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こんにちは、翼祈(たすき)です。
2022年2月元男性だったトランスジェンダーの水泳選手が、女子種目に出場して、全米大学選手権で優勝し、水泳女性アスリートからは否定的な意見が飛び交い、賛否両論となりました。議論は加速し、国際水泳連盟は「トランスジェンダーの選手の女子種目の出場を認めない。代わりに専用の枠を創設する方針だ」と発表しました。結論は2022年度中に出る予定です。
今回はこの1人のトランスジェンダーの選手を巡る議論について、考えていきたいと思います。
水泳大会でトランスジェンダーの選手参加に伴う議論
2022年2月にアメリカで実施された水泳選手権でのある女子種目レースが大きな注目を注がれています。
その注目の真ん中にいるのは、2020年まで男性として水泳競技に打ち込んで来た、アメリカのペンシルベニア大学に通学するトランスジェンダーを公表しているリア・トーマス選手。性転換手術をし、2021年秋から女性として水泳を続けている彼女は、ブラウン大学、コロンビア大学、コーネル大学、ダートマス大学、ハーバード大学、ペンシルベニア大学、プリンストン大学、イェール大学の8校によるアイビーリーグ選手権の500ヤード(約457メートル)自由形で優勝。そして200ヤード(約183メートル)自由形でも1分43秒12とアメリカの水泳選手権大会で新記録で優勝と圧倒的な差を見せつけました。
元は男性だった彼女ですが、競技上問題は生じません。性転換手術後に男性ホルモンのテストステロンの数値を彼女は1年間以上抑えています。NCAA(全米大学スポーツ協会)のルールを守っています。
しかし、元男性である彼女の女子種目で泳ぐことに反発する声もあります。そして女性の競技種目でのぶっちぎりのタイムには、SNS上で否定的な声が彼女に届きました。イギリスのスポーツ・メディア[Sportbible]には非公表の大学生の水泳選手が、「NCAAの幹部は、誰も彼女の権利を守らない。もし、男性種目のスポーツで、今回みたいな不平等が生じたと考えてみて下さい。きっと一瞬でハッキリとした判断が下されると思う。しかし、今回の事例は女性としての問題だから気にも止めていないのです」とコメントを寄せました。
参考:米女子トランスジェンダー選手が「私は男じゃない」と批判に反論!水泳界で「もっと尊重されていいはず」と主張 THE DIGEST(2022年)
彼女はインタビューで、「答えはいつもシンプル。私は男じゃない。私は女だし、トランスジェンダーも他のアスリートたちと同様に、もっと尊重されていいはず。トランスジェンダーの悩みを抱える子どもたちや、私よりも若いトランスジェンダーのアスリートたちに、『自分は一人じゃない』ということを示したい。自分らしさと好きなスポーツのどっちかを選ぶ必要はないんだと伝えたい。正直、これから私の水泳人生の未来がどうなるかはわからない。けど、続けられるなら、続けていきたい。自分らしく泳いで、競争していきたい」と訴えています。
2022年2月よりアメリカの水泳連盟、トランスジェンダーの選手を巡り議論
米水泳連盟は1日、トランスジェンダー選手の出場に関する新方針を発表した。アメリカでは昨年、トランスジェンダーの女性競泳選手が大会記録を塗り替えて優勝するなどし、議論が巻き起こっていた。
同連盟によると、3人のメンバーからなる医療パネルが今後、「男性としての身体的発育歴」がトランスジェンダー選手に不当な優位性を与えているかどうか、判断するという。
また、大会の36カ月前から男性ホルモンのテストステロン値の検査も実施される。
1日に発表された新方針は直ちに発効した。
米水泳連盟は声明で、「これまでも、そしてこれからも、ジェンダー平等と、シスジェンダー(出生時の身体的性別と性自認が同じ人)とトランスジェンダーの女性の包括性と競技に参加する権利を支持する。それと同時に、エリートレベルの競技における公平性も強く支持する」とした。
そして、エリートレベルのアスリートのための方針は、「男性と女性のカテゴリーにおける競争力の差と、それがエリートレベルでの接戦に不利な状況をもたらすことを認めるもの」だと説明した。
引用:米水泳連盟、トランスジェンダー選手の出場めぐり新方針 「不当な優位性」など判断 BBC News JAPAN(2022年)
アメリカの水泳連盟は、2021年のトップクラスの女性アスリートの記録が、同年の男性競技では平均536位以下にあたることを示すデータを引用。新方針は、「科学と医学的根拠に基づく手法に依拠し、エリートレベルのシスジェンダー女性に公平な競技の場を提供する」としました。
国際水連、大会にトランスジェンダー枠を設置。
国際水泳連盟(FINA)は2022年6月19日、ハンガリー・ブダペストで開催した総会で、ジェンダーに基づく指針を決定し、出生時の心と身体の性が一致しないトランスジェンダーの選手が出場可能な新たな種目創設の検討に入りました。
新方針は、FINAのメンバー152人の71%の賛成で可決されました。FINAは、トランスジェンダーを抱えた選手の「競泳の全員参加に向けた通過点に過ぎない」としました。指針でトランスジェンダーを抱えている選手が女子種目の競技に出場した場合、男性ホルモンの「テストステロン」の数値が規定された基準値以上になると失格とする可能性も出て来ています。
今回、FINAの定義した新たな方針によれば、トランスジェンダーを抱えた女性が女子大会への出場するためには、身体的発育が始まる、タナー段階(身体的発育が始まる時期)2以降の男性の思春期を全く経験していない、もしくは、12歳前のどちらかに該当すれば、と定められました。このため、大学生の時にホルモン治療をスタートしたリア・トーマス選手は、今後、女子種目での出場は不可能になります。
さらに、FINAの総会ではリア・トーマス選手のように、この新しい方針で出場不可能となった選手のために、トランスジェンダーを抱えた選手も出場可能な新しい競技種目の創設を働きかけ、ワーキンググループを設置することも公開され、半年ほどかけて議論します。
国際水泳連盟は「選手の権利は守らなければいけないと思うが、特に女子の種目では平等性も死守しなければならない」と発言しています。
競泳ではトランスジェンダーを抱えた選手を巡る問題では、2022年3月に開催されたアメリカの全米大学選手権でリア・トーマス選手(アメリカ)が全米大学体育協会(NCAA)選手権の女子500ヤード(約457メートル)自由形をトランスジェンダーとなった女性として初めて優勝し、「生まれつき女性選手には不平等だ」と賛否両論を得ています。
参考:トランスジェンダーの水泳選手が出場できる新カテゴリー検討へ NHK NEWS WEB(2022年)
その後、
アメリカのオリンピック・パラリンピック委員会が、トランスジェンダー選手が思春期を過ぎても水泳大会に参加可能なことを目的で、各競技に新しいカテゴリーを立ち上げることを推し進める方針を決定したと2022年12月19日、AP通信が伝えました。2022年12月に実施された理事会で発表しました。
トランスジェンダー選手の水泳大会出場への向けた取り組みは、国際水泳連盟が新しいカテゴリーを創設する方針を既に決定していました。イギリスのトライアスロン連盟はトランスジェンダー選手が水泳大会に出場可能な様に、新しいカテゴリーを立ち上げ、2023年1月から運用を開始すると明らかにしていました。
参考:トランスジェンダー参加へ方針 米五輪委、カテゴリー創設を推奨 北国新聞(2022年)
今回の件は相当難しい問題。
FINAの会長は、今回の決定について、「選手たちが競技に参加する権利を守る」と同時に「競技の公平性を守る」ことにも取り組むものだと説明。「FINAは常にすべてのアスリートを歓迎する。オープンカテゴリーの創設によって、すべての人が高いレベルで競う機会を得る。前例のないことで、FINAが先導しなくてはならない。その過程で自分もアイデアを出して発展させていけるのだと、すべてのアスリートに実感してほしい」と述べました。
これに対し、女性水泳アスリートからは歓迎の声が届き、LGBTQの団体からは「差別的、有害、非科学的で、2021年のIOC(国際オリンピック委員会)の原則に沿わない」と批判されました。
2021年の東京オリンピックではLGBTQを公表している選手が大会に出場し、メダルを獲得して笑顔の花が咲きました。種目からすれば不平等、性別からすれば女性として権利を認められ大会に出場している訳ですから平等という、複合的に問題を幾つも持っている今回の問題だと思いました。この問題は皆違う考えですから、全員が賛成という訳にもいかないんでしょうね。本当に難しい問題ですね、、、
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国際水連、トランスジェンダー選手の女子競技への出場を禁止 BBC News JAPAN(2022年)
noteでも書いています。よければ読んでください。
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