から治療回数や期間は提案がある。医師と相談して治療を進める。

【TMSの治療頻度・期間】

◆基本的に週5回・4週間から6週間は必要とされている。

◆刺激方法の工夫によって、少ない回数でも対応できるようにしている。

→相談が必要!

◆最初の10回目までは、1週間に3回の通院が必要。

◆全体的に30回程度の治療を行なう。

「TMS治療」、何かとてもいい感じです。「身体を傷つけることなく脳細胞を刺激」「副作用が少ない」治療法というのが、患者さんにとって「とてもスッキリする感じ」です。

「薬を長期間服用してもなかなか治らない」「副作用が不安」などといった人には、ものすごく適している治療法といえるでしょう。

全体的に30回、長期間の治療が必要とされますが、前述した「MーECT治療」よりも「注意事項」が少ない感じです。

「麻酔科の医師」は必要性がない感じです。「前日の準備(絶飲・絶食)」や「麻酔薬・筋弛緩剤」は必要ではないようです。

TMS治療、かなりの「メリット」がありそうです。

次の項では、TMS治療のメリット・デメリットについて書きます。

TMS治療《経頭蓋磁気刺激療法》のメリット・デメリット

TMS治療を受けるメリットとは、どのようなものでしょうか

【TMS治療:適応となる病気】

◆発達障がい(ASD・ADHD) ◆パニック障がい ◆うつ病 

◆双極性障がい→躁うつ病 ◆PTSD  など 

【TMS治療の効果】

◆スッキリ仕事ができる。

◆イライラ・そわそわが改善する。

◆判断力が回復する。

◆気分の落ち込みが改善する。

◆夜の入眠がしやすくなる。

◆疲労感が改善する。

【TMS治療の副作用】

◎基本的には「副作用がかなり少ない」。

◎抗うつ薬で起こる「眠気」「過度の食欲増進」「口渇」「頭痛」などの「副作用」は少ない。

◎一般的に「頭痛・刺激部位の疼痛・刺激部位の不快感」などがあるものの速やかに軽減する。

【TMS治療のデメリット】

◎「保険がきかない(10割負担)」の医療機関が多い。「多額の費用」がかかってしまう。

◎「外来での治療」の場合、基本的に「保険がきかない」ので、費用面でのリスクが大きい。

◎「保険適応」の医療機関は「入院患者さん」のみ対象となる。

前述したように「薬が効かない」「薬の副作用が強い」という人は多くいると思います。そういった意味で、薬よりも「副作用」が少ないという点で、TMS治療は「ものすごく良い治療法」だといえます。

また、以前から電気けいれん療法があり、現在は「副作用」の危険性が修正された「MーECT治療」があるとはいえ、できるだけ「注意事項」の少ない治療法を選んでいきたいものです。

よって、新しく、危険性がかなり少ない「TMS治療」が出現したことは「大きな前進」といえます。

ただ、「治療を行うことのできる医療機関が限られていること」と「保険適応でない場合が多いこと:特に外来での治療の場合は10割負担」ですので、TMS治療を受ける患者さんが少ないのが現状です。

今後の精神科医療:選択肢を増やそう!

以上、精神科の電気療法についてでした。

現在、精神科医療の主流は「支持的精神療法」と「薬物療法」です。

多くの患者さんは、この2つの治療のみで日々を過ごしています。

精神科の医師は「薬は治療の主軸」「薬は万能」と言っている先生が多いようです。

確かに「薬は治療の主軸」です。

しかし「薬は万能」でしょうか? 「精神状態の改善は薬でしかできない」のでしょうか?

薬の「デメリット」をしっかり考えれば考えるほど「ものすごい違和感」を感じてしまいます。

薬は、精神症状に対しての効果がある一方、それ以外の部分は「副作用」として作用します。

薬の副作用は「全身に悪影響を及ぼす」という大きな問題があり、薬の種類が多くなると「ものすごく重い副作用」が出現します。

このほか、精神医療には「カウンセリング」「SST(社会生活技能訓練)」などがありますが、これらの治療を受けている患者さんは「まだまだ少ない」のが実状です。

今回、新たな治療法として「TMS治療」について書きました。

以前からの治療法「電気けいれん療法」の副作用」が軽減された治療法です。

「MーECT治療」のような「注意事項」も少なく、患者さんの「負担は軽い」と言えます。

前述したように「薬が効かない」「薬の副作用が強い」「MーECT療法が怖い」人にとって「TMS療法」はおすすめの治療法です。

このような「素敵な治療法」・・・なぜ「保険適応」ではない場合が多いのでしょうか?

外来の場合(家から通う場合)、ほとんど「10割負担」です。

「精神科医療に多くの選択肢ができないだろうか?」と思ってしまうのは、私だけでしょうか?

記事をご覧いただき、どうもありがとうございました。

実際のTMS治療が行われている医療機関については、こちらの文献に詳しく書いてあります。ぜひご覧ください。

参考:東京TMSクリニック:TMS治療とは? メカニズム・効果・治療期間

   東京TMSクリニック:TMS治療とは? 効果・副作用

TMS治療が行われている医療機関は、こちらの文献に書いてあります。ぜひご覧ください。

参考:東京TMSクリニック:九州・沖縄のTMS治療医療機関比較

なお、今回の記事は以下の文献を参考にしました。

参考:国立精神・神経医療研究センター:支持療法

   衣ヶ原病院:精神科・心療内科におけるカウンセリング

   認知行動療法センター:認知行動療法とは

   琵琶湖病院:各種精神療法→集団精神療法について

   DIエージェント:SST(ソーシャルスキル・トレーニング)とは?

   すまいるナビゲーター:社会生活スキルトレーニングとは(PDF)

   可知記念病院:修正型電気けいれん療法について

   福井大学附属病院:無けいれん性通電療法(MーECT)

   久喜すずのき病院:修正型電気けいれん療法(MーECT)

   医療法人社団 心和会:無けいれん通電療法(MーECT)(PDF)

   うつ病ナビ:TMS治療とは? 効果・副作用について

   ブレインクリニック:TMS治療とは?

今後について

興味があることや、今後書いていきたい記事のテーマとして、情報漏えいの危険性!対策は?、特定の病気になりやすい性格の分類とその対策、音楽に助けられた人生-M.Jの体験談と音楽療法があります。

皆さんに役立つ情報を届けていければと考えています。
今後ともよろしくお願いします!

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