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こんにちは、翼祈(たすき)です。
医療的ケア児とは、人工呼吸器やたんの吸引、経管栄養などの医療的ケアが日常的に必要な未成年者を指し、厚生労働省の推計では2020年時点で全国に約2万人います。医療技術の進歩により、10年間で倍増したそうです。
2021年6月には、国と自治体に本人と家族への支援施策を行う責務があると定義した「医療的ケア児支援法」が成立されました。国や自治体でも様々な取り組みが行われていますが、2022年9月に神奈川県で有志が集まり、移動式のメリーゴーラウンドを病院へ設置する取り組みもあります。
今回はそんなメリーゴーラウンドの話、医療的ケア児の推計数、ご両親が再び働くまでの3つのハードルなど、様々な視点からこの問題について向き合っていきます。
2022年9月に医療的ケア児の子ども達に向けて、病院に移動式のメリーゴーラウンドを設置
神奈川県横浜市金沢区に2021年開院した医療的ケア児のための緩和ケア施設『横浜こどもホスピス〜うみとそらのおうち』に2022年9月上旬に、病院内に移動式のメリーゴーラウンドを設置し楽しんで貰えたらと強い願いを込め、横浜市の市民で結成された有志が今月2022年7月31日まで寄付を呼びかけています。
地域で愛される緩和ケア施設として継続していくため、同『横浜こどもホスピス〜うみとそらのおうち』を広く認識して頂きたいという強い想いも含まれています。
移動式のメリーゴーラウンドは予定日では2022年9月3日か9月4日に設置され、9月4日は地域住民への開放も掲げられています。
移動式メリーゴーラウンドの設置企画は、横浜市に住むソプラノ歌手の女性など、小児がんについて考える絵本創作で知り合った有志4人が「医療的ケア児の子たちに遊園地に遊びに来た様な感覚で楽しいひとときを提供したい」と創立しました。重い病気を抱える医療的ケア児やその家族が過ごす施設について広く認知して頂き、長きに渡り応援してくれる人を拡大することも希望の1つです。有志の女性は「同じ気持ちを持った人が接点を持ち、支援の輪がもっと拡がって頂ければ」と言います。
移動式のメリーゴーラウンドを同『横浜こどもホスピス〜うみとそらのおうち』の提供するのは、同横浜市中区で手作業でメリーゴーラウンドを製造している「メリ〜ゴーランド研究所」の代表の男性。1999年に独り立ちして造形会社を設立した後、メリーゴーラウンドの製作に励み、2012年には第1号となるメリーゴーラウンドを完成。その後は「メリ〜ゴーランド研究所」を会社名として掲げ、横浜市南区の県立こども医療センターに入院する医療的ケア児にメリーゴーラウンドを提供する活動を隔年で継続して来ました。
男性は「人を笑顔にできる造形物を、とメリーゴーラウンドを造り始めた。乗ると子どもの顔はぱっと輝く」。ともに活動する男性の妻も「重度障害の子も笑顔になる。楽しんでくれている」と手応えを語ります。コロナ禍で同県立こども医療センターに行けずにいるため、同『横浜こどもホスピス〜うみとそらのおうち』での新たな機会を歓迎しています。
クラウドファンディングの詳細は下記の「キャンプファイヤー メリーゴーランド」で実施されています。よければご覧下さい。
関連サイト
その後、
神奈川県横浜市金沢区にある緩和ケア施設『横浜こどもホスピス〜うみとそらのおうち』に2022年9月3日、小さい規模ですが、敷地内に本格的なメリーゴーラウンドが登場し、病気のため遊園地に遊びに行けない子ども達が親御さんと一緒にワイワイ楽しみました。2022年9月4日は地域の人たちにもメリーゴーラウンド開放し、自由に楽しんで頂き、2021年にオープンした『横浜こどもホスピス〜うみとそらのおうち』を認知して貰うチャンスにしたいといいます。
同神奈川県横浜市中区にある「メリ〜ゴーランド研究所」がメリーゴーラウンドを作って全国に貸し出し、市民有志が『横浜こどもホスピス〜うみとそらのおうち』での実施を持ちかけ、クラウドファンディングで寄付を募りました。新型コロナウイルスの感染対策で、一家族ずつ時間を区切っての予約制を取り、『横浜こどもホスピス〜うみとそらのおうち』の利用対象となるお子さんを持つ三家族が順にメリーゴーラウンドで遊びました。
神奈川県川崎市に住む女の子は染色体異常の1つ「18トリソミー」で合併症もあり、新型コロナウイルスなどの感染症を罹患すると、重症化しやすくレジャー施設には1回も行ったことがありませんでした。お父さんは「本当に良かったね、メリーゴーラウンドは初めてだったね」と女の子に話しかけ、言葉は話せない女の子もメリーゴーラウンドを楽しんだ様子でした。
てんかんの発作を起こす病気を持つ神奈川県横須賀市に住む男の子は、両親といとこ、祖父と共に初のメリーゴーラウンドに乗りました。普段の日常生活でてんかんの発作で苦しい時間が起きて、まだ笑顔を見せる機会が余りありませんでした。お母さんは「何が息子に良いことなのか?と手探り状態なので様々な経験をさせてあげたいです。笑える様になったら」と述べました。
2023年
医療的ケア児の推計数
人工呼吸器や、たんの吸引などが日常的に必要な未成年者「医療的ケア児」の数は2020年の推計調査によると全国約2万人と、10年間で1・8倍に増加したとみられています。医療が発展し、命を救うことが可能となった子ども達が倍増したためです。ですが、医療的ケア児やその保護者への支援は十分に届いていません。
胃に管を通して栄養を送る経管栄養など医療的ケアの処置は医師の指示の下で、主に医療的ケア児の両親やその家族が施します。地域の公立学校や特別支援学校では家族同行をお願いされることがあり、両親が仕事を退職せざるおえない事例も起こっています。
放課後デイサービスを活用する医療的ケア児のケースでは、一般的に平日の昼間は特別支援学校に通学し、その後放課後デイサービスに滞在し、夕方に自宅に帰宅します。その一方、特別支援学校の高等部を卒業した後、生活介護サービスに変換し、朝から夕方まで生活介護サービスで生活する頻度が高くなります。
参考:医療的ケア児に18歳の線引き 福祉現場から苦悩の声 福井の事業所「切れ目ない支援へ報酬見直しを」 福井新聞ON LINE(2022年)
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医療的ケア児を抱えた両親が再び働くまでの、3つのハードル
医療的ケア児の育児において課題になっているのが、働きたくても働けない親の存在です。家族がつきっきりで介助しなければ医療的ケア児の在宅ケアは成り立たず、仕事に就くことが難しいのです。
いま、こうした現状を変えたいと、親の“社会復帰”を支援する取り組みが始まっています。ここからは、医療的ケア児を抱えた両親が再び働くまでの、3つのハードルについて書いて行きます。
障害児保育・支援事業などを行う認定NPO法人フローレンスの女性は、医療的ケア児の親が一度離職すると社会復帰が難しい原因として、(1)社会的ハードル、(2)身体・心理のハードル、(3)子どもを預けること、の3つのハードルをあげています。
(1) 社会的ハードル
「医療的ケア児を預けてまで働きたいの?」という周囲からの目。
(2) 身体・心理のハードル
昼夜を問わずに行う必要のあるケアによって生じる、慢性的な寝不足。
仕事を変える必要がある場合、気持ちの面でなかなか再就職への一歩が踏み出せない、など。
(3)子どもを預けることのハードル
医療的ケアが重いと、安心して預けられる先が見つからない。離職中、求職中は、原則として保育園を利用できない。
また、「働けない状況でも、通院費や医療費はかさむ。経済的にも負担がかかるんです。障害のあるお子さんが生まれたというだけで選択肢がなくなってしまうのはおかしいですよね。働きたい人にはきちんと働くという選択肢が提供されるべきです」と同認定NPO法人フローレンスの女性は話されています。
認定NPO法人フローレンスでは2021年9月から、医療的ケア児の家族を支援するために、“障害児かぞく「はたらく」プロジェクト”という事業を立ち上げました。復職にためらいや不安を感じている医療的ケア児の親に対する「就業トレーニングプログラム」をお子さんを預かりながら実施し、スキルなどを身に付ける取り組みで、社会復帰に“助走期間”を設ける新たなサポートの形を実現しています。
参考:医療的ケア児の親 “働きたいのに働けない”3つのハードルとは NHK 首都圏ナビ(2021年)
2022年医療的ケア児の為の初の全国組織が発足
たんの吸引や胃に管を通して栄養を送る経管栄養などが必要となる「医療的ケア児」とその両親などが、国に医療児ケア児への支援の拡充などを求めようと、全国43の都道府県から集まった医療的ケア児や成人になってからも医療的ケアを必然な当事者、両親や支援者が合わせて参加して初の全国組織「全国医療的ケアライン」を発足する運びとなり、2022年3月27日にオンライン上で式典を開催しました。
進学や日常生活のための全面的なサービスが受けられない地域もまだ少なく、医療的ケア児の家族を支援する取り組みは地域間でも格差があるのが現状です。今後、国や自治体に「医療的ケア児支援法」の改善を提唱し、当事者の家族同士の交流可能なイベントや医療的ケア児について広く認知して頂く為のPR活動などにも積極的に取り組んでいくとのことです。
参考:たんの吸引など欠かせない「医療的ケア児」初の全国組織が発足 NHK NEWS WEB(2022年)
医療的ケア児を抱える参加者たちは「地域ごとに活動していた点と点がようやくつながった」とか、「どんな子どもも、よりよく暮らせるよう声を上げていきたい」などと話していました。
2024年1月、
東京都江東区が、日常的に経管栄養やたんの吸引などを必要とする「医療的ケア児」を育てるファミリー向けの支援ガイドブックを発行しました。ご家庭でのケアの方法や、福祉、医療、教育に関連したサービスなどをモデルケースと一覧表で紹介しています。
2021年に「医療的ケア児支援法」が施行され、東京都江東区が当事者家族を対象に調査した結果、「モデルケースが知りたい」「受けられる支援を一覧にして欲しい」との要望があったことを受けて、医療機関や支援団体の賛同を得て、支援ガイドブックを作成しました。
医療費助成や手当、相談窓口の一覧表などだけではなく、「先輩ママパパ」からのメッセージも記載されています。「SNSで医療的ケア児の情報収集可能です」「1人で抱え込まず、様々な人の手を借りていい」など、実体験を挟んだコメントが並んでいます。
支援ガイドブックはA5判、50ページです。各出張所、区役所などで配布している以外にも、東京都江東区の公式ホームページからダウンロード可能です。
画像引用・参考:医療的ケア児と家族への支援に向けてガイドブックを発行しました! 江東区(2023年)
私は医療的ケア児ではありませんでしたが、
私は発達障害の運動遅延でもあり、車の免許も薬を飲んでいる為持っていません。唯一乗れるのは自転車。あれは小学校に上がったばかりの頃です。
補助輪が取れて、今だったらありえない話ですが、補助輪が取れたばかりなのにすぐに坂道でスピードを出し、そのまま転倒し、利き手の左腕の骨にヒビが。次の日ギプスしたまま登校し、他の子の持ち物で転んで、完全に折れました。
それから整形外科医院に行き、人生初のレントゲン。まだ6歳だった私は、かなり怖くて泣きながらこの当時の担任の先生が学校で話していた怖い話を、レントゲン中ずっと話していました。入院が必要となり、小学生になって初めての誕生日も病室で過ごしました。
両親や祖父母が面会に来ている時は笑っていても、皆帰ったら一人ぼっち。夜泣きが酷かったみたいで、相部屋の人がすぐに部屋を代わったり、「あの子の夜泣きがうるさい」とクレームも入っていたそうです。退院後病室に行ったら、クレームを入れた大人からは無視されました。
かなり自分の話が長くなりましたが、それ位子どもの頃の入院って、言い表せない位寂しくて悲しいもの。1番最初に書いたメリーゴーラウンドは、そんな子ども達を笑顔にし、元気を与えるのではないでしょうか?こういう取り組みも全国に広がって欲しいものですね。
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noteでも書いています。よければ読んでください。
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