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こんにちは、翼祈(たすき)です。
先月2022年1月にアメリカでブタの心臓移植に成功し、それ以降腎臓や肝臓など他の臓器でも移植が始まっています。今移植を必要としている多くの方が、必要としているのになかなか移植が出来ません。何故なのでしょうか?
今回はこの移植問題について、皆さんと一緒に考えていきたいと思います。
ブタの心臓を移植
アメリカでは臓器の不足が深刻な問題となっており、ブタの臓器の移植に期待が高まっています。動物の遺伝子を操作して、人間に移植できる臓器を作り出す研究は、各国で進められていて、将来的に移植用の臓器の確保につながる技術として期待されています。
2022年1月7日に、7時間にわたる実験的な移植手術を受けたアメリカ在住の男性は、術後3日後の1月10日現在も、容体は良好で、自発呼吸も確認されたといいます。
「死ぬか、移植をするかのどちらかだった。私は生きたかった。暗闇で銃を撃つようなものだったが、私にとって最後の選択肢だった」「快復してベッドから起き上がるのが楽しみです」と、男性は手術の前日にこのように話していました。
男性は不整脈で心臓の状態が悪く、人の心臓の移植に男性には合わないという医師団の判断を行われていました。移植にあたっては、アメリカFDA=食品医薬品局が2021年12月31日、人命に関わる疾患で、ほかに治療の方法がない場合にかぎり、承認前の医療技術を使えるようにする、いわゆるコンパッショネート・ユース制度(人道的使用)の許可を出したということです。
ただし、ブタの心臓移植による長期的な生存率は現段階では分かっていません。ブタは臓器の大きさや機能が人間と近いですが、そのまま移植すれば免疫による強い拒絶反応が起きます。
男性の身体の免疫反応がブタの心臓を拒まないよう、医療チームは拒絶反応や、人間の体内での過度の成長を抑えるため、関連する10か所の遺伝子を遺伝子操作されたものを使用しました。
AFP通信によると、心臓の提供元となったブタは、今回の移植手術に当たり、アメリカのバージニア州に本拠を置く再生医療の実用化に取り組む会社Revivicorが、遺伝子組み換えブタの心臓を提供しました。提供臓器は、XVIVO社(スウェーデン)が開発した還流装置を使って保護されました。
一方、外科チームは、異種移植による拒絶反応を防ぐために、アメリカのバイオ医薬品メーカーKiniksa Pharmaceuticals社製の新薬を使用しました。
担当した医師団にとって今回のブタの心臓の移植手術は、数年間の移植の研究結果が実を結んだもので、世界中の移植を必要としている患者の人生に大きな影響を与えるかもしれないと期待されています。メリーランド大学の声明で、執刀した外科医は、「これは突破口となる手術です。今回の手術は画期的であり、臓器不足の危機解消に(世界が)一歩近づくことになる。私たちは慎重に進めていますが、同時にこの世界初の手術が、将来患者に重要な選択肢を提供するであろうと希望を持っています」と期待を示しました。
深刻なドナー不足と異種移植への期待
アメリカではドナーが不足しています。米保健資源事業局によると、移植用の臓器が不足している現状では、待機移植リストで推定10万人が順番を待っているとされ、アメリカでは臓器提供を日々待ち続けながら、毎日に平均17人が亡くなっているといいます。人間と大きさが似ている臓器を持つブタの心臓や腎臓などの移植研究がこれまでにも進行していました。
「異種移植」と呼ばれる回復の見込めない人への治療のために人間以外の臓器を使う移植は、長い間移植への研究が取り進められてきました。ブタの心臓弁の移植はすでに治療法として広く定着しています。動物の臓器を人に移植する「異種移植」は1980年代に初めて試みられましたが、患者の体がヒト以外の臓器に対して拒絶反応を起こす問題がありました。1984年にヒヒの心臓移植を受けたカリフォルニア州の赤ちゃんが約20日後に亡くなったのを最後にほとんど行われてきませんでした。
しかし近年では、ウシやブタの心臓弁を、人への移植に使用することがすでに定着しています。2021年9月と10月には同アメリカのニューヨーク大学の医師団が、ブタの腎臓を人間に移植する手術に成功したとコメントされていました。当時はこれが異種移植の分野で最先端の研究成果でしたが、ブタの腎臓の移植を受けた人は脳死状態の人で、回復の見込みはなかったといいます。
一方この男性は、今回ブタの心臓を移植手術されたことにより、今後も生き続けたいと期待しています。1カ月以上前に不整脈で入院し、体外式膜型人工肺(ECMO)を使っていましたが、臓器提供を受けられない上に、不整脈のために人工心臓も適用できませんでした。男性は手術の6週間前に末期症状の重い心臓病と診断されてから、生命維持装置につながれた状態で全く動けませんでした。先週には「回復したらベッドから起きて歩きたい」と話していました。
医師団は男性のブタの心臓移植手術後の容体に注意を払っています。1月10日には男性は自分で呼吸が可能になっていたといいます。
ただし、今後どうなるのかは不透明です。男性の息子はAP通信の取材に、現時点で家族は「父のブタの心臓の移植手術に関して、私達も未知の領域にいる」と認めた上で、「(父は)今回のブタの心臓の移植手術がどれだけ大変なもので、どれだけ重大なものか認識している」と話しました。
執刀した外科医は、「人間に対してはブタの心臓移植手術というのは初めての処置だった。男性には、これまでの緩和ケアを続けるよりも、良い選択肢を男性に対し提供できたと我々は思っている」とした上で、「ただし、あとどれくらい男性が生きていられるのか、命が1日か1週間か、あるいは1カ月か1年以上なのか、それは我々にも分からない」と認めました。
今後、臓器の安全性が確認され、規制当局から治療法として承認されれば、将来的に移植用の臓器の確保につながる技術として期待されています。
ブタの腎臓の移植の例も
ブタの腎臓を脳死状態の人の体内に移植する実験がアメリカで行われました。
アメリカにあるアラバマ大学バーミンガム校の研究チームは2022年1月20日、遺伝子組み換えを行ったブタの腎臓2つを57歳の脳死状態の男性の体内に移植する実験を行ったと発表しました。
今回は短期間の移植で腎臓の機能も詳細に調べていませんが、米アラバマ大バーミンガム校の研究チームの教授は「(種の壁を越えた)異種移植に向け大きな節目だ」と指摘。世界中で慢性的な臓器不足の中で移植を長期間待つ人を少しずつ1人でも減らせるよう、重い腎臓病患者に対する臨床試験も視野に入れているとしました。
移植された腎臓は3日あまりの実験の間、拒絶反応はなく、尿を作るなどの機能がみられたといいます。
男性はバイク事故で脳死状態になっていて、事故前に臓器提供の意志がありましたが、提供には適さなかったため、今回の移植実験に家族が同意したといいます。
チームは男性の腎臓を摘出し、10個の遺伝子を改めて構造を変えたブタの腎臓2個を移植。人間同士の場合と同様に免疫抑制剤を使いました。1個の腎臓は23分後に尿を作り始め、3日以上維持できました。
参考:ブタの腎臓をヒトに移植 アメリカで脳死状態の男性に移植実験 FNNプライムオンライン(2022年)
その後、
アメリカにあるニューヨーク大学の医師らで構成された研究グループは、2023年7月に57歳の脳死状態の男性へ、拒絶反応が起こりづらい様に遺伝子の操作が実施されたブタの腎臓の移植を家族の同意を貰い実施すると、1ヵ月以上も、移植されたブタの腎臓は男性の身体の中で機能し出し、正常に腎臓としての機能が働き続けていることが確認できたと2023年8月16日に、発表しました。
研究グループによれば、拒絶反応が起こりづらい様に遺伝子の操作が実施されたブタの腎臓をヒトに移植するのは今回が3度目となり、正常に腎臓が働いている期間としてはこれまでの最長記録です。
研究グループは移植されたブタの腎臓が正常にこれからも機能し続けるか、確認をしていきます。
参考:ブタの腎臓を人間に移植“1か月以上 正常に機能”米研究チーム NHK NEWS WEB(2023年)
日本ではブタの肝臓も
慶応義塾大学の専任講師や教授らは細胞を取り除いて骨組みだけにした肝臓を活用し、肝不全を治療する動物実験に成功した。この骨組みに人間のiPS細胞から作った肝細胞を入れて移植すれば、肝硬変などを治療できる可能性があるとみている。5年後をめどに臨床試験(治験)の開始を目指す。
動物の臓器は細胞と主にコラーゲンからなる骨組み構造からできている。細胞は脂質の膜で覆われているが、骨組みは多くがたんぱく質だ。研究チームはブタの肝臓に界面活性剤を加えて細胞を洗い流す「脱細胞化」の手法を用い、骨組みだけにした。ここに別のブタの肝細胞と血管の細胞を注入して定着させ、肝臓として機能すると確かめた。
この人工肝臓をさらに別のブタに移植した。このブタは肝不全だったが、移植後1カ月でたんぱく質の合成機能や代謝機能が改善した。骨組みを活用した人工の肝臓を移植して治療効果を確認したのは世界初という。界面活性剤の濃度や、活性剤に臓器をさらす時間を調整することで、骨組みが壊れないようにした。
2023年8月17日、
動物の臓器をヒトに移植する「異種移植」の日本での実施を見据え、国の医療研究をサポートする日本医療研究開発機構(AMED)の研究班が、遺伝子を改変された動物の臓器を移植する時のヒトの身体の安全性を確保すべく、指針案作成を始めたことが2023年8月17日、判明しました。海外でブタの心臓や腎臓をヒトに移植する手術が用いられている中で、日本でも正しく「異種移植」の体制を整備したいのが狙いです。2025年度の総括を目標に、国の指針へと結び付けます。
日本では1型糖尿病患者にブタの膵島細胞を移植する研究が加速しています。厚生労働省研究班は2016年にブタの膵島細胞移植を想定し、実施に伴った危険性などを総括した指針を改定しました。ですが、動物の臓器全てをヒトへの移植対象と想定した指針は存在しませんでした。
今回日本医療研究開発機構(AMED)の研究班では指定病原体ではないブタの飼育・生産すること、臓器の摘出すること、病院への臓器を搬送すること、ヒトへのブタの臓器を移植する手術までの管理する体制構成のことなどの標準化を掲げています。
参考:人への臓器移植向けブタ誕生、安全性確認へ 明大発新興 日本経済新聞(2024年)
日本の移植希望登録者数
画像・引用:JOT 日本臓器移植ネットワーク
現在、日本で臓器移植を希望している方の総数は、約13,000人です。一方で、1年間で臓器移植を受けられた人は、約400人。年間わずか2~3%の人しか移植を受けることができていないというのが現状です。
異種移植の問題点など
異種移植に関しては資料にある様に、現時点では異種移植による未知の感染症の発生及び伝播が起こらないことを保証できる段階になく、そのほか動物福祉の問題や、安全性と有効性が十分に解決されるのかという、倫理的な問題についても、長年議論が重ねられています。
臓器移植を希望した家族の声
13年前に改正された臓器移植法が施行されて以降、家族の承諾があればドナー登録が可能になっており、当事者本人の意思が分からない中で提供を決めた家族がおよそ半数に上ります。現在日本では子どもの臓器提供はほとんどない状態です。
コロナ禍での問題
病気や事故で臓器の機能が低下し、移植でしか回復が見込めない人に実施される臓器移植。国内の提供・移植件数は近年、増加傾向にあったが、2020年は前年比で大幅減少した。鹿児島県内では昨年、移植件数が最も多い腎臓の提供がなかった。生前の提供意思が分からない人が亡くなると、家族が医療関係者と話し合い提供を検討するが、新型コロナ禍で対話が難しくなったのも要因とみられる。
日本臓器移植ネットワーク(JOT)によると、19年は全国で125人から臓器提供があり、480件の移植が行われた。いずれもJOTが発足した95年以降で最多だった。20年は一転して提供77人、移植318件となりそれぞれ19年の6~7割にとどまった。
引用:コロナ下、ドナーが見つからない 臓器提供 19年125人が20年は77人 家族と医療現場の話し合いできず 南日本新聞(2021年)
コロナ禍で手術後のICUがコロナ患者専門になったのも、移植手術が減少した大きな要因でもあります。
簡単には片付けられない問題
この問題は簡単には片付けられない、大きな問題です。私の身内にも以前入院中「心臓がブルガタ症候群かもしれません。万が一の場合、どこまで延命治療しますか?どこまで出来るか、同意書を書いて下さい。覚悟しておいて下さい」と言われた時、そんなブルガタ症候群って言葉すら初めて聞いたのに、え?延命治療?とか言われて、その後調べたら当然死する病気で、転院後すぐそう言われて、凄く動揺してかなり泣いたのを覚えています。(結果は波長が似ているだけで、ブルガタ症候群ではなく違ってました。ですが、念の為身内は循環器内科には何年か1年に1回検査で通院してました。)
私はドナーとかは、病気や障害で色んな薬飲んでますし、自分がそういうドナーに適しているとは思いません。希望する人に対して、実際に出来る人が限りなく少ない現実に驚きました。多分必要な人はこれからも増えていく分、今のままでは全然足りないですね。よく移植の為に海外に行く方の理由が、記事化して分かりました。多くもブタも体に合えば、少しずつ改善していく問題かもしれませんが、倫理的にも難しいですね。
参考サイト
世界初「ブタの心臓をヒトに移植」手術後も“順調”…なぜブタ?拒絶反応はどう防ぐ?移植の背景を解説 FNNプライムオンライン(2022年)
noteでも書いています。よければ読んでください。
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